ルーキーの須﨑、小玉が優勝!最高のスタートを切る

レクリング

 ことしもレスリングのシーズンが幕を開けた。JOCジュニアオリンピックカップに先立って行われたジュニアクイーンズカップ。今年度はレスリング界のレジェンド吉田沙保里(至学館大副学長)の出生の地である三重県、そしてその名を冠したサオリーナで開催された。早大からは3選手が出場。57キロ級で出場した臼池優月(社2=茨城・鹿島学園)は悔しい1回戦負けとなったが、一方で早大の選手としての初めての大会となった50キロ級の須﨑優衣(スポ1=東京・安部学院)、62キロ級の小玉彩天奈(社1=高知東)がそれぞれ優勝。大きな期待を寄せられながら早大の門をたたいたルーキーたちが最高のスタートを切った。

 57キロ級に登場した臼池は1回戦で実績のある田南部夢叶(日体大)と対戦。「誰と当たっても自分のレスリングができるように」と臨んだ臼池だったが、試合開始直後からペースをつかめない。バックポイントで先制されると、相手に足をホールドされて抜け出せず。そのままポイントを重ねられ、自分の持ち味を発揮できないままテクニカルフォールで完敗。悔しい初戦敗退となったが、「相手によって合わせてしまうことによって自分のスタイルを確立できていない。これだという得意技を一つ身につけることが必要」と改善すべき点は見えている。次戦のJOCジュニアオリンピックカップまで期間は短いが、課題を改善し、この屈辱を晴らしたいところだ。

 今大会、初めてエンジのシングレットに身を包んだ世界女王・須﨑は50キロ級で出場。1回戦、2回戦と相手に付け入る隙すら与えず完勝し、女王の貫禄を見せつける。準決勝ではがぶりの状態からポイントが奪えず崩し切れない状態が続いたが、徐々に流れは須﨑に。テークダウンを決め先制すると高速タックルからのバックポイント、グラウンド技など多彩な攻撃でポイントを重ねてゆきテクニカルフォール勝ち。優勝へ向けて弾みをつけた。そして迎えた決勝戦。試合序盤に今大会初めて失点し、先制を許す。それでも自身が強みと語る『攻めるレスリング』で相手を翻弄(ほんろう)し、最後はフォール勝ちで優勝を決めた。この勝利で世界ジュニア選手権の出場権を得た須﨑はジュニアとシニア、両方の世界チャンピオンを目指し、日々の精進を重ねてゆく。

優勝を決め、ガッツポーズをする須﨑

 須﨑に負けじと、62キロ級で出場した小玉も圧巻のパフォーマンスを見せた。決勝までの試合では1ポイントも取られることなく、全てテクニカルフォールで勝ち上がる。決勝では本人も課題に挙げた組み手で崩しきれない時間が続き、拮抗(きっこう)した試合展開となるが、一瞬の隙を突きバックポイントで先制。リードした状態で第一ピリオド(P)を終える。続く第二ピリオド開始早々、タックルからテークダウンを奪い相手を大きく突き放し、優勝へ大きく前進する。しかし試合終了間際、「自分が勝っていて、油断をしてしまった」と相手に連続でローリングを決められ3ポイント差まで猛追されるが、最後は冷静さを取り戻し逃げ切りに成功。須﨑に続き、見事優勝を果たした。

小玉は圧倒的な試合運びで優勝を果たした

 「早大の選手として初めて出場する大会なので、絶対に優勝したかった」と口をそろえた須﨑と小玉。デビュー戦でありながらも早大生としての責任と誇りを胸に抱き、この上ない結果を残した。その一方で課題も多く見つかった。特に「がぶった状態でポイントが取れていなかった」と太田拓弥監督が述べるように、タックルからの崩しが多く決まっていた一方で、組み手やがぶりからの崩しでは苦戦し、試合が膠着(こうちゃく)する場面が多々見られた。今回の優勝を自信に課題を克服していけば、必ずやおのおのの目標を達成できるだろう。最高のスタートを切った新鋭たちはどこまで高みへ昇れるか。その歩みが楽しみだ。

(記事、写真 林大貴)

