明治杯全日本選抜選手権(明治杯)2日目。この日はグレコローマンスタイル(グレコ)72キロ級に齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)、97キロ級に松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)が出場。また、男子フリースタイル(フリー)79キロ級に山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)が出場した。斎藤はロースコアの接戦をを制し1回戦を突破したものの、2回戦でフォール負けを喫して敗退。松本は準決勝で敗れたが、初出場となった明治杯で3位入賞を果たした。山﨑は決勝で試合終盤までリードしていたものの、最後の最後に逆転を許し無念の2位に終わった。
この日、早大勢で最初に登場したグレコ72キロ級の斎藤は1回戦、バックポイントで幸先よく先制し、リードした状態で第1ピリオド(P)を折り返す。第2Pは拮抗(きっこう)した試合展開となり相手の猛攻を受ける場面もあったが、「無理に点数を取りに行かずにしっかり勝ちを意識してできた」と斎藤。うまく相手のタックルを切るなど無失点に抑え、序盤の先制点を守りきり2−0で勝利を収めた。しかし、迎えた2回戦では崩しにかかったところで逆に相手に投げ技を決められそのままフォール負け。目標であった表彰台には届かなかった。続いて登場したのはJOCジュニアオリンピックカップで優勝を果たすなど、波に乗っている松本。初戦は持ち前のディフェンスで相手に攻撃の隙を与えず、相手のパッシブによる得点で先制する。その後有利な体制でのリスタートから一気に4連続でローリングを決めテクニカルフォール勝ちで準決勝へと駒を進めた。しかし、準決勝では昨年の天皇杯全日本選手権(天皇杯)王者の奈良勇太(警視庁警察学校)に対し、手も足も出ずにフォール負けを喫した。それでも、初出場となった明治杯で3位入賞を果たした松本。太田拓弥監督も「徐々に積み上げてきたものが結果として表れてきた。強くなっているのが見て取れる」と評価した。
初出場となった明治杯で3位入賞を果たした松本
フリー79キロ級の山﨑は優勝候補の一角として今大会に臨んだ。初戦の相手は第2シードの浅井翼(茨城県競技力向上対策本部)。実力が拮抗している相手であったが、ビハインドで迎えた第1P終盤にバックポイントを奪うとそのままローリングを決め逆転。第2Pでも一瞬の隙を突いたタックルからバックポイントで加点し、6−1の快勝を収めた。準決勝も押し出しによる先制点こそ献上したものの、その後はフェイントを駆使した攻めで相手を翻弄(ほんろう)し、最終的には12−1のテクニカルフォール勝ちで決勝進出を決めた。迎えた決勝の相手は6年連続で五輪を含む世界選手権に出場している絶対王者・高谷惣亮(ALSOK)だったが、試合は終始山﨑のペースで進む。試合開始直後は両者とも相手の出方をうかがう膠着(こうちゃく)した試合展開となったが、前半中盤に相手のパッシブによるアクティビティタイムの得点で1点を先制し、主導権を握った状態で第1Pを終えた。第2Pにはタックルからの場外に押し出され同点とされるが、直後にバックポイントを奪い勝ち越しに成功。その後、場外によるポイントで1点差に詰め寄られるが、相手の攻撃を見切りながら試合を組み立て、勝負の大勢は決したかのように思えた。しかし、試合終了残り6秒の時点でバックポイント奪われ、勝利目前で逆転を許してしまう。山﨑は最後の攻撃を仕掛けるもカウンターからテークダウンを決められ万事休す。試合終了のホイッスルが鳴ると山﨑はマット上に仰向けになり天を仰いだ。
表彰台で悔しさをにじませる山﨑
昨年、一昨年に続き、あと一歩及ばなかった。絶対王者相手に内容では上回っていただけに、その悔しさは計り知れない。実力的に大きな差はなかっただけに、目下の課題は太田監督も挙げた「ラスト30秒どう守り切るか」であろう。悲願の全日本タイトルは手に届くところまで来ている。あすも早大から実力のある選手たちが出場する。今大会ここまで優勝者を輩出していない早大。自分の力を出し切り、表彰台の、日本の頂点に君臨する早大戦士の姿を見たい。
(記事、写真 林大貴)
結果
男子フリースタイル
▽79キロ級
山﨑 2位
グレコローマンスタイル
▽72キロ級
齋藤 2回戦敗退
▽79キロ級
松本 3位
コメント
太田拓弥監督
――山﨑選手の決勝戦を振り返っていかがですか
