11月28〜30日にかけて、天皇杯全日本選手権(全日本選手権)の出場権をかけた最後の大会、東日本学生秋季選手権が開かれた。早大からは、新人戦グレコローマンスタイル(GR)97キロ級に北脇香(スポ1=山梨・韮崎工)、新人戦フリースタイル(FS)-A70キロ級にズート麟(政経2=東京・アメリカンスクール・イン・ジャパン)、新人戦FS-A79キロ級に山路健心(社1=和歌山北)、新人戦FS-B61キロ級に吉澤禅(文1=埼玉・早大本庄)、選手権GR63キロ級に谷口虎徹(社3=和歌山北)、選手権FS61キロ級に島谷侃(スポ4=秋田商)が出場した。結果は、島谷、北脇、山路の3人が優勝、谷口、吉澤の2人が準優勝、ズートが初戦(2回戦)敗退であった。
北脇は、初戦(準決勝)で中里優斗(中大)に勝利すると、決勝では成塚騎士(神奈川大)をテクニカルフォールで下し、優勝を果たした。
ズートは、初戦(2回戦)で豊田崚真(拓大)と対戦。第1ピリオドまでは互角の戦いを繰り広げたが、終盤に連続で失点し、テクニカルフォールで敗戦を喫した。
相手の足を持つズート
春季は74キロ級を制した山路は、階級を1つ上げて79キロ級に出場。1回戦から3回戦まで順調に勝ち進み、この日一番の山場は準決勝だった。相手は城所拓馬(国士館大)。第1ピリオドは、相手がアクティビティタイムでポイントを奪えなかったことで山路に1点が入る。第2ピリオドは、逆に山路がアクティビティタイムでポイントを奪えず、1点を失い、追いつかれる。しかし、「冷静に逆転ができ、最後に守り切れた」と振り返るように、試合時間残り約30秒から猛攻を見せ、4-1で勝利を収めた。決勝は積極的な攻めで水崎康太郎(中大)をテクニカルフォールで下し、春秋での連覇を達成。さらに、山路はMVPも獲得した。
準決勝、終盤にポイントを重ねた山路
吉澤は、大学から競技を始めた者を対象とするFS-Bに出場。初戦で正岡雄一(東大)と対戦。着実に点数を重ね12-1のテクニカルフォールで勝利する。準決勝は相手の途中棄権で勝ち上がると、決勝では大塚誌郎(立大)と対戦し、テクニカルフォールで敗戦した。今春、全国トップレベルの部員も在籍する早大レスリング部に入部し、「練習もつらくてすぐ辞めようと思っていた」と語る吉澤。それでも練習に必死に食らいつき、公式戦初出場と初勝利を達成した。その喜びをかみしめた一方で、準優勝という結果には満足しておらず、「春の新人戦ではこの悔しさを忘れないで絶対優勝したい」と先を見据えた。
決勝で相手を持ち上げようとする吉澤
谷口は、順調に勝ち進み、準決勝では伊藤凜太朗(東洋大)と当たる。1-0とリードして迎えた第2ピリオドだったが、追いつかれ、さらに体を返されて1-3と逆転を許す。しかし、残り1分を切ったところで相手を投げて5-3に。そのままリードを守り切り、決勝進出を決めた。決勝では佐々木航(拓大)と対戦し、テクニカルフォールで敗れ、優勝にはあと一歩届かなかった。
決勝を戦う谷口
島谷は、今大会で優勝すれば全日本選手権へ希望がつながり、優勝を逃せば引退、という背水の陣で臨んだ。1、2回戦をテクニカルフォール勝ちで突破すると、準決勝は山根典哲(拓大)に4-2と辛勝。決勝では小川颯太(国士館大)とぶつかる。第1ピリオドに2点を先取され、逆転を狙った第2ピリオド。守ろうとする相手に対して積極的に攻め、テークダウンを奪う。そしてそのまま相手を振り切り、目標としていた優勝を達成し、敢闘賞も受賞した。
準決勝でタックルをする島谷
12月22~25日に開催される全日本選手権出場をかけた最後のチャンスとなった今大会。すでに権利を持っていた北脇と山路、そして島谷の3人が優勝、全日本選手権への出場を決めた。また、「仲間がいたから苦しい展開でも勝ち切れた」(島谷)、「先輩や仲間のために今日は勝ちたかったので、勝てて良かった」(吉澤)と2人が振り返るように、出場しなかった部員が応援に駆けつけたり、セコンドとして入りアドバイスを送ったりするなど、チーム一丸で掴んだ結果にも見えた。全日本選手権には早大から13人が出場を予定している。この勢いをそのままに、早大レスリング部は、2022年の集大成である全日本選手権へ挑む。
吉澤の試合でセコンドを務めた山倉(左)と深田
(記事 齋藤汰朗 写真 齋藤汰朗、星野有哉)
結果
新人戦グレコローマンスタイル