優勝した須﨑(左)と小玉(右)

結果

ジュニアの部

▽50キロ級
須﨑  優勝

▽57キロ級
臼池  1回戦敗退

▽62キロ級
小玉  優勝

コメント

太田拓弥監督

――優勝者が2人出ましたが、今回の大会を振り返っていかがですか

とりあえず、3人中2人優勝できてよかったんですけど、やっぱり優勝しても課題は出たので、その課題をしっかりと克服して次につなげたいなと思いますね。内容も優勝した2人は悪くなかったと思いますし、1人、2年生が1回戦で負けてしまったので、そこをしっかり改善していかないとチームの底上げにもならないなと思いましたね。

――今回優勝を果たした新入生2人の印象はいかがですか

優衣は本当に練習も真面目ですし、人間的にもしっかりしてますし、ただまだまだレスリングについては知らないことが多いので、そういったところをしっかり指導したいと思います。彩天奈はどちらかといえばおっとりしたタイプですけど、内に秘めたものはあるので、だからああいった場面(決勝戦)での勝負強さっていうのも出てくると思うんですけど、優勝しても最後は安心してみていられるような試合をさせてあげられるようにしていきたいと思いましたね。

――臼池選手は厳しい結果となりました

やっぱり基礎体力的なところと、自分で何の技でどうやって点を取るかっていうスタイルが確立できていないので、しっかりフィジカル鍛えて、夏以降の大会に向けてしっかり準備させていきたいと思いますね。今のままだと勝てても1回戦、2回戦程度だと思うので。

――優勝した2人は初戦から圧倒的な強さで勝ち上がりました

そうですね。しっかり自分の武器っていうのを持っていますし、自分のかたちっていうのがしっかり出せていたので、その部分が結果にもつながったんじゃないかなと思います。

――優勝した2人は世界ジュニア選手権に出場することになりますが、どのような戦いを期待したいですか

優衣はもう世界チャンピオンなので、ジュニアレベルの世界大会には出なくてもいいんじゃないかとも思いますけど(笑)。世界選手権に出られるように頑張らせるのがまず一番なので。彩天奈の場合は世界ジュニア選手権は初めての出場なので、やっぱり自分のスタイルをもっともっと磨いて、世界ジュニア選手権では最低でもメダルを取れるように頑張らせたいなと思います。

――先ほども課題が見つかったとおっしゃっていましたが、どのような部分を重点的に強化していきたいと考えていますか

まずタックルの処理と、つなぎの部分ですね。がぶった状態でポイントが取れていなかったので、そういったところも含めて強化していきたいと思っています。

須﨑優衣(スポ1=東京・安部学院)

――優勝おめでとうございます

ありがとうございます!

――先日の対談では必ず優勝するとおっしゃっていましたが、その言葉通りの結果となりました

早大生として初めて出場する大会で絶対に優勝して最高のスタートを切ると決めていたのでその目標を達成できたことは良かったです。

――太田監督からは何かアドバイスをもらったりしましたか

1試合1試合の前にアドバイスとかをくださっていたので、それを胸に、意識できるところは意識して戦っていました。試合の後はがぶって腕が深く入ってしまったところもあったので、そういった部分の取り切り方とかはアドバイスをいただきました。

――今大会を振り返っていかがですか

全体的にこの大会ではできたこともあったんですけど、反省点もたくさん見つかったので、明治杯までの2ヶ月間、しっかり克服して絶対にもっと強くなって明治杯では優勝できるように、頑張って2ヶ月集中していきたいと思います。

――具体的にはどのような課題が見つかりましたか

組み手や、崩してからのタックルや、タックル以外でポイントを取ることなどですね。あとはディフェンスをもっと強くすることが自分の一番の課題です。

――きょうの優勝で世界ジュニア選手権の出場が決まりましたが、どのような戦いにしたいですか

世界ジュニア選手権ではしっかり自分のレスリングをして、今以上に強くなった自分で戦って、しっかり優勝してシニアの世界選手権にも出て、ジュニアでもシニアでも世界チャンピオンになれるよう頑張りたいと思います。

