【連載】野球部 秋季リーグ戦開幕直前特集 『Beyond』 第6回 印出太一主将×伊藤樹

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 最終回はエース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)と印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)のバッテリー対談だ。優勝の原動力となった昨季無敗のバッテリーに夏の振り返り、そして今季の目標を伺った。

※この取材は9月6日にオンラインで行われたものです。

早稲田の絆(伊藤)

――他己紹介をお願いします

印出 皆さんご存じの通り、うちのエースです。ゲームがめっちゃ好きで、何のゲームをしても大体強い印象があります。ゲームも練習熱心という感じです。

伊藤 早稲田大学野球部キャプテンの印出太一さんです。最近僕がはまっていることがMBTIなんですけど、指揮官ということでMBTI通りの活躍ぶりでチームのまとめ役として活躍してくれているのかなと思います。

印出 ENTJね。

――ちなみに伊藤選手のMBTIは

伊藤 僕はESTPですね。起業家です。

――普段からお二人の絡みは多いのですか

印出 一緒にゲームやったりするのが多いですね。荒野行動とか、スマブラが主です。その2つです。

――今夏はさまざまな遠征で多くの時間を共にしていると思いますが、この期間で見つかった新たな一面はありましたか

印出 リーグ戦終わってから代表合宿、それから直前合宿を経て、チェコ、オランダ、韓国に行って、それから南魚沼のキャンプに行って、ほっともっと(ほっともっとフィールド神戸)で代表の壮行試合やって、オールスターをやって。もうリーグ戦が終わってから2カ月ぐらい、東京にいる時間の方が短いぐらい外にいて、その時間ずっと一緒にいたので、疲労具合は共有できているかなと(笑)。

伊藤 代表の時間が結構長かったんですけど、変わった一面を見ることは特になかったです。いつも見ている姿ではあるんですけど、代表に行ってもその中心の先輩方3人がいるっていうのはすごい心強かったので、特に変わった一面はないですけど、居て良かったなっていう風に思います。

――遠征の話も出ましたが、疲労具合はいかがですか

印出 移動がとにかく多くて、野球で疲れたって言うよりも移動疲れがすごくて、その影響で疲れたなっていう感覚はあります。

――東京六大学野球オールスターゲームではエスコンフィールドHOKKAIDOでプレーしましたが、振り返っていかがですか

伊藤 エスコンはやっぱ新しくなった球場ってこともあってすごく綺麗でしたし、アメリカに昨年行かせていただいて、ドジャーススタジアムとか見たんですけど、アメリカのスタジアムに近いような作りでした。演出とかもすごかったですし、久々に球場に入って圧倒される感じがあったなっていう思います。

印出 日本の中で一番新しい球場で、ドームが開閉式なので、1日目はドーム型の屋根をつけた状態で、2日目は日中の試合だったので、天井をオープンした試合でした。そういった球場でやること自体新鮮でしたし、ダグアウトや選手の使うロッカー、選手食堂などいろいろところを使わせてもらって、野球をやっている選手側からすると夢のような球場だったので、そこで試合できたことはすごく幸せでした。

――オールスターでは印出主将が3点本塁打を放ちましたが、伊藤選手にはどのようにあの一発が映っていましたか

伊藤 やっぱり早稲田の絆を感じましたね。リーグ戦でも取られてすぐ追いついてくれるっていうのはあんまり見なかったので。3回ぐらい繰り返してもいいんですけどこれは(笑)。でもリーグ戦に向けて頑張ろうという気持ちにさせてくれたなって思います。

――印出主将もダイヤモンドを一周してみていかがでしたか

印出 エスコンフィールドで2試合という限られた中で、さらにオールスターでいろいろ選手が入れ替わり立ち代わり出る中で、一発出たことはすごくうれしかったです。初回にうちの後輩が3点取られて、あのままもう負け試合みたいな雰囲気になるのは非常に他大学の選手に申し訳ないという風に思ったので、樹のためというよりかは他の5大学の皆様に申し訳なかったので、試合になるように戻せたので良かったと思います(笑)。

とにかくバットを振った夏(印出)

――今夏の振り返りを印出主将から伺います。夏の調子はいかがですか

印出 個人的な調子はすごく良くて、特に打撃では数字も出ていますし、打点の方もあげることができているので、その点は充実した夏になったかなっていう風には思います。

――大学日本代表でも主将を務めたことはいかがでしたか

印出 短期間で結成され、大会に臨んでいくような選抜チームでキャプテンをやった経験はないので、本当に自分の中でも貴重な経験をさせていただいたことに感謝しています。すごい選手ばかりが集まっているチームなので、特に自分が指摘したりとか、指示したりする必要もなく、みんなが自分の頭を使って動いてくれる集団でした。その中で4年生と3年生が半々ずつのチーム構成だったので、そこのジョイントというか、コミュニケーションをつないでいければいいかなっていうぐらいにしか思っていなかったです。

