女子チームにとって、インカレ(全日本学生選手権)後初の実戦の舞台となった全日本女子オープン選手権。きょねんは各階級で3人の優勝者を輩出したものの、ことしの優勝者は63キロ級の髙橋海寿々(スポ1=東京・大森学園)1名のみだった。昨年優勝者の香山芳美(スポ2=東京・安部学院)がケガで棄権したこともあり、仕方のなかった結果なのかもしれないが、髙橋の試合内容も決して満足のいく内容と言えるものではなく、課題の残る大会となった。
またしても1回戦敗退。48キロ級の須崎麻衣(スポ2=千葉・鎌ヶ谷)はきょねんの同大会でも1回戦で負けているため、ことしこそは2回戦に駒を進めたいところだった。なんとかタックルを入れるもポイントとはならず。特に開始2分で警告を受けてしまったことが痛手となり、1点差で敗れてしまった。55キロ級の小林奏音(スポ1=長野・佐久長聖)もまだ自分のレスリングスタイルを確立できていない様子だ。2回戦では強豪・向田真優(JOCエリートアカデミー)を相手に手も足も出すことができなかった。「次につながる試合内容ではなかった」(太田拓弥コーチ)。さらに太田コーチが口を酸っぱくしながら言い続けているのは、「組み手で追い込んで、相手が嫌がってきたところを取る」。そうは言っても実力はついてきているのは確かだ。基礎をクリアしさえすれば、必ずや上のレベルへといってくれるだろう。
自分から攻めてポイントを取りきれなかった須崎
髙橋はまず、初戦となった準決勝で昨年度の全日本選手権3位を誇る選手と対決。負けてもおかしくはないはずの試合ではあったが、自身の粘り強さで接戦まで持ち込んだ。手に汗握る試合を展開したが、試合終盤に意地を見せる。スピードのある動きで相手の両肩をマットに押しつけ、見事なフォール勝ち。髙橋のガッツポーズが飛び出ると同時に試合は終了した。社会人に勝ち切った準決勝を振り返り、自信の表情も垣間見せた。続く決勝戦は8-0で危なげなく勝利。けれども、「受けは相当強い」と称賛する一方で「決勝戦も組み手で追い込んでタックルが入ったわけではない」と評した太田コーチの言葉通り、やはり組み手という課題は避けて通れないようだ。
髙橋は社会人相手に勝ち切る力がついた
今回の優勝により、東日本学生女子選手権(新人戦)、全日本社会人選手権に続く3つ目の金メダル獲得となった髙橋。社会人相手に白星を収め、反省点はあったものの同時に大きな収穫点も得ることができただろう。11月上旬にはアメリカでの国際大会が控えており、将来にますます期待がかかる存在だ。勢いそのままに良い結果を残して欲しい。また、女子チームとして次に控えるのは年末の天皇杯全日本選手権(天皇杯)。今大会を振り返ると、インカレからの2ヶ月では課題の修正は半ば難しかったようだが、天皇杯まではさらに2ヶ月が残されている。いままでを通して得た反省点を生かし、今期のすべてをこの大会に懸けて、さらなる鍛錬の時期に臨みたい。
(記事 寺脇知佳、写真 高橋弘樹)
表彰台のてっぺんで笑顔を見せる髙橋
結果
▽48キロ級
須崎 1回戦敗退
▽55キロ級
小林 2回戦敗退
▽60キロ級
香山 棄権
▽63キロ級
髙橋 優勝
コメント
太田拓弥コーチ
――今大会を総括してください
きょねんはこの大会で3人優勝して良いスタート切れたんですけれども、今回は海寿々(髙橋、スポ1=東京・大森学園)が優勝しましたが、麻衣(須崎、スポ2=千葉・鎌ヶ谷)も奏音(小林、スポ1=長野・佐久長聖)も自分からポイントを取るというセオリーがなかったので課題が残りました。組み手で追い込んでいって、相手が嫌がってきたところを取るというのが形としてはいいんですよ。ただ相手が突っ込んできて潰してバックを取ってきたら、相手が返し技ばかりやってきてタックルが入れないから組み手で追い込めばいいんです。次につながらない試合でしたね。麻衣と奏音に関しては組み手でまず勝つ。そこから自分のかたちに持っていく。引き付ける力であったり、グラウンドで守る力であったりそういう基礎的なことがまだまだ足りていませんね。麻衣はきょねんのように、試合が始まってすぐやられる、というような負け方はしなくなりましたけど、もうひとつ上いくためには組み手で勝つとかグラウンドをしっかり守るとかをできるようになったらいいですね。そうしたらこのレベルでも確実に勝てる。実力は上がっているんですけどね。
