今シーズン最後の公式戦、そして全日本学生自動車連盟年間総合杯(全日本総合杯)獲得の運命が決まる一戦が、三重・鈴鹿サーキットにて行われた。全日本学生ジムカーナ選手権(全日本ジムカーナ)は毎年夏に開催されていたが、コロナウイルスの影響によって日程変更がされ、全日本学生運転競技選手権(全日本フィギュア)の約2週間後というタイトなスケジュールでの開催となった。早大自動車部から送り込まれたのは4選手。男子の部では個人にて4年藤岡慶(人4=東京・早実)が優勝、そして最上佳樹(社3=東京・攻玉社)が準優勝を果たし、団体にて13年ぶりの全日本ジムカーナ男子団体優勝に見事輝いた。その結果、総合杯にて最上は男子個人優勝となり、そして早大自動車部はシーズンの目標であった男子団体を勝ち取り、悲願の大学日本一となった。
ジムカーナ競技は、各選手午前と午後にそれぞれ1本ずつ走行し、どちらか良いタイムが記録される。始まった1本目。第1走者は4年藤岡が務めた。全関東学生ジムカーナ選手権では個人3位につけた早大屈指の実力者であり、この大会が自動車部人生で最後の公式戦となる。「後悔なくしっかりした結果を残したい」と述べたように、丁寧かつ見事な走りを見せるものの、途中コースからの脱輪によるペナルティを受けてしまい、午前25番手のタイムとなってしまう。続いて、女子の部の小林眞緒(創2=福岡雙葉)が出走。2週間前に行われた、全日本学生運転競技選手権にて見事優勝を果たした選手であり、全日本2連覇の期待がかかる。「自分らしさのある走りをしたい」と語った小林は、豪快な走りで駆け抜けるも、勢いの強さが裏目に出たのか、途中でミスをしてしまい、全体8番手の32秒759でフィニッシュをした。第3走者は男子の部に戻り、最上がハンドルを握った。果敢な走りをするも「ブレーキが完全にとっ散らかってしまった」と最上。本調子の走りをすることができない1本目になってしまった。そして、次に出走したのは神林崇亮(人3=埼玉・早大本庄)。神林にとってジムカーナは今年度最も注力し、思い入れの強い競技だ。1本目はしっかりと結果を残したいと語っていた神林だが、丁寧な走りを心がけるも「シフトミスなどミスの目立つ走り」となってしまい、午前15番手でゴール。この結果、午前の部でのタイムでは、団体3位という結果で折り返した。
豪快な走りで挑んだ小林
本大会の優勝、そして総合杯の王冠を獲得するための、各選手最後の走りとなった2本目。第一走者である藤岡は、先程ペナルティを受けてしまったところは少し抑えめに走りながらも、他の部分で少し攻めた走りを心がけた。結果、1分16秒390という驚異的なタイムで全体ベストタイムを記録。続く小林も、1本目の反省を踏まえ丁寧な走りを見せ、3秒以上タイムを更新した。しかし、「自分の強みである挑戦的な走りを見せることができなかったことは後悔としてある」と悔しさを滲ませた。この時点で現時点でトップである慶大に僅差まで迫ってきた早大。緊張感のある中、エースである第3走者の最上がステアリングを握った。自分のタイムではなく、団体優勝を第一とした走りを心がけたという最上。ミスなく安定した走行で攻略し、個人2番手となる1分17秒381をマークした。そして、最終走者である神林。ミスの許されない状況の中で緊張感はあったというものの、文句のない走りを見せてタイムアップをしフィニッシュ。そしてこの結果、2008年以来となる全日ジムカーナの団体優勝という快挙を成し遂げ、また総合杯を獲得し日本一を勝ち取った。
個人優勝を果たした藤岡
