第3回は、ポテンシャルが高いとの声が上がる3年生から3人。全日本学生選手権3位、全日本大学グレコローマン選手権2位と結果を残した齋藤隼佑(スポ3=群馬・館林)、明治杯全日本選手権(明治杯)で全日本初勝利を収め、確かな成長を示した小林奏音(スポ3=長野・佐久長聖)、ケガを抱えながらも安定した成績を収めた伊藤駿(スポ3=京都・網野)。三者三様の1年を過ごした3年生トリオに迫った。
※この取材は11月22日に行われたものです。
「自分のスタイルを確立できました」(小林)
飛躍の一年となった小林
――まず、ご自身の今季の戦いぶりを振り返っていかがですか
小林 ことしは、結果は今まででの中で一番入賞できた年だと思います。自分のスタイルを確立できました。
――明治杯で初めて全日本の大会で勝利されましたが、あの大会はいかがでしたか
小林 まさか全日本で一勝できるとは思わなかったので、いつも全日本は当たって砕けろというような感じで出てるので一勝できたのは自分でもびっくりしました。
――齋藤選手はこの1年を振り返っていかがですか
齋藤 練習を頑張りましたね。
――シーズンが進むにつれて、調子を上げてきた印象がありますが、いかがですか
齋藤 ポンポン勝てましたけど、たまたま感はすごいありますね。組み合わせに救われたなというのもあります。
――伊藤駿選手はいかがですか
伊藤駿 自分はことしはもうケガばかりで、駄目な年かなと思います。ことしの天皇杯を棄権するのもケガなので、ケガばかりでダメダメでした。
――ケガの状態はいかがでしょうか
伊藤駿 右肩と右足で。右ばかりケガするんですよね。
――課題はありますか
齋藤 自分より軽い人としかやってないので、松本君(直毅、スポ2=神奈川・横浜清陵総合)のような強くてでかい選手と、どんどん普段からやっていきたいなと思います。
――団体戦では自分より重い選手と対戦することもあったと思います
齋藤 そこはもう別に気負わずやっていましたね。
――伊藤駿選手はタイトルまであと一歩という大会が続いていると思いますが、どういったところが課題でしょうか
伊藤駿 そういう人間なのかな(笑)。勝てないんですよ、大事なときに。メンタルとか、日ごろの練習から手を抜いているところが、最後の最後でツケになって回ってきているのかなと思います。
――3年生ということで、上級生になりましたが、チームのためにするようになったことなどありますか
齋藤 俺はしてないです。
伊藤駿 逆に後輩が生意気になったぐらいです。
小林 あ、それは思う。
齋藤 後輩基本的に全員ため口です。米澤選手(圭、スポ3=秋田商)ぐらいにしか敬語使わないです。4年生になったらそこはしっかりビシッとしていきたいです。
――目指すチーム像はありますか
小林 各自がしっかり頑張るような。
齋藤 ワイワイ楽しく。1人1人が頑張っていくようなチームで。
伊藤駿 来年はリーグ戦(東日本学生リーグ戦)も結構狙えるメンツがそろってくるのでやるときはやって、遊ぶときは遊ぶようなチームにしていきたいですね。
齋藤 それを俺らができるようにね、頑張んないと。
伊藤駿 俺はオフ担当でいくから(笑)。
――小林選手は来年女子で唯一の4年生になりますがそちらに関してはいかがですか
小林 入ってきてくれる子はみんなオリンピックレベルの子たちなので、女子をどうしようというのはないですが、私や今いる1年生の女子(臼池優月、社1=茨城・鹿島学園)も埋もれないように、1年生にばかり持っていかれないように頑張れればなと思います。
――3年生になって、試合数が少し減ったかと思いますが、調整面で何か影響はありましたか
小林 私はないです(笑)。
齋藤 逆に調子いいですね。試合のスパンが短い方が気持ち的には楽な部分がありますが、試合数が少ない分1つ1つに集中できたのかなと思います。
――計量のシステムが変わると思いますが、何か対策はありますか
小林 短期間で急に落としたらやっぱ良くないのかなと思うんですけど、やってみないと分かんないなというところはあります。今回やってみて考えます。
――減量は普段どうされているんですか
伊藤駿 みんなは塩分抜いて短期間で落とすんですけど、自分は我慢できないので、早めに落とし始めます。食事制限と、代謝悪いので運動量を増やす感じですね。
