早大が誇る新星が学生王者の座をつかんでみせた!激戦が続く全日本学生選手権(インカレ)2日目。男子フリースタイルのベスト16以降の試合と女子の試合が行われたこの日、早大からは前日の戦いを勝ち抜いた7人に加え女子3選手が出場。吉村拓海(スポ3=埼玉栄)、山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)、伊藤駿(スポ4=京都・網野)は決勝で惜敗し2位となったが、一方で安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)がラスト20秒から逆転勝利を収め、ルーキーにして学生王者の座に輝いた。
57キロ級で出場した岩澤侃(スポ3=秋田商)は前日の勢いそのままに3回戦をテクニカルフォールで突破したものの、4回戦は序盤の大量失点が響き大敗を喫し、ここで大会から姿を消した。65キロ級で挑む米澤凌(スポ1=秋田商)も4回戦で優勝候補の相手に攻め手を欠き、1−3で敗れた。インカレ3連覇と2階級制覇の離れ業に挑む米澤圭(スポ4=秋田商)は、体格で劣る70キロ級で苦しみながらも勝ち進んでいく。しかし、準決勝では「本来の力を出し切れなかった」と1点ビハインドで迎えた試合終了間際に突き放され万事休す。課題の残る3位でインカレでの戦いを終えた。この日の女子選手たちの戦いは振るわず、表彰台へ上るものはなかった。55キロ級の臼池優月(社2=茨城・鹿島学園)は1回戦でフォール負けを喫し、最後のインカレに挑んだ小林奏音(スポ4=長野・佐久長聖)も前半こそは粘りを見せるも、後半に立て続けにポイントを許してしまいテクニカルフォール負け。小玉彩天奈(社1=高知東)も2回戦で川井友香子(至学館大)相手に善戦したが、明治杯女王のカベは高く、0−7で完敗した。
準決勝で敗れた米澤圭。インカレ3連覇はかなわなかった
「大学に入ってから1、2を争うくらいコンディションは良かった」という言葉通り快勝続きで勝ち進んだ吉村。初のビッグタイトル獲得を懸けて臨んだ決勝では試合終了間際までリードしていたが、最後の攻防で逆転を許してしまい、悲願の優勝にはあと一歩手が届かず。伊藤駿、山﨑も決勝で惜敗し、悔しいかたちで優勝を逃す結果となった。山﨑は思うようにタックルを決め切れず、ポイントを重ねられないまま2−3で敗れ、2年ぶりの優勝はかなわず。伊藤も第1ピリオドで4点技を決めるなど6−0まで点差を広げたものの、その後徐々に追い上げを許すと、残り30秒から逆転を許し、2年連続の2位で大会を終えた。一方でこの日早大で唯一学生王者の座を手にしたのはルーキーの安楽だった。JOCジュニアオリンピックカップで敗れていた榊大夢(山梨学院大)との再戦となった決勝戦は両者譲らぬ拮抗(きっこう)した試合展開となる。2−1でリードして迎えた残り24秒時点でバックポイントを逆転されるもその直後、渾身のタックルからポイントを奪い逆転。試合終了のホイッスルが鳴ると、安楽は雄たけびとともに大きくガッツポーズを見せた。
優勝を決め、雄たけびとともにガッツポーズをする安楽
ルーキーながらも勝負所で粘り強さを発揮し、見事学生王者の座をつかんだ安楽。太田拓弥監督は「ラスト20秒でよく取り切りましたし、JOCジュニアオリンピックカップで負けていた相手に勝ったというのはすごい収穫です」と手放しで称賛した。一方で、決勝で敗れた伊藤、山﨑、吉村が苦しんだ『ラスト30秒での攻防』や、『チーム内の実力差』といったチームとしての課題はいまだ浮き彫りであった。それでもインカレという大舞台で早大から4選手が決勝へと駒を進めたことはチーム全体の力が上がっていている証左だ。3日目からは男子グレコローマンスタイルの試合が行われる。太田監督も期待に挙げた齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)、宇井大和(スポ3=和歌山・新宮)、松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)らはルーキーの快進撃に続くことができるだろうか。
(記事 林大貴、写真 藤岡小雪、涌井統矢)
※フリースタイルは10点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる
入賞を果たした選手たち。左から山﨑、米澤圭、安楽、伊藤、吉村
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結果
男子フリースタイル
▽57キロ級
岩澤 4回戦敗退
▽61キロ級
吉村 2位
▽65キロ級
米澤凌 4回戦敗退
安楽 優勝
▽70キロ級
米澤圭 3位
伊藤 2位
▽79キロ級
山﨑 2位
女子