――明治杯に向けての意気込みをお願いします

明治杯は本当に勝負になる大会なので、絶対にこの前の天皇杯で負けた悔しさを思いっきり晴らせるようにしっかりリベンジして、絶対に優勝して。プレーオフも勝って、世界選手権の代表になって、世界チャンピオンになれるように頑張ります。

臼池優月(社2=茨城・鹿島学園)

――2年生となって初の試合でしたが、どのような意気込みで臨みましたか

2年生になって初めての試合だったので、いいスタートを切りたいなと思って試合に臨みました。

――相手は実績のある選手だったと思いますが、組み合わせを見たときはどう思いましたか

自分自体がそんなに強くないので、誰と当たっても自分のレスリングができればいいなと思って。なので、組み合わせはそこまで気にしてなかったです。

――きょうは悔しい結果となりましたが、試合を振り返っていかがですか

自分のレスリングが全然できなかったです。

――敗因はどこにあると思いますか

練習のときから相手によって合わせてしまうので、もっと自分から攻めることができるスタイルを身につけたいのと、これだっていうような得意技を1つ持たないといけないなと思います。

――そういった課題は今後どのように改善していきたいですか

まず、ほかの大学とかに比べて女子の人数が少なかったりして、練習相手に慣れてしまっているのがあって。それが敗因の一つだと考えていて、例えばスパーリングのときとかは自分の攻めやすい体勢に相手より先に構えておくとか、そういった工夫をしていきたいです。

――ことしの目標などがあればお聞かせください

試合で勝ちたいので、もっと自分の嫌な練習を積極的にやっていきたいです。

――次戦はJOCジュニアオリンピックカップになりますが、意気込みをお願いします

次の試合まであまり期間はないんですけれども、自分のレスリングをできるように、自分から攻める練習を短いですけどやっていきたいなと思っています。

小玉彩天奈(スポ1=高知東)

――優勝おめでとうございます

ありがとうございます。

――今の率直なお気持ちをお聞かせください

本当に、ほっとしています。

――今回の大会は早大生としての初の大会でしたが、どのような意気込みで臨みましたか

早大のレスリング部の一員としての責任を持って、必ず勝たないといけない試合だとずっと思っていました。

――太田監督からアドバイスなどはありましたか

試合によって変わってくるんですけど、組み手の部分で相手に合わせないように、自分の組み手で相手を崩すことや、決勝戦では組み際に注意して戦うように何回も言われました。試合中にも何度も言われて、言われることで自分で意識してできたのでよかったです。

――決勝戦までは全てテクニカルフォールで勝ち進みました

1回戦と2回戦は自分で攻めて圧倒的に勝てるように意識していたんですけれども、やっぱり相手に飛び込ませてからカウンターを狙いにいくのも戦略としてはいいと思うんですけど、自分から攻めることができなかったので、そこは少し反省しなければならないと思います。

――決勝戦を振り返っていかがですか

最初は自分でタックルに入って点を取れたことは良かったんですけど、自分が勝っているとどうしてもちょっと油断をしてしまって。その隙に4点取られてしまったのもあったのでそこがやっぱり反省点です。自分が得意な首投げとかもちゃんと出すことができたのでそこはよかったと思います。

――優勝したなかで課題も見つかったと思いますが、どのように改善していきたいですか

これからたくさん練習しなければならないんですけど、早大で練習を積んでいくなかで、力とかは男子の先輩とかはすごくて、強い選手も多いのでどんどんお願いして、さらに強くなれたらいいと思います。

――4年間での目標はありますか

全日本で優勝することが目標です。次の明治杯や天皇杯はまだ難しいと思うんですけど、4年間のなかで1回は勝てるように。また、世界選手権にも出られるように頑張りたいと思います。

――今回の優勝で世界ジュニア選手権の出場が決まりました

やっぱりレベルも高いと思うんですけど、しっかり自分のレスリングをしてちゃんと優勝できるように頑張ります。

――次戦のJOCジュニアオリンピックカップへの意気込みをお願いします

今回の大会とは違って1回級下の強い選手も自分の階級に来るので、今回優勝したことは自信にして、それでも油断はしないようにしっかり練習して優勝できるように頑張ります。