齋藤 自分はいつも1つ上の階級に出ているので、食事制限とかほとんどしたことないです。
――試合前に必ずするルーティーンはありますか
齋藤 僕は必ず試合前に(お笑い芸人の)バナナマンのラジオを聴くようにしています。どんな試合の前でも聞くと緊張しないんですよ。というのを自分の中で見つけてしまって。去年の終わりぐらいに聞き始めてからちょっとだけ勝てるようになってきたので続けていたら調子いいですね。
――試合前は緊張しますか
小林 しないです。
伊藤 しないの?(自分は)めっちゃします。
齋藤 強い相手だとしないです。同じぐらいの相手だとちょっと緊張しますね。
お互いの印象は
仲の良さをうかがわせた齋藤(写真左)と伊藤駿(写真右)
――レスリングを始めたきっかけを教えてください
小林 私はたまたま家の近くでやっていただけです。幼稚園ぐらいからです。何かしらスポーツはやらせようという親の意向で、たまたま行ったら気に入ってしまった感じです。
齋藤 自分は父親がずっと野球をやっていて、父親と小学校1年生ぐらいのときにキャッチボールをしていたら突き指してしまって、整骨院に行ったらそこの先生がレスリングを教えていたのがきっかけで始めました。
伊藤駿 自分は幼稚園ぐらいから空手をやっていて、幼稚園からずっと仲の良かった幼馴染が小学校3年生に上がるときにレスリングやってみないかと誘ってくれて。最初は空手とレスリング一緒にやっていたんですけど、空手は痛いしレスリングの方がいいかなと思って続けている感じです。
――お互い初めて会ったのはいつですか
齋藤 奏音は小学校ぐらいかな。年に何回か奏音のチームと交流していて。
小林 結構合同練習みたいなのしてて、知ってましたね。
――そのときの印象は覚えていますか
齋藤 スパーリングやってボコボコにされました。
一同 (笑)。
齋藤 本当に勝てなくて。
小林 だいぶ盛ってるって。
齋藤 学校に行くのに目がパンパンに腫れちゃって(笑)。
小林 絶対うそ、盛ってる。
齋藤 頭突きされて目が腫れました。
小林 別の人だって、私じゃない絶対。
――小林選手はそのときの印象は覚えていますか
小林 私は隼佑がそのチームの中で結構強いと言われていて、コーチに練習しにいけと言われていきました。
齋藤 まんまとやられました。
小林 言われて嫌々やっていただけです。
――伊藤駿選手とはいつ頃知り合いましたか
伊藤駿 中学校のときかな。自分の地元が大阪で、(齋藤が)栃木で。関東、東北あたりの大会で大阪からわざわざ行ったときにこいつ(齋藤の)レスリングの吊りパンの色が緑で。普通は赤と青なのに緑だったから、『緑吊りパン』と呼んでいて。
一同 (笑)。
伊藤駿 しかもダークホースみたいな感じで、優勝とかはしないけど強いやつに勝っていたので、めっちゃマークしてました。「あの、緑吊りパンだけは当たりたくない」と思っていました。うちのチーム内でも、「顔が地味なくせにめっちゃ強い」と噂になっていましたね(笑)。けど一度も当たらずに、大学入る前に初めて練習で顔合わせたときに『緑吊りパン』の正体って知って、驚きました。
――齋藤選手は伊藤駿選手の第一印象は覚えていらっしゃいますか
齋藤 こんなに頭が悪いとは知らなかったですね。
一同 (笑)。
齋藤 こんなにアホな感じではなかったので。駿、多分ちょっと人見知りもあるから、最初は大人しいんですよ。そしたらだんだん本性が見えてきましたね(笑)。
――小林選手は覚えていますか
伊藤駿 大学入る前にワセダで練習していて。その時に減量に来ていたあの子がそうなのかなというのはあります。(大学に)入ってから、認識しましたね。
小林 確かに日にちは合ってるんですよね。
伊藤駿 試合前に減量しに来てたよな。
小林 高2ぐらいのときに。私は覚えてないんですけど、駿に言われて、いたんだという感じです。みんな知らない人だったので。
伊藤駿 けど受験する予定だったでしょ。
小林 受験はしようかなとは思ってた。駿は強かったので名前は知っていました。顔は多分一致してなかったかなと思います。
――では、現在のお互いの印象を教えてください
伊藤駿 (齋藤は)ポーカーフェイス。俺クール、みたいな感じで。
小林 そういう感じですね。
伊藤駿 格好つけてる感じはあります。
齋藤 そんなことない(笑)。僕全然そういうキャラじゃないんですよ(笑)。いじられキャラで。
