2日間にわたって行われた東日本学生秋季新人選手権。優勝すれば来月に控える国内最高峰の舞台・天皇杯全日本選手権(天皇杯)への出場権を獲得できる今大会だったが、初日フリースタイル(フリー)57キロ級で優勝候補と目された岩澤侃(スポ2=秋田商)が準決勝で惜敗し3位に。2日目のグレコローマンスタイル(グレコ)ではすでに天皇杯出場権を持つ71キロ級の宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)が決勝で逆転劇を演じて優勝を果たし、グレコの敢闘賞を受賞したが、岩澤が連日の惜敗で3回戦敗退。岩澤はケガからの復活を印象づけたが、悔しさの残る大会となった。さらに、健闘を見せた野本州汰(スポ1=群馬・館林)も3位に終わり、結局早大から新たな天皇杯進出者は現れなかった。
初日に行われたフリー。天皇杯の切符をつかむため並々ならぬ思いで今大会に臨んだ57キロ級の岩澤だったがその思いは結実しなかった。慎重な戦いぶりで順当に準決勝へ進出。しかし、先制こそしたものの「全体的にちょっと後手に回ったというか、先手取られてあまり自分のかたちで攻められなかった」と技を繰り出せないまま準決勝の前半を終える。すると後半、開始直後の相手の攻撃は防いでリードを保ったが、その後右足を取られてからのバックで逆転を許す。それでもすぐさまバックを取り3-2と再びリードしたが、終了間際にローリングで再逆転を許した。その流れからすぐさまバックを取って4-4と同点に追い付き、さらにアンクルホールドを仕掛けたがこれは惜しくも決まらず。ビックポイントの数で下回り敗戦となった。70キロ級の野本はパワー不足という課題が残り準々決勝敗退、すでに天皇杯の出場を決めている97キロ級の松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)もテクニカルポイントを奪えずに準決勝で敗れ、不本意な結果に終わった。
豪快な投げ技を見せた宇井
2日目のグレコでは71キロ級で出場した宇井が魅せた。「普段(の66キロ級)より一つ上の階級なので、勝てるか分からなかった」と振り返ったが、初戦から豪快な投げ技を決め、危なげなく無失点で決勝へ進出。しかし決勝では一転、大接戦となった。前半を相手のパッシブでリードして終えたが、後半30秒すぎに場外ポイントを奪われ同点に。さらに残り50秒でバックを取られて1-3とリードを許し、窮地に陥る。それでも終盤に決死のタックルを仕掛けると、場外ポイントの1点に加えて、テークダウンの2点を奪い逆転に成功した。この時点で残り時間はわずか10秒。まさに起死回生だった。さらに再開直後に投げ技を決め、8-3とリードを広げた。しかしここでもうひとヤマが。投げ技を決めた流れから、相手にデンジャーポジションに持ち込まれあわやフォールに。しかしこの攻撃を凌ぎ切って8-5で見事に優勝を決め、敢闘賞に輝いた。
宇井の活躍があった2日目だが、その他のメンバーから優勝者が出ることはなかった。59キロ級の小田修一郎(スポ2=大阪・関大高)は5点差をひっくり返されて初戦敗退。98キロ級の松本も2回戦で早々に敗れ、本職ではないスタイルで天皇杯出場へ向け奮闘した岩澤も、3回戦で後半にバックを取られて1-3で惜敗した。それでも、宇井と同じく71キロ級に出場した野本は3位に入り、大学入学後初めて表彰台へ。大学のレスリングに適応しつつあることを結果で証明し喜ぶ反面、「優勝できないことはなかった」と天皇杯出場を逃した悔しさも垣間見せた。
惜しくも天皇杯に届かなかった岩澤。しかしケガからの完全復活は近い
新たな天皇杯進出者は現れなかったが、出場したのは未来に無限の可能性を残す選手たち。今回の敗戦もバネにして来季さらに一回り大きくなった姿を見せてくれることだろう。そしていよいよ来月、天皇杯が幕を開ける。今回の優勝で波に乗る宇井ら上位進出を狙える選手を多数そろえ、決戦に備える早大。個人戦ではあるが、頂点に立つには信頼する仲間のサポートが不可欠だ。総力を結集し、いざ日本最高峰の舞台で頂を目指す。
(記事、写真 皆川真仁)
※フリースタイルは10点差、グレコローマンスタイルは8点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる。
★橋本、故障が悪化し不完全燃焼。3位に終わる(東日本学生秋季選手権)
準決勝で敗れ、悔しい表情を浮かべる橋本
東日本学生秋季新人選手権(新人戦)の翌日行われた東日本学生秋季選手権に、早大からはただ一人、フリースタイル61キロ級で橋本星良(人3=茨城・土浦日大)が出場。新人戦同様、優勝すれば天皇杯全日本選手権(天皇杯)の出場権を得られる大会だったが、初戦で不安を抱えていた左膝の故障が悪化。それでも初戦はテクニカルフォール勝ちを収めたが、続く準決勝では効果的な攻撃を仕掛けられず。前半で4点のリードを許すと最後まで反撃に転じることができず、悔しさをにじませた。
