レスリングではリオ五輪だけでなく、オリンピック非階級での世界選手権や世界学生選手権など主要な国際大会が開催されることし。明治杯全日本選抜選手権(明治杯)で選考の幕開けとなった。初日、ワセダからは5名のレスラーが出陣。男子フリースタイル(フリー)70キロ級では多胡島伸佳(スポ4=秋田・明桜)が優勝、伊藤駿(スポ2=京都・網野)が3位となり2人が表彰台に。また女子60キロ級では香山芳美(スポ3=東京・安部学院)が4位となった。
男子フリー57キロ級に出場した伊藤奨(スポ3=長崎・島原)はリーチの長い相手との対戦に。前半を0-4で折り返し、何とか取り返したいところではあったが試合の主導権を握れずに後半開始35秒でテクニカルフォール負けを喫した。「自分から取る技が少ない」と課題点を上げた伊藤奨。全日本学生選手権(インカレ)までに新しい武器を見つけることが必要不可欠だ。女子58キロ級では小林奏音(スポ2=長野・佐久長聖)が明治杯初出場。タックルが攻撃につながらない場面も見られ、0-4で敗戦となった。女子60キロ級の香山はコンディションが良くないなかでの試合に。国際大会出場のためにも実績を残したいところではあったが、準決勝で敗退。3位決定戦では一時追いつく場面も見られたものの、惜敗した。
天皇杯の出場権を得た香山。気持ちを切り替えてインカレに挑む
男子フリー70キロ級に出場した多胡島と伊藤駿は勝利を収めていき、迎えた準決勝では2人の同門対決に。先に仕掛けたのは伊藤駿だった。このとき一気に4点を先取する。その後多胡島は場外ポイント、バックポイントを取り前半を3-4で折り返した。「焦らず攻め続けよう」(多胡島)。最後まで攻めの姿勢を崩さなかった多胡島が後半残り40秒で背後を取り、そこから回転技をかける。これが決勝点となり多胡島が決勝へ、伊藤駿は3位決定戦に進んだ。3位決定戦で伊藤駿は相手の背後を取ると、そこから連続してローリングを決め、2分15秒でテクニカルフォール勝ち。「組み合わせにしては頑張った方だと思う」(伊藤駿)。3位を決めた。決勝戦で多胡島は木下貴輪選手(山梨学院大)との試合に。前回戦った東日本学生リーグ戦と戦い方を変えたのが功を奏し、7-0で優勝を決めた。世界選手権、世界学生選手権の出場を視野にいれ、今後も練習を突き詰めていく。
準決勝では多胡島に軍配が上がった
「チーム内に同じ階級で1位と3位が出たというのは、本当にチームの全体のレベルが上がっている証拠だなと思いました」 (太田コーチ)。近年、中量級を中心に学生の試合でワセダの活躍ぶりは顕著になっているが、全日本のレベルでも好成績を残しつつある。2日目には1年生の2人が出場。多胡島の優勝でできた流れに乗っていきたい。
(記事・写真 杉野利恵)
表彰台に上る多胡島と伊藤駿
結果
男子フリースタイル
▽57キロ
伊藤奨 1回戦敗退
▽70キロ級
多胡島 優勝
伊藤駿 3位
女子
▽58キロ級
小林 1回戦敗退
▽60キロ級
香山 4位
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――きょうのワセダ全体の結果を振り返っていかがですか
全体として多胡島(伸佳、スポ4=秋田・明桜)が優勝候補に上がっているなかでそのまま優勝した。伊藤駿(スポ2=京都・網野)は準決勝で多胡島に負けはしたのですが、3位決定戦でしっかりと勝って3位。表彰台に上ったものとしてはこの2人ですね。全体としては優勝者が1人、3位が1人いるのですが、OBを含めてもうあと1人2人は表彰台に立って欲しかったなと思うのが本音です。
――伊藤駿選手が最近力をつけてきている印象を受けましたが、その点についてはいかがですか
全体のミーティングでも言いましたが、結果が残った多胡島と伊藤駿については自分の点を取るパターン、と簡単に点を(相手に)やらないというので結果に結び付いてがいるなと。負けた者については天を取るパターンをしようとはしているのですが、まだそれが決定的に結びつかなかったり、簡単に点を与えてしまったりと、抑えなくてはならないところで抑えきれなかったりと、そういうところが勝った2人との差として出たのだなと思います。
――香山芳美選手(スポ3=東京・安倍学院)は足をケガされたのでしょうか
芳美はもともと膝が悪いなかでの試合ではありましたが、やっぱり芳美も優勝を目指してやられているなかで、ケガを含めてのコンディションというものはというのは整えていかなくてはならないと思いますし、悪いなら悪いなりのレスリングをしなくてはならなかったかなと思います。
