肌寒い風の吹く中、早大自動車部は決戦の地に立っていた。フィギュアという競技は、他の自動車競技(ジムカーナ、ダートトライアル)と異なり、タイムよりも正確な運転に重きがおかれる競技である。そのフィギュア競技である全関東学生大会(全関フィギュア)で、昨年は男女共に団体戦で優勝。しかし、王者として臨んだことし、結果は予想だにしないものとなった。男子団体戦9位。個人成績に関しても、杉崎裕一(社3=東京・早実)が2位、新人の部に出場した榎本吉宏(政経2=福岡・北筑)が3位と、被表彰者は2人にとどまり、優勝が多数を占めた昨年に比べ悔しい結果となった。
小型貨物と小型乗用の2部門に分かれ、それぞれ東と西の2つずつコースを用い4人で挑む男子団体戦。早大のエースとして最も期待されたのは小型貨物部門東コースに出場した青山広明(先理3=神奈川・聖光学院)だった。青山は、昨年同部門で優勝を果たし、早大の団体優勝に大きく貢献した。今大会では車の変更があり、「車に関しての緊張が一番大きかった」と語った青山を、最後の最後に悲劇が襲った。ミラーがかすかに看板にあたってしまい、無念の失格。「小型貨物で皆崩壊してしまった」と、無残な結果に終わってしまった団体戦への思いを口にした。青山と同様に悔しい結果となったのは、女子小型乗用部門に出場した橋本美咲(人3=山梨・甲府南)。橋本もまた、昨年同部門の新人戦で優勝を飾っていたものの、コース序盤でのタイムロスが響き3位に終わった。試合後、橋本はこの後に続く関東大会でも全国大会でも、「最高学年の4年生なので全部優勝できるように頑張っていきたい」と心機一転、次なる目標を掲げた。
ミラーで後方を確認する青山
対照的に、昨年の雪辱を果たす結果となったのは、小型乗用部門に出場した杉崎。昨年も団体戦に出場し優勝を成し遂げた。しかし個人としては他部員が優勝、2位と躍進した中で、ただ1人4位というふがいない結果しか残せず。それを悔やみ続けて挑んだ今大会。細かいミスはあったものの、観客が感嘆する攻め方を見せ2位に入賞した。しかし、杉崎は満足していない。下学年の多いコースで優勝できなかった自分に喝を入れる、さらなる成長を誓った。また、1年生ながら団体戦メンバーに選ばれた森田真(政経1=レイブンウッド)は大健闘。ペナルティなく走ることが要求されるフィギュアにおいて、団体戦メンバーで唯一ペナルティなく完走した。今後の目標については「杉崎さんより早くなること」と、ルーキーの成長にも期待が高まる。
身を乗り出しコースを確認する杉崎
大会後、「部員が十分に準備に対して全力を尽くしていなかった部分が多々あった」と語った稲荷経太主将(人3=岡山白陵)。新体制となって初めての公式戦となった今大会、王座陥落という結果になったことに対し、部員を統率しきれなかった主将としての責任にも言及した。もうじき、フィギュアと同様に、ジムカーナとダートトライアルの大会も始まりを迎える。早大自動車部がチームとしてどのような成長を遂げていくのか。今後の活躍に注目したい。
(記事 深瀬真由、写真 尾澤琴美)
結果
※早大のみ
▽男子団体の部
9位 早大
▽男子個人の部
・小型貨物 東コース
記録なし 青山広明
・小型貨物 西コース
7位 竹内涼(創理2=東京・早大学院)
・小型乗用 東コース
2位 杉崎裕一
・小型乗用 西コース
6位 森田真
▽女子個人の部
・小型乗用
3位 橋本美咲
▽男子新人の部
・小型貨物 西コース
6位 山本太郎(政経1=埼玉・浦和)
・小型乗用 東コース
3位 榎本吉宏
・小型乗用 西コース
4位 齋藤周太(人1=東京・日野台)
コメント
岡島昭英監督(昭61理工卒=東京・早大学院)
--昨年と比べて団体の結果が残念なものになってしまいましたが
ただ1種目が失格ということになってしまうと順位はどのみち論外なので、9位というか実質はもう圏外だということなので、それはしょうがないと思っています。今回については、(小型)乗用の方はわりと良かったかなという感じなのですが、(小型)貨物の方が、失格ではないもう1人もけっこうミスで失点をしてしまっているので、そこが非常にもったいなかったです。練習のときは、どちらかというと(小型)貨物のほうがちゃんと乗れてる感じだったのですが、結果がこのようになったというのは、練習の仕方でもっと工夫しなければいけないと思いました。具体的に言うと、横を見るミラーに頼りすぎているところがあって。ただそこは他の学校も条件は同じなので、逆を言うと、練習のときにそういうことも気にした練習をしていなかったというのが反省点だと思いますね。ですので、この後、フィギュアは秋に全日本があるのですが、それに向けての課題というものがまた見えてきたと思っていますし、そこそこの結果を出せた(小型)乗用の方もまだまだやるべきポイントはいろいろあるので、秋に向けた課題として練習していきたいと思います。
