東日本学生リーグ戦(リーグ戦)最終日を迎えた。きのうは対専大戦、対日大戦と続いて敗れ、苦い思いを味わっている早大。試合前、「最後に一人一人が全部勝って終わろう」と、山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)が鼓舞し、チーム一体となって勝つ気持ちを確かめた。きょうこそは食い下がりたい。その一心で最終戦の対明大戦に挑んだ。
幸先良いムードを作り上げるのは、ここまで負けなしの黒澤翔(スポ4=茨城・鹿島学園)。第1ピリオド(P)開始1分45秒で相手を瞬殺した。57キロ級に合わせるための減量にも耐え、さらには洞口幸雄主将(スポ4=岐阜・岐南工)が欠場した中でチームを引っ張る役割を担い、負担も大きかったはずだ。困難な状況下でも全勝を収めたことは自信にもつながっただろう。そして吉川航平(社3=秋田商)も1P開始2分、得意のローリングを連続で繰り出し、相手を突き放しての勝利。今大会においては多くの白星は得られなかったものの、太田拓弥コーチは「(負けた試合も)あと一歩というところまで追い詰めた」と評価した。米澤圭(スポ1=秋田商)も1P後半で相手を仕留める。続く伊藤駿(スポ1=京都・網野)も攻撃がさえわたり、順調にポイントを重ねて撃破した。1年生の活躍も光った今大会。「将来的にも楽しみ」と太田コーチは話した。テクニカルフォール勝ち4連続を果たし、残すは重量級の3戦。対明大戦の勝敗が決定し、あとはどこまでいけるか、限界に挑戦するのみとなった。
吉川は得意のローリングで一気にテクニカルフォール勝ち
多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)は1P、試合を優位に運ぶことができないままでいた。2Pへもつれ込み、ポイントをとるも、相手のチャレンジにより同点へ戻される。その後も幾度か審議が重ねられ、試合は再開。残り時間はわずか30秒だった。先に攻撃に出たのは多胡島。すぐに4ポイントを奪取し、見事戦い抜いた。「練習のかたちのまま再現できた」と、満足に振り返った。黒澤と同じく最上級生の今村聖(スポ4=群馬・太田商)は1-8で悔しい黒星。流れを止めてしまった。ラストに登場した堀江一馬(社3=富山・高岡商)は今大会勝ちなしの状態。トリは良いかたちで飾りたかった。まずは1P開始15秒で後ろを取って先制点。しかしその数秒後に突如として8ポイントを奪われてしまう。不利な展開となるが、それでも再び2ポイントを取り返し、この流れのまま逆襲を狙いにいく。2P、懸命に攻めて背後を取りにいき、ついに8-8で同点まで追いついた。しかし相手も黙ってはいなかった。残り10秒、隙を見抜かれて動きを封じられてしまう。なすすべなく、8-10の僅差で終幕。粘りを見せることはかなわなかった。
最後の力で追いついた堀江。惜しい試合となった
リーグ戦は昨年と変わらぬ7位に終わった。6月には明治杯全日本選抜選手権、東日本学生春季新人戦が待っている。今回得た課題を丁寧につぶし、パワーアップした早大を見せられるか。「自分たちはもっと上にいかなければいけない」(吉川)、「もう一つ、二つ上に行く力はあると思うので、勝ち切れなかったのが残念」(堀江)。まだ限界は見ていない。もっともっと、上へ――。悔しさをバネに、強く突き進んでいきたい。
(記事、写真 寺脇知佳)
結果
3回戦 ◯早大5−2明大
一部リーグ 7位
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――対明大戦を振り返っていかがですか
最後に一人一人が全部勝って終わろう、ということしか言ってなかったので、全部勝つことはできなかったのですが、勝つ気で攻めてくれたと思います。
――3日間を振り返り、収穫点は
