2日間にわたり熱戦が繰り広げられたJOCジュニアオリンピックカップ。エンジの戦士たちが今年の躍進を予感させる戦いぶりを見せた。男子フリースタイル(フリー)74キロ級の山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)、男子グレコローマンスタイル66キロ級の宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)が共に初戦から圧倒的な力の差を見せつけて優勝。世界ジュニア選手権への切符をつかんだ。惜しくも決勝で敗れた男子フリー60キロ級の吉村拓海(スポ2=埼玉栄)もアジアジュニア選手権への出場権を獲得。新人4選手は入学後初の公式戦ということで緊張もあったのかいずれもベスト8には残れなかったが、今後に期待が持てる試合を展開した。
★別次元の強さ見せつけ優勝。名実ともに早大のエースに
4連覇の山﨑。男子の最優秀選手にも選出された
男子フリースタイル74キロ級で他の追随を許さない強さを見せたのが早大の新エース山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)だ。カデット時代を含めるとこの大会4連覇が懸かっていたため周囲の注目を浴びていたが「思ったよりも自分の中で動けていたほう」とその実力を遺憾なく発揮した。2回戦を危なげなく突破し迎えた野本州汰(スポ1=群馬・館林)との同門対決。寮では同部屋だというこの2人の対決は1分23秒にバックポイントを奪い主導権を握った山﨑に軍配。テクニカルフォール勝ちで先輩の威厳を示した。続く準々決勝、準決勝も一切の隙を与えず、右足を取って体制を崩す得意の形などでポイントを重ねて圧勝。決勝でも、序盤こそやや攻めあぐねたものの俊敏な動きでバックポイントを奪うなど7-0で完勝。全試合無失点という離れ業をやってのけた。「シニアの試合に比べたら楽」と余力を残した山﨑にとって国内大会は通過点にすぎない。確実にポイントを取れる新技を会得し、昨年9位に終わった世界ジュニア選手権のタイトルをつかみに行く。
(記事 皆川真仁、写真 杉野利恵)
★快勝続きの金メダル!
決勝戦で豪快な投げ技を披露する宇井
第1シードとして出場した宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)。「組み合わせが結構良かったんで、決勝は絶対にいかないといけないなと思っていた」という言葉通り、準々決勝までをすべてテクニカルフォールで勝ち進めていく。準々決勝では低い体勢から投げ技を決めるなど、自身の持ち味を生かした試合を展開。準決勝では苦戦を強いられるも、がつがつと攻めるスタイルで勝利する。迎えた決勝でも開始30秒で4点技を決めると、立て続けに投げ技を決めた。4点を追加し試合を決めたかと思ったが、審判の判定は2点。しかし精神面で崩れることはなく相手を場外際まで追い込みポイントを重ね、54秒でテクニカルフォール勝ちを収めた。ポイントを取る形、メンタルを含め、「ほぼ100点満点の試合ができていた」と太田拓弥コーチも評価する試合をやり切った宇井。挑戦権を得た世界ジュニア選手権では、高校生の時に出場した世界カデット選手権以上の成績を求める。
(記事 杉野利恵、写真 皆川真仁)
★「後悔が残る」、吉村は2位に
優勝こそ逃したが地力は見せた。アジアジュニア選手権でのタイトル獲得に燃える
昨年2位入賞を果たしている吉村拓海(スポ2=埼玉栄)は「ことしは絶対に優勝しなければいけない」と強い気持ちで試合に挑んだ。しかしその意気込みが吉村にとってやりづらさを感じる原因となってしまう。準決勝までをすべてテクニカルフォール勝ちで進めていくも、「そこまで良いものではなかった」とプレッシャーを感じた試合を振り返った。決勝では第1ピリオドで先制点を奪われてしまう。第2ピリオドでは試合終了20秒前にマット際のせめぎ合いを制し2-2に持ち込む。しかしラスト1秒、相手の猛攻に耐え切れずバックポイントを献上してしまい逆転を許す。「集中力を切らしてしまった」と後悔が残る試合になってしまった。次の東日本学生リーグ戦ではマット外での努力も怠らず、全勝してチームに流れを引き寄せたいと意気込む。全勝の先に自身のアジア選手権での金メダルにつなげたい。
(記事 杉野利恵、写真 皆川真仁)
★松本、終盤に意地見せるも一歩及ばず。技の精度に課題残る