伊藤駿 知らない人と街歩くときは髪もいじってクールで。
齋藤 そんなことしたことない(笑)。
伊藤駿 練習中も本当はしんどいのに、「全然余裕」とか言って鼻息が荒くて。
一同 (笑)。
小林 分かる分かる。
齋藤 口で息すると疲れちゃうんですよ。
伊藤駿 点取られても無表情で全然気にしてないですよ、みたいな。
齋藤 顔のこと言われると何とも言えないですね。それでことしいいように回ってるんですかね。
小林 あと、えくぼがチャームポイントなんでしょ。
――小林選手はいかがですか
伊藤駿 後輩と仲良くやっているイメージですね。奏音はそのまんまな性格ですね。
――伊藤駿選手は
小林 駿は強いくせに精神年齢が低いですね。
齋藤 みんなから言われてるので別に本人も気にしてないと思います。
伊藤駿 慣れた。部内でそういうキャラがいないからあえて演じてるんです。
齋藤 演じてないです。いい意味で言ったら純粋ですね。
小林 面白いですね。
――ムードメーカーのような存在でしょうか
齋藤 良く言えばそうですね。
――昨年、伊藤駿選手が齋藤選手をご飯に誘ったら断られたと言っていましたが、それ以降はいかがですか
伊藤駿 きょうも遅くなるから誘ったら、ごめん用事あるとか言って。しかも男か女か聞いても、「友達」としか答えないんです。女か聞いているのに「友達」としか答えないので怪しいです。
齋藤 本当に男なんですよ。困るんですよね。
伊藤駿 飲み会でもプライベートなことをみんなが話しても、隠すんですよ。
齋藤 ないから言えないんですよ。でも、最近は行くよね。
伊藤駿 この前行ったぐらいじゃん。
齋藤 誘われれば行きます。
伊藤駿 きょう誘ったけど、断ったじゃん。
齋藤 用事なければいつでも行きますよ。
――3年生同士ではよく飲みに行くんですか
齋藤 多分、行く方だと思います。
伊藤駿 他の代と比べても行きますね。
――小林選手から見て、同期の男子はいかがですか
小林 すごい雑に扱われてるなとは思うんですけど、男子同士仲がいいなと思って見ています。
齋藤 大切に扱ってますよ。
小林 大切に扱ってくれないです。
――普段の大学生活でもレスリング部の方と一緒にいることが多いですか
小林 私はあまり一緒にはいないですね。
齋藤 授業が同じならという感じですね。
伊藤駿 自分は圭とずっと一緒です。部屋も一緒で、授業もほぼ一緒に取ってるので。コースもゼミも全部一緒なんです。ゼミはこいつ(齋藤)も一緒なんですけど、先輩がいたゼミだったのでそこに入ってます。(齋藤は)教職を取ってるんですけど、自分や圭は取ってないし、楽な文化コースに進んでて。そういう感じで圭とはコースもゼミも一緒ですね。隼佑はレスリング部ではない他の部活の人といますよ。
齋藤 授業ごとに違いますね。同じ授業を取っていれば一緒に受けますし。
伊藤駿 でも、レスリング部以外の人といるときの方が元気だよね。
齋藤 だっていつも一緒にいるんですもん。家族より一緒にいるんですよ。
――レスリングあるあるみたいなのはありますか
齋藤 すぐ組みたがるんですよ。すぐ触りたがります。
伊藤駿 グレコ(グレコローマンスタイル)の人に多い感じとかもあります(笑)。
齋藤 そういうのが見てて一番思いますね。
伊藤 タックル入ったり、持ち上げたりしますね。コンクリートでも(笑)。
小林 男子はすぐ脱ぎますね。
――3年生で面白かったエピソードは
小林 星良(橋本、人3=茨城・土浦日大)に絡んでるのを見てるのが面白いですね。
――太田拓弥監督はどのような方なんでしょうか
齋藤 やりやすいです。
伊藤駿 日体大とかだと、やれと強制されることもあるんですが、言われたことに対して違う意見を言っても納得していただける場面もあります。自由ですね。
小林 違うと思ったことがあれば言える関係です。
伊藤駿 自主性を重んじる方ですね。
齋藤 これはやめてほしいと思っているんですが、試合中に相手の技全部言ってしまうんですよ。自分のやりたいことを全部言ってしまうんです。
伊藤 狙ってる技も言ってしまうので、バレてしまって(笑)。
――他大でも早大内でもいいのですが、ライバルだと思っている選手はいますか
齋藤 松本君です。最近の成績がほぼ同じで。あいつの一個上いくことを目標に。2人で切磋琢磨(せっさたくま)して頑張っていますね。
