健闘を見せたものの、表彰台の頂点に早大戦士の姿はなかった。4日間にわたる熱戦が繰り広げられた全日本学生選手権(インカレ)最終日は男子グレコローマンスタイルの準々決勝以降の試合が行われた。早大からは前日の試合を勝ち抜いた松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)、宇井大和(スポ3=和歌山・新宮)、齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)が出場したが、松本がこの日の初戦となった4回戦で敗退。優勝も十分に狙える立ち位置にあった斎藤と宇井も準決勝で敗れ、学生王者の座をつかむことはかなわなかった。
97キロ級の松本は山場に挙げた準々決勝で鈴木友也(日体大)と対戦。しかし、「胸を合わせると逃げてしまう悪いクセが出てしまった」と試合序盤に場外押し出しによる失点を許すとそこからは相手のペースに。第2ピリオド(P)では攻勢に転じる場面も見られたが、自身のスタイルを通用させてもらえず、課題とするスタンド技でポイントを奪うことができない。試合終盤にはパッシブにより加点を許し、そのまま0−2で敗れた。それでも『スタンドにおけるスタイルの確立』という課題も明確になり、有意義なインカレとなった。一方、準々決勝では序盤の先制点を守り切り、苦しみながらも勝利をあげた宇井。しかし、準決勝ではフィジカルで劣る相手に対し得意のスタンド技を決めれない時間帯が続く。ビハインドで迎えた試合終盤にはパッシブで不利な体制を取られると、そのままローリングを決められ2−6での敗戦に終わった。「準決勝に勝っていれば優勝の可能性もあったので、悔しい」と宇井。一方で1年時のベスト16、昨年のベスト8から成績を伸ばす3位入賞という結果には手応えを感じていた。ビッグタイトル獲得は手の届くところまで来ている。
宇井は昨年のベスト8から成績を伸ばし3位に入賞
最後のインカレということもあり、優勝を目指し臨んだ72キロ級の斎藤は準々決勝で瀬野春貴(日体大)と対戦。自身が今大会のターニングポイントと語ったこの試合、劣勢を強いられた第1Pを3点のビハインドで折り返したが、第2P序盤に相手のタックルを受け止めると、そのままバックドロップを決め逆転に成功。その後は積極的に攻めるスタイルを貫き、試合終盤には再び4点の投げ技を成功させて突き放し、11−5で勝利を収めた。逆転勝利の勢いに乗りたい齋藤だったが、迎えた準決勝では第1Pにパッシブによるペナルティから投げ技を決められ5点のビハインドを背負う苦しい展開に。第2ピリオドには最大7点の差を付けられるが、齋藤も5点の投げ技を決めるなど、底力を見せる。しかし追い上げは及ばず、最終的に9−14で最後のインカレを終えた。「山場の準々決勝を突破したことで少し気のゆるみもあった」。最大の敗因にはやはりグラウンドでの大量失点を挙げた齋藤。自分の得意とするスタイルが通用していただけに、悔いの残る3位入賞となった。この悔しさは全日本大学グレコローマン選手権(全グレ)で晴らしたい。
悔しさの残る3位となった齋藤
4日間にわたるインカレの激闘を終えた早大。優勝者はルーキーの安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)ただ一人にとどまった。最後のインカレを迎えた4年生から優勝者が出なかったこと、また個々の実力を鑑みれば、これは少し物足りない結果と言えるだろう。しかし一方で、合計7選手が表彰台に上がった点については太田監督も「総合優勝が狙えるような下地はできてきたかなという手応えはありました」と振り返る。チーム一丸となって学生王者を目指した夏の鍛錬期間、そしてインカレでの戦いを経て、チームは確実に成長を遂げた。インカレが閉幕し、レスリングのシーズンもいよいよ後半戦へ突入する。チームとしての後期最大の目標である内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)総合優勝へ向けて、そして年末に控える国内最高峰の舞台・天皇杯全日本選手権へ向けて。早大戦士たちはインカレでの激闘を糧に、新たなスタートを切る。
(記事 林大貴、写真 藤岡小雪)
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結果
男子グレコローマンスタイル
▽67キロ級
宇井 3位
▽72キロ級
齋藤 3位
▽97キロ級
松本 準々決勝敗退
コメント
太田拓弥監督
――松本選手は4回戦で敗退となりましたが振り返っていかがですか
そうですね、直毅に関しては、組んだときの展開で少し逃げてしまって。やっぱりある程度強い相手になってくると簡単にはパッシブからグラウンドで返させてはもらえないので、そういう場面での引き出しっていうものがまだ全然ないので。前期の試合ではいい結果を残してくれたんですけど、やっぱりスタンドからテクニカルポイントを取れるようなかたちなにか一つでも身に付けさせないと上に行くのは難しいと思うので、今後はその部分を頑張らせたいですね。
