秋の訪れが感じられる中、グレコローマンスタイルの最高峰の戦いである全日本大学グレコローマン選手権が始まった。約2ヶ月前の全日本学生選手権(インカレ)で快進撃を見せた早稲田チーム。今大会でもその実力を発揮できるか期待がかかる。8名が出場した今年は、昨年同様4年生の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)と山﨑弥十朗(スポ4=埼玉栄)が決勝進出を決めた。他の6人は準決勝にたどり着けず敗退。敗者復活にもまわることができなかった。
今大会は自分が一番目標にしている大会とインカレで語っていた宇井は連覇をかけて臨んだ。インカレでは全試合テクニカルフォールで完勝し調子の良さを見せていたが、今大会では予選から苦しめられ、計4試合のうち半分はテクニカルフォール、半分は1点差の辛勝であった。先にパッシブをとってそこから投げを決めて得点を重ねるパターンを得意としている宇井だが、今回は先にパッシブや先制点を与える展開が多かった。しかし、ビハインドの状態であってもペースを乱されることなくその後きっちり得点を決め勝利するのは王者の実力そのものである。同じく連覇を狙う山﨑は予選からテクニカルフォールで勝利し続け危なげなく準決勝にたどり着く。準決勝では今年の当階級の学生王者である奈須川良太(神奈川大)相手に快勝とまではいかなかったものの、パッシブからローリングを決めチャンスを確実にものにし、2年連続の決勝進出を決めた。
パッシブから得意の投げを決めた宇井
2人と比べ明暗が分かれる結果となった。インカレ優勝者の安楽龍馬(スポ2=山梨・韮崎工)は初戦で実力者相手に勝利するも惜しくも続くことができず敗退。昨年入賞の松本直毅(スポ4=神奈川・横浜清陵総合)は武器であるグラウンド技を発揮できず防戦一方となり二回戦で悔しくも敗退した。しかし、130キロ級で出場した小西拳(スポ2=岩手・盛岡工)は予選をテクニカルフォールで圧倒すると一回戦も2−2の同点から場外にプッシュして1点をもぎ取り勝ち進んだ。二回戦で敗北したものの、着実にレベルアップをしていると感じられた。また、早稲田に入って初の実戦に挑んだ島谷侃(スポ1=秋田商)は、1点ずつ着実に重ね、デビュー戦を勝利で飾ることができた。久々の実戦でブランクがある中で白星をあげ、これからどのような成績を収めていくのか期待したい。
早稲田デビュー戦で勝利を収めた島谷
宇井と山﨑が2年連続で決勝に挑むこととなった。パッシブをものにし自分の勝ちパターンで試合を運んだのが大きな勝因だ。「大和なら持ち上げ、弥十朗ならローリングがあるのでそのかたちでしっかりと勝ってもらいたい」と太田監督は期待する。連覇を懸けた決勝で勝利を収められるか。対し、総合優勝を目指すチーム全体にとっては難しい一日となった。パッシブからのチャンスをものにする力とグラウンドのディフェンス力の差がくっきりと勝敗を分けた。グレコローマンスタイルにおけるチーム全体の進化が求められている。
(記事、写真 北﨑麗)
結果
▽60キロ級
島谷 一回戦敗退
▽63キロ級
吉村 一回戦敗退
▽67キロ級
宇井 決勝進出
▽72キロ級
安楽 二回戦敗退
▽77キロ級
野本 一回戦敗退
▽87キロ級
山﨑 決勝進出
▽97キロ級
松本 二回戦敗退
▽130キロ級
小西 二回戦敗退
コメント
太田拓弥監督
――今大会の目標は
チーム全体としては、決勝まで上がった二人と、松本直毅、吉村拓海、安楽龍馬は優勝する力を持ってるので総合優勝というのを目標としていたんですけど、結果決勝二人で、あとは敗者復活に回れずという形になったので厳しい戦いになったなと思います。
――昨年と同様に宇井選手と山﨑選手の二人が決勝に上がったことについて
自分が持ってるものを二人はちゃんと出しきれてますし、ポイントをしっかりとる攻撃力が試合に出て決勝進出できたというのは良かったですけど、それ以外の者が自分の武器というものがまだまだ全然確立してなくて。安楽にしては階級が上で一回戦でインカレ王者によく勝ったなと思ったんですけど、続かなかったのはちょっともったいなかったなと。
――決勝に上がった二人と他の選手の具体的な大きな差は
大和(宇井)だったら持ち上げのかたちがありますし、組んでも獲れます。弥十朗(山﨑)に関してはフリースタイルと同様にプレッシャーをかけながら先にパッシブをとってグラウンドで返すという勝ちパターンが確立してるので。負けた者は逆に先パッシブとられてグラウンドで返されて後半でとっても返しきれなくて、その後どうするのかという展開がなくて。グラウンドのディフェンス力もないですし、そこら辺の差が結果につながったんじゃないかなと思いますね。
――明日はどのような戦いぶりを期待しますか
大和はちょっと浮き足立ってるというか、最初に失点するかたちが今日多かったので、手堅く先にパッシブをとれれば、弥十朗も同じですけど、大和なら持ち上げ、弥十朗ならローリングがあるので、そのかたちでしっかり勝ってもらいたいなと思いますね。
――宇井選手はインカレのときの完勝と比べると今回は初戦から苦しめられた展開でしたが原因は
減量だったりとか色々要因はあると思います。まあ最初にポイントをとられるとどうしてもあたふたして強引に技を仕掛けにいったりして自滅してしまうケースがあるんですけど、実力がしっかりついている証拠だと思うんですよね。ポイントとられてもその後手堅くグラウンドだったり場外に投げたりしているので。インカレのときに比べてちょっと腰が高くて上からいってるところを投げられたりしていて、でも修正力があるので、準決勝は最初とられましたけどその後は安定した試合運びだったのでそれをしっかりやれば二人とも優勝できるんじゃないかと。