岩澤侃(スポ3=秋田商)、吉村拓海(スポ3=埼玉栄)の健闘が光ったものの、内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)初日を終えチームとしては6位に沈んでいた早大。一つでも上の順位を目指し中量級で巻き返しを図りたい早大だったが、65キロ級の米澤圭(スポ4=秋田商)が準々決勝で破れる波乱もあり大苦戦。野本州汰(スポ2=群馬・館林)が逆転勝利を含む2勝を挙げたこと、米澤凌(スポ1=秋田商)が全日本学生選手権(インカレ)王者を破ったことなど収穫も見られたが、早大は昨年の6位を下回る7位で今大会を終えた。
予備戦をテクニカルフォールで勝ち進んだ米澤凌は1回戦でインカレ王者の尾形颯(中大)と対戦。第1ピリオド(P)に組手からの崩しでバックポイントを奪うとその後もカウンターから相手を場外へ押し出し追加点。3—0で前半を折り返す。第2Pにはテークダウンとバックポイントで立て続けに失点し同点に追いつかれるが、試合時間残り1分に相手を場外に押し出すとそのリードを守りきり勝利。続く2回戦は日体大の阿部侑太に対しテクニカルフォール負けとなったが、本来の階級を上回る74キロ級でインカレ王者を相手に金星を上げる健闘を見せた。70キロ級の野本は予備戦、「全然体が動かなくて、周りが見えていなかった」と試合開始直後に立て続けに失点を喫し0−8とテクニカルフォール直前まで追い込まれる。しかし、第1P終了間際にバックポイントで点数を返すと第2Pでテークダウンからの連続ローリングで逆転に成功し、10−8で勝利。続く1回戦も「自分のレスリングができた」とテクニカルフォールで勝ち進んだが、その後の準々決勝ではフォール負けを喫し、8位入賞で今大会を終えた野本。それでも「チームの代表として出るのは初めてだったので、そういった中で勝ち進めたのは収穫」と太田拓弥監督も目を細めた。
1回戦の逆転勝利を含む2勝を挙げた野本
優勝候補として65キロ級にエントリーした早大の大黒柱・米澤圭。しかしこの日は「減量の失敗もありましたし、自分のレスリングが単調になっていて、空回りしていた」と本来の実力が鳴りを潜めた。予備戦では試合中盤に追い上げを許すなど6−2の辛勝で勝ち進んだ米澤圭は、1回戦でも第2P中盤で1−4とリードを許す厳しい展開に。それでもテークダウンからニアフォールに持ち込み反撃ののろしを上げると、残り1分から連続でポイントを奪い逆転。苦しみながらも準々決勝へ駒を進めた。しかし、迎えた準々決勝では思うようにテクニカルポイントが奪えず、場外へ押し出しと相手のパッシブによる2点リードで迎えた第2P残り40秒。相手にテークダウンを取られ同点とされるとその後の猛攻も及ばず、ビッグポイントの差による判定負けでまさかの準々決勝敗退。不完全燃焼の8位で今大会での戦いを終えた。
優勝候補の米澤圭はまさかの準々決勝敗退に終わった
昨年から順位を1つ落とし、総合7位という結果に終わった早大。米澤圭が8位、山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)が5位に終わるなど、優勝が期待された選手の思わぬ苦戦が響くかたちとなった。太田監督も「勝負所で勝ち切れないというのが一番。ディフェンシブに守ってくる相手に対する攻め方をもっと極めていかなければならない」と課題点を上げた。一方、ここまで思うような成績が残せていなかった岩澤の躍進、本来よりも上の階級で出場した米澤凌、梅林太朗(スポ2=東京・帝京)が強敵相手に金星を挙げるなどチームとしての結果は振るわない中でも、多くの収穫が垣間見えた今大会ともなった。今年も大舞台はいよいよ天皇杯全日本選手権(天皇杯)を残すのみ。東京五輪の代表選考が始まることもあり、並み居る強敵が目の色を変えて臨んでくることが予想される。今まで以上に厳しい戦いとなるであろう最高峰の舞台だ。これまでの激闘を糧に、どこまで飛躍を遂げることができるか。早大戦士たちの集大成となる戦いがいよいよ幕を開けようとしている。
(記事、写真 林大貴)
※フリースタイルは10点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる
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結果
男子フリースタイル
▽65キロ級
米澤圭 8位
▽70キロ級
野本 8位
▽74キロ級
米澤凌 準々決勝敗退
最終結果
▽早大 7位
コメント
太田拓弥監督
――今大会2日間を総括していかがですか
勝負所で勝ち切れないというのが一番ですね。圭も久しぶりの減量で全然体が動いていなくて、動きも単調だったりと敗因は諸々あるんですけど。ただ米澤凌がインカレのチャンピオンにしっかり勝ったというのは収穫ではあると思いますし、野本州汰もチームの代表として出るのは初めてだったので、そういった中で1回戦変な試合しましたけど(笑)、1つ2つと勝てたのは収穫だったと思います。チーム事情で本来出るべき階級でなかった選手もいた中でよくやったなと思う部分と、ちょっと勝負所で弱すぎたなっていう部分があるので、そういった反省を踏まえて次の大会に臨みたいですね。
――ラスト数秒でポイントを取られての敗戦が目立ちました
米澤圭の試合にしても、弥十朗の試合にしても相手が徹底的に守ってきたところに攻めあぐねて、ラスト数秒でポイントを取られて負けてしまうっていう。そういう場面でどう攻めるかっていうのは課題として残りましたし、もっと追求していかなければならないかなと思いました。
――具体的な改善方法としては何が挙げられますか
やっぱりどういう風にフェイントをして、崩していくかって中で相手の弱点をバランスを崩してタックルを仕掛けるかっていう部分だと思います。ここで優勝している選手はやっぱり崩してからのタックルっていう流れがちゃんとあるので、ディフェンス部に守ってくる相手に対する攻め方をもっと極めていかなければならないと思いましたね。
――今大会の結果を踏まえて、天皇杯へ向けてどうチームを強化していきたいですか
厳しい結果になりましたけど、素直と拓海については自分のかたちっていうのははっきり見えましたし、そこをしっかり強化していければ天皇杯でもいい結果につながると思います。天皇杯で1人でも多く表彰台へ登れるように頑張っていきたいなと思います。
米澤圭(スポ4=秋田商)
――準々決勝敗退となりましたが、コンディションがあまり良くなかったのでしょうか
言い訳になってしまうんですけど、今回ちゃんと体重管理ができていなくて、思ったよりも減量がうまくいかなくて。気持ちは準備万端だったんですけど体がついていかなくて、周りの人にも「重心が後ろになっているよ」とか言われたんですけど、自分ではわからなくて。自分で何がダメなのかっていうのもわかっていなかったので。迷いながら試合して、空回りして。減量の失敗もありましたし、自分のレスリングが単調になっていて、それも原因かなと。もっと変化をつけていかないとなと思いました。
――減量の失敗からいろいろな部分がかみ合わなかったというところでしょうか
そうですね、全然。本当にこれ俺の動きなのかなって思うぐらいうまくいかなかったので。自分もここで取れるはずなのにっていうところで全然取れていなかったので、改善点ですね。まずは減量から見直していかないといけないですね。
――当日計量というのは慣れましたか
今年は世界大学選手権と今大会の2回しか65キロ級での計量はしていなくて、今まで70キロ級で出ていたので。今まで通りの減量法でいけるかなと思ったんですけど、全然ダメでしたね(笑)。
――チームとして今大会を振り返っていかがでしょうか
よかったなって思うのは今までなかなか成績を残せていなかった57キロ級の岩澤が決勝まで行って、決勝でも負けてしまったんですけど最初フォール直前まで行って。次の天皇杯の切符を取れたっていうのはチームにとっても大きな収穫であって、来年にも絶対つながるなと思いました。ただやっぱり上の階級なので仕方ない部分はあるんですけど弥十朗とかも5位で終わっている部分はあるので、天野杯へ向けて気持ち切り替えて頑張って欲しいと思います。
――総合7位という結果についてはどう感じていますか
内閣杯は半分個人戦で半分団体戦といった感じなんですけど、チーム力を高めないと勝てないなと。自分もケガとかでなかなか練習に出られないときもあって。主将として練習に出られなくても違うところでもっと盛り上げられなかったかなっていう反省はしていますね。自分自身も試合で負けてしまって、不完全燃焼な部分はありますね。