公式戦最終戦にて優秀の美を見せた早大自動車部。1本目なかなか良いタイムが出なかった中でも、選手それぞれが反省点を考え抜き、そして自動車部全体がチームとなって乗り越えたことが勝因だと神林は語る。「個」と「チーム」の力こそが早大自動車部の強さの根源であろう。そして、今大会で最後となる4年藤岡は、「後輩達にジムカーナをずっと教えていた中で素晴らしい結果を出してくれて、そして最後に自分もいい結果が出て、本当に良かったと思っています」と喜びを噛み締めた。そして、「絶対に勝つという意識を持って試合に臨んで欲しいです。そうすれば、自ずと優勝は見えてくると思います。期待しています」と後輩にエールを送った。死闘を繰り広げた4選手の勇姿は後輩へと繋がり、更なる高みへ、早大自動車部のエンジンはさらに回り続けることだろう。『常勝早稲田』の伝説はまだこれからだ。
(記事 風間元樹 写真 部提供)
※掲載が遅くなり、申し訳ございません
見事全日ジムカーナ優勝、総合杯を獲得した早大自動車部
結果
▽男子団体の部
優勝 早大 3分53秒443
▽男子個人の部
優勝 藤岡 1分16秒39(2回目)
準優勝 最上 1分17秒381(2回目)
12位 神林 1分19秒672(2回目)
▽女子個人の部
8位 小林 1分29秒58(2回目)
コメント
藤岡慶(人4=東京・早実)
――ご自身の1本目の走りを振り返っていかがでしたか
僕自身、初めての全日本学生戦に出るということ、また最後の4年生ということもあって、しっかりした結果を残さなければならないと思いつつも、1本目なのであまり攻めすぎず、大きなミスをしないような走りをしようと心がけて走ってました。その中で、試合前の慣熟歩行の際にここだけは踏もうと思ってたところで踏み過ぎてしまったことで、最後脱輪判定となってしまったのは残念でした。
――その後の2本目はいかがでしたか
1本目の脱輪してしまったところは、ゆっくり少し抑えめに走りながらも、午前中よりも路面やタイヤの状態も良かったので.少し攻めた走りをしました。どう攻めたかっていうと、無理をするだけでなく、ブレーキをできる限り遅くして、アクセルを早く踏むことを意識していて、無茶しないということは常に頭において走りました。その結果、最後の最後でいい結果が出せて一安心でした。
――4年間の総括と後輩へのエールをお願いします
僕は選手として、ジムカーナをほぼ一本でやっていけるような感じで3年生からやらせていただいたんですけど、後輩達にジムカーナをずっと教えていた中で素晴らしい結果を出してくれて、そして最後に自分もいい結果が出て、本当に良かったと思っています。来年以降、全日本ジムカーナでも表彰台を独占して、女子も絶対優勝を取って欲しいと思っています。またエールとしては、油断してると絶対負けるので、絶対に勝つという意識を持って試合に臨んで欲しいです。そうすれば、自ずと優勝は見えてくると思います。期待しています。
最上佳樹(社3=東京・攻玉社)
――どのような意気込みで望みましたか
まず8月末にやる予定だったのが急遽12月に変わったのはかなり部への影響的に大きいもので、練習を空いた期間でしっかりとすることが出来なかったので、少し不安ではありました。また、試合当日の2日前から鈴鹿に来たのですが、初日に元々の状態の車両で走ったらまともに帰ってくることもできない程度の状態になっていたので、かなりドダバタしていました。その中で完全にスランプみたいになってしまい、走りがグダグダになってしまっていて、かなり不安を掻き立てられたような感じでした。
――ご自身の2本の走りを振り返っていただいていかがでしたか
完全にそのスランプという状態の中で、1本目ではブレーキがとっ散らかってしまい上手にターンができず、今日も良くないなと思いながら帰ってきました。2本目は1本目でミスをしてしまったところだけは絶対気をつけようという意気込みで走り始めて、1位を狙った走りをするよりかは、ペナルティをせずに少しでもタイムをあげて、団体優勝の獲得を第一の目標に走りました。かなり精神的に追い込まれてはいたものの、タイム更新には繋がったので、優勝は来年頑張ります。
――来年度への意気込みをお願いします