(記事、写真 皆川真仁)
結果
1日目 フリースタイル
▽57キロ級
岩澤 3位
▽70キロ級
野本 準々決勝敗退
▽97キロ級
松本 3位
2日目 グレコローマンスタイル
▽59キロ級
岩澤 3回戦敗退
小田 1回戦敗退
▽71キロ級
野本 3位
▽98キロ級
松本 2回戦敗退
東日本学生秋季選手権
フリースタイル
▽61キロ級
橋本 3位
コメント
1日目
鈴木啓仁コーチ(平23スポ卒=京都・南京都)
――きょうは優勝者は出せないという結果になりましたがチーム全体を振り返っていかがですか
最後に取られてしまうっていう展開があると、どうしても(点を)先取ってると守りがちになっちゃうんですけど、そこ攻めていくようなスタンスでいかないと。やっぱりラストああやって取られてしまうと、その後断ったらもうラスト5秒とか、ラスト5秒じゃなかなか取り切れないんで。それよりもっと前に攻めて攻めてポイント取っていかないと。まあ本人たちが一番気付いてると思うんで。普段の練習で常に攻めるような姿勢で練習していないと、やっぱり本番ではなかなか、相手も練習してるわけですから、辛いところはあると思います。
――岩澤侃選手(スポ2=秋田商)の終盤の攻防を改めて振り返っていただけますか
やっぱり侃自身のそのスタイルがもうばれてしまっているというか、それで相手もそこを対策してきてる、まあどの選手もそうなんですけど、それに対してあいつ自身がいろんな展開を増やしていかないと。やっぱり対策している選手はあの点数差だったら一発狙うしかないんで、本人が一番気付いてるんで、ちょっと痛いところ突かれたなっていう。悪くはないと思うんですよ、ケガ明けで、動きも悪くなかったと思うんですけど。でもそこでもあいつのもうちょっとハングリー精神じゃないですけど、そういうのが出せたらなっていう。
――松本直毅選手(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)も準決勝で敗退となりましたが
重量級(の中)であいつは身長が小さいので、完全に足をああいうふうに触らせてしまったりすると、パワーはありますけど、大きい相手に対して下に入り込まれるっていうのが結構小さい重量級としては・・・。切るのは難しいんで。ちょっと(試合が)被ってたので、あんまり見れなかったんですけど。あいつはやっぱり力はついてるんですけど、自身が持ててないというか、もっと攻めればいいかたちになれるとっていうふうに思ってるんで、そこの面を改善していければもっと上の方に行けるんじゃないかなと思います。
――野本州汰選手(スポ1=群馬・館林)の今後の課題はどういったところでしょうか
州汰はやっぱりパワーがない。だからタックル入っても、もう下のポジションになってしまうと相手のパワーに負けて切られてしまう、まあ取り切れないってところがやっぱり。パワーつけて、あとレスリングの自分のかたちっていうのをしっかり定めないと。あいつも全然悪くはないんで、自分のかたちとパワーをつけて、自信さえつければいいところまで、こんな早い段階で負けないで済むんじゃないかなと思います。
――あすのグレコローマンスタイルにむけて
しっかり一人一人意識して、(天皇杯全日本選手権の)資格ない者はこれ優勝したら天皇杯の資格取れるんで。そこを重点的に意識して取っていってくれれば。全然日体大と劣らない強さを持ってると思ってるんで頑張ってほしいと思います。
岩澤侃(スポ2=秋田商)
――準決勝は非常に惜しい結果となりましたが、終盤の攻防を振り返っていただけますか
自分から仕掛けたポイントを取りたいなと思ってたんですけど、全体的にちょっと後手に回ったというか、先手取られてあまり自分のかたちで攻められなかったかなというのが一番印象です。
――きょうの調子はいかがでしたか
調子的にはだいぶ仕上がってきてていい調子だと感じました。
――ケガから復帰されてから調子は十分戻ってきている感じでしょうか
はい。インカレ(全日本学生選手権)でちょっとまだ不十分だったんですけど、そこから3カ月くらい経ってだいぶ調子も戻ってきているふうに感じました。
――今後の課題はどういったところでしょうか
ケガした部分にちょっとまだ不安があって、踏み込むっていうか、そういう攻め切れない部分が無意識のうちにたぶん出てるような感じの、客観的に試合終わってから見るとそういうふうに感じるので。レスリングにもうちょっとひびらないで積極的に自分のかたちつくっていけるようにしたいなと思います。
――あしたはグレコローマンスタイルがあります。あしたへの意気込みをお願いします