一番の収穫というのは、4年生の黒澤(翔、スポ4=茨城・鹿島学園)は減量がキツい中で、それと洞口(幸雄主将、スポ4=岐阜・岐南工)がいない中で責任感を持った試合をしてくれたことですね。プレッシャーもかなりあったとは思うのですが、負けずに全部勝ったというのは、チームにとっても収穫なんでしょうけど、黒澤本人が一番自身になった大会だったのかな、と思います。あとは1年生ですね。勝ち負けを気にせずに思い切りやれ、と言いたいところですが、チーム的には勝ち星が欲しいというのがあって、そういうプレッシャーが1年生のうちからある中で試合をして、勝ったり負けたりもありましたが、よくやってくれたな、と思います。
――課題となってくるのはやはり重量級の強化ですか
重量級の強化もそうなのですが、今回のリーグ戦(東日本学生リーグ戦)ではあまりメンバーをいじらずに通した中で、チーム全体の底上げと言いますか、出てない選手が出ている選手とどこまで競えるか。正直、どっちを出しても良いという状態ではないので、課題としてはやっぱり出てる選手は当然のこと、出てない選手は出れなかった悔しさを感じ、それぞれ課題を持った上で、これからの試合も取り組んで欲しいですね。
――今後の目標や意気込みをお願いします
今回の7位という結果を受けた悔しさをバネに、新人戦(東日本学生春季新人選手権)もそうですし、インカレ(全日本学生選手権)、内閣(内閣杯全日本大学選手権)と少しずつでも良いので成果を出して、順位を上げていければと思います。
太田拓弥コーチ
――3日間を振り返っていかがですか
初戦はあと一歩で、あそこまで行ったら勝ちたかったですね。まあ、それで引きずってしまったところのきのうの2試合で、黒澤(翔、スポ4=茨城・鹿島学園)、米澤(圭、スポ1=秋田商)、多胡島(伸佳、スポ3=秋田・明桜)とすべて勝ったんですけど、残りの1勝がやっぱり遠かったですね。チームとしてもっともっとレベルアップしていかないと、こういう大会で優勝に絡むのは今の段階では厳しい、というのが現状ですね。黒澤が本来の階級より厳しい減量に耐えて、多胡島は本来の階級ではない階級で2勝もしたり、よく頑張ったな、と思いますね。
――課題となってくるのはやはり重量級の強化ですか
そうですね。重量級を徹底的に鍛えていかないと、来年以降、重量級が勝負を左右するところがあると思います。軽量級は安心して戦えるという部分があると思うので、重量級をしっかり強化していきたいと思います。
――今大会で印象に残った選手は
4年生の2人ですかね。初戦も今村(聖、スポ4=群馬・太田商)は実力者に勝ったり、黒澤は全勝したり、洞口がケガで出れないのをよく引っ張ってやってくれたな、と。61キロ級の吉川(航平、社3=秋田商)はあまり勝てなかったのですが、あと一歩というところまで追い詰めましたし、多胡島も試合は悪くなかったので、頑張ってくれたと思っています。1年生の頑張りが将来的にも楽しみだな、と感じましたね。
――メンバー変更をほとんどしなかったのは何か意図はありますか
メンバーを一通り出して、経験させるために試合に出したりする、という考えもあったのですが、正直そういう余裕がほとんどなかったので、メンバー固定でいく、という話を試合の前からしていました。
――次戦に向けて意気込みをお願いします
新人戦(東日本学生春季新人選手権)、インカレ(全日本学生選手権)、天皇杯全日本選手権(天皇杯)があります。きょねん天皇杯に出場したメンバーが少なく、男子は多胡島だけでした。そういうことを考えたときに、新人戦で優勝する、インカレで3番以内に入る、というのがチーム全体として少なかったのでレベル的に言ってもしょうがないかな、と思います。来年のことを考えたときに新人戦で優勝したりインカレで3番以内に入ったりすることで個人のレベルを上げ、チーム全体のレベルも上げることで来年強いチームになっていくと思います。そういった意味で新人戦で優勝者を一人でも多く出して、天皇杯に出場する、ということが来年の強化につながっていくと思うので、新人戦と今後の大会で優勝するというのが今後の目標だと思います。
吉川航平(社3=秋田商)
――3日間を振り返っていかがですか
