強豪校に善戦も課題が見つかる大会に 団体戦はAクラス予選10位で終える

相撲男子

第103回東日本学生選手権 6月9日 東京・両国国技館

 相撲の殿堂・両国国技館に22の大学相撲部が集結し、東日本学生選手権が行われた。早大からは6名が出場し、個人戦BCクラストーナメントではいずれもAクラス進出を逃したものの、団体戦ではAクラス常連校相手に善戦。Aクラス予選10位という結果に終わり、チームと個人それぞれの収穫と課題が見つかる大会となった。

 まず、Aクラス予選進出をかけてBクラス団体戦トーナメントに挑んだ早大。過去の大会結果を参考に、強豪校からAクラス・Bクラス・Cクラスと大会ごとに分類されている。今大会の早大はBクラスから始まり、初戦の相手は大東大。この取組が新入部員の横山司(スポ1=東京・足立新田)にとっては、大学相撲デビュー戦となった。大会前に橋本侑京監督(平31スポ卒=東京・足立新田)から「1年生らしく勝っても負けても思いっきりやってこい」と伝えられた横山。立ち合い後相田和哉(大東大)をすぐに追い込むも、相手に粘られて土俵際の攻防を見せる。しかし自身の圧力でじっくりと寄り倒し、初出場初勝利を果たした。横山の勝利を含め、早大は4勝1敗で準決勝に進出。ベスト4以上でAクラス予選に進出できるため、この時点で予選進出が決定した。

 準決勝の相手は、慶大を4ー1で倒した明大。先鋒の内田京汰(社2=静岡・飛龍)が勢いよく押し出され、流れが相手に傾いたと思われたが、次鋒の川副楓馬主将(スポ3=熊本・文徳)が突き落としで勝利して星を五分に戻す。しかし、鈴木大介(法3=埼玉・早稲田本庄)と横山が立て続けに敗れ、先に3敗を喫した早大はBクラス3位が確定。最後の大将戦では、岡本塁(スポ1=兵庫・報徳学園)が相手に何もさせない取組で白星をつかみ、明大戦を勝利で締めくくった。

 Bクラスの戦いについて、橋本監督は「消極的というか、守りに入った相撲が多く」見られたと振り返る。Aクラス予選の前、悪い流れを打ち切るために「思い切りやれ」と選手たちへ伝えた。

 Aクラス予選の相手には、実績のある大学が並んだ。1回戦は日体大との試合。先鋒・内田の相手は、ことし5月の東日本学生新人選手権で準優勝したアルタンゲレル・デルゲルバトだ。勢いに乗る相手の攻めに応えるものの、最後は上体を起こされ黒星を喫する。次鋒・川副も敗れたあとの中堅戦には、鈴木に代わって大村晃央(社4=静岡・飛龍)が出場。立ち合い後左に動き奇襲を狙うも、相手の鋭い攻めに対応できず敗北した。続く横山・岡本も敗れ、日体大に圧倒的な強さを見せつけられた。

 しかし、負け続けて終わる訳にはいかない。2回戦の相手は、ことし5月の全日本大学選抜宇佐大会で対戦し1ー4で苦杯を喫した中大。先鋒の内田が敗れるも、次鋒の川副が4度目の立ち合いから相手を一方的に押し出し、またも星を五分に戻す。早大に流れが来たと思われたが、大村が強引に押し出され星は1ー2に。迎えた副将戦、横山は大きな体を生かして吉野一颯(中大)を追い込むも、相手の足腰の強さが光り今度は追い込まれる立場に。最後は土俵際の投げの打ち合いとなり、横山はすくい投げに屈した。2回戦の黒星が決定したものの、大将・岡本は相手を力強く押し出し試合を締めた。

 Aクラス優秀8校トーナメント進出には、勝利が最低条件の3回戦。相手は昨年の同大会団体戦優勝校である日大。Aクラス予選から登場した日大は、1回戦でBクラスから進出した駒大に2ー3で敗れたが、2回戦では国士舘大に5ー0の完全勝利。昨年王者としてはやや不安定な状態で早大戦に臨んだ。一方早大にとって日大は、またも5月の宇佐大会で対戦した相手。宇佐大会では1ー4で敗北したため、チームの成長を見せる絶好の機会となった。

