不安定な空の下、全関東学生ダートトライアル選手権が行われた。各選手午前と午後に1本ずつ走り、良い方のタイムで競うスピード競技。舗装されたコースを走るジムカーナとは違い、舗装されていないコースを走るため、車体の調子が鍵を握る。特に試合当日は午前の雨から一転、午後には天候が回復したため、路面コンディションが大きく変化。タイヤを替えるなどの対応がなされ、車体状況も変わり、選手の走行にも変化が見られた。横転する他大学が出る中で、男子は団体9位、個人入賞者なしという悔しい結果で幕を閉じる。一方で、女子団体は優勝。岩脇彩香(先理4=東京・創価)が個人優勝の活躍を見せる。
意識下の恐怖が表れた。白井智也副将(基理4=東京・早稲田)の苦い思い出。昨年同じく丸和で行われた、全日本のダートトライアルで横転をして、走行不能になってしまったのだ。今大会に向けて重ねてきた練習会の最中にもトラブルが相次ぎ、細かい部分まで整備ができずに試合本番を迎えた。「雨以前に整備の甘さがありました」と悔しさを滲ませる。優勝を目標に掲げていた早大だけに万全の状態で臨めず、昨年よりも成績が下回る悔しい結果となった。今回もダートコースに苦しめられたかに思われるが、望みもある。車体を壊すことなく全員が本数分走り切ることができたのは大きな収穫。幾度となくダートコースに苦しんだ早大だが、成績よりも完走した経験が全国大会の後押しになる。
岩脇の優勝をもぎ取る走り
1分51秒12。男子顔負けのタイムでコース上を駆け抜けた岩脇。今大会の優勝で、地方戦個人3連覇を達成した。また、一昨年から続く全関東ダートトライアル3連覇も達成。だが、それ以上に喜びの瞳は橋本美咲(人3=山梨・甲府南)の姿に注がれていた。「橋本の急成長のおかげで勝てた」と熱く語る。団体で勝つことを目標に掲げていた女子エースは後輩の成長を喜んだ。元々アクセルをうまく踏み込めなかった橋本。1本目の走りではタイムを思うように伸ばせない。だが、2本目の好走が女子団体優勝を招き寄せた。1本目から約11秒タイムを短縮。練習以上の走りで、岩脇を表彰台の真ん中に立たせた。「まだまだ技術も経験も未熟で反省点がたくさんあります。課題を克服できるよう、岩脇さんの足を引っ張らないように頑張りたいです」。橋本はすでに全国の高みを見据えていた。次代のエースを担うために岩脇の背中を追い求める。
女子団体優勝に貢献した橋本の快走
次大会から全国大会が続く。くしくも全国での初戦はダートトライアル。男子陣は車両整備、技術向上の両面で準備万端の戦いが望まれる。完走のための守りに入った走りを、どう思い切りのある走りに変えられるかにかかっている。また、女子陣は急成長を遂げた橋本と昨年不完全燃焼で終わった絶対的エースの岩脇の快走に期待。全国大会で勝ち進んでいく、流れに乗るためにも負けられない一戦となる。
(記事、写真 豊田光司)
結果
※早大のみ
▽男子団体の部
9位 早大 5分31秒824
▽男子個人の部
16位 山本翔平(国教4=千葉・東邦大付) 1分47秒95
19位 白井智也 1分49秒25
29位 杉崎裕一(社3=東京・早実) 1分54秒62
▽女子団体の部
優勝 早大 3分51秒19
▽女子個人の部
優勝 岩脇彩香 1分51秒12
7位 橋本美咲 2分0秒063
コメント
橋本美咲(人3=山梨・甲府南)
――きょうのレースを振り返って
1本目で前回の全関ジムカーナと同じミスをしてしまって、そのせいでタイムが遅かったのがすごく悔しかったです。2本目はそのミスだけはしないできちんと走り切ろうと考えていました。
――同じミスというのは具体的にどんなものだったのでしょうか
シフトを入れ間違えてしまって、アクセルを踏んでも車速が伸びないという感じでした。
――きょうのコースは雨の影響もあったかと思いますがその点についてはどうでしたか
私はそもそも車速が乗らなかったので、別にそれどころではなかったです(笑)。
――今回の大会に臨むに当たって何か目標はあったのでしょうか
いままでダートの経験があまり無くて、ことしの練習から始めましたが、きょうも横転していた車が多くいましたが、怖くて全然ちゃんと走れませんでした。それが、きのうの前日練習で何となくかたちになってきたというか走れるようになってきたので、その感覚を再現できればいいなと思っていました。
――再現度はいまひとつといったところでしょうか
そうですね.もう少し頑張れたと思うのですけど、いままでの練習会の走りに比べれば、いまの力では良くできた方なのかなと思います。
――このコースについてはどう感じましたか