――宇井選手は準決勝では思うようにポイントを挙げられませんでしたが、原因はどこにあるでしょうか
グラウンドで失点しまったことが大きな敗因だと思いますね、隼佑にしてもそうなんですけど。やっぱりグラウンドで回されて何点も取られてしまうと思うように試合を運ばせてもらえないので、その部分の攻防ですね。2人ともスタンドでの得意技は持っているので、そこで自分のかたちに持って行くような試合運びができないと難しいですね。それとやっぱり単純に筋力の差で単純に負けていて、プレッシャーの方が大きかったですね、組み手のところだったりとか、前へのプレッシャーだとかで負けてしまっていましたね。
――齋藤選手は劣勢の状況からでもビッグポイントを奪うなど、底力のようなものを感じましたが見ていていかがでしたか
一発で大きいのを取れる選手なので。ただ最初にパッシブ取られてグラウンドで返っちゃっているので、そこで0点に抑えられればまだまだ後半チャンスがあったんですけど。後半に大きいポイントを2回取れましたけど、ルールが変わっているので、いかにパッシブを取って先にグラウンドで返すかっていうのがカギになってくると思います。うちの選手は結構思い切りがいいので、まともに組ませてくれないんですよね。そういったところを改善しないといけないと思いますね。
――インカレの4日間を総括していかがですか
優勝者1人っていうのはちょっと寂しいんですけど、多くの選手が表彰台に上ったという点では、ちょっと改善すれば総合優勝が狙えるような下地はできてきたかなという手応えはありました。ただ何回も言う通り実力の二極化が進んでいるのでそこは大きな課題として取り組んでいきたいなとは思いますね。
――全日本大学グレコローマン選手権や内閣杯はどういった目標で臨みますか
グレ選は今の状態ではちょっと厳しいんですけれども、総合3位を狙っていくというところと、内閣杯に関しては誰をどの階級にするかは難しいところがあるんですけど、総合優勝できる下地はできたので、インカレで出た課題をしっかりと改善して、後期は内閣杯の優勝を目指して頑張りたいと思います。
――この後米澤圭選手(スポ4=秋田商)と山﨑弥十朗選手(スポ3=埼玉栄)は世界学生選手権に挑みますがどんな成績を期待しますか
世界学生は僕も一緒に帯同するんですが、過去にも何回か行かせてもらったんですけど、そこまでレベルの高い試合ではないので、悪くても銅メダル。2人とも実力はありますし、経験もあるので、金メダルを取って返って来させたいなと思いますね。
――その後は松本選手、須崎選手(優衣、スポ1=東京・安部学院)、小玉選手(彩天奈、社1=高知東)が出場する世界ジュニア選手権が控えていますが、どういった戦いを期待しますか
もちろん1つでも多く勝ってもらって。優衣はもうシニアの世界チャンピオンなので、失点ゼロで全試合テクニカルフォールぐらいで返ってきてほしいところですね。彩天奈に関しても十分戦える力は持っていると思うので、最低でもメダルを取って返ってきてほしいなと思いますね。直毅関してはまだまだできていない部分があるので、1つでも多く試合をして経験を積んでほしいのと、何かグレコで勝つきっかけっていうものをつかんできてほしいですね。
齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)
――3位という結果についてはどう感じていますか
そうですね、優勝するつもりだったので残念としか言いようがないですね。
――最後のインカレでしたがどういった意気込みで臨みましたか
一番の意気込みとしては、やっぱり最後っていうこともあって優勝だったんですけど、後輩もすごく伸びてきているということもあって、先輩の威厳を見せたと思って臨んだんですけど、ダメでしたね(笑)。
――準々決勝では劣勢から逆転勝利を収めましたが振り返っていかがでしょうか
組み合わせを見た中では自分の中では一番強い相手だと思っていたので、そこをしっかり自分の形に持っていって勝てたということは良かったんですけど、やっぱり次負けてしまったので。そこの勝ちの流れを次に持っていけなかったのが敗因かなとは思います。
――準決勝ではビッグポイントを重ねるなど健闘しましたが及びませんでした。敗因はどこにあると思いますか
取れない相手ではないと思ったので。ただやっぱりグラウンドの失点で最初5点差つけられたのが大きかったと思いますね。最初突き放されて流れを作られたのも敗因かなと思います。
――山場の準々決勝を突破しながらも優勝に届かなかったことはやはり悔しさが残りますか
そうですね、決勝の相手は対戦したことがあって、勝ったことがある相手だったので。まあ準決勝もそうだったんですけど。なので山場っていうのを準々決勝で置いていて、そこを突破したことで少し気のゆるみが出ちゃったのかなと思います。
