第23回早慶女子サッカー定期戦
2024年8月24日(土)18:00 Kickoff
AGFフィールド
試合結果
チーム | 前半 | 後半 | 合計 |
---|---|---|---|
早稲田大学 | 0 | 1 | 1 |
慶応義塾大学 | 0 | 0 | 0 |
得点者
後半
83分 生田 七彩
8月24日に開催された第23回早慶女子サッカー定期戦(早慶女子クラシコ)。試合会場のAGFフィールドは大勢の観客に埋め尽くされ、試合前から両校の応援部により熱気あふれる応援が行われた。会場のボルテージが上がるなか、試合はキックオフを迎える。序盤は攻守が入れ替わる展開が続いたが、徐々にア式蹴球部女子(ア女)がボールを保持し始める。しかし、決定機を生み出せないままハーフタイムへ。後半は両チームともにチャンスをつくるが、得点が入らない時間が続いた。それでも83分に途中交代で投入されたFW生田七彩(スポ3=岡山・作陽)がスピードを生かしたプレーからゴールを奪う。最後までこの1点のリードを守り切ったア女が勝利をつかみ取り、早慶女子クラシコの無敗記録を23に伸ばした。
キックオフ直後から勢い良く相手ゴールへと迫ったア女。6分にはMF宗形みなみ(スポ3=マイナビ仙台レディースユース)がMF三宅万尋(スポ1=東京・十文字)とのコンビネーションから左サイドを崩してペナルティエリア内へクロスを送る。中央でFW﨑岡由真(スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)がヘディングで合わせたが、ボールは惜しくもバーの上へ。その後もア女がボールを回しながらチャンスをうかがう。前半終了間際には宗形がペナルティエリア外から強烈なミドルシュートを放ったが、相手キーパーの好セーブに遭い得点ならず。スコアレスのまま試合はハーフタイムに突入。勝負の行方は後半に委ねられることになった。
先制点を奪いたいア女は、後半からFW米村歩夏(スポ1=宮城・聖和)と生田を投入。前線の選手を入れ替え攻勢を維持し、よりゴールへの圧力を高めていくと、51分にはオーバーラップで左サイドを駆け上がったDF佐溝愛唯(社1=大阪・大商学園)のクロスから新井がヘディングシュートを打つが、ボールは右ポストにはじかれる。61分には宗形のスルーパスに反応した米村がシュートを放ったが、またしてもボールはポストにはじかれ得点とはならない。その後は徐々に相手の勢いも増し押し込まれる展開が続くことに。それでもシュートを打たせない粘り強い守備で相手を押し返すと、83分に待望の瞬間が訪れる。ボールを持つ相手DFへ、MF福岡結(スポ1=岡山・作陽)がプレスをかけ相手に選択肢を与えない。すると、福岡のプレスに連動したMF築地育(スポ4=静岡・常葉大橘)が相手のパスをインターセプト。ボールを奪った築地が即座に最前線の生田へスルーパスを出すと、スピードに乗った生田は相手DFを振り切って一気にゴール前へと迫る。相手キーパーとの1対1を迎えた生田は落ち着いてシュートを流し込み、ア女がついにスコアボードを動かした。その後も粘り強い守備と丁寧なパス回しで安定した試合運びを見せると、94分に主審がホイッスルを高々と鳴らし、試合は終了。1-0というスコアが表すように、相手とのせめぎ合いを制したア女が見事に勝利を手にした。
「難しい試合でした」とDF田頭花菜主将(スポ4=東京・十文字)が振り返るように、得点は入らないものの緊迫した時間が長く続いたこの一戦。両チームに攻め込む時間があったなか、最後に決定的なゴールを生み出したのはア女の粘り強い守備とチームの総合力だった。3バックを中心とした強固なブロックと前線からのプレスで相手をシャットアウト。先発メンバーだけでなく途中交代で投入された選手が躍動することで、90分集中した守備を保ち試合に勝ち切った。少数精鋭ながらチーム内の熾烈な競争を維持するア女だからできることだ。チームの指揮官は「良い守備から良い攻撃へという代々継いできてる血みたいなものがある」とア女のサッカーについて過去に語っている。早慶女子クラシコという大舞台で、指揮官の言う「良い守備から良い攻撃」を体現したア女。この試合を弾みに、9月から始まる皇后杯予選と再開する関東大学女子サッカーリーグ戦でも更なる進化を見せてくれることに期待したい。
(記事 荒川聡吾、写真 渡辺詩乃、熊谷桃花、西村侑也、勝野優子)
早大メンバー (数字は背番号、◎はキャプテン)
