下級生がしのぎを削る東日本学生秋季新人選手権(新人戦)。3日間を通じて行われた大会に、ワセダからは両スタイルに合わせて8選手が出場。フリースタイル(フリー)では61キロ級・吉川航平(社2=秋田商)が2位となった。だが、グレコローマンスタイル(グレコローマン)ではどの階級でも予選敗退となり、上位進出はできなかった。
苦しい試合を勝ち抜いた吉川
組み手で前に攻めていくスタイルが光った吉川。苦戦したのは準決勝。全日本学生選手権で敗れている相手で、「何としてでも勝たなきゃいけない」と強い気持ちで挑んだ。だが試合では、投げ技やローリングで点を奪われ追う展開に。それでもピリオド終了間際に返し技を決め、ラストで逆転。粘り強さで勝利し、決勝へ駒を進めた。春の新人戦フリー57キロ級の優勝者と対した決勝戦。「絶対勝ちたくて対策を練って臨みました」と振り返るものの、試合内容は一方的になってしまった。20秒過ぎに背中に回られると、そこからローリングを許し連続で失点してしまう。相手の途切れない攻撃を断ち切れず、1分過ぎでテクニカルフォール負け。優勝には手が届かなかった。
両スタイルで健闘した堀江
フリーでは、57キロ級・藤川聖士(スポ2=埼玉栄)、86キロ級・堀江一馬(社2=富山・高岡商)がそれぞれ3位に入った。一方、グレコローマンではベスト8が最高成績。専門とする選手がいないだけに、厳しい結果となった。
内閣総理大臣杯全日本大学選手権から2週間。4年生はすでに部を引退し、新体制に移っている。今大会に出場した下級生も、来季からは中軸を担っていく。結果には直接表れていないが、自身の競技スタイルへの手応えなど、明るい材料もあった。そんな彼らに求められるのは「自分たちが部の中心になるという自覚」(山方隆之監督、平4人卒=福岡・築上西)。次年度に向けて動き出した選手たちは、長い鍛錬の時期を迎える。
(記事 高畑幸、写真 三尾和寛、高畑幸)
★国際大会でも入賞果たす!
11月28・29日に行われたブラジル・カップ2014にワセダからは3人が出場した。女子53キロ級・田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)が優勝、フリー70キロ級・保坂健主将(スポ4=埼玉栄)、グレコローマン98キロ級・前川勝利(スポ4=茨城・霞ケ浦)がそれぞれ3位と国際大会でも結果を残した。なかでも、前川はこれまでの130キロ級から1つ階級を下げて臨んだ初めての大会。国際大会での経験を糧に、天皇杯全日本選手権でも期待がかかる。
結果
男子
フリースタイル
▽57キロ
藤川 3位
伊藤奨(スポ1=長崎・島原) 準々決勝敗退
矢野富三家(スポ1=島根・隠岐島前) 2回戦敗退
青木祐聡(スポ2=岐阜・岐南工) 1回戦敗退
▽61キロ
吉川 2位
丸山大三郎(教2=埼玉・早大本庄) 1回戦敗退
▽86キロ
堀江 3位
▽97キロ
土赤耕陽(スポ2=山形商) 準々決勝敗退
グレコローマンスタイル
▽59キロ
青木 準々決勝敗退
吉川 準々決勝敗退
藤川 3回戦敗退
伊藤 3回戦敗退
丸山 1回戦敗退
▽80キロ
堀江 準々決勝敗退
▽98キロ
土赤 1回戦敗退
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――3日間の新人戦の目標は何でしたか
実力を出し切ることですね。目標というよりもそれを期待していました。
――フリースタイルでは入賞が3つでした。どのように捉えていますか
いまの実力からすると合格ではありませんが、頑張った方なのかなと思いました。
――グレコローマンスタイル(グレコローマン)についてはどうでしょうか
グレコローマンも2日目までに3人残っていて少なくとも1人は入賞してほしかったなと、いける内容だったと思います。そこは少しやらなくてもいいところでポイントを与えてしまう甘さがあったと思いますね。堀江(一馬、社2=富山・高岡商)はケガがありましたが、ケガも実力のうちなので。
――新体制となって迎えた今大会ですが、選手の変化は見られましたか
中身では違ってきているのかもしれないですが、まだ感じとれてはいません。またまだやっていかなくてはいけないと選手自身が感じていると思いますが、まだそこまでは伝わってきてはいないなと私は思っています。
――重量級の2選手を振り返っていただいてどうでしょうか
来季は重量級で厳しいのは間違いないですが、土赤はいままで1年間戦えていなかった中で内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)は久しぶりの試合だったと思うので自分でやらなくてはいけないことを2つの試合で改めて明確になったと思います。そこをやっていけば、決して勝てなくはないと思います。堀江については自分のレスリングの癖など逆に考え過ぎている部分があるのでそこを修正しながら練習していけば戦力としては十分戦えると思いますし、戦力にならないといけないと思います。
――軽量級はどうでしょうか
部員が多いですがレギュラーになることを目標にするのではなく、レギュラーになって何をするのかをもっと厳しく部内でもやりあってほしいです。もっと厳しくしていかないと他校には勝てないと思うので。レギュラーになったからそれだけの責任がついてくるということを自覚してほしいですね。みんなにチャンスがあると思ってこれからも取り組んでほしいです。
――春の新人戦から手応えは感じていますか
確かな手応えはまだありません。特に伊藤(奨、スポ1=長崎・島原)は考えてやっていますが体力的にも足りないし、2年は最後の新人戦だったのでもっと気持ちの面を出してほしかったですね。がむしゃらさがあっても良かったかなと思いました。全体的には手応えを感じるまでには至っていないかなと感じます。
