接戦の末、1点に泣く 好敵手相手に今度は惜敗

水球女子

第100回日本選手権最終予選会 9月21日 静岡県立水泳場

TEAM 1P 2P 3P 4P
稲泳会
東女体大
得点者 杉本4、鈴木3、井上2

 先月の日本学生選手権(インカレ)で、8年ぶりとなる悲願の準優勝を飾った早大水球部女子。今季の学生大会は終了し、21日から、日本選手権出場をかけた最終予選が始まった。トーナメント形式を取り、社会人や高校など普段は対戦機会のないチームとも交わる今大会。早大は卒業生を含む『稲泳会』として出場した。初戦の相手は、東女体大。長年苦しんできた相手でありながら、今夏のリーグ戦で10年ぶりの勝利を挙げると、インカレ準決勝でも接戦を制し、手応えは上々だ。試合は今季これまでの対戦同様、シーソーゲームの様相を呈した。第1ピリオド(P)こそリードを許したものの、徐々に点差を詰めていき、第3Pで同点にならんだ。運命の最終Pでは、1点を争う攻防が繰り広げられ、最後まで粘り続けたが、残り50秒で勝ち越しの一打を許す。そのまま逃げきられ、惜敗を喫した。

 今大会の試合時間は、7分×4Pで行われた。試合が開始されると、センターボールを取ったのは東女体大。だが阿部紗也香(スポ4=千葉・芝浦工大柏)がすぐさまインターセプトでボールを奪取してシュートに至る、積極的な立ち上がりを見せた。勢いをつけた中で2分、奥田麗主将(スポ4=東京・藤村)がコート中央付近から、右サイド深くを陣取っていた鈴木杏梨(スポ2=東京・白鵬)にパス。鈴木は時間を使ってGKを引きつけると、ゴール正面の井上舞(スポ3=京都・鴨沂)へとアシストし、先制した。前半に入ったGK甘庶乃亜(スポ1=神奈川・桐光学園)は、この日も勝負勘が冴えわたる。先制直後の相手攻撃でミドルシュートを止めると、P終了間際には相手のカウンターに対し、ゴールラインを勇敢に飛び出して自らボールを巻き取り、ピンチを切り抜けた。しかしオフェンスでは、相手の退水(※)や相手ファウルからのターンオーバーといったチャンスを得点に結び付けられず、計1得点。1-3とリードを許して、続く第2Pに向かった。

パスを送る井上

 点差を縮めたい稲泳会は、1分にペナルティースロー(PS)のチャンスを与えてしまうもGK甘庶が見事にセーブ。これでペースをつかみたいところだったが、相手DFに1対1でピッタリと張りつかれ、シュートに至らない時間が続く。さらに2分半の失点によって、Pをまたいで4連続得点を献上。その不穏な空気を打破したのは、鈴木だった。まずは3分、パスを回すモーションの中で、遠めの位置から大きなループシュートを放つ。これが相手GKの伸ばした手にわずかに当たるも、ゴールへと吸い込まれた。さらにその直後の相手攻撃で、渋谷紗代(令5スポ卒=宮崎県スポーツ協会、稲泳会)が相手ボールをインターセプト。鋭い縦向きのパスを阿部に通しシュート体勢に入ると、相手に退水が取られPSの権利を得る。これを杉本が確実に決め、1分間で3連続得点の猛攻を見せた。その後は5分半に失点したものの、両者が拮抗(きっこう)し無得点。4-5と1点を詰めて前半を折り返した。

PSを待ち構えるGK甘庶

 第3Pでも、2P終盤の流れが続き両者無得点の時間が続く。稲泳会はセットプレーやカウンターで何度か得点機を作るが、ゴール前でボールを潰されてしまう。そんな中、甘庶に代わって投入されたGK木口が、積極的な声出しでチームを鼓舞し続けた。今季、要所で逆転勝ちを収めてきた稲泳会にとって、『あの均衡状態は、こちらのやりやすい展開(奥田)』。一段ギアが上がると4分半、渋谷を起点に速攻がかけられる。スピーディーにボールを連携し、最後は井上が近距離からゴール。ついに同点に並んだ。守りでも、直後の攻撃でのシュートをGK木口が抑えるなど、慎重に入っていたものの、5分半に巧妙なループシュートを決められてしまう。しかし残り1分、パスを通しづらい中でも渋谷がスピーディーにゴール前へのアシストを繰り出し、杉本が相手DF2人に付かれながらも腕だけを伸ばしてゴール。P終了直前にはGK木口の好セーブもあって意地の同点を保ち、最終Pでの逆転を狙った。

