女子団体が全日本総合杯獲得も、期待は超えられず

自動車

 ことし最後の全国大会、全日本学生大会(全日フィギュア)が行われた。スピード競技とは違い、一回のみの走行で記録が決まるフィギュア。全関東学生大会(全関フィギュア)では、男女団体共に優勝したこともあり、全国の舞台でも大きな期待が掛かった。その期待が選手たちを緊張とプレッシャーが襲った今大会、男子陣では原田和樹主将(社4=神奈川・鎌倉)のみが個人入賞し、団体6位入賞に貢献。一方の女子団体はここまで全日本ダートトライアル選手権、全日本ジムカーナ選手権で優勝し、全国大会3冠が期待されたものの、岩脇彩香(先理4=東京・創価)、橋本美咲(人3=山梨・甲府南)の両名とも個人入賞できず、団体も4位と記録を残せなかった。関東大会よりもレベルの高いコースに一同苦戦し、全国の舞台で有終の美を飾ることはできなかった。

 「流れは意識しましたが、緊張してしまいました」と青山広明(先理3=神奈川・聖光学院)。スピードよりも技術が優先されるフィギュアでミスを連発し、ワセダの第1走者として良い流れをつくりたかったが、その役目は果たせなかった。白井智也副将(基理4=東京・早稲田)もまた、本来の力を出し切れず、最後の全国大会を勝利で締めくくることはできなかった。その中で、男子団体を6位入賞に導いたのは主将の原田。「ハンドルをよく回して、アクセルも踏んで、車を効率良く動かすということを考えました」と個人としても小型貨物の部Aで3位の成績で入賞し、一矢報いる。ことし、大会の出場機会は少なかったものの、安定した走りを見せ、チームを1年間引っ張ってきた主将の力を示した。

個人2位に輝いた原田主将

 女子団体は波乱の幕開けだった。「走る前はいつもの感じでした」と語った岩脇だったが、車両コンディションに苦しめられ、個人4位で入賞すらできず。ことし個人優勝4回で、女子チームを引っ張ってきたエースがミス。一方の橋本は今回から貨物部門から乗用部門に転向し、慣れていない中での戦いとなった。露見したのは経験不足。団体優勝に望みを残す走りを見せたかったが、ペナルティーとタイムをむやみに加算する走りをしてしまった。「今回で結果を残せればまた違った」とことし一年間頼り続けた岩脇に、貢献することができなかった悔しさをにじませた。女子団体として全日ダート、全日ジムカーナの優勝もあり、全日本総合杯を獲得するもやはり、全日フィギュアでも勝ちたかったところ。ことし一番強かった証を受け取るも二人の女子選手の笑顔は見られなかった。

有終の美を飾ることはできなかった岩脇

 来季に不安を残すこととなった今大会。全日本総合杯を獲得した女子団体も岩脇が卒部すると橋本一人となり、団体としての出場ができなくなり、強さの継承が難しくなる。新体制で迎える最初の大会は、男女団体共に優勝した全関東学生大会。一段と進化を遂げた春に、エンジン音を響かせられるか。

(記事 豊田光司、写真 伊藤広真)

結果

※早大のみ

▽男子団体の部

6位 早大

▽男子個人の部

・小型貨物A

3位 原田和樹(社4=神奈川・鎌倉)

・小型貨物B

6位 青山広明(先理3=神奈川・聖光学院)

・小型乗用A

5位 白井智也(基理4=東京・早稲田) 

・小型乗用B

7位 杉崎裕一(社3=東京・早実)

▽女子団体の部

3位 早大

▽女子個人の部

・小型貨物

4位 岩脇彩香(先理4=東京・創価)

・小型乗用

8位 橋本美咲(人3=山梨・甲府南)

コメント

岡島昭英監督(昭61理工卒=東京・早大学院)

――厳しい結果となりましたがいまのお気持ちは

悔しいとしか言いようがないですね。男女ともに成績がいまひとつでしたので非常に残念です。女子についてはダートとジムカーナの大会で優勝し、きょうが3位ということで全日本総合杯が取れて、そこは良かったと思います。ただきょうの試合だけを取り出すとすこし悔しい結果ですね。

