日体大にあと1勝及ばず。優勝の夢ついえる

レクリング

 梅林太朗(スポ2=東京・帝京)も「大学で一番重要な大会」と語る、東日本大学リーグ戦。7年ぶりの栄冠を目指し臨んだ早大は1回戦の法大戦、2回戦の大東大戦と圧巻の強さを見せつけ勝ち進む。しかし、迎えた大一番の日体大戦は3−4とあと一歩及ばず敗戦。昨年はラスト30秒で拓大に逆転を許し決勝リーグ進出を逃した早大。是が非でもその雪辱を果たしたかったが、昨年と同じくあと1勝に泣き決勝リーグ進出、そして悲願の優勝は夢と散った。

 初戦となった法大戦。先鋒の岩澤侃(スポ3=秋田商)が試合終了間際に逆転を許し、まさかの黒星スタートとなった。しかしその後は当日計量の影響もあり苦戦する場面もありながらも、接戦をものにし全勝。6勝1敗と順調なスタートを切った。続く大東大戦は出場7選手中4選手がテクニカルフォール勝ち、山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)がフォール勝ちと圧倒的な強さを見せつけ7−0の完勝。日体大へ向けて弾みをつけた。

 そして迎えた大一番の日体大戦。有力選手を多く擁する強敵だが、2年ぶりの決勝リーグ進出には超えなければならないカベであった。初戦の岩澤は組手から崩しきれず、劣勢が続く中で第2ピリオド(P)に1点差まで詰め寄るなど善戦したが、試合終了間際に突き放され敗戦。続く2番手の吉村拓海(スポ3=埼玉栄)も実績のある長谷川敏裕(日体大)に手も足も出ずテクニカルフォールで完敗し、2勝を先行された早大には暗雲が立ち込める。しかし、この悪い流れを断ち切ったのはルーキーの安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)だった。ビハインドで迎えた第2P後半に一瞬の隙を突いた高速タックルで崩し、バックポイントを奪うとそのままローリングを決め一気に逆転。しかし、4年生である相手選手も黙っておらず、残り7秒時点で相手の猛攻を受け同点に。このままでは負けとなる絶体絶命の大ピンチであったが、「自分が最後、(ローリングで)返ったか返ってないか、肩が90度以上回転して傾いたら2点というところを、自分の武器である腰の柔らかさで耐えて、そこで相手がチャレンジをして、ビデオ判定で傾いてなかったことで、自分に1点が入り」(安楽)、5−4で安楽が勝利を収めた。手に汗にぎる死闘を制した安楽はスタンドに大きくガッツポーズを掲げ、早大のボルテージは最高潮に達した。

安楽は日体大選手との死闘を制し、カメラに向け「W」ポーズを決めた

 この流れに乗りたい早大は太田拓弥監督が「成長著しい」と目を見張る米澤凌(スポ1=秋田商)を送り込んだが、同点で迎えた試合終盤に得点を許し惜敗。後がなくなった早大は米澤凌の兄、そして主将である米澤圭に全てを託す。しかし両者一歩も譲らず迎えた第2Pにタックルの処理でバランスを崩し、痛恨のテークダウンを奪われてしまう。それでも粘り強く攻め続け、終了間際には1点差まで追い上げるなど執念を見せたが、あと1歩及ばず。先の試合で敗れた弟の無念を晴らし、早大の勝利への望みをつなげることはできなかった。この時点で4敗を喫し、早大の決勝リーグ進出、そして優勝が消滅した。

敗戦し、肩を落とす米澤圭。この時点で早大の優勝は消滅した

 静まり返る早大スタンド。しかしその後、絶対的エースである山﨑が磐石の試合運びで、最後を任される最重量級の松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)が体格差のある相手に対し勝利を収め、早大は意地を見せた。この2人の勝利について太田監督は「勝利がなくなった後に山﨑と松本が勝ったというのは大きい。チームにとってもすごくプラスになる」と振り返る。またしてもあと一歩届かなかった。それでも安楽が1年生のながら上級生相手に全勝を収め、早大をけん引する活躍を見せたこと、勝利の可能性がなくなった後も気持ちを切らさなかったことはチームの今後につながるだろう。優勝を果たすことは叶わないが、あす以降もリーグ戦は続く。5〜8位決定戦へ臨む早大は現時点で最高の結果である5位の座を必ずや死守したい。

(記事 林大貴、写真 小松純也)

※10点差がつくとテクニカルフォールとなる

結果

予選Cグループ 2位

1試合目 ○早大6-1法大

2試合目 ○早大7-0大東大

3試合目 ●早大3-4日体大

コメント

太田拓弥監督

――きょうの1次リーグ予選全体的に振り返っていかがですか

最後直毅が勝ってくれただけに、本当に悔しいですね。本当に紙一重のところだっていうのはわかっていたんですけれども。去年もあと1歩、本当に紙一重のところで負けてしまったんですけど、正直今までで経験したことのないような4−3での負け方ですね。やっぱり1年生に頼りすぎたところと、米澤圭が2階級上で出たんですけど、勝てる内容だったのでもったいなかったかなと思います。ここ数年日体大とやってもキャプテンが2階級上で出場することも、1年生が、安楽龍馬が4年生に勝つとかそういうことは今まであんまりなかったのでそういう意味ではプラスになる部分ももちろんあったんですけれども。 やっぱり5−7、6−1で負けて差が開いたところとか、米澤凌も組手の部分とかタックルとかで負けていたので。圭は(タックルの)処理のところ、体重(の処理)のところだけだったんですけれども、そこらへんが課題として出た感じですかね。まあ、でも勝たせてあげたかったなというのが率直な気持ちですね。

