3選手全員が表彰台へ

レクリング

 上級生が出場する大会として昨年12月に初めて開催され、今回が2回目となった東日本学生選手権。フリースタイル(フリー)57キロ級に出場した伊藤奨(スポ4=長崎・島原)が接戦を制して見事連覇を果たし、フリーの最優秀選手に選出された。さらにフリー61キロ級では、矢野富三家(スポ4=島根・隠岐島前)が2位、橋本星良(人3=茨城・土浦日大)が3位に入り、早大からの出場3選手全員が表彰台へ上ることとなった。

 連覇に向け順調なスタートを切りたい伊藤奨だったが初戦、高校の後輩を相手にいきなりバックで先制を許す。しかし、「取られても取り返せるとは思ってた」と焦ることなく、細かくポイントを重ねていき11-2と快勝した。準決勝は危なげなく2分20秒でフォール勝ちし、決勝に駒を進める。前半開始早々に先制を許した伊藤奨。それでも41秒にバックを取って同点に追い付き、2分15秒に場外ポイントを奪ってリードして前半を折り返した。後半1分30秒にバックを取り、さらにリードを広げたが、終盤5-4と1点差に迫られる。さらに「勝ちに対する意識が強すぎてディフェンスしか頭に無かった」とバックを取られる寸前まで追い込まれたが、これをなんとかしのぎ切って連覇を果たした。

決勝の終了間際、意地のディフェンスを見せる伊藤奨

 共にフリー61キロ級に臨んだ橋本と矢野。橋本は初戦いきなり6点のリードを奪われ窮地に立たされたが、相手の体力が落ちてきた終盤にポイントを重ねて10-10の同点に追い付き、ラストポイントを奪っていたため勝利となった。2回戦はテクニカルフォール勝ちで順当に勝ち進んだが、準決勝では相手のタックルに反応できず58秒でテクニカルフォール負けを喫した。一方の矢野は、「いつも緊張してしまうので、ちょっと気楽にいこうということを考えてたので、普段通りの力を出せた」と8-2で危なげなく初戦を突破。2回戦は序盤に先制を許したがワンチャンスを逃さずフォール勝ちを収めた。準決勝はリードを保っていたが、終盤に6-5と1点差まで詰め寄られる。それでも相手の猛攻を耐え切って勝利をもぎ取った。決勝では前半いきなり6点のリードを許したが、その後は攻勢に出る。後半には3度、タックルで片足を取りにいき、相手を脅かしたが最後までポイントにはつなげられず。結局そのまま0-6で敗れ、2位に終わった。

敗れはしたが、決勝でも攻めのレスリングを見せた矢野(右)

 『チーム内の格差』を太田拓弥監督が課題に挙げる中で、チームを引っ張る上級生に結果が出た意味は大きい。この3日間で天皇杯全日本選手権への切符をつかんだ者が出たのも収穫だが、トップ選手の参加は決して多くない。結果を残した者も甘んじることなく課題を克服して、8月に控える大舞台・全日本学生選手権に向けてプレーのレベルを高めていきたい。

(記事、写真 皆川真仁)

※フリースタイルは10点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる

結果

男子フリースタイル

▽57キロ級

伊藤奨 優勝

▽61キロ級

橋本3位
矢野2位

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コメント

太田拓弥監督

――伊藤奨主将(スポ4=長崎・島原)が優勝しましたがいかがでしたか

まあちょっと最後危なかったですけど、良くこらえたかなとは思いますが、リーグ戦(東日本学生リーグ戦)とかああいった緊張感のある試合で結果残してきたので、もっと楽に勝ってほしかったかなというのが正直なところですね。

――矢野選手(富三家、スポ4=島根・隠岐島前)は準決勝、粘り勝ちしましたが

良くない展開だったんですけど、準決勝はそういった状況の中で良く勝てたと思いますし、ただ決勝はやっぱり最初に失点したところが敗因だと思いますし、後半も3本いいかたちでタックル入れたんですけど、それをポイントにできなかったのが敗因で、そこらへんを修正しないといけないのかなと思いますね。

――あの足に入るタックルはいつもやっておられますか

そうですね、得意技なんで。左から前に対しての片足はあれが得意技なんで、それをポイントにできないってことはやっぱり勝てないってところになりますよね。

――橋本選手(星良、人3=茨城・土浦日大)には試合中、セコンドからかなり言葉をかけられていましたが

基本的な部分が全然やれてないのと、相手が何しようとしてるのかっていうのが理解できてないっていうのがあったんで、ここ最近の試合の戦い方が悪いんで、もっともっと改善しないといけないのかなというところが特に目立った試合内容だったので。