▽97キロ級
北脇 優勝
新人戦フリースタイルA
▽70キロ級
ズート 2回戦敗退
▽79キロ級
山路 優勝
新人戦フリースタイルB
▽61キロ級
吉澤 準優勝
選手権グレコローマンスタイル
▽63キロ級
谷口 準優勝
選手権フリースタイル
▽61キロ級
島谷 優勝
コメント
島谷侃(スポ4=秋田商)
――見事優勝を果たしました。今の心境を教えてください
優勝という結果はうれしいのですが、準決勝で相手が階級下の選手でああいう危ないい展開になってしまったので、そこを勝ち切れたところは良かったですけど、内容があまり良くなかったので、少し悔しかったと思います。自分の想定ではタックルでテクニカルポイントをしっかり取ってだったのですが、階級が下の相手に対して最初アクティブでしか点を取れなかったので、そういうところは内容がまだまだの試合だったなと思います。
――決勝は接戦をものにしました。勝因はどこにあったと思いますか
みんな来てくれて応援してくれたというのもあって、自分一人だったら勝てなかったと思うのですが、後輩だったり、決勝でセコンドについた青学の友達だったり、そういった仲間がいたから苦しい展開でも勝ち切れたのかなと思います。
――次の試合への意気込みをお願いします
天皇杯(全日本選手権)はレベルが高くてメダル争いに絡むくらいの実力はないと思うのですが、人生最後の試合になるので、緊張せず楽しく終われたらなと思います。
山路健心(社1=和歌山北)
――見事優勝を果たしました。今の心境を教えてください
春74(キロ級)優勝して、今回79(キロ級)という上の階級に挑戦して、パワー負けもある程度想定していたのですが、しっかり勝ち切れて良かったと思います。
――今大会を通して良かった点と課題点を教えてください
課題も良かった点も準決勝にあって、そこが山で、良かった点は負けていても冷静に逆転ができ、最後に守り切れたことで、修正点は、リードされていたら取れなかっただろうなと思うので、しっかり自分からのアクションで取れるようにならないといけないなと思いました。
――全日本選手権への意気込みを教えてください
全日本のレベルというのが分からないのですが、同じチームに山倉孝介(スポ3=千葉・日体大柏)さんがいるので、倒したいです!
吉澤禅(文1=埼玉・早大本庄)
――公式戦初出場、そして初勝利となりましたが、今の心境はどうですか
まず体験入部みたいな感じでこの部に入って、練習もつらくてすぐ辞めようと思っていたんですけど、それでも頑張ってやってきて試合に出られるだけでここまでこられて良かったというのがあって。入った当初は「このままじゃお前は4年間試合には出られないかもしれない」と言われていて、それでも頑張って自分が出られるというのもそうですけど、練習についていけていなくて、「こっちの練習にならないから辞めろ」と先輩方に思われていると思っていたんですけど、頑張ってついてこさせてもらって、先輩や仲間のために今日は勝ちたかったので、勝てて良かったなと思います。
――決勝まで勝ち上がった要因をどう考えていますか
相手も初心者というのもあって、こっちもしっかり習ったことを出せたのが良かったと思います。
――決勝では惜しくも敗れてしまいましたが、振り返っていかがですか
「点を取れたのだから勝てない試合ではなかった」と言われ、それで自分の課題が明確になったので、冬から春にかけてしっかり鍛え直して、春の新人戦ではこの悔しさを忘れないで絶対優勝したいと思います。
――セコンドには全国でトップレベルの2人の先輩がついていました。先輩からはどんなアドバイスがあったのでしょうか
試合前には深田(雄智、スポ3=千葉・日体大柏)先輩から「楽しんで勝ち切ってこい」と言われたので、それで気が楽になって、変に緊張せずに戦うことができたと思います。
――最後に次の目標、これから取り組んでいきたいことを教えてください
先ほども言ったのですが、先輩方は全国レベルで、自分と練習するのは向こうのスキルアップにはならないのに、こうして一緒に練習させてもらっているので、その先輩や仲間のためにも習ったことを出せる姿だとか、試合に送り出してくれた監督やコーチ、部活に入ることによって負担が増えてしまうんですけど、それでも頑張ってこいと送り出してくれた両親に、良い報告ができるように頑張っていきたいと思います。