――優勝した全関東学生大会(全関フィギュア)ときょうの違いは

全関フィギュアと比較しますと、今回でいうと練習の質がすこし不足していたのだろうというところですかね。全関フィギュアの時はかなり集中して練習できていたので、そこの差が出たのかなという感じです。

――きょうが最後の大会となった4年生にはどのような声を掛けたいですか

4年間よく頑張ったと思います。試合の勝ち負けというのはいろいろな要因が絡みますが、少なくとも全力で努力してきたことは間違いないので、そこは今後必ず役に立つと思います。そういった意味では、試合に出た学生、出なかった学生も共に部活動としてしっかりやってくれたのでうれしいですね。

――ことしのチームを総括して、良かった点と足りなかった点を挙げるとどのようなところだと思いますか

良かったところを挙げると、4年生を中心とした団結というのは良かったと思います。一方で足りなかったところは…。どこでしょうかね、やっぱり結果ですかね。結局それは、いろいろな意味での練習の質と量が足りなかったということだと思います。その辺りをまた代が変わるので、どんな風な練習をするかなどをみんなで話し合って次につなげたいなと思います。

――来季へ向けて、どのようなチームをつくっていきたいですか

やっぱり練習に貪欲になるように私も仕向けたいし、そういうチームにしていきたいですね。スポーツは練習が全てを決めますから、練習に意欲的に取り組む、そんなチームを目指したいと思います。

原田和樹主将(社4=神奈川・鎌倉)

――今大会を振り返って

選手全員の成績、それから私自身の成績も含めて、準備不足は否めないかなと。その中でも深刻だったのが、自分の走るコースに対するイメージが不足していたことだと思います。単に車に乗るということだけでなく、もっともっと考えて慎重に対策すべきだったかなという感じがあります。フィギュアというのはあくまで考える競技なので、その考える部分というのが弱かったなというのが今回終わってみて思うところですかね。

――自身の走りについては

走る前に意識したのが、どうしても大会本番は練習の時より操作のスピードが落ちますので、なるべく落とさないということですね。ハンドルをよく回して、アクセルも踏んで、車を効率良く動かすということを考えました。ただそれはある一定の水準まではできたのですが、本番の気が焦っている中でペナルティーに対する意識が薄くなってしまいました。私も実際1つペナルティーをしてしまって、それが今回の成績にかなり大きく影響しているので、もうすこし実戦的な練習が必要だったのかなと。本番で緊張していていろいろなものに対して気が回らないという想定の中で練習を重ねるべきだったというのを、いま振り返って思います。

――練習はどのようなことをしてきたのでしょうか

本番を想定しての練習としては、例えば部員を集めて観客に見たてて、緊張感を持たせた中でコースを走るとかですね。そうことをやったはやったのですが、練習の域を出ていなかったのかなというのが正直なところです。その他でいいますと、敷地の関係で全部は再現できなかったのですが部分ごとにコースをつくりだして、そこを通るというのをやっていました。あと、本番の車を使っての練習もしていました。

――優勝した全関フィギュアの時との違いは

ひとえに練習量だと思います。全関フィギュアはコースの発表が遅く、大会直前にコースをつくって練習になるので、ほとんどの学校がコースに対する習熟度が変わらないんですよ。そのため数週間前から基本的なことを準備していた分実力が発揮できました。ただ今大会は2週間前に発表されてそれからどれだけできるかなので、それで練習量、コースに対する習熟度が足りなかったのかなと思います。

――最後の大会でしたが特別な思いはありましたか

そうですね。私は3つ競技がある(フィギュア、ジムカーナ、ダート)中で、フィギュアにしか出ないのでいくらか結果を残したいという気持ちはあったのですが…。まあ、このような結果になってしまったということで、あまり多くを語ることは良くないかなと思います。