いや、もう5分40秒間は完璧なレスリングができていたんですけれども、ちょっと相手の方が気持ちの面でも上手だったかなと。守りに入ってしまいましたね。ほぼ(相手の攻撃を)見切っていたので、ちょっともったいなかったですね。ただやっぱり最後の最後のところでちょっと差があるのかなと、特に気持ちの部分で。まだ1回も勝てていないというところで。ただもう十分戦えるというところまでは来ているので、ちょっと差があったのが距離はだいぶ縮まって、次は勝てない相手ではないと思うので、その距離が半年、1年という距離ではないので、戦い方次第では1ヶ月後にやってもすぐ勝てるぐらいのところまでは来ていると思います。あとはラスト30秒どう守り切るか、負けているときにどう勝ち切るかっていうところですね。
――残り6秒の時点で逆転を許すかたちとなりましたが具体的な敗因は
ちょっと後ろに体重が掛かっていましたね。それまでは相手の攻撃をしっかり見切って反応していたので。ただやっぱり3−1になった時点から1点1点を取られて3−3でもいいというのがどこかにあったんじゃないかなっていうのが。こっちはテークダウンを取っていて同点でもビッグポイントで勝てるっていうのが多分どこかしらよぎって、今までしっかりきれていたのが簡単に場外のポイントを許したりだとか。そこをしっかり守りきれていれば、たらればなんですけれども。
――山﨑選手の1回戦、2回戦はいかがでしたか
いい動きができていましたね。リーグ戦の反省とか色々と生かされていた内容でしたし、毎回接戦だった浅井翼(茨城県競技力向上対策本部)にも完璧に勝ちましたし、いいかたちで決勝に上がれていたので、チャンスは十分にあるかなと思いましたね。
――以前課題として挙げていた組手の部分はいかがでしたか
まだちょっと繋がっていない部分もありましたけど、その分やっぱりパワーとスタミナの部分でカバーできていたので、そこらへんは少し改善できてきたのかなと思います。
――松本選手は初出場の明治杯で3位に入賞しました
準決勝はすぐ終わっちゃいましたけど、しっかり自分のかたちっていうのを出せていたし、徐々に積み上げてきたものが結果として表れてきたのかなと思います。ジュニア(JOCジュニアオリンピックカップ)で優勝して、今回3位で。次は学生チャンピオン、世界ジュニア選手権でメダルっていう目標がしっかり明確に見えてきたので、強くなっているのが見て取れますね。自分の(ポイントを)取るパターンっていうのが確立できていると思います。
――齋藤選手は2回戦敗退となりましたが
ちょっとやっぱり先に仕掛けられていたので。あいつのいいところはもっと積極的に自分から仕掛けるっていうところなんですけど、先に相手に仕掛けられたのでそこは反省点かなと思います。
――1回戦はロースコアの勝利でしたが
2点取ったところから無理しなくなったっていう部分はすごく評価できるところだと思いますね。
――あすも実力のある選手たちが出場しますが、どういった戦いを期待しますか
とりあえず自分のかたちっていうものを出し切った上で、表彰台、優勝者がまだ出ていないので、優勝者を出したいと思います。
齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)
――今回の明治杯に向けてどういった意気込みで臨みましたか
そうですね、正直就活で体がなまっていた部分もあったんですけど、しっかり調整できていたと思うので、3位は目標にしていましたね。
――1回戦はロースコアの勝利でしたが振り返っていかがですか
無理に点数を取りに行かずにしっかり勝ちを意識してできたかなと思います。
――終盤は相手から攻められる場面もありましたが、無失点で切り抜けました
そうですね。でももうちょっと攻めてもよかったかなとは思います。
――2回戦はフォール負けを喫してしまいましたが、敗因はどこにあると思いますか
普通に、全てにおいて負けていましたね。相手が強かったです。
――今大会を通じて見つかった課題や収穫はありますか
2回戦は相手にも最初から気持ちで負けちゃっていたので、何回も負けている相手だったので。今度は強気でいきたいと思います
――気持ちの部分が大きいと
普通に技術の面でも相手の方が全然上ですけど、まずは気持ちから勝っていきたいです。
――今後も大会はありますが、目標などはありますか
体が硬いっていうのがあるので、パワー技に掛かりやすいっていうのがあるので、柔軟性っていうのをつけていこうかなと思います。
――今年は大学ラストイヤーですが、どのような年にしたいですか
目標としては(全日本大学)グレコローマン選手権でいい成績を個人、団体ともに残したいと思います。