優勝したいということで、対国士舘大戦は絶対に勝ちたいという一つのヤマ場でした。相手の61キロ級の選手も強い選手だったのですが、57キロ級で黒澤(翔、スポ4=茨城・鹿島学園)先輩が良い流れで持ってきてくれたので、その流れを絶対に崩さないようにと思って、上につなげられるようにと自分でどんどん前に出ていくようなレスリングを心がけていきました。結果負けてしまったのですが、良い流れで対国士舘大戦は持っていけたかな、と思います。
――7位という順位についてはいかがですか
きょねんと同じ順位だったのですが、昨年度からルールが変わったとはいえ、やはり7位という結果は響きが良くないし、優勝を狙えるチームでなくてはならないのに、すごく残念で情けないというか、今まで強いワセダを築いてきた先輩たちに申し訳ないし、自分たちはもっと上にいかなければいけないので、これからどんどん練習や強度を増やしてもっと上を狙えるように頑張っていきたいです。
――具体的に反省点は
個人としては団体戦でフリースタイルしかないのですが、グレコローマンスタイル(グレコローマン)の選手としての持ち味であるガツガツ前に出て行くというスタイルでやっていくというのを課題にやっていたというか、それを目標にやっているのですが、それが対国士舘大戦では上手くできたかなと思います。しかしやはりあと一つ詰めるとか一息で決めていける場面が多々あったので、そこをしっかり決められるように頑張りたいです。
――きょうはローリングが連続で出ましたが振り返ってみて
あれはグレコローマンの練習をやっていて、得意技の一つでもあったので、決まったら絶対返す自信はあり、そしてしっかり決まったのでここで一気にテクニカルフォールでいこうという気持ちで返しました。
――今大会を通して良かった点は
気持ちで負けることなくどんどん前に出ていくことができたと思います。
――次戦に向けて一言お願いします
次はインカレ(全日本学生選手権)になると思うのですが、インカレは個人戦ですしやはりチームの雰囲気がすごく大切だと思うので、自分がどんどんムードメーカーになって個人やチームの成績がどんどん良くなれるように、自分や3年生が中心となって頑張りたいと思います。
米澤圭(スポ1=秋田商)
――3日間を振り返っていかがですか
1年生として出場し、すごくプレッシャーがありました。先輩たちと団体戦を戦うということで迷惑もかけられないし、1年生だからといって負けちゃダメだという気持ちもあったのですが、先輩たちから思いっきり楽な気持ちでやってこいと言われたので、少し気持ちを楽にして試合ができました。
――団体戦と個人戦との心境の違いは
はじめての東日本学生リーグ戦は、独特な応援だとか雰囲気が全然違うので高校のときのインターハイの団体戦とは全く雰囲気が違かったのですごく緊張しましたね。
――ワセダのユニフォームを着ての初の団体戦でしたが
先輩たちと一緒にワセダのユニフォームを着て戦えるということをすごく誇りに思っていて、結果的に今回はすごく悔しい思いをしたのですが、楽しい、うれしいという気持ちもありました。
――苦戦した試合は
対専大戦ですね。相手の選手もすごく実績のある選手で、試合の前は勝てる自信とかはなかったのですが、とりあえず今の自分が持っている実力を出してみようと挑戦者の気持ちで思い切りぶつかってみて、結果勝てたので良かったです。
――反省点や改善点は
まだちょっと組手というか、大学生ならではの近づくレスリング、コンタクトレスリングができていないので、しっかり練習して次につなげていきたいです。
――高校生と大学生のレスリングの違いは
高校生はある程度飛び込んでタックルとか入れたり、だいたいは力があればとれるんですけど、大学生はそういうのはバレてしまうので、しっかりと相手の体勢を崩すなど、自分に有利な展開にいかに持っていくかというのが大事になってくるので、そういう点が違うのかなと思います。
――良かった点は
自分の片足タックルが多く決まったことが良かったです。
――7位という結果についてはいかがですか
対国士舘大戦に勝っていれば決勝リーグに行けたので、4―3という惜しい結果で終わってしまい、すごく悔しいという気持ちなのですが、終わってしまったことなのでまたらいねんに向けて頑張りたいです。まだ始まったばかりですが、1年生の自分でも少しでもワセダを盛り上げていけたらいいなと思いました。