相手DFを前にボールを死守する鈴木

 1点を争う第4P。両者の気合がぶつかり、互いにチャンスを作らせない。稲泳会は、ピンチで井上のDFが効き、シュートを外れて打たせる場面も見られた。先に試合を動かしたのは稲泳会。2分半に杉本が相手攻撃のボールを奪うと、そのまま一気にカウンターを仕掛ける。右サイドでロングドリブルを走らせると、ゴール前で一旦ストップ。相手がパスを想定した隙にさらに前進して、巧みに決め入れた。しかしその後3分にミドルシュートを許し再び同点に並ばれると、4分には痛恨のPSを献上し、逆転されてしまう。稲泳会も必死に得点機を探す中で、5分半に相手ファウルを誘い杉本がPSを決めてまたも追いついた。しかし、残り50秒で相手に渾身のループシュートを決められてしまう。残りワンプレーが予想される中で稲泳会はタイムアウトを取り、陣形を整えた。だが、この攻撃でのミドルシュートは外れてしまい、この時点で試合残り時間は30秒。奇しくも一度の攻撃時間ちょうどとなり、東女体大がボールを持ち続けて試合が終了。この日の接戦は、宿敵に軍配が上がった。

PSを決める杉本

 この敗北により、稲泳会は敗者復活戦に回ることとなった。今日22日の白鷗女高との一戦に勝てば、10月の本戦出場が確定する。悔しい敗戦をバネに、力を発揮してほしい。

(記事 中村凜々子 写真 指出華歩、中村凜々子)

※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。

コメント

奥田麗主将(スポ4=東京・藤村)
――インカレに引き続き東女体大と当たりましたが、対戦にあたってはチームでどんな話を共有されていましたか
 相手のチーム編成が変わっていなかったのに対し、私たちはOGや助っ人の選手などを入れての試合になったので、いつも通りのプレースタイルは崩さないで挑みつつ、全員の意思疎通ができたらいいなという話をしていました。特別なことはなかったです。

――今日の試合展開全体の振り返りをお願いします  
 第3P目までは、点差が大きく開いているわけではなく、あの均衡状態というのは、こちらとしてはやりやすい展開ではあったのかなと思います。第4ピリオド目でやられてしまったのですが、全体を通してプレーの内容がそこまで酷かったわけではないので改善点はありますが、反省しつつ、次に繋げていける試合だったかなと思います。

――相手のディフェンスが厳しく、パスが通しづらい場面もあったと思うのですが、その中でオフェンスではどんなことを意識されていましたか
 同点やビハインドの状態で攻めないという選択肢はないようにしようということと、退水セットの数的有利の状態での形を考えていたので、それをしようと考えていました。

――明日の試合への意気込みをお願いします
 明日勝たないと(日本選手権)本戦には出場できないので、今日出てきた多くの改善点や課題を直して、明日また自分たちのプレーで勝てたらいいなと思います。

杉本華音(スポ3=千葉・秀明八千代)
ーーまさに一進一退で進められた試合でしたが、どのようなことを意識してプレーされていましたか 
 インカレでもそうでしたが、守りに入りすぎず全員で最後まで攻めることを意識して、点を取りに行くことに集中しました。

ーー個人4得点でした。ご自身のプレーを振り返って頂くといかがですか
 前半はあまりシュートが入らない時間が続いたので、そこも決めきれていたら展開が変わっていたのかなと思います。

ーー今日の試合の流れのポイントはどこだったと考えられますか 
 (阿部)紗也香さんや(鈴木)杏梨がペナルティを取ってくれた場面ですかね。それを打つ前までは今日は全然ダメだなと思っていたのですが、シュートが入ってからは自信がつきました。

ーー明日の試合の意気込みをお願いします 
 (相手がViolet Starsの場合、)明日のチームはエースの方が不在なので、勝ち目はまだあるのかなと思います。勝利に向けて頑張ります。