 まず、先鋒・内田の相手は川上竜昌。内田は終始川上の攻めに合い、上体を起こされた隙に押し出された。なんとか勝利したい次鋒戦には、チームの主将である川副が出場。立ち合い後壮絶な攻防が繰り広げられるも、序盤は川副が優位に試合を進める。一度はたき込みを食らいそうになったが体勢を立て直し、土俵際に追い込んだところで、相手の左足が土俵を割っており川副が勝利を収めた。

 星が1ー1となり、続く中堅・大村の相手は成田力道。強烈な突き合いから体を抱え込まれるも、間一髪で相手を突き落とし白星をあげる。橋本監督に「チームの起爆剤」として起用された大村は、大舞台で期待に応える活躍を見せた。チームの勝利がかかった副将戦・横山の相手は、花岡真生。立ち合い後すぐにまわしを取られた横山は、一気に寄り切られ黒星を喫した。推薦された者のみ出場する全国選抜大学・社会人対抗九州大会個人戦(ことし5月)で優勝した相手に、力の差を見せつけられた格好だ。

 またも同点となり、勝った方がチームの勝利を手にする大将戦。早大・岡本には、里海斗が立ちはだかった。岡本はやや左に動いた立ち合いから相手の腕をつかみ、引き落としや突き落としを狙うも体を抱え込まれる体勢に。すぐに左のまわしを取った岡本は、土俵際で投げの打ち合いを展開した。主審は岡本が優位と見るも、異議申し立てがあり映像確認へ。協議の結果、同体で取り直しが決定した。

 取り直しの一番。「相手が見てくるだろうなと思っていた」岡本は、正面からぶつかり合う立ち合いを見せる。互いに相手を見ながら土俵中央で必死の攻防を繰り広げると、まずは岡本が里を土俵際まで追い込んだ。そこから右を差し、左上手を引いた右四つとなるも、里の右下手が効いて互いに動かず膠着(こうちゃく)状態に。岡本が先に動いたものの、相手にやや吊られた状態となり、最後は力強く寄り切られ敗北。白熱した一番に、会場からは大きな拍手が送られた。日大に敗れ、早大はAクラス優秀8校トーナメント進出を逃したものの、全日本大学選抜金沢大会(ことし7月)出場が決定した。

 いっぽう個人戦では、早大から出場した5選手すべてがAクラスへ進出できずに敗退。あと1勝でAクラスに進出できた川副は「個人戦は本当に良くありませんでした」と悔しさをにじませた。

 団体戦ではAクラス常連の中大・日大と互角に戦い、良い場面が多く見られた早大。しかしBクラス団体戦では優勝を逃し、個人戦ではいずれもAクラスに進出できなかったことから、勝ちきれない取組が目立っていた。「より練習しないと差が広いてしまう。ここは厳しくいこうと思っています」とより上を目指す橋本監督。「あと一歩及ばない」場面の連続ではチームの成長はないだろう。収穫と課題が大いに見つかった今大会を弾みに、早大相撲部は次へ向けて始動している。

(記事 中村環為、写真 上野慶太郎)

3回戦
日大○3ー2●早大
先鋒 川上参段○(押し出し)●内田弐段
二陣 西加参段●(押し出し)○川副参段
中堅 成田参段●(突き落とし)○大村弐段
副将 花岡参段○(寄り切り)●横山初段
大将 里参段○(寄り切り)●岡本弐段
結果、0勝4点でAクラス予選10位

BCクラス個人戦 トーナメント
川副参段
1回戦 対直江(明大) 押し出し○
2回戦 対平田参段(駒大) 引き落とし○
3回戦 対塚田弐段(立大) 突き落とし●

大村弐段
1回戦 対斉藤初段(東大) 不戦勝○
2回戦 対篠田(明大) 引き落とし●

内田弐段
2回戦 対阿部(駒大) 寄り切り●

岡本弐段
1回戦 対三堀(国学院大) 不戦勝●

横山初段
1回戦 対佐久間(国学院大) 不戦勝○
2回戦 対児玉参段(駒大) 押し出し●

試合後インタビュー
橋本侑京監督(平31スポ卒=東京・足立新田)
ーー団体戦はAクラス予選10位、個人戦では川副主将(楓馬、スポ3=熊本・文徳)が3回戦敗退という結果でした。振り返っていかがですか
悔しい結果でした。本来であればBクラスでもっと上に勝ち進む想定をしていたのですが、Bクラスの取組を見ていると消極的というか守りに入った相撲が多く見られて。だからこそAクラス予選の前に、OBの皆さんが「もうBクラスで負けたのだから、何を守る必要があるんだ」「チャレンジ精神を持って攻めなさい」と声をかけてくださいました。勝っても負けても応援してくれる人がいっぱいいるから、悔いなく行う。投げるなら投げ切る、変化するなら大きく変化するみたいに、思い切りやれということは伝えました。またAクラス予選から動きが悪かった訳ではないですが、中堅の鈴木(大介、法3=埼玉・早稲田本庄)を代えました。ただ大村(晃央、社4=静岡・飛龍)は唯一の4年生ですし、チームの起爆剤になれればと思って「思いっきりやってこい」と伝えて起用しました。

