秋の団体戦の幕開けだ。本格的に寒くなり始めた山形で行われた全日本大学グレコローマン選手権。昨年は3位以内に入賞者が出なかったものの、総合3位、そしてらいねんの優勝を見据えての戦いが幕を開けた。男子66キロ級準決勝では宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)がジオルコウスキ国際大会でも3位に入っている下山田培(日体大)相手にテクニカルフォール勝ち。勢いそのままに優勝を果たした。また、本来よりも重い階級での出場となった齋藤隼佑(スポ2=群馬・館林)も5位入賞と健闘し、あすに向けて弾みのつく1日目となった。
「優勝できるとは思っていなかったので自分でも驚いています」と驚きをあらわにした宇井。準々決勝ではインカレ(全日本学生選手権)3位の大平稜也(国士館大)と対戦した。春先の練習で負けている相手であったが、何でも相手のパシビティーを取る。宇井が試合の主導権を握り、勝利を収めた。準決勝では学生王者の下山田と対戦。試合開始36秒で投げ技を決め、会場を沸かせる。その後、日体大が得点についてチャレンジを行うものの、チャレンジは認められず。さらなる追加点を得た。最後には焦った相手を冷静に投げビックポイント。試合開始1分15秒、宇井はガッツポーズを見せる。見事なテクニカルフォール勝ちで学生王者を撃破した。「(決勝前に)大和にどうやって戦うか聞いたら、まったく僕と同じ考えだったので、これは勝てるなと思いましたね。」(太田拓弥コーチ)。相手に強くプレッシャーを与え続けた6分間。投げ技を決め、相手の攻撃にもしっかりとブロックをするなどし、8-4で試合終了。1年生ながらも全日本大学グレコローマン選手権優勝を決めた。
場外際で投げ技を決める宇井
75キロ級に出場した齋藤は幸先よく初戦をフォールで突破する。続く2回戦では第1ピリオド(P)開始50秒で、相手を回すように投げビックポイントを決める。しかしその後連続攻撃を許してしまい、体勢を立て直せずにフォール負けを喫した。その後相手選手が決勝まで進んだために、敗者復活戦に回ることに。すんなりとテクニカルフォール勝ちを収め、3位決定戦へと駒を進める。「1点を争う展開の中で勝ちきれなかったのは自分の技ができてない」(齋藤)。インカレチャンピオンを前にあと一歩及ばず。接戦をものにできず、5位に終わった。大学生としては今試合が最後となった堀江一馬(社4=富山・高岡商)、また地元での試合となった土赤耕陽(スポ4=山形商)らは満足のいかない結果となった。
接戦を繰り広げた齋藤
総合3位という目標に向けて、宇井の優勝などまずまずの出だしとなった初日。しかしながら4年生が思うように結果を残せていないという課題も浮き彫りとなった。「内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)に向けて4年生の立ち振る舞いが重要になる」(太田コーチ)と内閣杯への不安も少しばかり残る。あすは1年生3人と2年生1人と若いメンバーで臨む早大。グレコローマンスタイル専門の選手は出ないが、「フリースタイルに通じるところもあるので、1つでもプラスになるような試合をしてほしい」(山方隆之監督、平4人卒=福岡・築上西)。各々がどこまでやれるかに注目だ。
(記事 杉野利恵、写真 上野真望、寺脇知佳)
結果
▽男子グレコローマンスタイル
66キロ級 宇井 優勝
75キロ級 齋藤 5位
85キロ級 堀江 3回戦敗退
130キロ級 土赤 2回戦敗退
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――初日を振り返っていかがでしたか
まずは大和(宇井、スポ1=和歌山・新宮)が優勝してくれて良かったと思います。どこまでできるのかな、ということで期待は期待していましたけれども準決勝では全日本学生選手権で2連覇している日体大の選手相手にああいった形で完勝してくれて、入学してからの練習の成果がしっかりと出ているなと思います。優勝してくれて、本当に良かったと思います。
――何かミーティングで話されたことなどはありますか
私はいつもミーティングのときは特別なことはあまり話さないんですけど、会場が寒いのでけがもそうですし体が動かないということがないようにしっかりとアップをして試合に臨むようにと言うことと、試合では自分からいけ、ということぐらいしか言っていないですね。
――きょうは下級生が印象に残るような試合をしてくれましたね
大和は優勝、隼佑(齋藤、スポ2=群馬・館林)も負けはしたんですけど、2試合とも勝てない試合ではなかったので正直に言うともうちょっとかなという感じですね。隼佑にも行ったんですけど、自分が今どのぐらいの位置にいるかというのがはっきりとしたし、自分が足りないところもはっきりと見えた試合だったので、きっと隼佑の今後にはプラスになる試合だったのかなと思います。