GK 16 石田心菜(スポ4=大阪学芸)
DF 3 杉山遥菜(スポ2=東京・十文字)
DF 5 ◎ 田頭花菜(スポ4=東京・十文字)
DF 28 佐溝愛唯(社1=大阪・大商学園)
MF 2 新井みゆき(スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)
MF 8 白井美羽(スポ4=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)
→82分、木南花菜(スポ4=ちふれASエルフェン埼玉マリ)
MF 10 築地育(スポ4=静岡・常葉大橘)
MF 11 宗形みなみ(スポ3=マイナビ仙台レディースユース)
→92分、栗田彩令(スポ4=静岡・藤枝順心)
MF 24 三宅万尋(スポ1=東京・十文字)
→46分、米村歩夏(スポ1=宮城・聖和)
FW 9 﨑岡由真(スポ2=埼玉・浦和レッズレディースユース)
→75分、福岡結(スポ1=岡山・作陽)
FW 15 千葉梨々花(スポ2=東京・十文字)
→46分、生田七彩(スポ3=岡山・作陽)
試合後インタビュー
後藤史監督(平21教卒=宮城・常盤木学園)
ーー今日はいつもの関カレ、関東リーグとは違う早慶クラシコという特別な試合でしたが、 気持ちの面でどういったところを意識して臨みましたか
やはり伝統の一戦であるということ、そして毎年毎年無敗の記録というのを、先輩たちが紡いでくれた歴史を次に繋げるということがまず達成できたのが何よりも良かったなと安心しています。
ーー試合全体を振り返っていかがですか
こういった展開になるということは試合前から想定はしていましたが、改めて慶応大学さんの最後まで粘り強く出してくる守備に非常に苦しめられた試合であったなと思うと同時に、これから後期が始まっていくので、皇后杯関東予選もありますし、 絶対に勝たなければいけない試合というのは続くので、今日の試合から学んだことというのをしっかりと生かしていきたいと思います。
ーー序盤、前半はかなりア女がボールキープして、シュートも何本かある展開が続いていた中で、後半の最後の方まで得点を奪えませんでした。今日の試合でそこはどういった難しさがありましたか
序盤に関しては少し自分たちのリズムを作りきれなかった部分があり、それでも保持は、ただ保持をしているだけというのと、意図を持って攻撃をしているというのは違うので、 そういう意味で、ただ保持をしていた時間が非常に前半は多くなってしまい、 前線のバランスが悪かった部分があったので、選手を変えながら後半に修正を持ってきたというところです。なので後半に得点を取るというのは、七彩が決めてくれましたけど、しっかり(勝利することが)できてよかったかなと思います。
ーー後半、かなり積極的に選手交代していたことが印象的でした。そこは修正点も含めて、どういったところを意識しましたか
そうですね。やはり湿気もありますし、90分の試合っていうところもトレーニングマッチは組んでましたけど、なかなか久しぶりなところもありますので、その中で選手の疲労具合だったり、組み合わせだったりを考えながら選手を起用したというような感じですかね。
ーー今日の試合は大勢の観客、そして応援もあった中での試合でした。そこは監督として指揮をしていてどのように感じましたか
声が届きづらかったっていうのは、やっぱり声援の声が大きかったかなという風に感じます。 明日男子部の早慶戦があるので、今度は逆に私たちが大きな声で男子部の背中を押せるように応援したいと思います。
ーー来週末からは皇后杯予選が始まります。そこに向けて意気込みをお願いします
まずは暑さが心配です。茨城の水戸で14時半というのが、実際にどうなるのかっていうのがまず心配なんですけれど、今回、選手を色々と入れ替えながら戦ったように、 皇后杯ではその暑さの中で勝ち切らなければいけないというのであれば、やはり最初に出た11人だけでは絶対に勝てないと思うので、チーム全員で勝っていきたいと思います。
DF田頭花菜(スポ4=東京・十文字)
ーー普段の試合とは違う早慶戦ですが、チームとしてどのような意識で試合に臨みましたか
無敗記録がありますが、自分たちは挑戦者の精神で泥くさく戦うことを意識して試合に入りました。
ーー対談の時は「絶対に勝ちます」と意気込まれていました。良い試合でしたが、試合全体を振り返って