――今回のインカレは今後の大会にどうつなげていきたいですか
グレ選(全日本大学グレコローマン選手権)は自分もグレコローマンスタイルの決勝を任されて、もう直ぐ1年近く経つんですけど(笑)。やっぱり今回(グレコでは)3位二人っていう厳しい結果しか出なかったんですけど、そこをこれから1ヶ月ちょっと、自分が中心となって、グレ選へ向けてフリースタイルの選手もどんどん巻き込んでいって底上げできたらなと思います。
宇井大和(スポ3=和歌山・新宮)
――3位という結果について
インカレ(全日本学生選手権)は1年のときがベスト8、去年がベスト16で、入賞は初めてなので、最低限結果を残せて良かったのではないかと思っています。
――うれしさと悔しさだとどちらが強いですか
準決勝に勝っていれば優勝の可能性もあったので、悔しい方が大きいですね。
――初日は2試合ともテクニカルフォールで勝利しましたが、調子は良かったですか
勝たなければいけない相手に対して、自分のプラン通りに試合を進められたと思います。
――試合が進むにつれて、なかなか攻撃が思うようにいかない場面があったかと思いますが
準々決勝は、最初スタンドで攻めてグラウンドを取れたんですけど、そこからしっかり技が決まり切らなくて。あそこで一気にテクニカル(フォール)に持っていくというのが自分のスタイルなんですけど、それができませんでした。6分間グダグダした試合をしてしまったので、そこは反省点です。
――それをどう改善していきたいと考えていますか
テクニックをもうちょっと磨いていかなければならないなと思っています。
――準決勝での敗因は
相手の力が思った以上に強くて、押し合いになってスタンドで技が取れませんでした。何もできずに、ただ6分間が過ぎていったという感じですね。グラウンドも守り切れなかったです。
――このような大きな大会で優勝するためには、今後どのようなことが必要になってくると考えていますか
最初に攻めて前に出て、グラウンドを取って一気に返して、テクニカル(フォール)で勝つというのが自分にとって一番いい試合運びだと思っています。それするためには最初にグラウンドを取らないといけないし、そのためには相手に押し勝つというのが大事なので、力の強いガツガツ来る相手にも負けずに押し返して、自分が前に出ないといけないと思います。現時点では体力面やパワーが足りないのかなと考えています。
――後期の大会に向けての目標や意気込みを教えてください
3年になって新人戦(東日本学生春季新人選手権)などに出なくなって、試合数も少なくなったので、1つ1つしっかり自分が残せる最低限以上の結果を残していきたいと思います。国体(国民体育大会)もあるし、グレ選(全日本大学グレコローマン選手権)もあるので、その2つで3位…優勝できればいいかなと思います。
松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)
――準々決勝が山場とおっしゃっていましたが
組まれるっていうことはわかっていたので、組まれることを想定して練習はしていたんですけど、肝心なところでいつものクセというか、胸を合わせると逃げちゃうんですよ。そのくせが肝心なところで出ちゃって、そこで仕掛けに行くことができればよかったんですけど、そこが少し心残りですね。
――準々決勝ではなかなか自分のスタイルをさせてもらえませんでしたが、原因はどこにありますか
そうですね、単純にパワーが足りなかったっていうのもありますし、最初に(場外に)出されちゃった時点でそれはちょっと難しいかなとも思っていたので、そこがもう一番の敗因というか。抱えられたらすぐに対処できればよかったんですけど、それができなかったので、そこが一番の敗因かなと思います。
――テクニカルポイントを取れるようになることがやはり課題でしょうか
そうですね、やっぱり上の方になるとなかなかグラウンドも取れない時があるので、一発何かないとダメだなとは思っているんですけど、なかなか自分に合ったものが見つからなくて、迷走中ですね。これからそれを見つけて確立していけるかっていうところですね。あとはパワーと、グラウンドでの守りっていうのが重要かなって思います。
――今回はフリーとグレコ両方出場しましたが、その点を踏まえてインカレはいかがでしたか
上手いこといかなかったというか、やりきったことはやりきったんですけど、いい形で自分の持ち味を出せたかっていうとそんなこともなくて。やり方次第ではどうにかなったなっていう部分もあったし、まだまだ足りないなっていう部分もあったので。課題を見つけられたっていうのは大きな収穫だと思うので、今後に活かしていきたいなと思います。
――今後控えている大会に向けて意気込みをお願いします
今回出た課題を一つ一つ改善していって。やっぱりレベルアップしないと、今のままでは勝てないと思うので、下からも強い選手が入ってきているので。まずは普段からの練習を頑張って、グレ選でも結果を出せればいいかなと思います。