――次戦は早大の選手としては最後の試合となる天皇杯ですが、意気込みとしてはいかがですか
自分的にはこの内閣杯でまずしっかり優勝して天皇杯へ向けて弾みを付けたかったんですけど、思いの外うまくいかなかったので、まずきょうの単調な部分とか、減量の部分といった反省点をしっかり改善して。65キロ級はすごい激戦区なんですけど、もう東京五輪の選考が始まりますし、優勝以外は何もないので。去年が2位でおととしも2位なんで、いい加減優勝したいなと。三度目の正直じゃないですけど、なんとか優勝して有終の美といきたいですね。
野本州汰(スポ2=群馬・館林)
――1回戦は0−8から逆転勝利を収めましたが、振り返って
1試合目の第1ピリオドは全然体が動かなくて、監督の指示も全然頭に入ってこなくて。周りが見えない中で攻めていって点を取られてしまったので、少し呼吸を整えて落ち着こうと思って第2ピリオドに入りました。第1ピリオドの最後に2点返せて、その後監督にセコンドで片足だったら取れると言われたので、第2ピリオドでは1つ1つ基礎からいったら取れたので、そこで逆転できました。最後はちょっと守り過ぎちゃったんですけど。
――2回戦はテクニカルフォールでの勝利でした
2試合目は第1ピリオドで動けたので、1つ1つ自分で攻めていこうと思って。少し腰が引けて守り過ぎちゃった部分があったので、第2ピリオドでは地に足をつけて、普通に攻めて勝てました。
――準々決勝はフォール負けを喫することになりましたが、敗因としては何が挙げられますか
敗因としては自分が1回投げて、バックに回れそうな時があったんですけど、そこを逃してしまって、逆に点を取られてしまったので。片足でタックルを切らずに正面で切れていれば失点を防げた場面もあったので、タックルの対応が課題でしたね。ただただ攻めてバテちゃったっていう反省もあります。
――今大会を振り返っていかがですか
インカレから少し時間が空いてしまって、試合に対する自身が無くて。今までずっとグレコローマンだったので、その部分でも不安があったんですけど、全グレ(全日本大学グレコローマン選手権)が終わってからフリーの練習をしてきたので、やっぱり1年生も先輩もみんな強いので、そこに胸を借りるつもりで。結果としては残せていないんですけど、2試合目とかは自分らしいレスリングができたと思うので、そういった点は続けていきたいです。
――今大会課題も収穫も見えたと思いますが、今後へ向けてどう取り組んでいきますか
もうじき東日本秋季新人戦があるので、そこへ向けて今回の試合の反省点を生かして、タックルの処理であったり、組手の崩し方とかを強化していきたいと思います。
米澤凌(スポ1=秋田商)
――普段よりも重い階級の74キロ級での出場でしたが意識した点などはありますか
力勝負では勝てないというのはわかっていたので、できればあまり組まないように距離をとって攻めました。
――2回戦の相手はインカレ王者でしたが、振り返っていかがですか
自分からテークダウンしたのは1つしかなったので、もう少し攻めるべきだったのかなと思います。
――準々決勝は第2ピリオド中盤までは粘りの戦いを見せましたが
第1ピリオドで力の差っていうのはかなり感じていて、組手の部分で追い込まれていたので、なんとか粘ったんですけど。第2ピリオドでバテていたところで組手とか、フィジカルの部分で相手に優位に立たされてしまったかなと思います。
――今大会を振り返っていかがですか
中大の選手はインカレの優勝者だったので、そこに勝てたのは自信になったかなと思うんですけど。準々決勝は秋田商の先輩で、そこでアンクルを決められたのと、距離を詰められすぎた部分でもう少しうまくやればいけたのかなと思いました。
――天皇杯は70キロ級の出場ですが、今大会74キロ級で出場したことはプラスになりますか
70キロ級よりも力は74キロ級の方があるので、フィジカル負けをすることはないと思うので、モチベーションにはなりました。
――天皇杯へ向けて意気込みをお願いします
70キロ級は五輪非階級なので、人数も減ると思うので、優勝ですね。目立たない部分ではあるんですけど、優勝を目標に頑張っていきたいです。