関東大学ジュニア選手権 ９月２９日 対慶大Ｂ 早大・上井草グラウンド
時折小雨がちらつく曇天の中、多くの観客がもう一つの早慶戦を観戦しようと早大・上井草グラウンドに訪れた。試合は早大Ｂが鋭いタックルで主導権を握ろうとするも、慶大Ｂに先制点を奪われる。すぐに反撃し得点を挙げたが、シンビンで１人を欠くなど厳しい時間が続き、慶大Ｂに追加点を許し点差を広げられる。それでも動じなかった早大Ｂは前半終了間際にトライを取り返し、10ー14とリードを縮めて試合を折り返した。続く後半は開始直後に早大Ｂが追加点を決め逆転に成功。このまま勢いに乗ると思われたが、慶大Ｂも簡単には流れを渡さない。またも逆転を許したものの、粘り強く得点を重ね、宿敵を相手にラストプレーで突き放し、32―21で勝利を収めた。
冷静なゲームメイクで試合を支配したＳＯ仲山
慶大Ｂのキックオフで始まった今試合。早大ＢはＣＴＢ黒川和音（人３＝茨城・茗渓学園）とＦＬ城央祐（スポ１＝神奈川・桐蔭学園）が好タックルを決めるなど、相手にプレッシャーをかけ続け試合の流れを掴もうと奮闘を見せる。そんな矢先の前半６分、慶大Ｂがボールを取り返し、パスをつないで先制点を挙げた。出鼻をくじかれた早大Ｂだったが、前半８分に黒川が相手ディフェンスをずらす絶妙なパスを放り、これを受け取ったＦＢ植木太一（人１＝神奈川・関東学院六浦）がビッグゲイン。最後にパスを受け取ったＷＴＢ清透馬（商４＝茨城・茗溪学園）がインゴールに飛び込んだ。その後は城、そしてＦＬ多田陽道（商１＝東京・早実）の両翼が守備で躍動を見せるも、慶大Ｂの勢いに押され自陣深くまで攻め込まれる場面が目立つように。さらに25分にはＣＴＢ金子礼人（法３＝福岡・西南学院）がインテンショナルノックオンの反則で一時退場。認定トライを献上し、５ー14と点差を広げられてしまった。数的不利になってしまった早大Ｂだったが、ＳＯ仲山倫平（法３＝ニュージーランド・ウェリントン・カレッジ）がキックを多用し、落ち着いたゲームメイクを見せる。蹴り合いを制し、陣地を回復してピンチを凌いだ。そして前半35分、またも仲山が相手の背後にボールを転がすと、ＷＴＢ西浦岳優（社１＝東福岡）が反応しインゴールに滑り込む。前節から「トライを取ることが仕事」と得点への執念に燃えるルーキーの活躍で、10ー14と両者譲らない試合展開で前半を終えた。
ディフェンスに仕掛けるＦＬ多田
再び15人に戻り、仲山のキックオフで始まった後半。開始直後金子が相手のキックにプレッシャーをかけチャージし、敵陣ゴール目前でのスクラムという絶好のチャンスを引き寄せる。ＰＲ新井瑛大（教２＝大阪桐蔭）が「練習通りに８人でしっかりまとまって組むことができた」と振り返るように、今試合も圧倒的な力を見せるスクラムで慶大ＢのＦＷを粉砕するとともに、ペナルティーを奪い認定トライで17ー14と今試合初めてのリードを奪った。「エリアを獲得することを頭に入れていた」（ＳＨ清水翔大、文４＝東京・早実）早大Ｂは、その後もしばらくは蹴り合いが続き、両者一歩も譲らない堅い試合展開を見せた。この均衡を破ったのは慶大Ｂ。後半26分、早大陣地深くまで攻め込み、スクラムからのバックス展開でトライを取り切り、再びリードを奪った。しかし負け知らずの早大Ｂは直後のキックオフから、金子がタックルで相手アタックを仕留め、ＬＯ折戸健介（法４＝東京・早実）のジャッカルで敵陣深くでのセットプレーを獲得する。直後の31分、スクラムでまたも相手を打ち砕く。アドバンテージをもらった中で、ショートサイドに走り込んできたＳＯ吉岡麟太朗（スポ４＝東京・本郷）が相手ディフェンスを冷静に交わし、22ー21と再び逆転に成功した。さらに集中を切らさない早大Ｂは攻め続ける。黒川がスキルフルなプレーで相手を翻弄し起点を作ると、ＳＨ糸瀬真周（スポ３＝福岡・修猷館）のロングパスを受け取った西浦が相手ディフェンスを置き去りにしながら内側に切れ込みゲイン。その後も陣地を進め迎えた38分、吉岡からライン際でボールを呼び続けていた清へのロングパスが繋がり、27ー21と点差を広げた。試合終了間際にもマイボールラインアウトからモールで押し込むと、ＨＯ清水健伸（スポ２＝東京・国学院久我山）がインゴールを叩き割り、ダメ押しのトライで試合を決めた。最終スコア32ー21と伝統の一戦は早大Ｂに軍配が上がった。
トライを喜び合うＷＴＢ清とＣＴＢ黒川