――普段から練習も一緒にされているんですか
齋藤 あいつ、汗かくから(笑)。自分があんまり汗をかかないのであいつと一本やると服があいつの匂いになってしまうので、3本目とかにやります。スパーリングでもバチバチやってます。
――天皇杯でも松本選手は意識されますか
齋藤 めちゃくちゃ意識しますね。自分の階級の人見ないで、松本だけ見てます(笑)。あいつが勝ったら俺も勝たなければとなります。
――伊藤駿選手はいらっしゃいますか
伊藤駿 いないですが、卒業までにタイトルは取りたいです。一度優勝したいです。今回の内閣(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)まで、2年生になってから出た大会で全部メダル取ってたんですが全部2、3位なので。
――逆に目標にしている選手はいますか
齋藤 自分は5個上のグレコローマンスタイルの選手がいるんですが、大坂(昂、平27スポ卒=現三菱電機)さんという。あの人のレスリングを吸収しようと頑張ってますね。
――早大に入ろうと思ったきっかけはありますか
伊藤駿 親が頭のいいところに入れと小さいころから言っていて。早大に誘っていただいてという感じですね。
齋藤 自分も誘っていただきました。最初は、声がかからなかったので、行けるところを探して自分で受けてどこか行こうと思っていたんですが、高校3年生になる前ぐらいにいろいろ誘っていただきました。早大には練習に行ったこともあって、練習の雰囲気もいいなとずっと思ってたので入れるなら入ってみたいと思っていました。
――小林選手は一般受験ですが
小林 いつの間にかワセダを目指してたんですよね。
伊藤駿 かっこいい。
小林 一度練習に行ったときにみんないい人だなと思ったので入りたいなと思いました。
「小さいころから、出ることを目標にしていました」(齋藤)
笑顔で対談に応じる齋藤
――伊藤駿選手はケガをされたということですが、お二人は天皇杯に向けて取り組んでいることはありますか
小林 大会は全部一緒かなと思っているので、特にはないですね。当日計量になるので体重の落とし方は気にして生活しています。あとは普通に練習をやって、できるところまで頑張ろうと思っています。
齋藤 ルールが変わるので、ルールを覚えることですね(笑)。会場行って見てたっていうのもあって天皇杯は小さいころから、出ることを目標にしていました。去年初めて出ました。少しマットが高くなっているのでうわってなりましたね。
――去年の天皇杯を振り返っていかがですか
齋藤 自分は1つ勝つことができたので嬉しかったです。
伊藤駿 決勝のときラスト30秒で逆転負けしましたね。
――天皇杯で自分のプレーで注目してもらいたい部分はありますか
小林 差しですね。
齋藤 自分は、グレコローマンなので投げ技に注目してほしいです。
――最後に天皇杯への意気込みをお願いします
小林 自分のレスリングができるように頑張ります。できるだけ長くあの高いマットに立っていられればいいなと思います。
齋藤 松本に負けないように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 平松史帆、皆川真仁)
団結力のある3年生トリオ。来年はいよいよ最終学年を迎えます!
◆齋藤隼佑(さいとう・しゅんすけ)(※写真右)
男子グレコローマンスタイル72キロ級。群馬・館林高出身。スポーツ科学部3年。他の対談でも『地味に強い』との声が上がった齋藤選手。普段はクールだという齋藤選手ですが、終始笑顔で対応してくださいました。天皇杯では、ライバル視する松本選手と切磋琢磨(せっさたくま)して頑張ってください!
◆伊藤駿(いとう・しゅん)(※写真右)
男子フリースタイル70キロ級。京都・網野高出身。スポーツ科学部3年。ケガもあり苦しんだシーズンでしたがその実力は誰もが認めるところ。来年は念願のタイトル獲得を楽しみにしています!
◆小林奏音(こばやし・かなね)(※写真中央)
女子フリースタイル59キロ級。長野・佐久長聖高出身。スポーツ科学部3年。残念ながら対談の後日、肘を負傷しことしの天皇杯出場はかないませんでしたが、飛躍の一年となった小林選手。来年は女子部のリーダーとして、さらなる活躍を期待しています!