【連載】ア式蹴球部 早慶クラシコ&総理大臣杯前対談 第6回 海本慶太朗

特集中面

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対談第6回は今季多くの試合でゴールマウスを守るア式の新たな守護神、海本慶太朗(スポ2=大宮アルディージャU18)。

――今季のここまでを振り返ってみていかがですか 
海本 まずチームとして。最初の1、2、3節あたりまでは勝ちきれない試合が多くて。その後からは結構いい試合ができて連勝を続けられていたんですけど、そこからチームの方向性が少しバラバラになってしまって、崩れてしまってというところで。試合中もそうですし、練習中もそうですし、コミュニケーションが足りなかったというか、少し自分たちの弱さが出てしまった。シーズンを通してそういうふうに感じています。 

――ここまで戦ってきて何か印象に残った出来事はありますか 
海本 本当にギリギリで勝ってきた試合が多くて、勝っているうちに修正しないとだめだったんですけど、そのボロが出てしまったのがこの直近の試合というか。勝っている時に修正できなかったというところが反省かなというふうには思っています。 

――直近あまり勝てていないと思いますが、チームの状態はどう感じていますか
海本 頑張る方向が少し違っているのかなと思っていて。走るとかフィジカルで負けないとか、すごく当たり前のことなんですけど、もう少し考え方を変えてみて、例えばもっとコーチングを頑張るとか、もっとビルドアップにこだわるとか、最後のラストパスをこだわるとか、曖昧なんですけど頑張り方を変えれば、少しずつ変わっていくのかなというふうに自分は思っています。 

――今リーグ戦で7位という数字があると思うのですが、自分たちの現在地はプレーしていてどう感じていますか 
海本 7位という順位の割にはそれほど悪くないのかなというふうには思っていて。かなり勝ち点が詰まっているというところもあるんですけど、自分たちがやっていることは間違いないと思っていますし、本当に何か少し変えればずっと勝てる集団になれるとは思うので、そこをやっていければなというふうに思います 

アミノ杯産能大戦でPK戦を制して喜ぶ選手たち

――直近の3試合(取材時点)の結果は負け、負け、引き分けですが、後ろから見ている感じとその結果を比較して、自分の中で納得感はありますか
海本 納得できると言えば納得できるところがあって。本当に選手は頑張っていますし、自分ももちろんそうですし、でもやっぱり先程も言ったように、少し頑張り方が違うのかなというふうにはすごく思っていて。1人1人頑張っているけど、チームとして少し連携できていないなというふうに思っているので。難しいんですけど。 

――もしその足りない部分があるとしたら、何が足りていないと思いますか 
海本 協力する、他人をうまく使うというところですかね。例えば守備の時とか、自分の1つ前の選手にうまく伝えて、もっとこうやってほしい、こうしてほしいと言ってくれれば、自分がかなり楽になると思うんですけど、そういうところで少しずつ、力を使う場所を守備ではなくて攻撃の方に変えていけるのかなと。主に他人をうまく使うというところですかね。 

――その課題を解消するとしたら、どういうことができると思いますか 
海本 本当にコミュニケーションとしか言いようがなくて、練習で少しずつやっていくしかないですし、今は本当に0の状態というか、できてない状態なので。そこの練習というか、コミュニケーション能力をもっと高めていくというところが一番大切かなと思っています。 

――去年はトップチームのチャンスはほとんどなかったですが、そうした中で率直にどういうふうに感じていましたか 
海本 悔しいという気持ちはもちろんあるんですけど、それほど焦りというか、あわてるというかはなくて。自分の置いている目標や夢のところから逆算していっているので、もちろん悔しいですけど、新人戦でも結果を出せましたし、それほど焦りはなかったです。 

――新人戦は全国で優勝して、その立役者だったと思いますが、大会全体としてどう振り返りますか 
海本 チーム一体となれたというのが一番大きくて。あの時は本当にワンチームだったなというのがあって。誰がキャプテンとか誰が引っ張るとかではなくて、出ている選手11人が全員で引っ張っていたし、もちろんベンチの選手もそうですし、本当に勝てるチームはこういう感じなんだなというのを改めて確認できたチームでした。 

――新人戦は関東の決勝が唯一負けた試合でした。そこから1カ月はどういうふうに立て直しを図りましたか 
海本 やっぱり1試合負けると少し良くない雰囲気はあると思うんですけど、あの時はそういう感じはほとんどなくて、次の全国に向けてどう勝っていくかというふうにもう行き先が変わっていたので、そういうところも良かったのかなと思っています。 

