グレコローマンスタイル(グレコローマン)で年に1度だけ行われる団体戦、全日本大学グレコローマン選手権が幕を開けた。3年生以下のメンバーで、来年の優勝を見据えて試合に臨んだ早大。98キロ級の松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)と本来フリースタイル(フリー)の選手である山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)の2人が3位入賞を果たした。
ケガからの復帰戦となった吉村拓海(スポ2=埼玉栄)は59キロ級に出場。1回戦を6-0で勝利し進んだ2回戦では、第1ピリオド(P)終了時には5-4と競っていたが、第2Pでテクニカルポイントを決め7-5と3回戦につなげた。3回戦では国際大会でも実績のある選手相手に苦戦。投げ技を許し敗戦したが、本来フリーの選手でありながらもグレコローマンの選手に立ち向かった。71キロ級の野本州汰(スポ1=群馬・館林)は自分から仕掛けることができず、無念のフォール負けを喫した。
久しぶりのグレコローマンでの試合となった80キロ級の山﨑は初戦を幸先良くフォール勝ちで制する。ヤマ場となった準々決勝では優勝候補に挙げられていた藤井達哉(青学大)と対戦した。第1Pではパッシブで2点を取られてしまい、追い掛ける展開となった山﨑。第2Pに入ってから何度か場外際に追い込む場面も見られ、試合を優勢に進める。残り45秒、「最後の最後に自分の決め技が決まった」(山﨑)とビッグポイントを決め逆転。試合終了直前にもバックポイントで加点し、7-2で勝利を収めた。しかし、準決勝では1-2で惜しくも敗戦する。3位決定戦に回り、フリーでは何度も対戦経験のある浅井翼(拓大)と当たることに。グレコローマンでの対戦は初めてということであったが、2-1で接戦をものにし3位入賞を決めた。
山﨑は3回戦でグレコローマンの実力者に競り勝った
全日本学生選手権(インカレ)の98キロ級で3位と躍進した松本。1回戦、2回戦では相手の攻撃に合わせて技を仕掛けポイントを重ねていき、順当に勝利を収めた。3回戦でも積極的に前に出るスタイルを崩さずに、パッシブ、場外ポイントを重ねて2-0で勝利を決めた。しかし準決勝では苦戦を強いられ、思うような試合ができない展開に。「全然手も足も出なかった」と敗北を喫した。迎えた3位決定戦ではお互いに息が上がる試合となったが、執念で勝利をもぎ取った。「準決勝で勝つためにもテークダウンを」(松本)。98キロ級ではインカレに続く3位と順位がまったく変わっていないだけに牙城崩しに臨みたい。
3位決定戦で接戦をものにした松本
昨年の大会と比べ、山﨑、松本と順位を上げていることから、この1年での確かな成長を感じられる早大。「来年優勝するための準備はできた」と太田拓弥監督も手応えを感じているようだ。あすは優勝候補に挙げられている宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)と齋藤隼佑(スポ3=群馬・館林)が出場する。フリーのイメージが強い早大だが、グレコローマンでの覇権争いにも一石を投じたいところだ。
(記事 杉野利恵、写真 太田萌枝)
結果
▽59キロ級
吉村 2回戦敗退
▽71キロ級
野本 予備戦敗退
▽80キロ級
山﨑 3位
▽98キロ級
松本 3位
コメント
太田拓弥監督
――今大会でのチームとしての具体的な目標はどのようなものでしょうか
全階級にエントリーできなかったというのもあって、例年優勝を狙いに行っているんですけど、正直2人出られていないというところと3年生以下のチームなので来年優勝するためのステップアップみたいなかたちで、表彰台狙いというところですかね。
――きょうは3位2人という結果でした
直毅(松本、スポ2=神奈川・横浜清陵総合)は去年5位で、弥十朗(山﨑、スポ2=埼玉栄)も2回戦かそこらで負けたので、特にフリースタイルのメンバーはコンタクトしてからの展開がグレコローマン(グレコローマンスタイル)に共通するものがあるので、それで弥十朗も去年よりもいいかたちでやれたと思います。準決勝も惜しかったですし、直毅も準決勝あと一歩のところまで追い詰めたんですけどもうあと一押し二押しが足りなかったので、初日3位2人という結果でしたけど来年優勝するための準備はできたかなと思いますね。
――山﨑選手の青学大の藤井選手との試合を見て、いかがでしたか
すごく良かったと思います。最後の最後まで諦めなくて、場外際思いっきり投げたところが、ちょっと足は出ていたんですけどそのあとの流れも見てくれたので4点入ったのはすごく内容的にも良かったと思いますね。特に後半の部分、ずっとプレッシャーを掛け続けているような部分での展開だったのであれがすごく良かったのかなと思います。
――吉村選手(拓海、スポ2=埼玉栄)についてはいかがですか
ケガ明けというのと久しぶりの試合というのもあったので、青山学院大の選手も強い選手なので直毅同様3番になって欲しかったなとは思いますけど、試合も3試合できたので良しじゃないかなと思います。
――野本選手(州汰、スポ1=群馬・館林)は出だし良かったように見えたのですがいかがでしょうか
やっぱり相手の腕取りを嫌がりながら左を取りにいっていたので、自分から仕掛けていって嫌がらすような展開ではなかったので、まだまだ力の差が、明らかにあるなと感じた試合内容でした。もっともっと力をつけて来年この大会でも優勝できるように、まず秋の新人戦(東日本学生秋季新人選手権)で悪くても表彰台に上がれるレベルにしないとこういった大会で勝ち切れないですね。まずは秋の新人戦で優勝できるようなレベルに持っていかないといけないと思っています。
――ジョージアの外国人コーチがきょういらっしゃいましたね