松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)の初戦は守りに入る相手に攻め手を欠く我慢の展開となったが「パッシブで地道に(ポイントを)取っていってという風に自分の中でやろうと思っていた」と冷静に3ポイントを奪い突破。しかし次の準々決勝は逆に連続でパッシブの判定を受け第1ピリオドに2ポイントを失ってしまう。これで「(ポイントを)取りにいくしかない」と気持ちを切り替えた松本。終盤は体力を振り絞り猛攻を仕掛けた。しかし最後まで決定的な技は出せず、1-2で惜敗。「いい所までいくのにポイントを取りきれない」と太田コーチが指摘する昨年からの課題を克服し、次戦の東日本リーグ戦では全勝を狙う。
(記事 皆川真仁)
★新人4選手は悔しい結果に
未来の早大を担う期待の新戦力がデビューした。男子フリースタイル66キロ級で優勝候補筆頭と目されたのが世界カデット69キロ級で3位の実績を持つ梅林太朗(スポ1=東京・帝京)。2、3回戦をテクニカルフォール勝ちで順当に勝ち進む。しかし、4回戦で高校生相手にまさかの敗戦。「練習通りに動けませんでした」と悔しさをにじませた。昨年8月以来の公式戦ということでブランクが響くかたちとなったがその潜在能力の高さはのぞかせた。山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)に敗れた野本ら他の3選手もベスト8には残れなかったがそれぞれが今後に期待を抱かせる試合を演じた。
(記事 皆川真仁)
結果
ジュニアの部
男子
フリースタイル
▽55キロ級
坂井剛光(社1=福岡・小倉商) 3回戦敗退
▽60キロ級
吉村 2位
橋本(人3=茨城・土浦日大) 1回戦敗退
▽66キロ級
梅林 4回戦敗退
▽74キロ級
山﨑 優勝
野本 3回戦敗退
グレコローマンスタイル
▽60キロ級
小田修一郎(スポ2=大阪・関大高) 3回戦敗退
▽66キロ級
宇井 優勝
▽96キロ級
松本 準々決勝敗退
女子
▽59キロ級
臼池優月(社1=茨城・鹿島学園) 2回戦敗退
コメント
太田拓弥コーチ
――優勝者も2人出ましたが2日間を振り返っていかがでしたか
優勝した2人はほぼ100点満点の試合が出来ていました。自分のポイントを取る形っていうのが誰に対しても出来ているというのが優勝した要因の1つだと思います。それ以外の負けたメンバーに関しては自分の形というのが無いのでそこの差がちょっと出たのかなという所です。梅林(太朗、スポ1=東京・帝京)や吉村拓海(スポ2=埼玉栄)も優勝する力は持っていながら負けてしまいました。梅林に関しては半年ぶりの試合ということで試合感が鈍ってたのかなと思いました。あと拓海に関しては最後の最後、弱い気持ちがちょっとだけ出てしまったのでああいった展開になってしまったかなと思いますね。
――松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)選手が初戦なかなか技を出せず、試合後指導をされていたと思うんですがどのようなことをお話しされましたか
武器として投げとかタックルとか今回はグレコローマンなので使えないんですが足技とか良いもの持ってる中で、昨年から自分でポイントにつなげる技やパターンがなかなか無いのでもっと思い切り行くという所とポイントにつなげる技を積極的に仕掛けるというようなことを指導していました。しかし負けた試合でもあと1歩の所でポイントになるのに、この技がダメならこの技というようにもっと速いアクション、もっと速い攻撃パターンをやって点数につなげるっていうのがちょっと出来ていなかったです。いい所までいくけどポイントにならないという昨年からの課題がまだまだ克服出来てないかなと。少しは良くなってきているのは目に見えて分かるんですけどそこらへんは克服しないと誰にでも接戦で勝ったり負けたりしかねないんで。やはり強い選手は自分のポイント取るパターンというのを持ってるので、そういったパターンを作っていかないといけないよなっていう話はしました。
――野本州汰(スポ1=群馬・館林)選手と山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)選手の直接対決で2人の勝敗を分けたものは
野本は本来70キロ級の選手なので普段の体重が74、75くらいしかなくて弥十朗は81、82くらいあるので明らかな力の差が出たかなと思いますね。ただやはり1学年しか違わないのでもっと接戦して欲しかったなというのが本音のところです。同じ部で(山﨑選手と)接戦出来るようなレベルになっていけば自然とそのまま学生のトップレベル、全日本のトップレベルにもなっていくので今はまだ差はありますけど徐々に差を詰めていってもらいたいなとは思いますね。
――宇井(大和、スポ2=和歌山・新宮)選手は初戦から圧倒的な強さで勝ち進んでいきましたがどういったところに成長を感じましたか