思っていた以上に難しい試合でした。早慶戦は4年生にとってより特別なもので、4年生全員が出場することができなかったことが悔しかったですし、ピッチに立ってる4年生も悔しかったと思います。ですが、出ていないメンバーも一番優先するべきことが勝利という共通理解を持っているので、とりあえず勝てたことが良かったなと思います。
ーーなかなか点が取れない時間帯が続きましたが、どんな難しさがありましたか
慶應も意地を見せて最後のところで足を滑ってきたり、一個早くシュートを打てるゴール前のシーンでテンポが遅れて足を伸ばされたりしました。コーナーもたくさんありましたが、最後の1点を決め切る部分でお互いに気持ちがある分、早稲田がそれを上回ることができなかったです。
ーー大勢の観客や応援がある中での試合でしたが、どんな気持ちでプレーしてましたか
観客席からも応援は届いていましたし、ピッチの中では声が届かない難しさはありましたが、確実に自分たちの背中を押してくれたと感じていますし、それが最後の1点につながったのかなと思います。最後まで自分たちが走り続けた結果が勝利に結びついたと思うので、すごく感謝してます。
ーーここからの意気込みをお願いします
メンバー的にも愛笑(大山愛笑、スポ2=日テレ・東京ヴェルディメニーナ)がいなかったり普段とは違う部分がありますが、交代する選手も含めてチームの中で競争していかなければならない1週間だと思っています。皇后杯(第45回全日本女子サッカー選手権)でベスト16を掲げている上でも関東(皇后杯関東予選)を勝ち切るのはマストだと思うので、しっかり週末に向けて切り替えて最善の準備をチーム全員がしていきたいです。
MF築地育(スポ4=静岡・常葉大橘)
ーー今日の試合は普段の関カレ・関東リーグとは違うクラシコという特別な試合だったと思います。 気持ちの面でどういったところを意識して臨みましたか
やはり普段のリーグ戦とは違う雰囲気があって、違う種類の緊張感があって、絶対勝たないと、もちろん普段も勝たなければならないですけど、 早稲田として伝統があって勝たないといけないというところがある中で、独特の緊張感は感じてました。ただやっぱり自分はこうやっていろんな人に見てもらえる機会はすごくありがたいし、こういう場をみんなで作り上げるというところは、すごく感じながら今日まで準備してきた部分もあったので、楽しもうという気持ちや自分をしっかり見てもらおうという気持ちは持ったまま挑めたかなと思います。
ーー4年生として迎える最後の早慶クラシコでしたが、勝利した今どのような気持ちですか
やっぱり慶応さんも、しっかり早稲田に対する熱量とかライバル意識をプレーで表現してくれるというところで、こうやって見てる人も楽しい試合をお互い作り上げることができたというのはすごく良かったと思っています。試合展開的にはもうちょっとその1部というところで戦ってる早稲田だったり、日本一を目指してるチームという部分を、もっと圧倒したい部分はすごいたくさんあって、それこそブロックを引かれても攻めきるところだったり、個人のところ、球際だったり、簡単に失わないというところはもっともっとできたのかなと感じてます。
ーー拮抗した展開の中で、80分を超えた時間に決勝点が決まりました。決まった瞬間はどのような気持ちでしたか
だんだんこう時間が終わりに近づいてくる中で、引き分けというのをみんな考え始めてた部分はあると思いますけど、最後の最後しっかり走りきるっていうところは、自分らは強いなと思ってたし、自分はここ絶対、最後の最後絶対チャンスくるって思いながらやってたもで、それはみんなもプレーで出てた部分をすごい感じたので、苦しいところで1個踏ん張るというのは全員ができてたのかなと思います。
ーー今日はMVPを受賞しましたが、試合でプレーして、手応えはありましたか
いや、前半の途中で自分が危ない場面を作ったり、テンポをうまく作れないという部分があって、MVPを意識して、試合していた訳ではないですけど、早稲田として圧倒しなきゃいけないという部分をできてないなと思う場面が、自分個人で何回かあったというのは、すごく自分の中で反省してて。それでもやっぱり試合中に気持ちを落とすんじゃなくて、 まだ時間があるし、絶対勝たなきゃいけないし、みんなしっかり走ってるし、自分が見せなきゃいけないしっていうところで、最後チャンスを作れたというのは、自分の最後まで(気持ちを)切らさなかったところが出て、それを見てる人に評価していただいたので、すごい嬉しいなと思います。