--(小型)貨物のほうが、昨年と異なりボックス式になったというのも何か影響しているのでしょうか
ボックス自体もそうですし、実はボディの幅が広くなって、タイヤの位置よりボディが少し外側に広がった車体になっているんですね。箱の部分自体というのは、フィギュアにはあまり関係ないのですが、ボディの幅が広がった分タイヤが影になってミラーで見えづらいという影響が多きいということです。ただ、そこは他の学校も条件は同じなので、先ほども話したように、そういったことを意識した練習がやはり足りなかったのだろうなと思うところです。
--今回の大会を見て、改善すべき点は
練習の仕方ということが大きいですね。練習の場所という意味では、実は、うちの部は新潟県の松代に練習場があるのですが、冬は使えなくて。ただ、大学側でいろいろご尽力いただきまして、昨シーズンから埼玉本庄の高等学院のところを使えるようになりまして、かなり改善された部分があります。ですので、そのいい場所をもっと生かしきるような練習の仕方、いわゆる広場と違って場所自体の形が変な形をしていますので、そこに上手にコースを書いて練習するという練習の仕方、それの改善というのがまだまだできるなと思っています。あとは、車を動かす技術そのものも、当然私がいろいろ教えているにしても選手によってかなりばらつきがあるので、その全体的なレベルの底上げをしていくということが私のやらなければいけないことですね。
――今大会で気になった選手などは
他の学校のレベルが上がっているんですよ。特に今回優勝した明大は、先程監督と話をしたのですが、フィギュア以外も含めて全関東の試合で今まで勝ったことがなかったらしいです。今回はただ、各選手を見ていても非常に高いレベルで、選手の粒がそろったという状態ですし、あとは青学大など他校で気になる選手というのは増えていますね。つまり、ライバルがずいぶん増えたなという感じではあるのですが、それだけ、全関東のレベルが上がってくるということは、我々もこれから負けじと練習しますし、全体のレベルが上がるので、勝つためにはより努力をしなくてはいけないにしても、気になる選手が増えてきたことは、プラスにできるのかなと思います。
――これからの一年間の目標は
それはもちろん全日本制覇です。これしかありません。このあと全関東が2つ、ジムカーナとダートトライアル。そして今度は全日本でジムカーナ、ダートトライアル、フィギュア。これにともかく勝つこと。あと、別の大きな目標は、実は女子部員をいれることなんです。きょねんは団体戦が組めたのですが、ことしは橋本1人で組めないので、春からの新歓でなんとか女子をいれたいですね。そうすると、秋の全日本で橋本と団体戦が組めるんです。そういうわけで、別の大きな勝負は4月からの新人勧誘だと。そこで男子は当然ですが、女子も何とかいれたいですね。毎年の早スポさんの新人特集に女子も出せるように(笑)。いろいろな形で女子の勧誘をしていきたいと思います。車好きな子がいたら、自動車部があるということで声をかけていただけたら嬉しいです。
稲荷経太主将(人3=岡山白陵)
――主将として初めての大会にどのような気持ちで臨まれましたか
きょねん総合優勝しているので、ことしも絶対にするという意気込みでした。
――結果は散々なものになってしまいましたが
いろいろ思うところがあります。僕の目から見て部員が十分に準備に対して全力を尽くしていなかった部分が多々あって、日頃から指摘はしていましたが、そこを直し切れなかったのは僕の責任でもあります。次の全関東ジムカーナ選手権までにどれだけ叩き直して臨めるかというのが課題だと思います。
――選手たちには甘い部分があった
そうですね。きょねんの練習から比べたら甘い部分が多かったです。練習量はきょねんより少なかったですし。
――全日本学生大会(全日フィギュア)の悔しさをもって臨みたかったが、あまり選手たちには促せなかったか