――監督は慶大の堀井哲也監督でしたが、普段の野球と違ったところはありましたか

印出 堀井監督も「自分で選んだ選手たちが集まっているチームだから自信を持って。とにかく能力があることはわかっているから、集中して一人一人が出し切ってくれれば、必ずいいかたちにはなる」という風にチームを結成した時からおっしゃっていました。選手たちの調子だったり、やりやすい環境を作ることに徹しているような感じでした。自分は六大学で堀井監督と話したこともありますし、知っている方ですけど、他の連盟の人は堀井監督のこと知らない人の方が多いと思うので、そういった中でやりやすい環境をスタッフの方々が積極的に作ってくださっている印象だったので、選手側はみんなやりやすかったのかなという風に思います。

伊藤 印出さんも言ったんですけど、すごいやりやすい雰囲気を作ってくださっていたっていうのが、短期間でチームを作り上げていく上で非常に良かったというか、やりやすかった点でした。すごいユーモアがある方だったので、やりやすい雰囲気で選手たちもやれていたと思うので、そこはすごく良かったなと思います。

――代表期間にコミュニケーションをとっていた他大学の選手はいますか

印出 僕は西川史礁(青学大4年)が一番一緒にいたかなとは思っていて。まあかまちょなので(笑)。可愛かったですね、史礁(笑)。

――全日本大学野球選手権が終わった際に「日本一に相応しいチームを作れ」と小宮山悟監督(平2教卒=芝浦工大柏)からおっしゃられましたが、この夏はどのような取り組みをしていますか

印出 (決勝は)1ー2というスコアで何度もチャンスを作りながらも試合をひっくり返すことができなくて、そのまま敗戦といかたちになったゲームでした。1点差ですけど、そこにはやっぱり大きな差があると思います。東都は入れ替え戦がありシビアな戦いがある中で、六大学はもう六大学でしか行われないリーグなので。そういった厳しさというか、一球に懸ける思いというか、そういったところの差が出たところも大きくあったと思うので、ワンプレーをとにかく大事にして、練習だったりキャンプだったりに取り組んできました。

――個人としてはどういった取り組みをされていますか

印出 最後のリーグ戦になるので、キャリアハイの数字を最後は残していきたいっていう気持ちが強いので、春の打率、打点、ホームランを超えていけるように、そして三冠王を数字で目指していけるようにしたいです。そのためにトレーニングだったり、とにかくバットを振った夏でしたね。

――ここからは伊藤投手に伺います。春を経てこの夏はどういったことをテーマに取り組んでいますか

伊藤 昨冬から球速のアップと体づくりはずっと継続して取り組んでいます。秋に向けてやるという部分では変わりなくやれていて、そのなかで春のリーグ戦で出た課題としては球数の多さが少し気になる部分でした。ですので球数を少なく、イニングを消化できるようなボールを修得することであったり配球だったりをこの夏に取り組んでました。

――具体的に試している部分はありますか

伊藤 ボールとしてはツーシームをずっと練習していて、まだ仕上がっている段階ではないですが、なんとか感覚はつかみ始めています。配球の面では印出さん以外の捕手と組むことを多くしています。できる限り自分の引き出しを多くするということで、何かあった時に迷わないようにというにはずっとやっています。

――ここまでを振り返って、調子はいかがですか

伊藤 移動疲れや、リーグ戦終わりの疲れは感じていましたが、キャンプが終わって帰ってきてからようやく疲れが抜け始めた感覚はあってやはり疲れていたんだなと感じました。ただ今はだいぶリーグ戦に向けて疲労も抜けてきましたし、体の状態も悪くはないのでいい仕上がりにきているかなと思います。

――代表活動やオールスターでは大学トップレベルの投手と共に戦いましたが、何か刺激はありましたか

伊藤 投手一人一人で考えていることに特徴や個人的な感覚を持っていて、そのことについて意見交換できたのは自分の中でもいい経験になりました。すごく面白いなという風に思った部分でもあります。

――感覚というのはどういった部分ですか

伊藤 ボールを投げる感覚はもちろんですし、フォームとかストライクゾーンにこうやって投げるよ、とかの感覚です。

――一つ印出選手に伺いたいのですが、今年の伊藤投手はどこの部分が成長したなと感じていますでしょうか

印出 球速というか球威が戻ってきて、一つギアが上がった感じはリーグ戦通してありました。リーグ戦序盤は、ロースコアで後半に進む展開の試合が多くて、しんどい展開が毎週続く中で、出力をキープしながら先発として7、8回まで投げ切るところに関しては昨年と一つ違う部分があったと思います。大きく相手に捕まるイニングもなく、抑えて相手に流れが行かずに、こちらに流れが来て終盤逆転で勝ったという試合につながったと思います。あとはけん制やフィールディングが昨年より、レベルアップしている部分があって、ランナーはたぶん走りにくくなっていると思いますし、バントも簡単には決めさせないように、サードの小澤(周平、スポ3=群馬・健大高崎)もかなりプレスをかけているなかで、樹も(走者を)刺しにいくようかなりプレスをかけていて、そういった細かい部分ですが相手は攻めづらいのではないかという風に感じて見ていました。