ーー横山初段(司、スポ1=東京・足立新田)にとっては早大相撲部デビュー戦となりました。怪我明けの取組でしたが、どのようにご覧になりましたか
まだ1年生で試合慣れしていないうえに、相撲を取る稽古を再開したのは先週辺りです。高校時代実績がある選手だとしても、実戦から半年以上離れているのでなかなか勝つことは難しいかなと思っていて。ただ1年生らしく勝っても負けても思いっきりやってこい、ということで試合に送り出しました。力が通用しないわけではないと思っているので、インカレ(全国学生選手権。11月に東京・両国国技館で開催)に向けて練習すれば、上位で戦えると感じています。

ーー先月の宇佐大会(全国大学選抜宇佐大会)では日大相手に1ー4で敗北を喫しましたが、今大会は2ー3という結果でした。昨年の東日本学生選手権優勝校をより追い詰めた、チームの状況をどのようにお考えですか
同じ相手をより追い詰めましたが、出場メンバーも出場順も異なりますし、合い口もあるだろうから何とも言えません(笑)。ただ、正直特別なことはしていなくて。気の持ちようで結果は変わっていくので、自分たちで最初から気持ちをつくれるよう選手へ伝えていきたいです。善戦はしましたけど、負けているので。日大さんはおそらく気合を入れて練習してくると思います。より練習しないと差が広いてしまう。ここは厳しくいこうと思っています。

川副楓馬主将(スポ3=熊本・文徳)
ーー団体戦はAクラス予選10位、個人戦では3回戦敗退という結果でした。振り返っていかがですか
団体戦はあと一歩及ばずでしたが、収穫と課題が見つかる大会になりました。ただ、個人戦は本当に良くありませんでした。個人戦のAクラストーナメント進出すらできず、何も良いところがなかったです。

ーー主将として2大会目の団体戦となりました。チームの成長をどのように考えていますか
先月の宇佐大会は久々の大会出場ということもあり、なかなか十分に準備できていませんでした。そこから1カ月経ち、個々で質の良い練習ができたと感じます。各々で課題に向き合って取り組んだからこそ、団体戦の結果につながった部分もあったと思います。

ーーまだまだことしの大会は続きます。団体戦と個人戦それぞれの今後の目標をお願いします
団体戦はインカレでベスト4が目標です。また、個人戦は表彰台に上がらないと意味がないと思っています。やはり今回の個人戦は何も良くなかったので、同じようにならないよう練習に励みます。

岡本塁(スポ1=兵庫・報徳学園)
ーー団体戦Aクラス予選10位という結果でした。振り返っていかがですか
あと一歩、あと一勝の場面がたくさんありました。Aクラスで戦える力は十分にあるからこそ、あと少しのところで勝ち切れるかという部分がこれからの課題だと思います。ただ、チームの雰囲気はものすごくいいです。お互い鼓舞し合っていました。

ーー団体戦では大将として一番最後に出場し、チームを締める場面が目立ちました
あまりプレッシャーはなく、自由に挑みました。何も考えない訳ではないですが、重圧をあまり感じないので、大将として一番最後に出場するよう指名されている部分はあると思います。

ーーAクラス予選3回戦の日大戦、取り直しの一番となりましたがそこでもあまり緊張しませんでしたか
そうですね。プレッシャーよりも勝ってやろうと思ってたのですが、あと一歩及びませんでした。

ーーその取り直し前の一番では、里参段(日大)相手に左に動いた立ち合いでした。取り直し前の一番と取り直しの一番、2つの取り組みでは立ち合いをどのように考えていましたか
里参段が引き落としで負けていた取組(同大会Aクラス予選1回戦。対駒大にて、里参段は児玉参段に引き落としで敗北)を見ていました。だからこそ、取り直し前は引き落としか突き落としでいこうかなと。取り直しでは、相手が見てくるだろうなと思っていたので、思いっきり前から攻めました。