フリースタイルの大学日本一を決める内閣総理大臣杯全日本大学選手権(内閣杯)。1日目に引き続き、2日目も後半の4階級が行われた。入賞者は61キロ級3位の吉川航平(社3=秋田商)、70キロ級3位の多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)の2名。個人順位に応じて与えられる得点を合算すると、ワセダは2日間を通して30点、総合4位で幕を閉じた。昨年と変わらない順位ではあるが、昨年と比べ実績を挙げている選手が少ない中でのこの成績は評価できるだろう。来季へ向けての希望が見えてきた、そんな大会だった。
昨年の内閣杯で優勝し、学生二冠王者となった多胡島。夏の全日本学生選手権(インカレ)では惜しくも優勝を逃してしまったため、今大会ではそのリベンジが期待されていた。ところが1回戦からすでにいつものような多胡島の圧倒的な強さは見られない。まずは第1ピリオド(P)で先制点を奪い、滑り出しは好調だった。第2Pでは体をぐるんと回され2点リードを許すと苦しい展開が続く。試合は同点で終了するも、相手側のチャレンジにより判定勝ちを許し、インカレの決勝と同様、またも接戦を落としてしまった。気を取り直し、敗者復活戦では難なく勝ち抜いていく。結果として3位に入賞したものの、「結果は最悪」(多胡島)。しかし試合後は目前に控える海外遠征に気持ちをシフトしていた多胡島。国外では本来の力を遺憾なく発揮してほしい。
調子が出ず、1回戦敗退を喫した多胡島
予想外だった多胡島の1回戦敗退。そして続く今村聖(スポ4=群馬・太田商)、土赤耕陽(スポ3=山形商)も1回戦敗退を喫し、厳しい結末が懸念された2日目。しかしこの悪い流れをを断ち切ったのは吉川の1回戦だった。61キロ級優勝候補の乙黒圭祐(山梨学院大)を相手にし、果敢に攻撃を仕掛けた吉川。だが、序盤からどんどん点数を重ねられるとすぐに後がない状況に追いやられてしまう。しかしこのままでは終わらなかった。1:45に相手の両肩をつけると勝負あり。得点の優劣に関わらず相手の両肩をつければどんな状況であってもその時点で勝負が決まる、フォールという判定だ。固唾を飲んで試合を見ていた部員たちは大いに沸き、吉川もセコンドの太田拓弥コーチとハイタッチ。駒を進めた準々決勝では惜しくも接戦を落としてしまうが、敗者復活戦では相手にプレッシャーを与え続け、3位決定戦でも調子を保って勝ち切ってみせた。来季を担う3年生として意地を見せた吉川。細かい課題を修正していけば、これからも十分な伸びが期待ができそうだ。
試合内容に光るものがあった吉川
現体制は今大会で終了し、4年生は引退となった。洞口幸雄主将(スポ4=岐阜・岐南工)を中心に『チームの底上げ』を図ってきたこの1年。今大会も優勝者は出なかったものの、4名がメダル獲得、という結果からは『チームの底上げ』が見てとれ、来季につながる締めくくりになったと言える。ならびに、「総合優勝も少しずつは見えてきた」(太田コーチ)。さて、バトンは新体制に託される。来季はトップアスリート枠選手の入部も予定されており、パワーアップしたチームワセダが見られるに違いない。新入生の力と築き上げてきたチーム力で、来季こそは総合優勝を成し遂げたい。
(記事 寺脇知佳、写真 杉野利恵)
主将の洞口。総合4位の賞状を受け取った
結果
▽61キロ級 吉川 3位
▽70キロ級 多胡島 3位
▽86キロ級 今村 1回戦敗退
▽125キロ級 土赤 1回戦敗退
大学対抗得点4位30点
コメント
太田拓弥コーチ
――2日間を振り返って、いかがですか
初日は2人が決勝に行って、まあまあの流れだったんですけど、吉川が2回戦で山梨学院の優勝候補の選手にフォール勝ちをしてから流れが変わって、あのまま流れが悪い状況で終わるかなと思いましたが、吉川は黒澤翔(スポ4=茨城・鹿島学園)の代役だったのですが、そういったなかでよく頑張ってくれたなと思いますし、多胡島も1回戦負けてしまいましたけれどしっかり最低限の仕事をしてくれたので、来季につながったかなとは思いますね。
――多胡島選手の敗因は
タックルの処理ですね。受けてしまったというところですかね。今年度を振り返ってみると接戦に弱いところがあるので、接戦に勝てるような試合の流れを立てていかないといけないのかなと思いますね。