――あしたに向けての意気込みをお願いします
あしたは1、2年生でグレコローマンスタイルを専門としていないし、あまりやっていない選手の中でどこまでやってくれるのかなというのが期待しているのが正直なところです。フリースタイルにグレコローマンスタイルは通じるところも多くもあるので、1つでもプラスになるような試合をしてほしいなと思います。
太田拓弥コーチ
――初日を振り返っていかがですか
大和(スポ1=和歌山・新宮)のグレコローマンスタイル(グレコローマン)での1年生優勝というのは、僕がコーチになってから初めてのことです。準々決勝で当たった国士館大の選手とは春先の練習ではけっこうボコボコにやられていたので、まだ差があるかな、とは思っていました。国士館大の選手が(準々決勝の)前の試合で泥仕合をしていたので、前半から取りにいって後半で勝負となれば、大和は後半に強いので勝てるかなとイメージもしていました。実際に試合では終始押していたので、勝てましたね。でもさすがに下山田培(日体大)にはまだ差があるかなと思ったんですけど、場外際で本当によく投げたと思います。ただ相手のセコンドにもミスがあってチャレンジをする場面ではなかったと思うんですけど、そこで1点プラス取れて。そのあとの相手の戦い方も相手が強引に来たので、つぼにはまったというかしっかりとした形で勝てたので、そこが勝因だと思います。決勝の前にも大和と話したのですが、僕自身が思っている大和がこう戦えば勝てるかなというプランがあったんですけど、大和にどうやって戦うか聞いたら、まったく僕と同じ考えだったので、これは勝てるなと思いましたね。とにかく前に出るプレッシャーがすごく良かったですし、差されたときも相手にプレッシャーをかけながらパッと抜くというのも良かったです。確実に力はついているな、という感じですね。
――齋藤隼佑選手(スポ2=群馬・館林)も5位入賞という結果でした
本来は71キロ級の選手なのですがチームの事情で75キロ級に出たということで体の大きさが足りていないというのもありますけど、ちょっと負けた試合は2試合とももったいなかったです。こういう風に改善していけば、らいねんは優勝できるという戦い方をしてくれていたので、収穫だったかなと思います。ただ4年生2人がポイントを取るパターンが全然確立できていなかったです。この全日本大学グレコローマン選手権は日体大が上位を占めていて総合優勝は難しいのですが、らいねん以降全日本大学グレコローマン選手権でも優勝できるメンバーをそろえましたし、今度の内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)に向けて4年生がどう立ち振る舞うかということが重要なポイントになってくると思います。そのことを2人には話しましたし、負けた改善点をしっかりと改善して、内閣杯でもチームでまとまっていきましょうという話をみんなでしました。
――去年、おととしに比べるといかがですか
去年は3位入賞がなかったんですよね。グレコローマンスタイルをやることでコンタクトをしてからの攻撃の展開などが生まれるのですが、力もつきますしチームとしても全日本大学グレコローマン選手権でも優勝しようとチームでも話をずっとしているんですよね。なかなか去年3位に入っている者が1人もいないチームでいきなり優勝はできないので、ことしこの大会で3位に入ってらいねん優勝を目指したいなと思います。
――あしたに向けての意気込みをお願いします
あしたは1年生が3人出るので、思いっきりやってもらいたいと思います。若いメンバーなので来年以降すごく楽しみですし、きょうの齋藤みたいに負けてもこういう風に改善したら、こうなるみたいな試合をしてもらいたいと思いますね。
土赤耕陽(スポ4=山形商)
――どのような意気込みで試合に臨まれましたか
チームを引っ張っていく4年生で最上級生という立場で、チームの空気を良くしていくということと結果でもチームを引っ張っていく存在という2つのことを意識して臨みました。
――今回は地元山形での試合開催となりましたが、そのことについて何か感じることはありましたか。
いざ会場に来てみると高校時代の恩師だとか顔見知りの人がいて、その人たちに応援してもらってる分も頑張ろうと思いました。
――初戦を戦い終えての感想をお聞かせください
初戦相手が全日本王者ということで、勝ち負けを意識するというよりかは、思い切って自分の技を出していく気持ちで臨んだのですが、思い通りの試合運びにならなくて、課題ばかり残る試合でした。