――去年の1年目のシーズンは全体としてどういうシーズンだったと振り返りますか 
海本 率直な感想は、物足りなかったというのがあって。高校から大学に入学してきて、もちろん関東リーグに出るというのを目標にして考えてやってきていたので、そこの点に関しては少し残念なところはあるんですけど。新人戦というまた違った舞台で結果を残して全国優勝というのができて、自分自身も日本一というのは初めてだったので、少し悔しいけど、いいシーズンではあったのかなと思います。 

――そんな中で今年になって、上級生も下級生も同期もすごくレベルの高いキーパー陣だと思うのですが、キーパー全体のチームとして印象はいかがですか 
海本 今のトップチームは僕と袈依廉くん(ヒル袈依廉、スポ4=鹿児島城西)と公平くん(北村公平、文構4=神奈川・桐光学園)の3人だけなんですけど、本当にトップのキーパーの選手もすごくレベルが高いですし、新人戦で出る雨野(颯真、スポ1=群馬・前橋育英)だったりもすごくレベルが高いですし、同期もレベルが高いですし。だけど、そんなにみんなギクシャクしているわけではなくて、「キーパーファミリー」と言うんですかね。結構いい関係性ではあると自分は思っています。 

――そんないいキーパーがたくさんいる中で、自分の武器はどんなところだと思いますか 
海本 シュートストップとビルドアップかなというのがあって。だけど、シュートストップとビルドアップを売りにしているキーパーなんてもうすごくたくさんいますし、今の一番の自分の武器はその2つだと思うんですけど、これから勝たせられるキーパーというところを目標にやっていけたらと思います。 

アミノ杯亜大戦で全国大会出場を決めるPKストップを見せて喜ぶ海本(左)

――今年の序盤からスタメンで出るようになり、自身で成長したなというところはありますか 
海本 安定感が一番出てきたかなというふうに思っていて。やっぱり試合に出続けないと安定感は絶対出てこないと思いますし、高校時代の自分の一番の課題が安定感というところだったので、その部分に関しては一番成長しているかなというふうに思っています。 

――2年生ながらキーパーとして出続けるというのに対して、プレッシャーはありますか 
海本 それほどプレッシャーはなくて。今の自分の短期の目標というのがそれほどないからこそ少し気楽なのかなというふうに思っていて、自分の目標がもっと遠くにあるからこそ目の前の試合に一喜一憂しないで、その先のことを考えて行動できているので。それがいいのか悪いのかは分からないんですけど、今の自分に対してはすごくいいふうに向いているのかなというのは思っています。 

――今年の出始めは天皇杯予選で、そこから比べると慣れたり自分の中でペースは掴みやすくなったりしましたか 
海本 あれが初めてのトップ戦デビューで、初のやらかしだったんですけど(笑)。やり方が難しくて、合わせるのが大変だったというのはあったんですけど、練習からもそこからどんどん積み上げはできていましたし、やっぱり1、2試合やっていくと連携とかも徐々にはできていたのかなというふうに思います。 

――今期は2年生の同期もトップチームに多く絡んできていますが、同期はどういう存在ですか 
海本 やっぱり同期が一緒に試合に出ているとすごくやる気が出ますし、先輩でも後輩でもそうだけど、同期のために戦おうというふうにはすごく思えますし、同期という存在が一緒のピッチで戦ってくれるのはすごく自分にとって大きなものです。 

――PK戦も多かったアミノバイタルカップの戦いを改めて全体的にどう振り返りますか 
海本 本当にギリギリで勝った試合が多かったなというのがあって。本当にフィールドプレイヤーの選手に感謝しかなくて、ちゃんと決めるところは決めてくれましたし、もちろん自分も止めたシーンもありますけど、本当にしんどい時間もディフェンス陣もすごく頑張ってくれましたし、全体を含めてこの選手がどうこうというより、チームで戦えたのがアミノだったかなというふうに思います。 

――明大戦の7失点というのは率直に自分の中でどういうふうに捉えていましたか 
海本 もちろん悔しいんですけど、自分は少し楽しかったというのがあって。自分の目標というか夢というのがもっともっと高いレベルで、地位も名誉もそんなにないんですけど、本当に高いレベルでサッカーをしたいというのを目標にしている自分からしては、7失点もしちゃったんですけどすごく楽しかったというのが率直な感想でしたね。 