――主将として引っ張ってきた1年間も終わりを迎えました

主将としてやってきたところはありますが、全体的な所感になりますけれど、主将一人でやってこられたわけでは当然ないなというのが正直なところです。周りの支えがあってようやくチームが回っているなと。私は自分のことを主将に向いていると思ったことはあまりないのですが、車を作れて、車を走らせることができて、そしてこうして無事一年間を振り返るところまで進めることができて。主将としてどうかということよりも一人の部員として感謝したいと思います。それに尽きると思います。

――これからは自動車とどのように向き合いたいですか

競技としてやることは考えていないのですが、趣味として楽しんでいきたいと思います。

――来季のチームに期待したいことは

来季私はおりませんがいくつか遺言として伝えていることがありますので、そういったところを守ってくれればなと。うちはフィギュアは強いので今後とも力を入れて欲しいのと、一方でスピード競技は弱いので、しっかり準備してお金をかけて、次年度に向けてやっていってほしいなと思います。

白井智也(基理4=東京・早稲田)

――今大会を振り返って

やっぱり練習不足なんですかね。もちろん練習はしたつもりですし、タイムだけ見れば、満足はいかないですが他大と比べても遅くはない。それでもなんだかんだ負けてしまうのは、結局練習不足なんだと思います。

――走り終わった後は悔しそうな表情を見せていましたが、自身の走りについては

やっぱり試合って違うんだなと思いました。全関東のときもそれは感じましたが、全日本になるとまた違ったものがありましたね。

――その違いというのは

んー、言葉で表現するのは難しいですね。全関東では気持ちが入っていなかったということではないのですが、今回は全関東に勝ったことで期待値が高かったというか、それをプレッシャーに感じているところもあって。

――チーム全体については

練習不足が招いた結果かなと。それが男子団体6位ということなんだと思います。言い訳にしかならないですが、全関フィギュアの時はもっともっと練習会などを開いて備えていたのに対して、軽耐久(関東学生対抗軽自動車6時間耐久レース)やら五大学フィギュアやらいろいろあって。結局準備不足が出てしまったなと思います。

――最後の大会が終わりましたがいまの率直なお気持ちは

まあ悔しいですね。練習しておきたかったなと。一度新潟県の方に自主的に練習に行こうと思っていたのですが体調を崩してしまって行けなくて。そういう自己管理も含めて一歩足りなかったかなと、もういまさらなんですが思いますね。

――3年時から主力として活躍してきた唯一の存在として、後輩に伝えられたことはあると思いますか

まあ独りよがりな言い方ですが、一人じゃ何もできない、団体競技として自動車部みんなでやっていかなきゃいけないということは伝えられたかなと思います。また技術的なことも伝えられたかないうのはあるのですが、まだ伝えきれてない部分もあります。これから引き継ぎもありますし、僕はこれから大学院にいくため2年間学生が続くので、伝えきれなかったところはOBとしてちょくちょく来て、伝えて伝えて最後出しきって後輩のためになればなと思います。

――来季のチームに期待したいことは

悔しいのは僕だけじゃないと思うので、この悔しさをちゃんと練習に向けてもらって、組織として強い自動車部をつくってほしいと思います。

岩脇彩香(先理4=東京・創価)

――きょうの走りを振り返って

クラッチが思ったよりもなくて、それに対応し切れませんでした。みんな同じ車両で走っているのに、対応し切れなかった技術不足だと思います。練習してやれることはやってきたので、これが自分の実力だと受け止めています。

――自動車部生活4年間で、ずっと良い結果を残してきた中で最後入賞すらできなかったことをどう捉えていますか

ほっとしたと言ったらおかしいかもしれないですけど、これで大会が終わったのかという感じです。すごく悔しいですけど、終わった安心感はあります。

――緊張や焦りというものはありましたか

走る前はいつもの感じでしたが、走り始めて、思っていたのとは全然違う車両で、かなり焦りました。

――いままでの優勝の経験がプレッシャーとして出て来た

いつもと同じぐらい緊張していたし、いつもと同じようなメンタルでした。精神面は変わりませんでしたが、そもそも新たな環境に慣れるというのが苦手だったのかなと思います。どんなに練習しても、きょうの車両、きょうのコンディションでは変わらないと思うので、やれることはやった結果だったと思います。