早慶戦にふさわしく、両者が得点をとりあう拮抗した試合展開となった今試合。脅威の無敗記録を守り切った早大Ｂは、ゲームキャプテンを務めた清水が「タイトな試合を勝ち切ったことは早大としても価値のある試合だった」と振り返るように、自力の強さを見せつけるゲームとなった。また数的不利という不測の事態にも、仲山や黒川の冷静なゲームメイクで見事に耐え忍んだことは、今後も続くジュニア選手権に向けて、大きな収穫となっただろう。これから関東大学対抗戦もシーズンが深まってくる中、下のカテゴリーの活躍は不可欠となる。折戸や清が揃って「ここがゴールではない。『赤黒』を着れるように頑張りたい」と述べるように、更なる部内競争の激化が予想される。『赤黒』そして『荒ぶる』を獲るための選手たちの活躍から目が離せない。
（記事 大林祐太、写真 村上結太、安藤香穂）
コメント
ＳＨ清水翔大（文4＝東京・早実）ゲームキャプテン
ーー今日のゲームコンセプトを教えてください
今日のゲームコンセプトは「キル」でした。
ーー今日のアタックについての総括をお願いします
今日の試合ではブレイクダウンでプレッシャーを受けてしまい、ゲームテーマが「キル」ということもあり、相手のアタックをキルすることを意識していたのですが、後手に回ってしまい、早稲田としてのアタックができなかったかなと思います。ーー前半にシンビンで1人少ない時間帯がありましたが、ゲームキャプテンとして何か心がけたことはありますか
エリアが取れなかったのは15人いた時も変わらなかったので、まずは敵陣に入って自分たちのディフェンスをすることを常に頭に入れていました。
ーー今後の意気込みをお願いします
今日のようなタイトな試合を勝ちきれたのは早稲田としてもとても価値のある試合になったと思います。一方で個人としては課題も見つかった試合になったので、これからに向けて一日一日を大切にしていきたいと思います。
ＰＲ新井瑛大（教２＝大阪桐蔭）
ーー今日の個人のコンセプトを教えてください
いつもと同じく「ガッツ」と「スクラム」を意識して試合に臨みました。
ーーセットプレーを振り返っていかがですか
今日は練習していた通りに８人でしっかりまとまって組めたと思います。優勢に組めてアドバンテージも取ることができたので良かったです。
ーーご自身のフィールドプレーについてはいかがでしたか
セットを早くして良い状態でアタックするということを意識していました。
ーー最後に意気込みをお願いします
Ａ（チーム）は次に青学大戦、帝京大戦があるので、課題をしっかり修正して戦っていきたいと思います。
ＬＯ折戸健介（法4＝東京・早実）
ーー今日の試合をふりかえっていかがでしたか
今試合も慶應サイドのタイトな試合になると考えてましたが、ブレイクダウンの部分では絶対勝つという目標を立てていました。勝ちきれてよかったです。
ーースクラムの完成度とその理由を教えてください
今シーズンはすごくスクラムに力を入れていて、どんな相手でも全力をだすという目標でやっていました。よくできたと思います。
ーー仲間を鼓舞している姿が多く見られましたが、声掛けで意識していることはありましたか
僕の役割としてはラインアウトとエナジーを出すというところだけだと思うので、チームのエナジーを出せるように尽くしました。
ーー今後の意気込みをお願いします
もう残すは赤黒だけなので、赤黒を目指して全力を尽くします。
ＷＴＢ清透馬（商4＝茨城・茗溪学園）
ーー今日のゲームコンセプトはなんですか
チームは「キル」というコンセプトでやってました。全ての局面で勝ちに行くっていうのと、ブレイクダウンを圧倒するっていう意識でやりました。
ーー１対１の局面で意識したことはなんですか
余った時に呼び込むところ意識していたのですが、なかなか組み立てられず慶應の圧力にやられた部分がありました。後半立て直せたのは良かったと思います。
ーー本日のバック３のディフェンスを振り返ってどうですか
ディフェンス自体はコミュニケーション取れて前に出れたと思います。ただ、内側を抜かれた時のカバーリングを完成させる必要があるかなと思います。
ーーご自身の２トライを振り返っていかがですか
復帰してからトライが取れてなかったので嬉しいです。
ーー今後の意気込みをお願いします
このゲームがゴールじゃないので、対抗戦を赤黒を着て出れるように頑張ります。
スコア
早大メンバー