――敗者復活戦では先制点を挙げられましたが、残念ながら敗戦という結果になりましたが、試合を振り返っていかがですか。
先取点の4点を取るのは自分の得意とするパターンだったんですけれども、消極的なポイントで相手が追いついてきて焦りが出てきたところを、無駄に大技を狙って自滅してしまったのでよろしくないと思います。
――きょう見つけた課題、または収穫などありますか
自分の得意とするパターンや技をもう一度整理して、次の内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)ではしっかりと勝てるように調整したいです。
――内閣杯での具体的な目標をお聞かせください。
ワセダは今団体優勝できるレベルにあるので、その中で重量級が踏ん張れるかがポイントになってきます。3位までに入賞、表彰台を狙っていきたいです。
堀江一馬(社4=富山・富岡商)
――試合を振り返っていかがでしたか
内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)は出れないので大学の所属としては最後の大会で二回戦で負けてしまったので、単純に悔いが残るというか
、あとはチーム戦なのでポイントを取れなかったのが申し訳ないという気持ちですね。
――インカレ(全日本学生選手権)での80キロ級から今回階級を変えて85キロ級への出場となりましたが
そうですね、もともとそのくらいの階級でやっていたのでそんなにギャップはなかったというか、でも押された部分があったので、もう少しパワーをつけておくべきだったかと思います。
――天皇杯全日本選手(天皇杯)権に向けて意気込みをお願いします
本当にレスリング生活最後の大会なので、高いレベルの試合になりますがやってきたことを出し切って自分らしくやれたらなと思います。
――あと2か月をどう過ごしたいかを教えてください
今回見つかった課題を修正しつつ、後輩に何か残せるものがあれば残せるような日々にしたいですね。天皇杯で勝つというか、そういう部分の方が今は大きいですね。卒業までにチームに何か残せればと思います。
齋藤隼佑(スポ2=群馬・館林)
――今大会を振り返っていかがですか
そうですね、今回は組み合わせが出た時点でインカレ(全日本学生選手権)の1位2位の選手と当たることが確定していたんで、そこで勝てるようにと気合いを入れて臨みました。チームの目標としては、キャプテンの吉川さん(航平主将、社4=秋田商)がケガで今大会に出れなくなってしまったので、そのキャプテンを手ぶらで返すわけにはいかないというのをみんなで言っていて。なので3番以上に入るように頑張ろうとしていたんですけど、やっぱりチーム戦なので入れなかったのは悔しいですね。
――初戦はフォール負けでしたが前半で投げ技を決めました。手応えはいかがでしたか
インカレ2位の相手に負けてしまったんですけど、その投げ技で少し手応えはあったので、それ以外のミスを失くしていきたいですね。
――3位決定戦は日体大の宇野寿倫選手互角の戦いでした
そうですね、宇野選手はインカレのチャンピオンなんですが、1点を争う展開の中で勝ちきれなかったのは自分の技ができてないということなので、修正していきたいと思います。
――次戦に向けて意気込みをお願いします。
次戦は新人戦(東日本学生秋季新人戦)なんですけど、75キロ級のグレコローマンスタイルで優勝してワセダに貢献できたらと思います。
宇井大和(スポ1=和歌山・新宮)
――どのような意気込みで試合に臨まれましたか
今回は1階級に各大学それぞれ1人ずつの選出なので、大学の代表に選ばれたからには全力で挑もうという意気込みで臨みました。
――優勝という結果についてはどう思われますか
優勝できるとは思っていなかったので、自分でも驚いています。
――下山田培選手(日体大)を見事テクニカルフォールで破られましたが、それについてはどのように思われますか。
インカレ(全日本学生選手権)の時は、がぶった状態で先に技を出されてやられたので、今回はその状態になったら自分が先に技を出していこうと決めていました。その結果勝てたので良かったです。
――インカレのとき下山田選手に敗戦してから、特に意識して練習されてきたことはありますか。
とにかく思い切り技を出すことを練習から意識していました。
――決勝戦は相手選手を逆転して勝利をつかまれましたが、試合を振り返っていかが思われますか。
まだ体力がなくて、最初の方からしんどかったです。体力をつけて、何試合こなしても同じ力が出せるようになりたいと思います。
――最後となりますが、次戦の目標をお願いします。
自分には次に新人戦(東日本学生秋季新人戦)があるので、春は3位だったので、次は優勝したいと思います。