――初戦は先制されながら追い付きましたが

それもちょっと、もっと楽に勝てる相手なんですよね。タックル入った後も足の四の字決めればフォールできましたし、もっと効率良くポイント取れたはずなんですけど、それをああいったかたちで泥仕合になってしまって。ああいう試合を楽に勝てるようになれば、こういった大会で優勝できる実力付いていくと思うんですけど、そういった展開にならなかったんで、ああいったかたちで負けてしまったと思うんですけど。もっともっと自分のかたちっていうのを身に付けていかないといけないのかなとは思いますね。

――この3日間を振り返っての感想は

とりあえず、フリー(フリースタイル)、グレコ(グレコローマンスタイル)、女子、選手権ってかたちで一人ずつ優勝できたので、全日本(天皇杯全日本選手権)ヘの出場権獲得できたことは良しだったんですけども、ただやっぱりチーム内の格差というか、そういったものを埋めていかないとやっぱり大学選手権(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)とか、チームでの優勝っていうのは、まだまだ程遠いなっていうのは改めて分かった試合だったので、もう1回、1・2回戦で負けてるような者をどういったかたちでテコ入れするのかっていうのがはっきり明確に見えたんで、そこを重点的に夏のインカレ(全日本学生選手権)に向けて、やっていかないといけないのかなっていうふうに改めて思いましたね。

伊藤奨(スポ4=長崎・島原)

――初戦いきなりリードを許す展開になりましたがあの場面はいかがでしたか

同じ高校の後輩だったんですよ。1個下の。取られても取り返せるとは思ってたんで焦らずに1点ずつとか2点ずつ、細かいポイントで点数取れるだろうなと。まあ後半相手バテるのが分かってたので、自分のペースで落ち着いてできました。

――準決勝は相手を圧倒しましたが

まあ何回もやったことある相手だったんで。1回戦で結構動いてて自分の体も動いてるなと思ってたので、早く終わらせたかったんでもう(フォールで)終わらせました。

――決勝戦も(初戦と同様)いきなり右足を捕まれて場外に押し出されるかたちになりましたが

やっぱり立ち上がりに体が浮いてるっていうか気持ちが多分集中し切れてなくて、ああいうかたちになってしまったんですけど、それでも焦らずに、練習とかでやったことある相手だったんで。

――どういったかたちで点数を返そうと思っていましたか

バテさせて場外だったり、僕自身あんまりタックル入れるタイプじゃないんで、組み手で追い込んでって相手が無理矢理入ってきたところをカウンターで取ろうと思ってやってました。

――終盤は少し危ない場面もありましたが

バック取ったときに僕自身は返したと思って、それで返ってれば5点差ですかね。7-2とかで安心だなと思ってスタンドになったら返ってなくて、それでちょっとこう集中力が切れたじゃないですけど、それで2点取られる、5-4までは想定内って言っちゃ駄目ですけど2点やるまではしょうがないかなって思ってました。でもああいうかたちでやっちゃって、最後の最後もやっぱり普段だったらあそこで前で押さえてカウンターとかいくんですけど、勝ちに対する意識が強すぎてディフェンスしか頭に無かったのでやっぱりああいうかたちでうしろに掛かってるから横にスッと回られてバック取られそうになってしまったのかなと思います。

――昨年の12月の東日本学生選手権の決勝も似たような試合展開でしたが

そうですね。決勝は確かにちょっとした点の取り合いで、リーグ戦(東日本学生リーグ戦)の時も2、3試合そういう試合があったので、取られて取り返せるってとこまではいいんですけど最後自分がリードしてるときに、どうしのぐかっていうのが今後の課題かなと思います。

――これで連覇となりましたがいかがですか

あんまりレベルの高い大会でもないですし、全日本(明治杯全日本選抜選手権)が先週あって、それに出てた選手とかほとんどいないので優勝して当然という気持ちで臨んでたので勝てて良かったです。あとちょっと先週まで教育実習に行ってて、久々に大学生と先週の木曜日からですかね、やったんでそういった中では自分なりに走り込みとかやってたんでそこが生きたのかなと思います。