やはり胸を合わせたら絶対負けないという所や決勝戦の大技が思うようにポイントに加算されなかった場面で審判にアピールすることもなくどんどん前に出て(相手を)場外に出してという所ですね。ポイントが入ると思ったのに入らなかったときって結構動揺したり審判にアピールしたりして自分のリズムを崩すことが多いんですけどそういったこともなく、また1点2点と取りにいく姿勢っていうのは他の学生も学んで欲しいと思います。
――精神面で成長したということですね
そうですね。はい。本当に安心して見ていられるっていう試合内容でしたね
――臼池(優月、社1=茨城・鹿島学園)選手についてはいかがでしたか
ちょっとまだまだ力不足ですね。肩周りの筋肉だったりタックルの処理だったりまだまだ課題は山積みですね。
――今大会の優勝で山﨑選手と宇井選手の世界ジュニア選手権出場が決まりましたが期待することは
1試合でも多く試合をして、やはりメダルを取ってきて欲しいですね。ジュニアの世代がその大会でメダルを取ることによって2、3年後にシニアの世界大会でもメダルを取れるレベルになっていくような登竜門的な大会でもあります。昨年、弥十朗も1回戦で負けてしまっているので最低でもメダルは取ってきてもらいたいなと思いますね。
――吉村選手もアジアジュニア選手権に出場しますが期待することは
世界とアジアでレベルは少し違うかもしれませんが国際大会という位置付けで色々な経験が出来るので、海外の選手と試合をやるのは普段なかなか無いですし海外の色々なレスリングを吸収して持ち帰ってきて、レスリングの幅を広げてもらいたいなと思いますね。
――今後東日本学生リーグ戦もありますがチームとしてどのようなところに重点を置いて強化していきたいですか
拓大と同じリーグなんですけどタックルの処理だったり組み手だったり細かい部分のところをしっかり修正してまずは拓大戦に勝って決勝リーグに上がって5年ぶりの優勝目指したいなと思いますね。
宇井大和(スポ2=和歌山・新宮)
――きょうは優勝を目指して挑まれた試合でしたか
はい。組み合わせがけっこう良かったんで、決勝は絶対にいかないといけないなと思ったんですけど、優勝できて良かったですね。
――自信はありましたか
はい。決勝まではありました。第2シードの日体大の人が上がってくると思っていたんですけど、違う人でしたが勝てちゃいました。
――圧勝続きという印象があったのですが、試合内容を振り返っていただいていかがでしたか
スタンドで1つ取って、グランドでリフトで返すというパターンができていたので良かったかなと思います。
――世界ジュニア選手権への挑戦権を得られましたが、どのような試合をしたいですか
自分高校生のときに1回優勝して世界カデット選手権の方に出たんですけど、そのときは1回戦負けだったので世界ジュニア選手権では勝てるように頑張りたいと思います。
松本直毅(スポ2=神奈川・横浜清陵総合)
――2戦目での敗戦となりましたが敗因は
やはり自分で(ポイントを)取りにいく技が無かったのが敗因だと思います。
――初戦なかなか技が出せない状況でしたがコーチからどのようなアドバイスを受けましたか
初戦は安定してパッシブで地道に取っていってという風に自分の中でやろうと思っていました。コーチも多分分かっていたと思うのでそんなに指摘とかは受けませんでした。
――2戦目に2ポイントを先に失ってからはどのように気持ちを切り替えましたか
「(ポイントを)取りにいくしかない」と思って2ピリオド目はガンガン攻めにいったんですけどちょっと足りなかったですね、努力が。
――今後そのポイントを奪う上での課題は
やはり1つ自分の得意な技を見つけて試合で使えるぐらいのものにしていきたいなと思ってます。
――次のリーグ戦での目標は
次は全勝ですね。全勝出来るように頑張ります。
――1年生の戦いぶりはいかがでしたか
大学入って間もないのに結構出来てたほうじゃないですかね。梅林太朗(スポ1=東京・帝京)とかは動きがちょっと悪かったかなと思うんですけど、もっと成長すると思うのであれだけ出来たら今回は良かったんじゃないかなと思います。
――上級生として日頃の練習で気をつけていることは
まだ(新入生が入って)日が浅いのでそんなにはないです。
――これからどういったことを上級生として取り組んでいきたいですか
まだ出来てないですけど後輩がやりやすいように声は出すようにしてこれからやっていきたいです。
山﨑弥十朗(スポ2=埼玉栄)
――初戦から決勝まで1ポイントも許さない完璧な優勝でしたが
今回は4連覇が懸かっているということで結構周りから注目されていると思っていたんですけど思ったよりも自分の中で動けていたほうでした。しっかりとした作戦も練ってそれを実戦で生かせたので今回の結果は非常に満足していますね。
――野本(州汰、スポ1=群馬・館林)選手との同門対決については