――伊藤選手は今のを聞いていかがですか

伊藤 球速は冬やってきたことの成果発表だったので、それが結果として出ましたし、もう3年目のバッテリーなのでいい時も悪い時も組んできて、秋が最後になりますが、しっかり配球してくれればいいかなと思います。

キャプテンとして最後まで仕事を全うして、日本一で来年の樹たちの代につなげるように(印出)

――ここからは秋のリーグ戦に向けてお二方に聞いていきます。まずは印出選手に現在の野手陣全体の状態を伺いたいです

印出 状態は結構いいと思います。かなり点が多く入っている試合もありますし、そんなに入っているわけではない試合でも欲しいところでしっかりと打てて、攻め切ることができているという印象があります。それが守りのリズムにつながってくるので、攻撃の方に関してはチームとして攻め方みたいなのが、出来上がってきたかなと思います。

――伊藤選手には投手陣の状態について伺いたいです

伊藤 僕以外いいんじゃないですかね(笑)。リリーフ陣も髙橋(煌稀、スポ1=宮城・仙台育英)、田和(廉、教3=東京・早実)も戻ってきましたし、もちろん鹿田さん(泰生、商4=東京・早実)や宮城(誇南、スポ2=埼玉・浦和学院)とか越井(颯一郎、スポ2=千葉・木更津総合)とかも先発してゲームをつくる試合も何試合もあります。あとは僕がどこまでリーグ戦中に仕上げながら、長いイニングを投げることができるかが秋の優勝に関わるところだと思います。僕次第だと思います。

――バッテリーを組むのは秋が最後になりますが、お互いにどういった活躍を期待しますか

印出 今年から「11番」という背番号を監督からもらって春は負けなしでチームを優勝に導いているので、次は僕たちが樹に勝ち星をつけられるように序盤から頑張って点を取りたいという風に思っています。それに応えるように大車輪の活躍で相手をしっかりねじ伏せて、今回は全勝優勝を狙いたいと思っているのでよろしくお願いします。

伊藤 春に関しては点が入らなかったからこそ、0点で抑えていたみたいなところもあったので勝ち星はつきませんでしたが、秋は打撃の調子も良さそうなので僕は変わらず0点に抑える仕事を全うしながら、一点でも多く取ってもらえることを願ってキャプテンの打席に注目していたいなと思います。

――続いて個人の目標をお聞かせ願いたいです

印出 個人としては三冠王というところを一つ掲げて、秋もやっていきたいと思います。

伊藤 春、登板回避をしていればもらえたであろう最優秀防御率を登板回避しなくても取れるようにしたいなと思っています。あと最多勝を野手の方々に助けてもらいながら、取りたいなと思います。

印出 (春は)志願して投げて点を取られたので、まだ11番としては頼りないものがあるのではないかというところで(笑)、今年の秋は期待したいと思っています。

――最後に意気込みをお願いします

伊藤 印出さんと組む最後のシーズンになるので、3年間で何イニング組んだかわからないですけど、その集大成として本当にいい結果を残せるようにしたいと思います。最後優勝して引退していただければと思うので、自分の持つ能力全てを使って勝ちに貢献できればなと思います。

印出 樹とは六大学の中で一番長く組んでいるバッテリーで、僕に関してもたぶん六大学の中で一番試合経験が多い捕手だと思うので、しっかりと経験を糧にして、最後のシーズン後輩たちと春に取れなかった日本一を取りにいきたいと思っています。そのためにキャプテンとして最後まで仕事を全うして、日本一で来年の樹たちの代につなげるように精一杯最後出し切りたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 廣野一眞、丸山勝央)

◆印出太一(いんで・たいち)

2002(平14)年5月15日生まれ。185センチ、91キロ。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部4年。全日本大学選手権では決勝で青学大に負けた悔しさを胸に「とにかくバットを振った夏」と振り返った印出主将。今季こそ三冠王を獲得し、最後の花道を飾ります!

◆伊藤樹(いとう・たつき)

2003(平15)年8月24日生まれ。176センチ、78キロ。宮城・仙台育英高出身。スポーツ科学部3年。7月のハーレムベースボールウィークで日本代表に選出された伊藤樹選手。意外にも日の丸を背負って戦うのは初めてでしたが、実力を存分に発揮して優勝に貢献しました。今季は世界の舞台を経験してさらに成長した姿が見られることに期待です!