▽55キロ級
臼池 1回戦敗退
▽59キロ級
小林 2回戦敗退
▽62キロ級
小玉 2回戦敗退
コメント
太田拓弥監督
――ここまでの2日間を振り返っていかがですか
やっぱりいつも言っている通り二極化の流れが食い止められていないように感じるので。女子にしても1、2回戦で敗退、男子は結局3位以上に入賞する者とそれ以外。凌なんかは負けましたけど優勝候補の選手といい勝負できていてので、それ以外の者との差をもっともっと詰めていかないといけないのかなというのはやっぱり感じましたし、4人決勝に進んで優勝が1人っていうのも少し寂しいなっていうところで。1年生で優勝するっていうのもすごいことなんですけど、やっぱり3、4年生の中で誰か一人でも優勝して欲しかったなっていうのはありますね。しかも3人とも勝てない試合ではなかったので、ちょっともったいないな。ただ全日本大学選手権に向けていい課題ができたんじゃないかなとは思いますね。
――小玉選手に関しては河合友香子(至学館大)に内容では善戦していましたがいかがでしょうか
ちょっと弱気になっちゃいましたね。あの試合は0−7で終わりましたけど、7点の差はないと思いますし、見た感じ、2、3ヶ月あれば十分追いつけるんじゃないかなというぐらいの差なので、12月の全日本選手権までには自分のスタイルをしっかりと確立させた上で挑戦させたいなと思います。
――4人が決勝に進んだことについてはチームの成長が感じられる点ではないでしょうか
そこはすごいよかった点ですけど、ただやっぱり内容が内容だけに。もっと差があって負けていたならまだしも、4人全員優勝していてもおかしくなかったので、そこはもっと改善していかないと、紙一重の部分をもっと詰めていかないといけないのかなとは思いましたね。
――山﨑選手は決勝で僅差で敗れるという展開が続いていますが、原因はどこにあると思いますか
そうですね、もっと早くに攻撃していければもっと楽な展開になったと思うんですけど。拓海にしてもそうなんですけど、やっぱり決勝戦となると守りに入ってしまうというか、点入った時点で守りに入っちゃって。逆に安楽なんかに関しては、2−1で守りに入って点を取られたところはあまり良くなかったんですけど、それでもラスト20秒でよく取り切りましたし、JOC(JOCジュニアオリンピックカップ)で負けていた相手に勝ったというのはすごい収穫ですね。JOCの時も松本の1人優勝で、それ以降、それに触発されるように他の選手も階級、スタイルは違えどチーム全体がいい雰囲気になったので、今回も1年生が優勝したことでチームとしていい方向に向いていけるんじゃないかなと思いますね。これは4人とも全員準優勝だった場合とは全然違うわけで。安楽に関しては普段の練習で全然米澤圭に勝てていないので、その上での優勝なんで、選手の起用のことに関しては今後悩まされますけど、いい試合だったんじゃないかなと思います。
――吉村選手と岩澤選手は自身のスタイルが確立できてきたように見えます
そうですね。岩澤に関しては最初にポイントを一気に取られてしまったので、ああいう(大差の)展開になってしまったんですけど、11月の内閣杯には追いつくぐらいで、(決勝の相手と)点数ほどの差はないと思うので、内閣杯に向けてチーム一丸となって、軽量級を中心に取り組んでいきたいと思いますね。
――あすはグレコローマンスタイルの試合が予定されていますが、どのような戦いを期待したいですか
斎藤、宇井、松本の3人が柱となって十分戦える準備はしてたので、体重もスムーズに落とせていたようなので、3人とも優勝できる力は持っていると思います。松本と州汰に関しては減量がさほどないということと、経験値を上げるというところでフリーとグレコ両方で出場させていますね。州汰にしてもここでちょっと頑張らせたいなと思いますね。
米澤圭(スポ4=秋田商)
――70キロ級での挑戦でしたが手応えの方はいかがでしたか
初日は相手との実力の差もあったので、自分のやりたいレスリングができたかなと思うんですけど、2日目になって相手のレベルも上がってくるとなかなか自分脳ありたいことができなくなって。シンプルに相手が強いというのもあったんですけど、体重の関係もあったりして、自分の実力を出せない部分があって。やっぱり65(キロ級)で上で勝つためには1つ上の階級でも自分の力を出し切れるようにしないと勝てないと思うので、なので上の階級でも通用したかったなとは思いますね。
――先日お伺いしたときに「最後のインカレなので楽しんでやりたい」おっしゃっていましたが、いかがでしたか
そこは全然普通に、楽しめたんじゃないですかね(笑)。でもやっぱり負けてしまったっていうのは悔しい部分もあるので、半分楽しめたんですけど、半分はまだまだ甘いな、自分には足りない部分が多いなということを感じましたね。
