須﨑が明治杯3連覇を達成!

レクリング

 「本当にここで優勝して絶対に世界選手権に行くしか自分には道がないと思ったので、強い執念と信念があって優勝できたのでよかったです」(須﨑優衣、スポ1=東京・安部学院)。明治杯全日本選抜選手権(明治杯)最終日、ついにその表彰台の頂点に早大戦士が君臨した。女子50キロ級で出場した須﨑は決勝で昨年の天皇杯全日本選手権(天皇杯)で苦杯をなめた入江ゆき(自衛隊体育学校)をフォール勝ちで下し、明治杯3連覇を達成。安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)、小林奏音(スポ4=長野・佐久長聖)は1回戦敗退となったが、敗れた選手たちも今後につながる充実した戦いを演じた。

 安楽、小林は地力のある選手を前に屈するかたちとなった。男子フリースタイル65キロ級でエントリーした安楽は優勝候補の一角、乙黒拓斗(山梨学院大)と対戦。試合開始30秒に組手から崩されるとバックを取られ先制を許す。その後も相手のパワーに屈するかたちで再び背後をを取られ追加点を加えられてしまう。意地を見せたい安楽だったが、第2ピリオド(P)も守りに入った相手から反撃の糸口をつかむことができず、そのまま判定負けを喫した。全日本トップクラスとの差を見せつけられたかたちとなったが、「優勝した選手にあれだけの戦いができたので、十分、力の差というのはあまりないと思う」と太田監督は振り返った。小林も1回戦で対戦した岩澤希羽(至学館大)に1ポイントも取れないままテクニカルフォール負け。大学ラストイヤーを有終の美で飾るためにも、今回の敗戦を生かし、全日本学生選手権(インカレ)での雪辱に期待したい。

早大に入学し身に付けたというアンクルホールドで相手を圧倒する須﨑

 明治杯2連覇中の須﨑は昨年の天皇杯女王・入江ゆき(自衛隊体育学校)、リオ五輪金メダリストの登坂絵莉(ALSOK)らが集う群雄割拠の女子50キロ級に出場。第3シードの須﨑は2回戦、準決勝と1点も取られることなくテクニカルフォールで勝ち進む。迎えた決勝の相手は準決勝で登坂に完勝し勝ち進んだ因縁の相手・入江。第1Pは両者互角のせめぎ合いとなった。パッシブによるアクティビティポイントで先制を許したが、2分54秒に足タックルからバックに回り込みすぐさま逆転。その後も拮抗(きっこう)した展開となり、2−1とリードして前半を折り返した。勝負が決したのは第2P開始直後。入江のタックルを受け止めカウンターからテークダウンを奪うとそのままフォール勝ち。昨年の天皇杯でテクニカルフォールで敗れた入江に対しリベンジを果たした須﨑は、試合終了を告げるホイッスルが鳴ると同時に大きくガッツポーズを決めた。これで明治杯3連覇となった須﨑。しかし、まだ世界への切符を手にしたわけではない。須﨑は3週間後、世界選手権代表選考プレーオフで入江と再激突する。「強い執念を持って、絶対に自分が世界選手権に行くんだと思って3週間練習して、絶対に世界選手権に行きたい」(須﨑)。須﨑と入江の対戦成績はほぼ互角。連勝記録を止められた過去もある因縁の好敵手との、最高の舞台をかけた決戦へと挑む。

須﨑は昨年苦杯をなめた入江にリベンジを果たしガッツポーズを決めた

 須﨑の優勝という最高のかたちで幕を閉じた今年度の明治杯。優勝者は須﨑のみとなったが、「負けた選手もしっかり改善すれば上位に進出できるような内容でもあったので、全体的には合格点なんじゃないかなと思います」と太田監督は振り返る。あと一歩で優勝を逃した山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)など、悔しい思いをした選手もあったが、その中でも各々が成長を実感する有意義な大会となった。今大会で得た課題を見つめ直し、大舞台でのさらなる飛躍を誓う。

 

(記事 林大貴、写真 宅森咲子、皆川真仁)

※フリースタイルは10点、グレコローマンスタイルは8点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる

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結果

男子フリースタイル
▽65キロ級 
安楽 1回戦敗退

女子
▽50キロ級 
須﨑 優勝
▽59キロ級 
小林 1回戦敗退

コメント

太田拓弥監督

――須﨑選手の決勝戦を振り返っていかがですか

そうですね、優衣らしくどんどん攻めていくかたちで。12月に戦ったときには逆にああいうかたちで負けたんですけれども、その相手に勝って、すごく優衣らしいいい試合だったと思いますね。

――天皇杯でテクニカルフォール負けを喫していた入江選手にフォール勝ちできた一番の要因というのは

やっぱり今日の1回戦から準決勝、優衣らしくどんどん積極的に攻めていって、グラウンドで返して。去年はやっぱりちょっと世界チャンピオンになってから過信もあったのか優衣らしい積極的な攻めというのが影を潜めていて、それがなくなったので天皇杯で去年負けたと思うんですけど、それが戻ってきたところが勝因の一つなんじゃないかなと思います。

――天皇杯での敗戦がいい契機になったと

もちろんそうですね、はい。ただ相手もしっかり今回の反省を踏まえて練習を積んでくると思うので、プレーオフでもしっかり勝って、世界選手権の代表にさせたいと思いますね。