――太田拓弥監督がチーム内での実力差がまだあるとおっしゃっていましたが主将としてその点はどうですか

やっぱりポテンシャルとか持ってるものの差っていうのはあって当然というか、しょうがないと思います。練習量だけを求めるっていうのも違うと思いますし、質を上げるためにどうしたらいいのかっていうので、弱い選手、勝てない選手が勝とうという意識を持ってやるのも大切だと思うし、強い選手が弱い選手に対して技を教えてあげるっていうのもいいと思うんですけどどうしたら勝てるかっていう見本を。練習に臨む姿勢であったり、普段の私生活であったり、そういうのを強い選手が見せていけるようになったら弱い選手もどんどんそれを真似してチームの底上げにつながるかなと思うので、まずはあんまりレベルの高い大会ではないですけど、自分が勝ったので背中で示せるような行動をこれからも取りたいなと思います。

――インカレ(全日本学生選手権)に向けてどのような取り組みをしていきたいですか

おととし3位になって、去年がベスト8で、いろんな大会で強い選手になかなか勝ち切れない、ベスト8レベルで学生の中で止まってるっていうのが今の課題なので。今回の大会みたいに自分より下の選手に対しては、決勝戦みたいな試合じゃなくてテクニカル(フォール)でどんどん勝てるような、グラウンドの強化が1つと、やっぱり足を触らせてしまうと点数につながるのでディフェンス、スタンドのタックルの切りをもうちょっとやらなきゃいけないかなと思います。

矢野富三家(スポ4=島根・隠岐島前)

――初戦は順調な滑り出しでしたが

今回、いつも緊張してしまうので、ちょっと気楽にいこうということを考えてたので、普段通りの力を出せたかなって思います。

――2回戦は最初リードを許す展開になりましたが

やっぱり力強くて最初負けるかなと思ったんですけど、自分のちょっとぐにゃぐにゃしたようなスタイルで、ワンチャンス逃さなくて勝てたんで良かったかなと思います。

――準決勝は最後接戦となりましたがいかがでしたか

判定次第ではもっと点差は開いてたと思うんですけど、そういう中でも追われる立場でもちょっと冷静に対応できたからまだ良かったかなと思います。

――決勝の前に首を冷やされてましたが

準決勝で首がちょっとマットに刺さっちゃって、動かすの痛いですね。

――決勝に影響はありましたか

いや、あんまないですね。試合のときはあんま痛み感じないんで。

――決勝は前半で点差を離されてしまいましたが、前半いかがでしたか

逆にいうとあそこの一発だけ上手く対応してればまだ勝負はできてたのかなと思う部分があるので、次からはそういうところしっかり見直して頑張っていきたいなと思います。

――後半、足を取りにいくタックルが再三見られましたが、あと一歩のところでしたね

そうですね、処理をもう少し。

――あれはいつもやっているかたちですか

まあそうですね。相手が左構えだった部分があるんで、早稲田にあんまり左構えがいないっていう部分もあって、ちょっと不慣れな部分があったんですけど。あそこまで入れたんですけど、処理が甘かったんで。

――今後の目標や課題など

ラストもうあとインカレ(全日本学生選手権)と別の試合あるか分かんないんですけど、インカレで絶対3番以内に入りたいなって思いはあります。

橋本星良(人3=茨城・土浦日大)

――初戦、リードを許してから同点に追い付き(ラストポイントで)勝利しましたが

やっぱり1回戦目ということあってあんまり動き良くなかったっていうところはあるんですけれども、そっから2点、2点って重ねていってなんとか追い付けたのは良かったです。

――後半相手はバテてきている感じでしたか

そうですね。やっぱり相手の方もずっと動き続けてるっていうこともあって。まあタックルも最初の方は結構自分が食らっていたんですけれども、そこもある程度切れるようになってきてなんとか逆転できたんですけれども、やっぱりグランドからの攻めがまったく無かったので、グランドの技術身に付けといた方がいいなということを感じましたね。

――2試合目は圧勝でしたが

相手の方も(1回戦が)不戦勝だったので、あまり緊張せずに自分のペースでレスリングできたのが良かったんじゃないかなというところですね。

――敗れた準決勝はなかなか波に乗れませんでしたが

結構パワー負けしてしまった部分が強くて、2回タックル入られたんですけど、同じパターンで取られたのでもうちょっと良く相手見て、反応できればなというふうに思いました。

――準決勝を戦って今後の課題はどういったところにあると感じましたか

やっぱり相手の動きに対してしっかり反応できるようにすることと、そこからカウンターを繰り出せるような攻め、あとグラウンドでの技術も、攻め守り含めて磨いていけたらなというふうに思います。