早大女子勢、全日本の舞台で健闘

レクリング

  4日間にわたって行われる明治杯全日本選抜選手権(明治杯)が開幕した。10月に開催される世界選手権の代表選考会も兼ねており、国内トップレベルの選手が集まる今大会。その初日、早大からは50キロ級に伊藤海(社1=京都・網野)、53キロ級に片岡梨乃(社2=千葉・日体大柏)、62キロ級に小玉彩天奈(社4=高知東)が出場。片岡と小玉は1回戦で敗れたが、対戦相手が決勝に進んだため、それぞれ順位決定戦へ回った。一方、この日唯一初戦を突破した伊藤は決勝まで駒を進めた。吉元玲美那(至学館大)とおよそ半年ぶりの再戦となったが、ポイントを奪えず連敗。悔しい2位で大会を終えた。

1回戦で入江ななみと対戦する片岡

 早大勢の先陣を切った片岡は、1回戦で昨年全日本選手権2位の入江ななみ(ミキハウス)と対戦。先にテークダウンを奪い2-0としたが、直後のタックルを防がれて肩を痛めてしまう。試合は続行したものの、入江のタックルが続けて決まり第2ピリオド(P)で逆転を許し2-4で敗退。しかし、入江が決勝に進んだため、片岡は順位決定戦へ回った。
 勝てば3位決定戦に進む大事な一戦。昨年末の天皇杯全日本選手権(天皇杯)で対戦しテクニカルフォール負けを喫した、下野佑実(育英大)を相手に迎えた。初戦で痛めた肩に不安はあったが「失うものはない。今の自分を出し切ろう」と気持ちを前向きに切り替えた。第1P、先にバックポイントを奪われローリングを返されたが、マット際の攻防で2点差まで詰め寄る。結果的には2-4で敗れたものの「パワー負けも感じず、組手も自分のペースで持って行けた」。トップレベルの選手との試合で自信を深めた。

3位入賞を果たした小玉

 小玉の1回戦は、互いにテクニカルポイントを奪えず、パッシブ(消極的な選手に与えられる注意)の数が少なかった坂野結衣(警視庁)に軍配が上がった。その後、片岡と同じく小玉も順位決定戦に回る。その初戦、ポイントでは優位に立つも「自分からタックルに入るのが不安でなかなか思うように動けなかった」。終盤まで1-0、2-1とロースコアの展開が続く。1点のリードを守り切るかと思われた残り45秒、思い切って入ったタックルが決まり、この日初のテクニカルポイントを獲得。4-1で勝利し、3位決定戦へ進出した。「(様子を)見すぎてしまうという反省」を改善しようと臨んだ3位決定戦。小玉は第1Pでパッシブによる1点こそ許したが、第2Pでは立て続けにテクニカルポイントを奪い、6-1で3位表彰台を決めた。

決勝でタックルに入る伊藤

 最軽量級の伊藤は1回戦、準決勝ともに無失点のテクニカルフォールで圧勝。大学入学後、徹底的に練習していたというグラウンドの攻撃がはまった。連続ローリングで一気にポイントを重ね、2試合とも第1Pで決着を付けた。良い流れで迎えた決勝は、天皇杯王者の吉元玲美那とのリベンジマッチに。「天皇杯では先にタックルに入られて負けてしまった。今回は先に自分から攻めて取りに行こう」という強い気持ちで挑んだ。言葉通り、伊藤は積極的にタックルに入る。しかし、その処理、絡んだ後の攻防で吉元に差を付けられた。グラウンドでの失点を防ぎ6分間戦い抜いたが、0-9で敗北。「1点もポイントを取れず、悔しい結果に終わった」と本音をにじませた。

 優勝して世界選手権代表決定プレーオフ進出――。その一歩手前での敗退に、伊藤は「ふがいない、という気持ち」。2024年のパリ五輪を見据えて「今まで以上に練習しないとならない」と決意を示した。大学進学後、須﨑優衣(スポ4=東京・安部学院)とも練習を重ねている伊藤。須﨑をはじめ、実力者が集まる女子最軽量級で追い上げを見せられるか。互いに切磋琢磨し成長していく早大女子勢から、目が離せない。

(記事 鬼頭遥南、写真 日本レスリング協会)