――ジュニアクイーンズカップから2ヶ月間どういった取り組みをしてきましたか

組手で相手を崩すところとタックルの処理のところですね。

――3週間後にはプレーオフで再び入江選手と戦うことになりますが、そこへ向けては

やはり組手の崩しからタックルの処理のところと、グラウンドのところですね。きょうも1回タックルで取られちゃっていたので、そこの修正のところもしっかりとやって、プレーオフも勝って世界選手権の代表にさせたいと思います。

――小林選手と安楽選手は初戦で地力のある選手に敗れるかたちとなりましたが

奏音はちょっと力の差がありましたね。ただ龍馬に関しては優勝した選手にあれだけの戦いができたので、十分、力の差というのはあまりないと思うので、しっかり反省を生かして次につながるようにしたいですね。

――安楽選手が全日本トップレベルの選手になるために必要な点はどこにありますか

自分の得意とするパターンの確立と、組手からタックルの展開でもう少し幅を増やせないといけないと思いますね。

――明治杯4日間を総括していかがですか

そうですね、去年の全日本は内容的にも悪い部分があったんですけど、でも今回はレベルが上がっている中で、それぞれいい結果も残せたんじゃないかなと思いますし、また優衣にしても今回優勝したことですごいプラスになった部分もあると思いますし、全体的には合格点なんじゃないかなと思いますね。負けた選手もしっかり改善すれば上位に進出できるような内容でもあったので、圧倒的に負けたということはなかったので。しっかりやるべきこと、課題を抽出して取り組んでいけば勝てないこともないと思いますね。

――以前「ラスト30秒の攻防が課題」とおっしゃっていましたが、具体的にはどう改善していきますか

基本的には相手に足を触らせないこと。足を触らせてしまうと、テークダウンは取られなくても場外に押し出されてポイントを取られるという状況になっちゃうので、ちょっとでも引っかかると。できるだけ組手で追い込んでいって、自分でどういったかたちで守り切るのかっていうのを徹底して、それぞれ守り方っていうものがあると思うので、その部分を強化していきたいと思いますね。

――次の大きな大会はインカレですが、どういった取り組みをしていきますか

今回出た反省を踏まえて、それぞれ課題をしっかり明確にして、フィジカルも含めて鍛えてきたいと思いますね。

須﨑優衣(スポ1=東京・安部学院)※囲み取材より抜粋

――今のお気持ちをお願いします

今の気持ちは本当に優勝することができてうれしいという気持ちと、3週間後のプレーオフの権利を勝ち取ることができたので、しっかりプレーオフで勝って世界選手権に絶対に私が行けるように、あしたからまた頑張っていきたいと思います。

――決勝は見事なフォール勝ちでしたが、振り返っていかがですか

本当に自分はこの前天皇杯(天皇杯全日本選手権)で負けて、もう失うものは何もないと思って思い切り挑戦して絶対勝って優勝しようと思っていたので、自分から先に攻めて自分の流れに持っていけたことが今回の勝因だと思います。

――決勝の入江ゆき選手(自衛隊体育学校)は天皇杯で戦って(敗れて)いる相手でしたが、プレッシャーや嫌な思いというのはありませんでしたか

嫌な思いはなくて、本当に今大会で優勝するために特に相手とかは気にせず、優勝するということだけを考えて戦ってきました。決勝戦ではこの前負けた選手だったので、特にリベンジして優勝したいという思いが強かったので、嫌とかではなかったですね。対戦できて、よし、という感じでした。

――決勝戦でフォール勝ちできたということで、成長を感じる部分はあるでしょうか

そうですね。結構自分あの体勢から自分が逆に倒されることが多かったんですけど、大学生になって時間もできて、トレーニングとかの時間も多くなったので、そういった面で体幹とかを強化してきたので、それが生きたのかなと思います。

――この冬はアジア選手権もW杯も声がかかりませんでしたが、どのような思いでいましたか

天皇杯で負けてからいろんな試合に出れなくて、自分じゃない選手が戦ってる姿を見て本当に悔しい思いもしてきましたし、苦しかったです。ワールドカップもアジア選手権も行けなかったので、もう本当にここで優勝して絶対に世界選手権に行くしか、自分には道がないと思ったので、強い執念と信念があって優勝できたのでよかったです。

――先日、スウェーデンで五輪2位の選手を破りましたが、手ごたえはいかがでしたか

その試合は自信になったんですけど、やっぱり全日本で勝たなければ世界に出ていけないと思ったので、もう本当に今大会に自分は結構懸けてたので、まだまだですけど一つの目標を達成することができたのはよかったです。

――大学生になっての今大会ということでしたが、高校生から大学生になって何か環境の違いや、成長できた部分はありますか

高校生から大学生になって練習環境も以前と同じ環境でやらせていただくのと同時に、早稲田大学の方でも練習させていただいて、たくさんいろんな方から技を教えていただいたり、男子の選手と練習することによって、力も強いしどうしたらこの人に勝てるんだろうと考える時間も多くなって、自分のレスリングの幅も広がったので、今の練習環境に本当に感謝しています。

――天皇杯から苦しい思いをして、今大会で優勝ということになりましたが、具体的にプレー面で変えたことなどはありますか

はい。天皇杯で負けてから、崩しが全然できてなかったので、そこの崩してからのタックルというのを半年間特に重点的にやってきたので、それを今回やり切ることができたことと、準決勝でアンクルホールドを決めることができたんですけど、早稲田大学の仲間から教えてもらってそれをずっと練習してて、今回試合でかけれたことは自信にもつながりました。

――改めてプレーオフへの思いをお願いします

プレーオフは今よりももっと厳しい戦いになると思うんですけど、強い執念を持って、絶対に自分が世界選手権に行くんだと思って3週間練習して、絶対に世界選手権に行きたいと思います。