まず今年に関しては、全関東大会、全日本大会で個人団体を取るということを達成できたので今年1年やってきてできてよかったなと強く思っています。ただ、ジムカーナやフィギュアなど、種目における個人優勝は今回することが出来ないことが多かったので、そこで勝てないと意味がないと思っています。なので、これからのオフの期間に、何が足りていなかったのかをしっかりと考え直して、今度こそ全6大会で個人優勝をしたいと思っています。
神林崇亮(人3=埼玉・早大本庄)
――どのような意気込みで望みましたか
全日本ジムカーナは今回初めて出場することになったんですけど、自分自身ジムカーナは結構練習している時間が多いものであるので、いい結果を出したいという思いは強かったです。また、3走目はタイヤの状態を考えてもかなりいい走順ということもあったので、そこも含めて全力でいいタイムを出すことに専念しようと心がけていました。
――1本目はいかがでしたか
1本目でタイムが残らないと、2本目で思い切った走りができないので、必ずタイムをとりあえず残す、そして置きに行く走りはしてはいけないというところが一番念頭にありました。ただ、シフトミスなどミスの目立つ走りをしてしまい、満足のいかないタイムでゴールをして、足を引っ張ってしまうことになってしまいました。
――2本目はいかがでしたか
1本目はとても悪いタイムというものではなかったので、しっかりと攻めた走りをすることができる状態でした。そのため、全力で走ることは心がけていました。あとは、自分自身、今大会では出来れば入賞をしたいと思っていて、男子3人全員が速いが故の完全勝利を言ってもらえるように、良い結果を出したいという思いが強かったです。結果としては、タイムアップはしたものの、優勝などには遠く呼ばないような結果になってしまったので、そこは反省点かなと思っています。
――来部として、個人としての、来年度への意気込みや抱負をお願いします
部活としてするべきことは2点で、まず今のチームとしての力や意気込みは結構良いものではあるので、この状態を維持しながらも、直すべきところは直していかなきゃいけないという点、そしてスピード競技の選手層を厚くしていくべきであると思っています。そうすれば、総合優勝というところもしっかりと取れるような体制になると思います。個人としては、スピード競技に関しては他の2人に頼ってしまう形になっていたので、自分がちゃんとレベルアップすることは必須だと思っています。あとは、フィギュアでは、今回選手落ちしてしまったので、しっかりと反省して全関東では選手になってで優勝できるように頑張っていきたいと思っています。
小林眞緒(創2=福岡雙葉)
――どのような意気込みで望みましたか
ジムカーナという競技は、自分がその1年前ぐらいから本当になんか頑張って勝ちたいなと思っていた競技ではあったので、勝ちたいという思いは強かったです。ただ、まだ実力不足なところはあったので、楽しんで走ることを一番に考えて走りました。
――今回の試合を振り返っていかがでしたか
ジムカーナの車両は、あまりそれまでに乗ることができていなかったので、練習や本番で慣れるのにとても苦労しました。前日の練習の際に、思い切った走りができていない、自分の強みが消えた走りになっているということを周りに言われて、本番では自分らしさを心がけました。1本目は、そういったこともあって、思いっきりのある走りをしたら逆にそれで失敗してしまって、あまり良い順位にならなかったのは残念でした。2本目は、自分のいい記録を出すということと同時に、チームとしての結果も考えて、安定的な抑えた走りを心がけました。記録を残すことはできましたが、やはり挑戦的な走りを見せることができなかったことは後悔としてあります。
――来年度への意気込みをお願いします
やっぱり技術力が圧倒的に足りないっていうのは自覚しているので、練習に尽力したいと思います。そして、来年のジムカーナでの大会では、自分の力を最大限に発揮できるようにしたいと思います。