――主将としてチーム全体を見て、今回のインカレはどう感じていますか
今回4人決勝も決勝に行けたということは、自分は負けてしまったんですけど、とても嬉しいことですし、1年生の安楽も強い選手に勝って決勝に進出しているので。なかなか4人インカレに決勝に残るのは自分が大学にいて初めてだと思いますし、全体的なチームの力が上がってきているなと感じます。
――その要因はどこにあると思いますか
チームとしてのまとまりもそうなんですけど、シンプルな個々の強さが一番かなと思います。練習でもしっかり自分の考えを持って取り組んでいて、そういう選手は本当に強いと思うので、それがそれぞれ生きてきて、今回決勝に4人残ってるんじゃないかなと思います。一人一人の意識の高さが全体のレベルアップに繋がっていると思います。
――この後は世界学生選手権が控えていますが、目標はありますか
今回は自分の力が全然出せなかったので、次は自分の階級である65キロ級で試合することになるので、そこではしっかり自分の持ち味をしっかり出して。今回負けたことはすぐに切り替えて、自分のできることを最大限に発揮して、世界学生選手権で結果を残したいと思います。
――今回70キロ級で挑んだことはどのように生きるでしょうか
自分より階級が上の選手とやることで、自分が得意とすることが出しづらいということがわかったので、そうなったときにどうするかっていうのを考えさせられたので、もっと階級上の選手と練習する機会とかも増やしていって、どんな相手でも自分の得意技を出せるような練習をしていかないといけないなと改めて再確認させられたので、そういった部分も含めて技術の精度も上げていきたいですね。
伊藤駿(スポ4=京都・網野)
――最後の全日本学生選手権となりましたが、どういった目標を持って臨みましたか
チャンスだと思っていたので、優勝を目指していました。
――結果としては決勝で逆転負けすることとなりましたが、正直なお気持ちは
またか…という感じですね。内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)とか天皇杯(天皇杯全日本選手権)でも逆転負けしているので、今回もやってしまったな…と思いました。
――その原因は
試合の組み立て方ですかね。練習と違ってどうしても後半ばててしまって。ディフェンスが強くないのに相手のペースに持っていかれて、最後に(点を)取られてしまいました。
――残りのシーズンに向けてこの結果をどう生かしていきたいと思いますか
毎回の課題なんですけど、体力不足の改善ですね。あと普段の練習から、試合に近いシチュエーションでしっかりやらないと駄目だと思いました。
――次戦への意気込みを
国体(国民体育大会)が次戦で、国体には1つ上の階級で出ます。パワー負けしないようにウエイト(練習)をしっかりして、基礎を固めていきたいと思います。
吉村拓海(スポ3=埼玉栄)
――決勝戦を振り返っていかがでしたか
自分の組手の展開ができなくて、対策されていたなというところはありました。もともと準決勝が山場だと思ってこの大会に臨んでいたので、そこに勝ったことで心のどこかで決勝も勝てるだろうという気持ちがあって、相手への対策を怠ってしまったかなと思っています。
―大会を通してコンディションが良いように見えましたが、いかがでしたか
そうですね。この大会は頑張ろうと思っていたので、普段の食事であったり練習であったりは今まで以上に意識して迎えたので、大学に入ってから1、2を争うくらいコンディションは良かったなと思います。
――意識の変化であったり、技術面の成長を感じられる部分はありましたか
この大会では今まで自分が練習の中で考えてやってきたことが少し結果として出たかなと思いました。でも、まだまだ自分の課題を追求してレベルを高めていかなければならないなと思ったので、収穫は大きい大会だったなと思います。
――準優勝という結果についてはどのように捉えられていますか
やはり優勝するしかないという気持ちで臨んだので、悔しい気持ちです。
――今後への目標と、このインカレを今後へ向けてどのように活かしていかれますか
1ヶ月後には国体があって、それからも後期の試合が続いていくので、このインカレを経験したから国体であったり全日本であったりのシニアの大会でも勝てたといえるような大会になっていればいいなと思いました。
山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)
――決勝戦を振り返っていただいていかがでしたか