――あしたは1年生2人の試合がありますが、一言お願いします
あした学生から1年生の弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)と大和(宇井、スポ1=和歌山・新宮)の2人が出場します。あとOBでは北村(公平、平25教卒=現・阪神酒販)と保坂(健、平26スポ卒=現・自衛隊体育学校)が出ます。多胡島の優勝でワセダとしてもいい流れができていると思うので、またあした表彰台の一番高い所に上って欲しいと思います。
太田拓弥コーチ
――きょうのワセダ全体の結果はどのように思われますか
優勝した多胡島(伸佳、スポ4=秋田・明桜)、3位になった伊藤駿(スポ2=京都・網野)は自分の持ち味というのが出し切れて、本当に良かったなと思います。伊藤奨(スポ3=長崎・島原)、香山芳美(スポ3=東京・安部学院)、小林奏音スポ2=長野・佐久長聖)に関してはミーティングでも話したのですが、セオリーが無いんですよね。こういう崩しをして、こういうフェイントをして、こういうタックルをして、もし逆にタックルを取られたとしても多胡島だったら守り方を持っています。それが確立されていないので、1人1人がやろうとしていることは伝わってくるのですが、点数に結びついて試合にというところが今回の試合の反省を踏まえて次につなげる必要があるなと思いました。やはり優勝している選手だとかは自分のセオリーを持っていて、それをどんな相手でも貫き通すことができているかできていないかで結果が出るか出ないかなので。やはり課題点を修正して、今回の負けの反省を生かしていきたいなと思います。でもチーム内に同じ階級で1位と3位が出たというのは、今までになかったたことなので、しかも大学生で全日本レベルで。これは本当にチームの全体のレベルが上がっている証拠だなと思いましたね。この点についてはすごくよかったなと思います。
――普段から多胡島選手と伊藤駿選手は一緒に練習をされていると思うのですが、そのなかでの試合というのはいかがでしたか
伊藤駿が最初に4点を取ったのはすごく良かったのですが、そのあとに守りに入ってしまいましたね。4-1になった時点でもう1回攻める気持ちがあれば、また違った展開になったと思います。そこで4-3となり、逆転、最後に場外で返されてしまったので、グラウンドがノーポイントの状態だったら、まだ2点差か1点差というように逆転の可能性はあったので。そこが悔やまれます。ジュニア(JOCジュニアオリンピックカップ)にしても弥十朗(山﨑、スポ1=埼玉栄)に負けたり、多胡島に同じチーム内でも負けたり。ここでもう一伸びすれば弥十朗も多胡島ももう1つ上のステージでできるので。なんとかインカレ(全日本大学選手権)で多胡島にリベンジさせたいですね。
――多胡島選手は木下貴輪選手(山梨学院大)との試合が続いていました。東日本学生リーグ戦に比べて余裕があるような印象を受けましたが、どのように思われましたか
足を取っても変則の切り方があるので、あれでもう取れないと(相手が)思っていると思うので。(多胡島の)膝がすごく柔らかいのでつかみきれないんですよね。途中で完璧につぶれていたのに取れなかったという場面があったのですが、そこで(相手の)心が折れましたね。伊藤駿も木下選手に勝てる力を持っていると思うので、インカレでは2人で決勝を争って欲しいなと思いますね。
――香山選手についてはいかがですか
セオリーがないというのと、パワー系レスラーなのですが強引にタックルに入って取れたときに勝つ、取れない時に負けるという試合展開が多いですね。もう少しセオリーというのを、しっかりと考えたうえでどういったスタイルでポイントを取るのかというのをもう1回考え直してやっていかないといけませんね。結局、ずっと全日本レベルの大会で3番か4番が続いていて、3番のメダルはいらないと試合前に僕は言ったのですが、結果今回は(3位決定戦で)負けて4位となってしまいました。負けた試合でも次ここを改善すれば勝てるという試合内容なので、まずはもう1つ上のステージに行くためにも。レスリングのセオリー作りをしていかないといけませんね。
――小林選手はタックルに入っても点数に結びつかない場面が多くみられましたが