全体的にこのサーキットはいつも決まったコースだったのですが、それがことごとく知らないものばかり出てきたので、下見の時点からよく分からなかったです(笑)。やはり1つ目の一回転のところが侵入もきつくて、午前だとスピンする車も多かったです。出る時もスピードが乗らなかったりするので、そこが難しかったかなと思います。
――この後も大きな大会が続きますが、最後に意気込みをお願いします
ジムカーナもダートも、やはりまだまだ技術も経験も未熟で反省点がたくさんあります。全日ではその課題を克服できるようにいまから頑張って、岩脇さんの足を引っ張らないように頑張りたいと思います。
山本翔平(国教4=千葉・東邦大付)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
残念です。
――不本意だった点は
自分のチャレンジ精神に限界を感じたところと、もっともっと僕にはできたのではないかという点に関しては悔しいと思っています。
――コースコンディションが悪かったという影響もあったのでは
あえて触れると、自分の時だけドライだったんです。
――車のチューンで変更した点は
エンジンが変わりました。ワンクラス上のエンジンのはずです。良かったのではないかと思います。
――コースの要所はどこだったのでしょうか
雨だったので滑りやすかったことと、あまり走らないらしい逆走コースを生かしたコース設定になっていたので、運転し慣れないコースを走るのは難しい点だったかと思います。
――ダート種目についてはいかがでしたか
今回が初めてのダートでした。留学に行っていたので、その分能力が落ちたなと思います。ブランクは大きかったです。
――反省点をひとつ挙げるならばどこでしょうか
練習量の不足です。もっと本番に近いかたちで練習できれば良かったかなと思います。
――今後も大きな大会が控えていますが、狙うのはどこでしょうか
もちろん優勝です。いろんな方にお世話になったのでその恩返しに、そして自分の満足のためにも優勝したいです。頑張ります、踏みます。
杉崎裕一(社3=東京・早実)
――きょうの走りを振り返って
ダメでした。1本目でミスをしてしまい、2本目で取り返そうとしたのですが、うまくいきませんでした。細かいところでミスが多く、ミスする感覚が消えませんでした。
――横転の恐怖はありましたか
横転への恐怖はなかったのですが、攻めきれませんでした。車を壊さないように走ってしまったので、やはりタイムが伸びなかったと思います。
――どういう意識で走りましたか
三年生として上級生を超えたいという意識はありましたが、まず無難なタイムで帰ってくるというのが目標でした。
――コースのコンディションが午前と午後で雨から晴れになり、変化しましたがどちらが走り易かったですか
やはり晴れている方ですね。いつもと違うコースで、余計不馴れで滑りやすく視界も曇ってしまったり、泥しぶきなど雨は走りにくかったです。
――次大会の全日ダートへの意気込みを
全関の借りを返せるように、また先輩たちを不安にさせない走りをしたいと思います。
白井智也(基理4=東京・早稲田)
――きょうの走りを振り返って
ひどかったです。練習不足と車両をしっかり作りきれなかったことが結果に出ました。
――雨の影響はありましたか
雨の影響以前に、ジムカーナ以降の練習会で車両トラブルやエンジントラブルがあり、整備の甘さが出たのかなと思います。
――心がけた走りはありますか
昨年の苦い経験があり、まとめよう、まとめようとしてまとめすぎたのかなと思います。
――やはり横転への恐怖ですか
意識の中にはあるのだと思います。その恐怖と結果を残さないといけないという試合ならではの気持ちがあり、その葛藤のような難しさにまだ慣れていないのだと思います。
――2本目の記録のほうが良かったのは路面のコンディションが良くなったからですか
それもありますし、タイヤを雨用から替えました。あと、OBの方から攻めかたのアドバイスを頂いたのでそれも大きかったです。
――全国大会への意気込みを
まずしっかり車を作ること。ちゃんと走って他大学に速さで勝てないまでも、負けない速さを求めてしっかり作って、しっかり練習することを心がけてやっていけば自ずと結果はついてくると思います。
岩脇彩香(先理4=東京・創価)
――きょうの走りを振り返って
本番なので、練習で出たベストよりはタイムが落ちるのは仕方ないとは思うのですが、4年最後の丸和での大会を楽しく過ごせたので良かったと思います。
――どういう走りを心がけましたか
勢いで走らず、自分のイメージ通りに走るようにしました。思い描いた通りにミスなく走ろうと思いました。