結果的にはそうなりましたね。練習に全部参加できている訳ではないのであれですが、全関フィギュアには4年生が1人しか出られなくて、全日フィギュアに出ていた次期4年が今大会にしていた意気込みには文句はないのですが、下の学年がこういったちゃんとした試合が初めての中で、その厳しさを知らないままやってしまったのが大きいですね。
――新2年生の森田選手は6位入賞ということでしたが
下の学年で今大会で評価できるのは彼くらいです。
――同期の杉崎選手も2位でしたが
4年は忙しい中で、よくやってくれたと思います。あとは全日本に向けて、どう調整していくか。自分も含めて一緒に詰めていきたいと思います。
――主将から一言ずつ出場した選手たちにかける言葉はありますか
竹内に関しては1、2年時の練習量が圧倒的に少なかったです。現段階の練習を見ればやっていたかもしれませんが、いままでのマイナスを取り返すような練習をしていなかったと思います。本人は真面目で能力自体はあると思うので、惜しいと感じました。次に青山は期待通りの走りを序盤はしてくれました。ただぼくも考えないような所で、当たってしまって今回から車が変わったなどあると思うのでそこを僕はどうこう言うことではないと思いますし、彼はきょねんチャンピオンなので、安心して見ていられます。杉崎は青山と同じで彼なりに練習をして良い結果を残してくれたので、今後に関しても心配はしていません。森田もさっき言ったように太鼓判です。新人戦に出ていた下級生を全部は見れていませんが榎本はよくやったと思います。彼は1、2年生のマイナス面を取り戻すように最近頑張っていたように思うので、そこは評価したいと思います。斎藤はあまり見れていないのですが、試合後に泣いていたということも聞いたので、その悔しさが今後に生きてくると思うので期待できると思います。山本に関しては僕の時間を削って練習をさせましたが、試合後にちょっと残念な発言がありましたので、僕からは何も言いたくないです。
--主将としてのことし1年の意気込みをお願いします
今大会の結果は自分が思っているよりもよっぽどひどかったので、ここから立て直して、他の試合全てで結果を残せるように、個人的にも就活とかを言い訳にせずにやること全部やっていきたいと思います。
杉崎裕一(社3=東京・早実)
――きょねんの4位から今大会までどのように調整されましたか
きょねんの結果が悪かった原因を自分なりに考えて、本番でも破綻なく結果が残せるように努力をしてきました。最上級生になり、上から見てくれる人がいないので、自分との戦いでした。
――特に力を入れた部分は
ミスをしないことですかね。正確性、線に触れないように、狙った通りのラインを走れるように車体感覚を磨くことに力を注ぎました。
――2位という結果をどのように受け止めていますか
4年生がメインの西コースとは違って、東コースは3年生がメインで、4年生は僕ともう1人くらいでした。ほんとは優勝しなきゃいけない場面で、いろいろミスを重ねて準優勝に終わってしまったので、結果から見たら内容は悪いですね。
――緊張はしましたか
練習で本番を想定して使っていた車が本番では違う車だったので、もちろん初めて乗るわけなので、慎重に気を付けて走りました。
――どのように感覚が違いましたか
とにかく操作に対して敏感に反応しました。ハンドルもペダルも他の車と比べて反応しやすかったので、シビアな操作が要求されましたね。あと、視界が狭かったです。
--ことし一年間の意気込みを
最後の大会になっていくので、きょねんはダート種目で出させてもらいましたが、ふがいない結果だったので、車両整備や個人的な練習はしっかりやって、ジムカーナ、ダートトライアルでは今度こそ優勝できるように頑張りたいと思います
青山広明(先理3=神奈川・聖光学院)
――昨年の覇者としてどのような気持ちで臨まれましたか
昨年に続きことしも個人で優勝、また団体で優勝することを目標に練習してきましたが、結果が結果だったので僕からは何も言えないです。
――緊張はありましたか
緊張はある程度ありましたがきょねん程ではありませんでした。車がいきなり変わってしまったこともあって、いろいろ情報が流れてはきていたのですが車に関しての緊張が一番大きかったですね。
――車の変更による影響は
車体が広くなっていたみたいで、その影響がひどかったですね。
――コースについての印象は