右をさしてからの展開というのが、ポイントにつながりそうだけどつながらない。それは技術的な問題であったり、体力的な問題であったり、そういったところを少し改善するだけで、あれぐらいの差ならば1か月ぐらいあればすぐに埋められる差なので、インカレでも対戦する可能性があるので、そこで修正して自分の形というのを作っていきたいなと思いますね。ただ1年間高校生の時にろくにやれていなかったなかで、レスリングの感覚をこの1年で取り戻せていることは伝わってくるので、体力面や技術面を修正していけば、勝てるチャンスがあります。
――伊藤奨選手に関してはいかがですか
伊藤奨に関してはレスリングのスタイルを大幅に変えていかないといけないかなと思いますね。相手の土俵でレスリングをしていて、相手はリーチもあって体も柔らかくて、組手、さばき、タックルという流れで付き合ってしまっていたので、新しい武器を探さなくてはいけないかなと思いますね。
――伊藤駿選手の次戦はアジアジュニア選手権となりますが
吉村(拓海、スポ1=埼玉栄)と一緒に行くのですが、1つ上の階級での出場となりますが、伊藤駿の力なら勝てないことはないので、とにかくいろんな経験をして最低でもメダルを取って、多くの試合をやってきて欲しいですね。
――あした山﨑選手と宇井大和選手(スポ1=和歌山・新宮)の試合になりますが
練習でやっていることをしっかりと出してもらって、その結果まけても次につながるような試合をしてほしいと思いますね。
多胡島伸佳(スポ4=秋田・明桜)
――優勝という結果についてはどう思われますか
当たり前と言えば当たり前でしたが、内容的な面とか自分に成長を感じられたというのがあって、結果以上に実りある試合だったかなと思います。
――木下貴輪選手(山梨学院大)との試合が続いていますが、決勝戦を振り返っていただいていかがですか
同じことをしていたら対策されて勝てなくなってしまうということは目に見えているので、1回1回戦い方を変えながらやっていこうと思いながらやりました。それが良いように働いたので、良かったかなと思います。
――昨年課題として上げられていた、研究されたときにどう戦うかという点については良かったのでしょうか
それが今大会の1番の収穫であったかなと思っています。
――お互い手の内を知っているなかでの伊藤駿選手(スポ2=京都・網野)との準決勝はいかがでしたか
だいぶやりづらくて、あのなかで誰と一番やりたくないかと言われれば駿でした。そのなかでも最初に4点取られても、焦らず攻め続けていればいつか逆転できるだろうといった感じで上手く精神面をコントロールして試合をできたところが、成長できている点かなと思います。
――世界選手権と世界学生選手権というのを目指されているのでしょうか
これからあるので予選があったらしっかりと取って、いつまでも国内ばかり目を向けていてもここどまりになってしまうので、ここで満足しないで、普段の練習からこれが海外の強豪だったらかかるのかとかそこまで突き詰めて練習をしていけたらいいなと思います。
――インカレに向けての意気込みをお願いします
東日本学生リーグ戦で木下貴輪とやって2週間しか空いていなかったのでなかなか対策といってもたかが知れているので、同じような試合になりました。インカレまで約3か月と対策をする時間が十分にあるので、自分に対する目も厳しくなるなかで上に行けるように、引き続き危機感を持ってやっていきたいなと思います。
伊藤奨(スポ3=長崎・島原)
――きょうはどういう目標を持って臨まれましたか
1回戦を突破してベスト8に入って、天皇杯全日本選手権に出場するという目標を持って臨みました
――試合を振り返っていただいていかがでしたか
東日本学生リーグ戦でもそうだったのですが、出ている足を触られて、それに対する反応が遅いというのが課題でした。この2週間のなかでそれがまだ改善できなかったかなという感じがしました。
――試合をしていて相手とどういう点で差があったと考えられますか
相手が手足も長くて、スピードもあって、入ったあとの処理もうまくて、1番は攻撃に対する処理の差だったと思います。僕の切る技術がまだまだなので、そこの差かなと思います。
――これから試合で勝利を上げていくためにも、強化したい部分はありますか
自分から取る技が少ないので、どうやって取るかというのを考えて8月末のインカレ(全日本学生選手権)で表彰台に上れるように頑張ります。
香山芳美(スポ3=東京・安部学院)
――足の状態はいかがですか