――この大会に向けてどういったところを重点的に取り組んできましたか

去年ラスト30秒で負けてしまったので、ラスト30秒のところでどう勝ち切るかっていうところと、気持ちの部分と、グラウンド技には絶対かからないっていうのがテーマだったんですけれども。やっぱり負けた試合ではグラウンド技にかかってギリギリで追い込まれたりしましたね。うちもチームとしてのレベルが上がっているのははっきりとわかるんですけれども、相手チームもしっかりハードワークして、研究して、ちょっとした差が結果として出ちゃったのかなと思いますね。

――74キロ級は法大戦で伊藤駿選手(スポ4=京都・網野)、大東大で梅林選手を起用しましたが、相性の問題ですか

本来でしたら伊藤駿を74キロ級で使って、70キロ級を米澤圭っていうのが理想というか、4年生を中心にメンバーを考えていきたかったんですけれど、ちょっと伊藤駿のほうがケガとか、就職活動等もあって練習がおろそかになっていたのもあったので。米澤凌がこの1か月ぐらいで急成長しているのが見て取れたので、梅林もちょっとジュニア(JOCジュニアオリンピックカップ)で負けちゃっていたので。そこで圧倒的に勝っていれば梅林を使うというのもあったんですがちょっと課題が残る試合内容であったりしましたし、ケガもあったので、それで1年生を起用したというところです。

――日体大戦で70キロ級で米澤凌選手、74キロ級で米澤圭選手を起用したのもそういう意図であったと

そうですね、はい。まあ逆でもいいかなとも思ったんですけども。

――安楽選手は1回戦、2回戦と動きがあまりよくないように見えましたが

やっぱり当日計量で減量もちょっときつかったでしょうし、しかも1年生は1人しか計量乗ってない(出場していない)んですよね、あの階級(65キロ級)は。その中ではよく頑張っていたと思います。

――その中で3戦全勝でしたが、安楽選手の戦いぶりはいかがでしたか

勝負強さは出ていましたし、彼らしさも出たと思うので、あした、あさってと残り3試合ありますけれど、もちろん全試合出して、しっかり勝たせて。勝つことでチームの勝利にもおのずと近づいてくると思うので。

――日体大戦で勝利がなくなった後に山﨑選手と松本選手が勝ったというのは大きいと思います

本当にそうですね。そこは本当に気持ちが落ち込むところでしたけど、弥十朗はもちろん力はあるので、絶対的なエースなので負けることはないかなと思っていたんですけど、松本直毅のほうはフリースタイルの方は未知数だったので。それでもしっかりと相手のタックルは切って自分の形で勝ったことはすごい彼にとってもプラスになったと思いますし、チームにとってもプラスになると思いますね。

――先ほどもお話にありましたが、あと一歩届かない要因というのはどこにあると思いますか

うーん。具体的にこれっていうのは、レスリングのテクニック的なところでいうと組手のところだったり、練習内容も含めてもう一回見直して、学生連盟とも試合をしてもっともっとハードワークをすることですね。練習内容も含めて考え直していかないと決勝リーグに上がれるようなチームにはなれないと思うので、1年生頼ってばかりでは本当に強いチームにはなれないと思うので、しっかり今回の反省を踏まえて生かしたいと思います。とにかくきょうも選手たちに話したんですけど、5位を死守しないと全く意味ないと。去年、その前と6位、7位と終わって去年は拓大、今年は日体大のカベに阻まれて。これが5位通過だとちょっと(チーム力が)落ちるっていうわけではないですけど、団体戦なのでどうなるかわからないので。チーム力としては少し落ちる4位チームと対戦できるので、その後決勝リーグに上がるチャンスというのも生まれてくると思うので、5位は最低でも死守して、今年のリーグ戦を締めくくりたいと思いますね。

安楽龍馬(スポ1=山梨・韮崎工)

――きょうのリーグ戦一日振り返っていかがですか

体重が当日計量で、明日が2キロオーバーで、それを気にしつつやっていたことで1試合目、2試合目と体が動かなくて。さすがに三試合目は大一番だったので集中してチームのために勝つという気持ちでした。

――最後の試合は接戦で見事勝ちをもぎ取ったと思いますが、試合を振り返っていかがですか

あれはもう団体戦で、みんなや先輩が応援してくれて、自分一人で勝ったとは思ってなくて。その一勝でチームの流れを変えることができて、自分の役目としてはよかったです。

――最後の攻防をポイントの経過も含め教えてください

自分が最後、返ったか返ってないか、肩が90度以上回転して傾いたら2点というところを、自分の武器である腰の柔らかさで耐えて、そこで相手がチャレンジをして、ビデオ判定で傾いてなかったということで、自分に1点が入りました。

――最終的には5-4で勝ったということですね

そうですね。

――ナイスゲームだったと思います

本当にもう集中して、みんなの声がすごく出ていて、一試合目二試合目よりも研ぎ澄まされて集中していました。

――明日からもリーグ戦は続きます

圭さんが言っていたように、来年は決勝リーグ出れるグループにしようという感じで、本当に助けてくれたので明日も頑張ろうと思います。