コースについてはそれ程難しくはないと思います。ただ、ボックスがついたことによって障害物に気を付けなくてはいけないのに、ミラーが見えないことで障害物に対する意識がおろそかになっていてぶつけてしまったので、やはりそういったところも(車の影響は)大きかったのかなと思います。
――前半は良い走りに見えたのですが
そうみたいですが、自分の中ではやはりもう少しいけたのかなというのがあります。
――団体の記録を残すことができませんでしたが、チームの結果についてはいかがですか
今回小型貨物で皆崩壊してしまったので、それに関しては僕たちの練習方法も少し見直さなくてはいけないのかなと思いました。
――ラストイヤーにむけて抱負は
とにかく今回は自分のせいでだめになってしまった部分が大きかったので、その借りを返せるように頑張っていきたいです。
橋本美咲(人3=山梨・甲府南)
――昨年の全日本学生大会(全日フィギュア)から今日まで、どのような練習を積んできたのでしょうか
前回の全日フィギュアは小型乗用の部に移って初めての大会だったということでいろいろいっぱいいっぱいだったので、まずはその種目そのものに慣れようと思って練習していました。
――どのような調整を
どこにタイヤがあるのかという感覚が全然身についていなかったので、それをものすごく意識して、ペナルティしないで済むようにという調整をしました。
――現在女子部員が1人という状態ですが、1人で戦うことに関しては
私が入ったときからはもう女子が団体戦を組める人数いたので、今回1人で戦うのが初めてで、やはり責任感というか、団体という重荷はある意味ないのですが、その分、男子が楽しそうにみんなでやっているのを見ると、少し寂しいところもあります。
――きょうの走りに関してですが、最初のポイントでタイムロスがあったように思いましたが
本当にあそこは悔しいですね。一応気をつけていたつもりなのですが、何回やっても確認ができずに焦ってどんどん悪いほうにいってしまったので、それがとても悔しいです。
――本日の走りは「悔しい」ということですかね
そうですね。結果としてはあまりよくなかったと思います。
--最後に、この一年の目標を
この後に続く全関東戦も全日本戦も、最高学年の4年生なので、全部優勝できるように頑張っていきたいと思います。
竹内涼(創理2=東京・早大学院)
--きょうのご自身の成績については
途中にアクシデントがありすぎて、なんというか、練習の成果が全然出せなかったということがあったので、そこはもう少し練習の仕方から変えていくべきなのかなというふうに思いました。
--どのような形で変えていくのでしょうか
今まではミラーとかでも四輪が見えて、それでうまくいっていたという感じだったのですが、それを、もう少し普段の練習からミラーをたたむとか、今回のような車が来ても対応できるような練習を様々なパターン考えて組みこんでいくという感じですね。言ってしまえば、今回のように対応できなかったのは完全に自分たちの練習方法のミスなので、そういうところを反省して、次の大会につなげていければいいかなと思います。
--この一年の意気込みを
まだこれからいろいろな競技で、自分が選手になるかサポート側になるのかはわからないのですが、今のところでは、とりあえず選手になれるように努力して結果を残していきたいというふうに考えています。
森田真(政経1=レイブンウッド)
――下級生ながらチームに貢献する走りを見せていましたが
自分ではもっと同乗の(減点の)点数が少ないと思ったのですが、意外と多かったです。練習の時から同乗が多いと言われていたので直せなかったのは申し訳ないです。
――今回のコースの印象は
今回のコースは通り方によっては難しくなるのかなと思いました。
――チームの結果については
何とも言えないです。
――ご自身の走りは満足のいくものになりましたか
「ペナルティをしないで走れ」と言われていたので、それをできたという面では満足です。
――新シーズンが始まりますが、目標は何ですか
目標は杉崎(裕一、社3=東京・早実)さんより速くなることです。チームの中で一番速いので。
――全日本学生大会(全日)にむけてつなげられるものはありましたか
時間が空くので、たくさん練習しておきたいです。やはり同乗とペナルティを減らすのと、全日はコースが難しくなると聞いているので、もっと小技など覚えられたらと思います。