ケガは1か月半くらい前に膝の外側(がいそく)をケガして、ちゃんとスパーリングをやり始めたのも1週間くらい前なので、良くはないですね。
――きょうの試合を振り返っていかがですか
メンバー的にはチャンスではあったので優勝したかったです。準決勝で相手とのレベルの差とかではなくて点を取られた時点で勝負する前に負けたと思います。3位決定戦では途中で膝が痛くて気持ちが切れてしまっていたので、とりあえず4位に入って天皇杯全日本選手権の資格は取れたので、そこに向けてもう1回やればいいかなという風に気持ちは切り替わっています。
――試合自体への気持ちの作り方などはいかがでしたか
オリンピック非階級では世界選手権があるということで、あと世界学生選手権の選考方法も変わったので実績を残したいなとは思っていました。現実問題、ケガが治りきっていなくて、焦って練習して少し痛めてというのを繰り返していた部分もあるので、今回はこれで結果として良くはないのですが、やれることはやったかなという気持ちでいます。
――この結果についてはどのような気持ちでしょうか
100パーセント出せて負けたらすごく悔しいと思いますが、自分の出せる力を全部出せたかというとそこまで今回は持ってこれなかったので、ケガしたこと自体も悔しいですけど、ここで落ち込んでもしょうがないかなと前向きな気持ちです。
――今後の予定は
インカレですね。東日本女子選手権と社会人オープン選手権は出るつもりでいましたが、コーチと話して治療に専念しろ、ということだったのでインカレまでにしっかりと治したいと思います。インカレは2連覇も懸かっていますし、世界学生選手権の選考にもなっているので、そこで取れればいいかなと思います。
伊藤駿(スポ2=京都・網野)
――3位という結果についてはどう思われますか
組み合わせから考えると、頑張った方だと思います。
――3位決定戦ではテクニカルフォール勝ちですが、そういう点ではいかがでしょうか
自分の得意なグラウンドでローリングが決まったのでと勝ったと思います。
――きょうは調子が良かったのでしょうか
全日本レベルの大きな大会なので、チャレンジャーという形で負けてもともとだと思って行ったら、動けました。
――準決勝では多胡島伸佳選手(スポ4=秋田・明桜)との勝負になりましたが、振り返っていただいていかがですか同じ部内でスパーリングなどの練習もしているので手の内がお互いに分かっているなかで、先輩が1枚上手でした。
――この試合で見つかった課題点は
課題は毎回なのですが、組んでからが雑で、相手のペースになってしまうとタックルも単発になってしまうので、もう少しタックルの制度を上げていきたいなと思います。
――アジアジュニア選手権に向けての意気込みをお願いします
初めての海外の大会なので楽しみというのもあるし、不安というのもありますが、全力でやっていきたいと思います。
小林奏音(スポ1=長野・佐久長聖)
――明治杯全日本選抜選手権ということで、普段の大会とは違った緊張感などを感じられましたか
雰囲気が全日本レベルの大会なので、普段の大会とは違うなと思いました。
――試合を振り返っていただいていかがですか
全日本の試合に始めて出たのですが、まず出れることが自分にとってはいい経験になるなと思っていました。きょうやった相手は、一度対戦したことのある相手だったのですが、その時には10-0で負けました。しかし今回は4-0で負けてしまいましたが、前回に比べたら、少しは成長できたかなと思います。勝てない試合ではなかったので、悔しいなという気持ちもあります。
――タックルが入ってから、点数につながらない場面も見られましたが、その点についてはいかがですか
さすのが自分に一番合っているスタイルで最近確立しつつあるのですがさしてからタックルに上手くつながっていなくて、タックルに入ってからもバランスが悪くて点数につなげられず、逆に点数を取られたりというシーンが多かったかなと思います。
――課題点や収穫点は見つかりましたか
さすまでは自分から行けるようになったのですが、そのあとがつながらないので、タックルもあまり入れませんでしたし。さしてからタックルにつなげるという練習をしたいと思います。
――東日本学生春季新人選手権(新人戦)に向けての意気込みをお願いします
天皇杯全日本選手権が12月にあるので、その大会に出る資格を得るために新人戦や社会人オープン選手権で優勝できるように練習を頑張りたいです。