決勝戦の相手は自分が負けてたことのある選手だったので、それほど気負うことなくチャレンジャーの気持ちで臨んだんですけど、やはり相手も波に乗っている選手ですし、構えもしっかりしていたので点が取れない部分がありました。その中でしっかりタックルに入れて2点取れたのは良かったんですけど、最後の1分間がうまく動けなかったので、体力が少し不足していたのかなとは思いましたね。
―インカレはどのような位置付けで臨まれましたか
この大会の後にブラジルで世界学生大会が行われるんですけど、それの前哨戦ということで試合勘をつけてブラジルに臨もうと思っていたのですが、まさかこの大会で負けるとは思っていませんでした。でも試合の中でしっかりと動けていたと思うので、良い調整ができたかなと思います。
――ご自身の出来はいかがでしたか
反省点もしっかりと見えたので、悪くはなかったかなと思います。
――反省点とは具体的にどのような部分でしょうか
足の使い方ですね。足と上半身の連動性っていうのがまだまだできていないと思ったので、自分の指先までしっかりと動かせるようになったらいいなとは思っています。そのために瞬発系のトレーニングとかをやっていければなと思っています。
――最近、決勝戦で惜しくも負けてしまうことが多いですが、そこを勝ちきるためには何が必要だとお考えですか
気持ちの面が大きいのかなとは思いますけど、やはり流れをどう作るかなというところですかね。
――世界大学選手権への目標をお願い致します
とりあえずは入賞を目指しています。海外の大学生相手に自分がどこまで通用するのかというところで、自分も大学生の中ではもう上級生ですし、入賞を狙っていければなと思っています。
安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)
――初めての全日本学生選手権(インカレ)となりましたが、目標は
目標は自分のスタイルを確立するということでした。その上で、優勝を目標にしていました。
――見事優勝を果たされましたが、今のお気持ちは
僅差での優勝で、逆転したり逆転されたりのシーソーゲームだったので、うれしいはうれしいですけど…完璧に勝ったわけではないので、そこは次に向けての収穫になったと思います。
――今大会全体として接戦が多かったと思いますが
そうですね。以前までは点を取り合って負けてしまうということがあって、今回は点を取られても取り返す気持ちでいました。取られても取り返すという技を身に付けることが、今後への課題ですね。
――今大会を通じて成長を感じた部分は
減量がうまくいきました。生活面も考えて体調を良くして(大会を)迎えることができたので、レスリングに対する姿勢が成長した部分だと感じました。
――優勝したことで得たものはありますか
JOC(JOCジュニアオリンピックカップ)も負けて、新人戦(東日本学生春季新人選手権)も負けて、ここ最近ずっと勝っていなかったので、インカレで久しぶりに優勝できてうれしいものはありました。
――今回の結果を踏まえて今後にどうつなげていきたいですか
今後はもっと自分のスタイルを確立させていきたいです。どんどん自分のレスリングを確立していけば勝てると思うので、自分に合ったレスリングを追求していきたいと思います。
小玉彩天奈(社1=高知東)
――初めてのインカレでしたが、振り返っていかがでしたか
インカレとはいえ、レベルは全国と変わらなかったので、大学4年間しかない中で1年生のうちから優勝できたらなと思っていました。でも2回戦で世界選手権の出場権を持っている選手と当たることになってしまって、自分の力を出し切れれば相手が強くても勝てるんじゃないかなという自信もあったんですけど、結果が良くなかったので悔しいです。
―川井選手との対戦の際、どのような対策をたてられましたか
やはり力が強い相手なので、自分の最大の課題である組手を重点的に練習しました。相手を崩して、自分の流れにもっていこうと思っていました。
――内容としては善戦した試合だったと思いますが、振り返っていかがですか
失点がやはり多かったです。最初に4点を取られて、そこから守り切れればよかったんですけど、ローリングで返されてしまうというずっと前からの課題も出てしまい、課題が克服できていないということも痛感しました。
――トップレベルの選手と対戦されて、ご自身との差は感じられましたか
練習の質も向こうの方がしっかりとやっていると思いますし、世界でも活躍している選手で、自分はまだまだ活躍できていないので差は感じました。
――改善点などは見つかりましたか
とりあえずローリングは守れるようになりたいです。2ヶ月くらいケガで練習していない時期があって体力もだいぶ落ちてしまっているので、体力も戻しつつ組手の技術や自分から点を取りにいくような練習をしていきたいと思います。
――世界ジュニアでの目標をお願い致します
世界ジュニアは絶対に優勝したいです。頑張ります!