松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)
――明治杯に向けてどういった取り組みをしてきましたか
自分は明治杯はこれが初めてで、天皇杯(全日本選手権)は出たんですけど、1回戦で負けてしまったので、今回は1回戦突破というのを目標に取り組んでいました。
――1回戦突破という目標は果たしました
相手の中村選手(隆太、東洋大)は1勝1敗の五分で勝てるかどうかはわからない相手だったんですけど、グラウンドのルールが変わって結構有利になったので、その展開をうまく使えたっていうのはあります。ただ、全日本レベルの選手と戦うとまだちょっと差が出てしまうというのは感じました。
――1回戦はパッシブで有利な体制をとって技を決めていくというご自身の強みが発揮できていたと思います
そうですね、自分はあのやり方しかないと思っているので、ベストの戦法でできたのではないかなと思います。
――成長を感じる部分というのはありますか
グラウンドについてなんですけど、割と(ローリングを)回せるようになったというところですかね。しっかりできるときは(技を)掛けられるようになったので、その点は良かったなと思います。
――2回戦は天皇杯の王者にフォール負けというかたちとなってしまいましたが、その点についてはいかがですか
まだまだ全体的に足りてないというか、スタミナでも、力でも、技のタイミングでもまだまだ負けているので、そこをもっと改善していかないといけないと思います。どこというところはなくて、全部なんですけど、全体的なレベルを底上げをしていく必要があると思います。
――そういった課題はどう改善していきたいですか
今までと同じことをやっていたら、現状維持ぐらいで終わってしまうと思うので、もう一段階上のレベルで。ウエイトとか、スタミナはランニングとかで付けられると思うんですけど、技術に関しては色々知っておかないといけないなと今回思ったので。色々な方法があると思うんですけど、強いOBの方とかもいるので、色々技術を教えてもらったりとか、動画を見たりして研究したいなと思っています。
――3位という結果についてはどう捉えていますか
そうですね、くじで3位にしてもらったような部分もあるので、あんまり3位っていう感じはしないですね。
――今後インカレなども控えていますが、どう取り組んでいきたいですか
インカレに関しては去年は3位だったので、それ以上を目指していきたいと思います。
山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)※囲み取材より一部抜粋
――試合を振り返っていかがですか
結構自分の中では計画的に進んでいて、取られる部分と取られない部分を自分の中でしっかり見きれていたんですけど、高谷選手の最後のタックルで自分の持ち味っていうのを出されてしまった部分があるので、そこでしっかり抑え込むって意識が最後まで少し足りなかったのが敗因だと思います。
――計画というのは具体的には
高谷選手はタックルが武器なので、近づいて離れたところをしっかり詰めていこうと思って。点数は取れなくてもいいのでしっかり切るというところを目標にしていて、そこは第1Pではしっかりできていたんですけど。完璧なテクニカルポイントを取って最後まで完璧な勝ちっていうのをやらないと世界では勝てないのかなと思ったので、しっかり自分の中でポイントを取るということをやっていきたいと思います。
――高谷選手にあって自分にはないものはなんだと思いますか
やっぱり元々ポテンシャルっていうのが高谷さんは高くて、自分の一つの武器っていうのをちゃんと持っていたので、その最後の武器でやられてしまったかなっていう部分がありました。自分はタックルに地震があったんですけど、最後は取られてしまって。最後まで見切って取られないようにすればよかったんですけど。
――ここ2年ぐらいなかなか思うような結果が出てこなくて、ようやく自分のレスリングが見えてきたように思えますがどうでしょうか
高校のときのがむしゃらなスタイルっていうのは大学では通じないのかなと思ったんですけど、やっぱり通じる部分が多くあってその中で大学生の大人のやり方、技術であったり体力配分であったりを学んで。自分のスタイルは野獣っぽい動くスタイルだなって思ったので(笑)、今回技術3割、野獣のように動く部分を7割でやってみてすごい自分の中でフィットしたので、これからどんどん形づけていって、今後につなげていきたいなと思っています。