あしたは全然本職じゃないというか、あんまり練習もできてないんですけど、そういう違うスタイルでも全日本の資格取れるように、ケガだけしないように頑張りたいと思います。
2日目
宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)
――優勝されましたが今のお気持ちは
普段(の66キロ級)より一つ上の階級なんで、勝てるか分からなかったんですけど、優勝できて嬉しいです。
――今大会への意気込みというのはどういったものでしたか
減量もまったくないんで、100%のコンディションの状態でどれだけ自分の技とか出せるかっていうのを目標にしてました。
――決勝戦は接戦となりましたが、振り返っていかがですか
あそこ場外出されちゃったのが良くなかったんですけど、最後に取り切れて逆転できたんで良かったですね。
――ご自身の調子はいかがでしたか
100パーセントでもないですけど、80、90ぐらいは良かったですね。
――投げ技も良く決まっていましたが、準決勝までを振り返っていかがですか
手堅く勝ちにいったんで、普通に自分の技を出せました。良かったです。
――来月の天皇杯全日本選手権に向けて取り組みたいことなどありますか
ルールが変わったり、計量の仕方とかも変わるんで、そのルールに合うように自分のスタイルとかを持っていけたらいいなと思ってます。
――目標は
この前(去年)がベスト8だったんで、一つ上の準決勝進出を目標とします。
野本州汰(スポ1=群馬・館林)
――まず3位という結果についてどう思われますか
大学に入って初めて立てた表彰台なので嬉しいっていう気持ちはあるんですけど、やっぱり優勝できないことはなかったので、ちょうど自分の一個上の先輩が優勝してて、自分と同じ階級で。それ見てて、同じ練習をしてるんだったら自分も優勝したかったなみたいな感じはあります。
――やはり天皇杯を逃した悔しさというのはありますか
こういう一つ一つのチャンスをものにできなかったのはとても悔しいことなんで、少しありますね。
――昨日のフリースタイル(フリー)に関してはいかがですか
基本的に自分は今グレコ(グレコローマンスタイル)の練習をしているんですけど、それでもフリースタイルもまたやっていく中で、相手にワンパターンでずっとやられてしまったので、フリーもグレコももう少し自分の中でひと工夫できたらワンパターンとかでやられずに済むのかなみたいなのはあります。
――今年1年の戦いを振り返って残した結果や内容などいかがですか
まずインカレ(全日本学生選手権)でエイト(ベスト8)に入れたのと、今回3位に入れたので、着々と大学でも少しずつですけど力はついてきてるかなと思うので、これからもより高い結果出せるように今まで以上になんかひと工夫練習の中で入れて、人一倍努力して優勝とか入賞、天皇杯出場みたいなのを目標にしていきたいです。
――今後強化していきたいポイントなどはどういったところでしょうか
やはり自分自身まだ体が他の大学の選手たちと違って、できてない部分が大きいのでもう少しタックルを取った後の持ち上げるいろいろな力などを強化していきたいです。
――来年下級生が入ってきますが、上級生としてこういった行動を心がけたいなどありますか
模範となれるように頑張っていきたいと思います。
東日本学生秋季選手権
橋本星良(人3=茨城・土浦日大)
――今大会の目標はどこに設定していましたか
優勝すれば全日本(天皇杯全日本選手権)の出場権を得られるっていうことで優勝を狙っていたんですけど、惜しくも3位というかたちで、終わってしまったのはちょっと悔しいですね。
――調子はいかがでしたか
試合始まる前から内側靭帯ちょっと冷やしていて、それでだいぶ回復してきたので、今回の大会では大丈夫かなと思ってたんですけど、1試合目で片足を極められてしまったときにちょっとひねってしまって悪化してしまったという。まあちょっと練習不足の面もありますし、不注意の部分は多いかなと思います。
――準決勝ではなかなか攻め切れない展開となりましたが
同じ左構え相手にどう攻めるかっていうのをもうちょっと考えてやっておくべきだったのが一つと、崩しはかなり入れていたんですけれども、そこからの展開があんまり無かったのが課題ですね。
――今後の課題はやはりそういった左構えの相手への対策といったところでしょうか
そうですね。同じ左構え相手にどう攻めていくかっていうところと、あと片足を取ってからの処理が不完全だったんで今回。そこをもうちょっと改善できればなと思います。
――来年に向けて、目標や取り組みたいことなどは
インカレ(全日本学生選手権)で入賞して、天皇杯の出場権を取ることは第一の目標に考えて、今回みたいな膝のケガで不調っていうことはないように頑張っていきたいです。