――アクセルを踏むことに対しての恐怖はありましたか
ジムカーナとは違ってあまり感じませんでした。
――横転の恐怖も少なかったのですか
さすがにもうないかなというのはありました。さすがに(笑)。
――雨は走りにくかったですか
まぁどの選手も同じ状況なのであまり意識しなかったです。ただ晴れの方がスピードを出せるので楽しいです。
――路面コンディションの変化はどうでしたか
タイヤを替えて、1本目のよりもスピードが出せるものだとわかっていたので、思い切りいきました。
――女子団体優勝という結果はどう捉えてますか
今回は橋本の急成長のおかげで勝てたのかなと思います。ダートの女子ではワセダが強いと思っていますが、全関ジムカーナでは勝てなくて、全国大会ではフィギュアも含めて3冠を取りたいと思います。そのためにしっかり下の代と一緒に自分も成長していきます。
――次の全日ダートに向けて
全日だとしても女子のレベルは大して変わらないと思うので、自分と橋本で二人合わせて優勝出来るように練習していきます。
原田和樹主将(社4=神奈川・鎌倉)
――主将として男子の記録をどう捉えますか
時間と予算が限られる中で、車両トラブルもあり、厳しかったのですが、何とか大会を完走して結果云々よりもまずほっとする部分があります。ただ今回の結果を良しとする訳ではなく、全日本大会では今ある資源を有効活用して練習を重ねていくに尽きると思います。
――男子陣にスピード競技に対する苦手意識みたいなものはありますか
あまり意識することはありません。しかし、いままでの戦績を見てもここ数年はフィギュアに力を入れている面があり、成果としてはうまく出ていると思います。まんべんなく勝つという面ではこれも課題の1つとして捉えています。
――女子団体優勝について
岩脇は2年生の時から出ているという経験を活かしながら戦ってくれました。なので、岩脇の結果は順当として見えます。それ以上に嬉しかったのは三年生の橋本が予想以上の活躍を見せてくれて、嬉しく思っています。ですが、依然として部内では岩脇と橋本の実力差が歴然としてあります。全国大会になり、他校がレベルを上げてくると思われるので、まだまだ課題はあるかなと思います。いままでのフィードバックを怠らずにやっていきます。
――全日本へ向けて
全日本総合杯獲得という目標があります。そのために効率的に練習を重ねていき、時間の有効活用を意識して優勝につなげていきたいと思います。
岡島昭英監督(昭61理工卒=東京・早大学院)
――選手たちの走りを振り返って
まず女子が団体で勝てましたが、その中でも3年生の橋本が直前の練習会から一気に伸びた部分があります。いままでしっかりとアクセルを踏めていなかったが、きょうの2本目はしっかりアクセルを踏み、一気にタイムを上げられたのが女子団体の好成績につなげられた1つのポイントですね。あと、男子のほうに関して言えば車両が不調だったことがありました。練習の途中からトラブルがあり。最後ばたばたして作ったところもあったので、同じエンジンでも他校の車と比べて直線のスピードが延びなかったりということがありました。そういった点では車両整備の面での不足があったなと思います。乗る技術に関して言うとアクセルの使い方など練習量不足が出たのかなと思います。
――女子団体で勝つ上で橋本選手の存在が大きいことを感じましたが
橋本の好走は嬉しいですね。岩脇は元々2年の頃から大会を経験してすでに女王のような状態でしたが、橋本は今回一気に伸びて次を担える状況になって良かったです。女子の選手は1、2年生がいないので、そこの獲得を頑張りたいですね。ちょっとでも興味があれば、入ってもらって、橋本に続く子を育成するのが女子の一番の課題と思います。
――路面、天候のコンディションをどう捉えましたか
良い方に変わりましたね。他の大学にも共通して言えることではありますが、雨の場合はワイパーを使って前が見えにくかったりして、悪いほうに転びます。午後になって路面が乾いて良くなり、試合として良い形だったかなと思います。なので、各校の最終走者はかなりヒートアップした走りだったのではないでしょうか。熱の入った走りを見せる中で若干ワセダは迫力不足でした。車両と技術と両方が足りなかったのだろうなと思います。8月にまたダートの大会があるので、それまでに練習を積もうと思っています。
――地方戦が終わり、これから全国大会ですが意気込みを
僕らは全日本を勝つためにやっています。いままでにも何度も勝っている競技ではあるので、ダート、ジムカーナ、フィギュアと3つ勝つために全力で挑んで