結果

▽50キロ級
伊藤 2位
1回戦  ○10-0坂本由宇(JOCエリートアカデミー)
準決勝  ○10-0中村未優(Sports Design)
決勝   ●0-9吉元玲美那(至学館大)
▽53キロ級
片岡 5位
1回戦   ●2-6入江ななみ(ミキハウス)
順位決定戦 ●2-4下野佑実(育英大)
▽62キロ級
小玉 3位
1回戦   ●1-2坂本結衣(警視庁)
順位決定戦 〇4-1吉武まひろ(日体大)
3位決定戦 〇6-1惣﨑優音(日体大)

コメント

小玉彩天奈(社4=高知東)

――1試合目は、パッシブを与え合う展開が長く続きました。敗因はどんな点だと思われますか

 最後のような動きがもっと早くできたら違った展開だったと思います。得点できるチャンスがいくつかあったのにも関わらず、逃してしまいました。何もできず終わってしまったなと物足りない試合になってしまいました。

―― 2試合目以降、テクニカルポイントが増えました。何か意識されていたことはありますか

 物足りない試合だったので敗者復活戦に回れるとなったあと後悔ない試合をしようと思っていました。しかし、前回接戦で勝っているということもあり、自分からタックルに入るのが不安でなかなか思うように動けなかったのが反省点です。最後に思い切ってタックルに入り、得点することができて安心しましたが、入る隙はもっとたくさんありました。 3位決定戦では今回の見すぎてしまうという反省を少しでも改善しようと思い臨みました。

――今日の試合内容を振り返って収穫、課題を教えてください

 試合になるといつも不安でいっぱいになるので、試合の組み立てをしっかりしてどのような状況になっても自分がするべき動きを判断して動けるようにすることが課題です。 今回はどの試合も自分らしさを全然出せませんでした。試合は普段やってきたことを試す場なので、負けたらどうしようなどマイナスなことは考えずもっと自分から展開するレスリングをしていきたいです。

片岡梨乃(社2=千葉・日体大柏)

――1試合目で肩を痛めたように見えました。プレーに影響がありましたか

 1試合目の前半でタックルを切られた瞬間に肩が抜けた感覚があり、そこから力が入らなかったりすることが何度もありました。しかし、結果負けてしまいましたが試合中は怪我してもネガティブな気持ちにはならないで戦い抜けたと思います。

――下野佑実選手(育英大)とは天皇杯でも対戦されていますが、今回は接戦でした。手応えを感じましたか

 正直、初戦で痛めた肩の調子が悪く不安が大きかったですが、失うものはないので今の自分を出し切ろうという前向きな気持ちで戦いました。半年前は相手のパワーの強さと組手で負けを痛感しましたが、今回はパワー負けも感じず、組み手も自分のペースで持って行けたかなと思います。

――今日の試合内容を振り返って収穫、課題を教えてください

 結果としては接戦で負けてしまい、さらに怪我を負った中でとても悔しい気持ちがありますが、トップレベルの選手に対しても自分のペースのレスリングができたのは自信になりました。課題としては、得点パターンを増やすことです。次の大会ではしっかり勝てるように、また日々の練習に打ち込みたいと思います。

伊藤海(社1=京都・網野)

――1試合目で肩を痛めたように見えました。試合に影響がありましたか

 1試合目の前半でタックルを切られた瞬間に肩が抜けた感覚があり、そこから力が入らなかったりすることが何度もありました。しかし、結果負けてしまいましたが試合中は怪我してもネガティブな気持ちにはならないで戦い抜けたと思います。

――吉元玲美那選手(至学館大)とは天皇杯でも対戦されていますが、どのような対策や準備をされてきましたか

 吉元選手はハイクラッチが得意であり、自分の右足に入ってくるので、その対応を練習してきました。また、天皇杯では相手に先にタックルに入られて負けてしまったので、今回は先に自分から攻めて取りに行こうという気持ちで望みました。

――吉元選手との対戦について、今回はテクニカルフォール負けにされず、6分間戦い抜きましたが、手応えを感じましたか

 テクニカルフォールではありませんでしたが、1点もポイントを取ることができず、悔しい結果に終わりました。

――今日の試合内容を振り返って収穫、課題を教えてください

 タックルには入れていましたが、そこからの処理が課題だと思います。相手と絡んだ状態からの攻防が負けてしまい、ポジション練習をもっとしていかないといけないと感じました。収穫としては、大学に入ってから練習し始めたアンクルが決まったことです。今の実力ではまだまだオリンピックは程遠いので、今まで以上に練習に励んでいきます。