――明大との差はどのような部分に感じましたか 
海本 やっぱり決定力の差があって、前半の多分4本、5本(のシュート)でほぼ全て失点していると思うんですよ。難しいシュートでも全部決めきれるというところが、やっぱり早稲田との差かなというふうには思いました。 

明大戦にて失点後に話し合う選手たち

――そうして決まった全国の舞台が控えていますが、そこに対して楽しみにしていることはありますか 
海本 関東圏ではできないような関西圏のチームもいますし、1部のチームとももちろん試合があるかもしれないし、そういうところでどれほどうまい選手がいるんだろう、どんなシュートが飛んでくるんだろうというのはすごく楽しみにしています。 

――総理大臣杯に向けて、個人やチームとしての目標をそれぞれ教えてください 
海本 チームとして、まだまだ今はチーム状況としては良くないですけど、もっともっとやれるチーム、戦えるチームだと思うので、もっとこれから総理大臣杯に向けて、もちろん今後のリーグ戦にもそうですけど、積み重ねてやっていければなと思っています。もちろんその時になったら誰が出ているかはわからないし、もちろんフィールドもキーバーもそうですし、そこに向けて誰が出ても同じようなパフォーマンスができるように全員で高めていけたらなと思っています。  

――早慶クラシコに向けてのお話に移ります。今年1回慶大と戦っていて、その試合をピッチ外から見ていてどう振り返りますか 
海本 自分が出てないので、その状況にならないとなんとも言えないんですけど、早稲田としては本当に情けない試合だったのかなというふうに思っています。絶対負けてはいけない相手だと思いますし、そのような中でチームとしてああいうプレーになってしまったというか、自分たちもピッチ外からもできることはたくさんありますし、本当に全員が見つめ直さないといけない試合だったなというふうには思っています。 

――今季の慶大のサッカーをどう見ていますか 
海本 本当に現代的なサッカーというか、つないでつないで前に進むというチームだと思うんですけど、本当に頭を使っているチームだなと思っていて。それに対して、早稲田は個の能力が高いというか。そこにチームとしての連動性が加わっていけば、慶応に負けないチームになれると自分は思っています。  

――今年早慶クラシコに出場すれば初出場ということで、そのクラシコという舞台はどういう舞台だと思いますか 
海本 去年自分はスーツを着てスタンドで見ていたんですけど、大迫力で、この中でプレーしたらすごく楽しいんだろうなというのがあって、今年は国立で開催ですし、もし自分が出たらチームを勝たせられるようなプレーをしていきたいなと思っています。 

対談中の海本

――今年100周年ということもありますが、注目度の高さは感じていますか 
海本 かなり感じていて、少し歩いたら早慶クラシコのポスターがあったり、今年100周年でいろいろなイベントもかなり多いと思うので、そこらへんの注目度の高さはかなり大きいのかなと思っています。 

――今年は久々に国立での開催になっていますが、もし出場すればそこでプレーするということに関していかがですか 
海本 緊張というよりワクワクが大きくて、そういう舞台で自分はどんなプレーができるのかとか、チームとしてどのようなプレーができて慶応にしっかり勝てるのかとか、そこら辺のワクワクが一番大きいです。 

――クラシコで自分のここを見ろ、と売り込みたいポイントはありますか
海本 やっぱりチームを勝たせるシュートストップを一番見ていただきたいです。 

――チームの中でクラシコでの注目選手を挙げるとしたら誰ですか 
海本 最近伊勢くん(伊勢航主将、社4=ガンバ大阪ユース)が怪我してしまって、そこから出始めている柏木陽良(スポ2=鹿島アントラーズユース)を僕は見ていただきたくて。彼は本当に技術が高い選手で、なおかつミドルシュートとかもなんでもできる選手なので、彼のテクニックを見ていただけたらなと思っています。 

――チーム全体としては、慶大に立ち向かうプレーで見てほしいところはありますか 
海本 やっぱりチームとしてもそうなんですけど、個人の能力を見てほしくて。多分攻撃陣全員強力なメンバーが集まると思うので、そこから個人の仕掛けだったり、そこからダイナミックなシュートだったりというのを見ていただけたらなと思っています。 

――最後に、クラシコに向けて意気込みをお願いします 
海本 慶応に勝つという、もうそれだけで。 

今後への意気込みを書いていただきました!

◆海本慶太朗(かいもと・けいたろう)
2004(平16)年7月6日生まれ。188センチ。大宮アルディージャU18出身。スポーツ科学部2年。

(取材・編集 西村侑也、取材 和田昇也)