――今後への抱負をお願いします
12月の天皇杯全日本選手権の出場資格を取れるように、新人戦(東日本学生春季新人選手権)での優勝などに向けてこれからも練習を頑張っていきます。
多胡島伸佳(スポ3=秋田・明桜)
――3日間を振り返っていかがですか
自分の階級ではないところで試合をしなければならず、その中で結果も求められたので、非常に大変でした。それでも5試合無事に戦い切れてよかったです。
――印象に残っている試合はありますか
やっぱり対国士舘大戦ですね。1階級上の学生チャンピオンと試合することになって、負けはしましたけど、自分の取りたいかたちで点が取れて、自分のかたちが出せたので、練習の成果が出てよかったと思います。
――接戦の多い東日本学生リーグ戦となりましたが
個人戦の試合と違って、選手間の技術的な差以外にも、周りの応援だったりムードだったり勢いだったり、そういう要素がすごく大きいので、それが接戦が多くなる原因だと思います。その中で、どんなに悪い流れでも勝ち切れる実力を持たないといけないと感じました。
――7位という結果についてはいかがですか
正直、分かりきっていたことと言えば分かりきっていたことだと言える気がします。現状としてチームがこれくらいの戦力だ、というのは練習の時から分かっていたし、試合でふたを開けてみてもそうだったので。それは切り替えて受け止めた上で、難しく考えずに先を見てやっていくことが大事かなと思いました。
――課題は見えましたか
メンタル面です。国際試合ではよくあることなんですけど、負けても試合がある中で、勝ち負けだったり判定だったりいろんな要素に振り回されないように、自分の技術に自信を持っていればぶれることはないと思います。そういう小さな要素に振り回されないように、自分のかたちや技術をまだまだ身につけていかないといけない、と思いました。
――一方で、収穫も得られましたか
試合になると臆病になったり、練習通りにできなかったりということがあるのですが、そんな中で良かったシーンは練習のかたちのまま再現できたという部分です。普段から反復してきている結果だと思うので、やろうとしていたことを実行できたことは収穫だと思います。
――明治杯全日本選抜選手権(明治杯)に向けて意気込みをお願いします
明治杯は個人戦で、流れや前後の人は関係なく全て自分が責任を負うわけなので、それはそれでプレッシャーがあると思うのですが、その中で自分のやりたい技術だったりやらなければいけない技術を見失わないように普段の練習で積み上げていって、それをそのまま試合で再現して結果につなげることを目標に頑張りたいと思います。
堀江一馬(社3=富山・高岡商)
――3日間を振り返っていかがですか
結局1回も勝てなかったので悔しさしかないです。チーム自体もきょねんと同じ(7位)なので悔しいですね。
――7位という結果についてはいかがですか
もう一つ、二つ上に行く力はあると思うので、勝ち切れなかったのが残念です。自分は最後の階級なのですが、そこで勝てなかった責任を感じています。
――勝ち切れなかったというお話がありましたが、きょうの試合も同点まで追いついてから勝利にあと一歩及びませんでした。勝利には何が足りないとお考えですか
技の細かい部分の改善ですね。
――それが今大会で見えた課題ということでしょうか
そうですね。そこを直していかないと、この先、上の階級でやることが多くなると思うので、しっかり取り切る技を身につけないといけないと思いました。
――一方で、収穫も得られましたか
きょねん、一昨年はトータルで1試合しか出られなかった中で、今回は全部に出させていただいて、リーグ戦(東日本学生リーグ戦)独特のプレッシャーだったり重量級としての責任を実感できたことは収穫でした。
――今後に向けて意気込みをお願いします
リーグ戦で得た課題をしっかり持ち帰って、次のインカレ(全日本学生選手権)で今回の悔しさをぶつけたいと思います。