――全関フィギュアとの大きな違いはありましたか

コースというよりは、車両が違いすぎて動揺して、落ち着きを取り戻せなかったです。それ以外に理由が考えられないです。

――最後の全国大会で悔しい結果になった反面、全日本総合杯を獲得できましたが

2年生の時にダートトライアルで優勝しているのに、個人の全日本総合杯を取れなかったのが自分でも意外です。団体を取れたので、それだけで嬉しいです。

――最後の全国大会を終えて

これで終わったなという感じです。ほっとしました。

青山広明(先理3=神奈川・聖光学院)

――きょうの走りを振り返って

ひどいと思います。結果も納得できるものではありません。どうしてもペナルティが多くなってしまいました。一番初めにミスをしてしまい、焦ってペナルティが多くなったことと手数が多くタイムが遅くなった二点が敗因です

――チームとして最初の出走でしたが

流れは意識しましたが、緊張してしまいました。

――緊張は関東大会の個人優勝から来るものですか

そうですね。どうしても勝ちたいというのと初めての全日本大会のフィギュアでコースもより難しくなっていてきつかったです。

――コースでポイントとなった部分は

細かいところは難しかったです。関東大会と比べて、細かい部分をしっかりやらないといけなかったのが上手くいかなかったと思います。

――団体として優勝を狙える大会だったと思います

そうですね。勝てなくはない試合だったと思います。もうちょっといけたらと思います。

――来季への意気込みを

まず全関東のフィギュアを勝って、他の大会にもつなげていきたいと思います。

杉崎裕一(社3=東京・早実)

――きょうの走りはいかがでしたか

良いことと悪いことが1つずつあって、良いことはペナルティをせずに帰って来れたことです。悪かったことは練習通りの走りができずに手数が多くなってしまったことです。

――あまり攻めの走りができなかった

そうですね。安全策を取って、修正が多くなって、タイムがかさんでしまいました。

――関東大会、今大会と個人で悔しい結果に終わっていますが

全関東で悪かったことはペナルティを多くしてしまったことでしたが、タイムとしてはあまり成長が見られないので、練習しないといけないです。

――来季副将としての意気込みを

最後の年なので、全力を尽くして有終の美を飾りたいです。また、ことし入ってきた後輩も、らいねん入ってくる後輩も自分たちよりも上の方に育てて層を厚くしていきたいです。

橋本美咲(人3=山梨・甲府南)

――きょうの走りを振り返って

ただただふがいないです。いままで貨物のほうで、初めて乗用でしたが、3年目だったのでしっかり結果を残したかったです。こういう結果になってしまって、悔しいです。

――乗用に対しての調整はどのように行われましたか

いままでやったことがなかったので、動きも視界も違って乗って慣れようと思い、頑張ったのですが。

――岩脇彩香(先理4=東京・創価)選手の走行が先に行われましたが影響はありましたか

岩脇さんの走っている姿を直接見ては居なかったのですが、白井(智也、基理4=東京・早稲田)さんに結果を伝えられました。それがあってという訳ではなく、もともと緊張していたので、岩脇さんの分も頑張らないといけないという思いもありましたが、(岩脇さんの結果が)結果に直結したとは思いません。

――焦りは走行中にありましたか

そうですね。同乗していた審判の方にも焦りからできてない内部があると言われました。練習不足も大きかったと思います。

――コース上で課題となった部分はありますか

ボックスとかはどの大会でもあり、大きく崩れることはないのですが、それ以外のつなぎ目の部分とかに力を入れていきたいと感じました。

――ことし全国大会で団体2冠して今回3冠を逃す結果となりましたが

私は後一年ありますが、岩脇さんとの大会は最後でこういう結果になってしまい、らいねん勝っても団体戦の結果にならないので、今回勝てなかったのは本当に悔しいです。

――全日本総合杯獲得について

全大会を通して自分があまり貢献できなかったのではないかなという気持ちが強いです。今大会で結果を残せれば、また違ったのでしょうけど、それも悔しいです。

――来季に向けて

自分が最高学年になるので、全部の大会で優勝できるように頑張りたいです。