――団体4位という結果についてはいかがですか
もうちょっとああすればこうすればと言ったらキリがないですけど、米澤圭(スポ1=秋田商)、多胡島、吉川、伊藤駿(スポ1=京都・網野)に関しては接戦をモノにできなかったのが優勝を逃した要因だと思いますね。土赤耕陽(スポ3=山形商)にしても今村聖(スポ4=群馬・太田商)にしても1回戦と2回戦負けなので、全員が入賞できるレベルじゃないところに敗因があったんじゃないかなと思いますね。きょねんのメンバーと比べて実績があまりないメンバーでの総合4位というのは、きょねんと同じ順位なので評価できるのかなと。もちろんこれで満足してはいけないですけど。
――4年生の印象は
実績がさほどない中で、主将の洞口中心に、ことしのスローガンじゃないですけどチームの底上げというのをテーマに掲げてやっていたんですけど、チャンピオンは出ませんでしたがチームの底上げという点はうまくやれたんじゃないかなと思いますね。よく頑張ってくれたと思います。
――来季に向けて
今回の試合を通して戦い方のイメージというのはできてきたんで、これにスポーツ推薦で入る4名、トップアスリートで入る1名、全部で5名入ってくる予定なんですけど、それと合わせていまいる3年生までのメンバーも合わせて、総合優勝も少しずつは見えてきたんじゃないかなと思いますね。まだまだ足りないところはありますが、しっかり修正していけば見えてくるんじゃないか、といった試合でしたね。
多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)
――きょうの試合を振り返って
結果自体は最悪でした。学生のタイトルはことしは全然ダメですが、国体などシニアの方に目を向けて引きずらずにやっていこうかなと思います。
――手首にテーピングなどされていましたが何かケガとかはあったのでしょうか
あれは日常的なものなので、特に支障は無かったです。
――1回戦での敗因は
確かに(相手は)僕の対策をやってきたと思うのですが、まだ表面上の実力しかついていないと思うので、相性なども含めて、どんな状況でもどんな相性でも勝てる地力をどうつけていくのかというところで、まだまだ成長していかなくてはいけないと思います。
――海外遠征に向けての意気込みをお願いします。
今回の大会はどちらかというと自分と同じか格下の選手とやるなかでどう勝つかという立場だったのですが、海外遠征ではいかに格上の相手と思い切ってやるかなので、思い切ってやっていい結果を出せればよいと思います。
吉川航平(社3=秋田商)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
3回戦の国士舘大の相手に勝てば決勝に行けたので、そういうところはしっかりと最後の処理とか守り方を見直してやらなくてはいけないなと思いました。
――3位という結果についてはどう受け止めていますか
自分は本来フリースタイルではなくグレコローマンスタイルの選手なので、なかなか器用な事ができないのですが、そういったなかで3位という順位は天皇杯全日本選手権(天皇杯)に向けてもこれから新体制に入るチームにとっても最低限の仕事はできたかなと思います。
――3位決定戦では最後に逆転勝ちを収められましたが、どういう気持ちで戦っていましたか
技術ではなく気持ちの勝負だったので、普段は対戦した選手よりもっと強いOBの選手と練習していることを思い出せばきつくなかったです。気持ちで押し切っていきました。
――3位決定戦で苦労した部分は
相手がすごくトリッキーな選手だったので、普段予測のできない動きだったりとか、ましてグレコローマンをやっているのでフリーの器用さや独特の流れをつかめないところもあるなかで上手く合わせていくのは難しかったです。
――天皇杯に向けての意気込みをお願いします
天皇杯ではグレコローマンの選手でありながらフリースタイルに出るということですが、自分のグレコローマンで培ってきた技術や体力を生かせば結果は出ると思うので、天皇杯までの期間、しっかりと練習をやっていきたいと思います。