僕もグレコローマンは全日本レベルぐらいまでにはできるとは思うんですけど、やっぱりグレコローマンの細かいところの技術だとかそういったものを知らないので、OB名誉会長の方にお願いして臨時コーチというかたちで12月の天皇杯全日本選手権まで来てもらうことになりました。来ていただいてから約10日間程度なんですけど、すごく僕も勉強になりますし、学生も勉強になっているんじゃないかなと思います。本場のグレコローマンの選手なので、すごく僕も参考になりますね。
――すごく身振り手振りでアドバイスをしている姿が印象的でした
英語で話すんですけどお互い片言なので、ボディーランゲージした方がもっと伝わりやすいですからそういった部分で言葉よりも体で指導してくれているように思います。
――あしたは優勝が狙える2人が出場されると思います
そうですね。大和(宇井、スポ2=和歌山・新宮)は去年優勝していますし、齋藤(隼佑、スポ3=群馬・館林)はインカレ(全日本学生選手権)でチャンピオンを倒していますし、十分優勝を狙えると思いますね。
――宇井選手が出場する66キロ級には世界選手権で優勝した文田選手(健一郎、日体大)も出場されます
でも(文田の)本来の階級は下の階級(59キロ級)なので、そこはしっかりと勝ってほしいと思います。ただ59キロ級は世界のトップクラスなので、この間の国体でも59キロ級の3番手の選手が66キロ級に出て優勝していたりもするので。逆に66キロ級がまだ世界レベルではないということなんですけれども。59キロ級に関しては相当レベルが高いですね。でも負けてもいいので思いっきりやって欲しいですね。勝てるぐらいにならないと世界のトップレベルにはならないと思うので。
松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清稜総合)
――今大会での目標はどのようなものでしたか
やっぱり自分の攻め方の、前に出るスタイルを貫こうと思っていました。
――3位という結果についてはどのように思われますか
組み合わせも良かったので最低限はクリアできたかなと思いますね。
――1回戦、2回戦ではテクニカルポイントを取って勝たれましたが、そういった点はいかがでしたか
でも自分で攻めたというよりは、相手が攻めたところにうまくタイミングを合わせたという感じなので、本当はやっぱり自分で1個取れるものが欲しいんですけど、練習ではたまにやっているんですけどまだ試合で使える段階ではないので、そこを今後伸ばしていきたいですね。
――準決勝はあと一歩というところまで追い詰めたと思いますが、いかがでしたか
準決勝は全然手も足も出なかったと思います。
――体力的にもかなり息が上がっているように見えました
そうですね。相手の方もスタミナがかなりあって、動けていたのであんな結果になってしまったのかなと思います。
――3位決定戦はいかがでしたか
正直本当にきつかったです。向こうも5試合目で、こっちも5試合目で、両方とも腕がパンパンだったのでどっちが勝ってもおかしくなかったと思います。審判に勝たせてもらったかなと思います。
――インカレ(全日本学生選手権)の時に技の展開が課題とおっしゃっていましたが、そういった点はいかがですか
まだクリアできていないというか、まずは自分のスタイルを、前に出るという事を大事にしていてそこの段階はできていると思うんですけど、もう1個上に上がるには準決勝で勝つためにはテークダウンを取る必要があるのかなと思いました。
――内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)で出場する125キロ級での目標を教えてください
できるだけ多く勝ちたいと思います。
山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)
――今大会の目標は
目標は特に決めていなくて、自分の力を出せればいいかなくらいに思っていました。
――3回戦では強敵相手に勝利を収められましたがいかがでしたか
試合展開としては、途中ハプニングがあって止まってしまって。前半体力を残して後半攻めていこうと思っていたのに、それができなくなってしまって結構焦ったのですが最後の最後に自分の決め技が決まりました。自分の中ではあれが格上の相手に勝つパターンなのかなと再確認した試合でした。
――準決勝は振り返るといかがでしたか
自分はもともとフリースタイルの選手なので、やっぱり正統派なグレコローマンをされると何もできずに終わってしまったというか。1番面白くないパターンになってしまいました。個人的には自分も、見ている人も面白くない試合だったなと思います。
――お話にもありましたが、久々のグレコローマンの試合でした。感想はいかがでしたか
結構楽しかったです。ただ、準決勝だけは見ている人も自分も面白くなかったなと思います。
――3位決定戦を振り返って
いつもフリーでやっている選手と初めてグレコでやったのですが、お互いちょっと笑ってしまいました(笑)。楽しくできた部分もあるし、やったことがないグレコで未知数な部分もあったのでなかなか緊張感を持ってできた試合だったと思います。
――太田拓弥監督やコーチから特にアドバイスを受けた点はありましたか
やっぱり付け焼き刃なグレコローマンではあるので、自分は今回重心を落として腕を取るというのをずっとしつこく言われていました。それだけでも確立していけというアドバイスをされました。
――では次戦の内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)へ向けて意気込みをお願いします
内閣杯も団体戦なので、ひとりひとりの勝利が全体の勝利につながってきます。なので、自分の持ち場をしっかり全うしていきたいなと思っています。