州汰は寮でも同部屋で過ごしていつも一緒に練習している仲なので後輩という部分で野本選手の方が緊張しているかなと試合中感じてましたね。
――昨日の初日が終わった後「当たるね」と話したりはしましたか
少し話しました。試合の3試合前くらいにも話して「まあ楽しくやろう」みたいな結構フレンドリーな感じでプレッシャーかけてました(笑)。
――前半から積極的に動いていましたが体力は最後まで落ちませんでしたね
ここはジュニアの世界なので。やはりシニアに行くと同じ試合数でもっと接戦が続くのでそれに比べたら非常に今回は楽でしたね。
――この優勝で世界ジュニア出場が決まりましたが目標は
昨年も行って、そろそろ海外慣れもしてきたのでまずは最低限メダルを獲るという意識を持って優勝目指していきたいかなと思ってます。
――野本選手も含めて新入生の戦いぶりはいかがでしたか
ちょっと大学生になってみんな焦ってる部分とか慣れない部分が今回試合で見えてしまったかなという感じがあるので早く大学に慣れて、高校とは違う雰囲気を醸し出す大学生らしいレスリング選手になって欲しいなと思います。
――完璧な優勝でしたがあえて今後に向けての課題をあげるとすれば
課題としては技のレパートリーが今回少なかったので新技というか「これだ」という絶対(ポイントが)取れる自分の必殺技をつくっていきたいなと思ってます。
――右足を取って攻めるのが多かったですが得意技ですか
得意ですね。いつも右ばかり攻めてるのでじゃあ今度左、次は左でもありきたりだからちょっと特殊な技も入れてみてという感じで何か1つあっと驚かせるような技をつくっていきたいですね。
吉村拓海(スポ2=埼玉栄)
――どのような目標を持ってこの大会に挑まれましたか
いつも強い選手が他のスタイルで出ていて、また去年優勝した選手が棄権ということで優勝しかないということで、優勝を目指して臨みました
――結果としては去年と同じ2位ですが、去年とことしで違うと感じる部分はありましたか
試合前のプレッシャーとかが違いました。去年はのびのびとできたんですけど、ことしは絶対に優勝しなくてはいけないと思っていたので、その部分でそこまでではなかったですけど緊張した部分だとかあってやりづらかったですね。
――試合終了後、悔しそうな表情を浮かべられていましたが、悔しかったのでしょうか
悔しいというよりは後悔が残る、ラスト1秒で取られていました。集中力を切らしてしまいました。
――決勝までの試合内容についてはどう思われますか
そこまで良いもんじゃなかったなと思います。練習でできてた動きが全体的に出せていなかったなと思います。これは今回の反省点ですね。
――アジアジュニア選手権の出場権を得ましたが、アジアジュニア選手権での目標をお願いします
アジアジュニア選手権では去年も2位だったのでそろそろ金メダルが欲しいなと思います。
――次の試合の東日本学生リーグ戦での目標をお願いします
去年同様に全勝してチームに流れを引き寄せたいと思います。そのためにも食生活、私生活などマット外の努力も欠かさないようにしていきたいと思います。
梅林太朗(スポ1=東京・帝京)
――今回の大会にはどのような意気込みを持って挑まれましたか
去年のこの大会で3位になって、そのときの1位2位の人達は年齢制限で出れなくなってしまったので、結果的には1番手だったと思うんですけど、早大に入学してデビュー戦で優勝を目指してやってきたんですけど、ケガだったりで8月の試合から試合に出られていなかったり減量も9キロ10キロ落とさなくてはいけない状況で、練習どおりの動きができませんでした。先輩だったりトレーナーの鈴木聡一郎さん(スポ4=山梨・都留)にからだのケアなどをしていただいて、良い状態では試合に挑めたので自分の経験不足、実力不足だと思います。来月に東日本学生リーグ戦、一番大切な試合があるので1年生として自分がメンバーに入るかどうかわかりませんけど、今まで個人戦にしか出てこなかったので、チームのために1つでも多く勝てるようにあしたからまた練習を頑張りたいと思います。
――高校生の時から出られている大会だと思いますが、大学に入って何か違いだとか感じる部分はありましたか
年下とやるというのは正直プレッシャーで、追われる側として負けられないという思いもあるんですけど、年下だと思い切って試合ができるので、その勢いにのまれてしまった部分もありました。去年は自分が高校3年生で大学生相手に勝って3位になれたんですけど、ことしは逆の立場できつかった部分もあったんですけど、自分は高校のときは少人数の高校で応援とか全然無くて、でもきのうの最終試合が自分の試合だったんですけど、みんな残ってくれて応援してくれてすごく力になりました。来月その分恩返しできるように頑張ります。