――インカレ(全日本学生選手権)からの修正点は見てとれましたか
気持ちの中ではやろうとはしているんですけど、相手のほうが一枚も二枚もウワテなのでやり切れてないです。やっぱり腕力であったり、組み手の技術であったり。やろうとしているのは見えてはきているんですけど、まだまだやっぱり結果に結びついていないですね。
――天皇杯全日本選手権まで2ヶ月と少しですが、それまでに強化したい部分は
麻衣もタックルが1本、良いかたちで入ったんですけど、ポイントは取り切れなかったので、確実にポイントを取れるように強化したいです。スタートの組み手の段階でもう負けてしまっているので。体つきもまだ一回り小さいので、組み手で先に追い込まれて、自分の動きができていないというのがあったのでまず組み手で勝つということが全体として言えますね。
――髙橋選手の優勝について
正直、決勝戦は危なげなかったですが、準決勝は負けてもおかしくない試合の内容だったので、ああやって右脇を刺してくる相手にどう対応するかがまったくできていないので、刺されても返す技とか攻撃するパターンってあるんですけど、そういったものがないと刺してくる相手には厳しい戦いを強いられると思いますね。準決勝は次につながるような試合の内容ではなかったので、そこらへんをまた修正しないといけないかな、と思います。決勝戦も組み手で追い込んでタックルが入ったわけではないので、相手がこう飛び込んできて、それを潰している、というところなので、そのためには組み手で追い込んで相手が嫌々入ってくるような流れの組み手をする、というのが必要ですね。受けはたぶん相当強いと思うんですよね。受けが強いので組み手でまずプレッシャーかけていくというレスリングスタイルをしていけばいいかな、と思います。
髙橋海寿々(スポ1=東京・大森学園)
――今大会を振り返って
勝つことはできたのですが、自分から攻撃を仕掛けていくことができなかったです。課題の残る大会となりました。
――インカレ(全日本学生選手権)から修正した部分は
組み手で相手を振る練習を重ねてきたのですが、社会人相手に通用しなかったのがまだまだ課題です。また相手のバランスを崩し、そこに素早く入り込むことを強化してきました。
――今大会の収穫点は
社会人相手に自分から仕掛けることはできなかったのですが、ポイントを確実に取れるところは取ることができたのが良かったです。
――苦戦した部分は
練習してきた組手がうまくいかなかったのが大きな課題です。
――準決勝はフォール勝ちを収めましたが、決勝は終盤動きに硬さも見られましたがいかがでしたか
決勝の1ピリオド終盤に古傷の膝を痛めてしまい、そこで焦りが生まれてしまって息が上がってしまいました。しかしそのあとは相手に触れられないように気をつけて、自分のスタイルに持っていくことを心がけました。
――11月にはアメリカでの国際大会も控えていますがいかがですか
社会人の枠で初めて国際大会に出場するので、そこで海外の格上の相手に対してどれだけ自分のレスリングを出せるかが大きな課題となってくると思うので、思いっきりぶつかっていきたいと思います。
――最後に、12月の天皇杯全日本選手権に向けて意気込みをお願いします
きょうの準決勝の相手は全日本選手権3位の選手でしたが、勝つことができました。社会人相手でも勝つことができると思うので、勝てるように頑張っていきたいです。