――1、2年生はこれから部の中軸となる学年になりますが、今後に向けて期待することはどのようなことですか
自分たちが部の中心になるという自覚ですね。そこをもっと強く持ってもらって行動にどれほど移せるのかということですね。伝えるというより周りに伝わる行動をとってほしいです。
太田拓弥コーチ
――3日間の大会全体を振り返っていかがですか
この大会で優勝者を出して天皇杯(天皇杯全日本選手権)に出る資格をとってほしいと思っていました。一人でも多く優勝して全日本選手権に出てほしかったですね。天皇杯からオリンピックの一次予選とも言える試合になってくるので、その大会に一人でも多く出すことがチームでの目標でした。その目標を達成できなかったのは残念です。
――フリースタイルで2位となった吉川航平(社2=秋田商)選手の試合について、振り返っていただいてどうですか
両スタイル共にそうなのですが、やろうとしていることが見えてきているレスリングなので合格点というわけではないですが、そのかたちを練習してやっていけば次にはつなげられるかなと思っていました。ただ、フリーの決勝などもう少し接戦にしてほしかったなと思います。ちょっと気持ちで負けてしまっているのかなとは感じました。
―逆にグレコローマンスタイルはどうでしたか
グレコローマンは相当ハードワークをしないと確立できません。グレコのベスト8の試合でも明らかに本人のガソリン切れでした。あれが6分間戦えない証拠ですね。場外際まで追い込むけれども、相手に回りこまれてまたセンターから始めることになってしまって。常に相手を追い込んでいくスタイルであれば、向こうにコーションが与えられたと思うのですが。それ以上に本人もばててしまい、相手にうまくかわされてコーションは取れませんでした。あのようなスタイルをするならもっとハードワークが必要でしょうし、練習も相当ハードにしていかないと確立できないなと感じました。
――両スタイルで健闘した堀江選手の試合についてはどうですか
あの階級の割にはリーチとスピードのあるタックルがあるので取り組んでいることが少しずつ出てきたのかなと感じています。ただ、基本的な動作、しっかりバックステップして切りかわしていくところができていないので足が軽く浮いているところが数か所見受けられました。まずはそこをつめていかないとと思いますね。しっかり直していけばあれくらいなら、修正できると思います。グレコローマンは前日に膝をケガしていたので試合を見ていても動きはぎこちなかったですね。ただ、本人が無理してでも出ると言いましたし、接戦に持ち込んでいたので勝ってほしかったですね。
――徐々に各選手の競技スタイルは見えてきていますか
どうやって勝つのかは試合を通して見えてきました。ただ、すぐには結果につながらないので、チームとしてもレベルアップをしていかないといけないなと思います。
――新体制となり、これからに期待することはありますか
次期主将は洞口(幸雄、スポ3=岐阜・岐南工)が務めるのですが、洞口を中心に内閣杯(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)の後にチームとしてどうあるべきかを考えてみろと言ってみました。新体制発表となった時にチームとして全体の底上げを目標に挙げました。そこからすぐにこの試合で底上げできたのかと言われるとまだまだできていないでしょうし、階段をようやく上がるところに来ていることは分かりました。そこの部分については練習、行動、試合の内容をみて感じているところなので。階段を一歩ずつ登るようなかたちでこれからも練習を積ませていきたいと思います。
吉川航平(社2=秋田商)
——予選から苦しい戦いが続いていました。印象に残っている試合はありますか
いまは練習の重点をグレコローマンに置いてやっています。フリーだと準決勝の上野慎太郎選手(日体大)との試合はことしのインカレ(全日本学生選手権)の準々決勝で負けている相手だったので、何としてでも勝たなきゃいけないと思っていました。決勝で勝ち切れなかったっていうのは自分の実力不足だと思うので、一から土台築いていこうと思います。
——終盤で逆転する場面がありましたが、振り返ってみてどうでしょうか
フリーは2試合ありましたが、今までは先制されていたり負けていたりしているときに気持ちが焦り、余計なことやってどんどん追加点を取られていました。今回は比較的に冷静な気持ちになれました。両方とも返し技で逆転勝利だったんですけど、2年生で最後の新人戦というのもあって何としてでも勝たなきゃいけないという気持ちがありました。最後はもう意地の張り合いでした。
——決勝で見えた改善点はどこでしょうか
フリーの改善点は、相手のスタイルは高校時代からずっと知っている選手だったので絶対勝ちたくて対策を練って臨みました。しかし、自分が先手を打てずに足を取られてしまい、その揚げ句さらにグラウンドの技をとられてしまったというのが敗因ですね。彼に勝っていくためにはどんどん先に先に自分の攻めのかたちに持っていき、ファーストコンタクトで勝っていくことが必要だと思いました。
——手応えはありましたか
練習の重点をグレコローマンに置いてやっていると、自分のスタイルがだんだん明確に分かってきています。あまり器用なレスリングではないんですけど、ガツガツ前に出て行くというプレースタイルが分かってきたので、特化していきたいと思います。
——グレコローマンを振り返ってはいかがですか
きのうの試合は意識している選手がいませんでした。2回目の試合で同期の藤川(聖士、スポ2=埼玉栄)と戦ったんですけど、藤川もフリーの選手で身体も小さく、グレコローマン向きではないです。でも、同期対決になって普段から練習している仲間ですし、負けたくないという気持ちはありました。最後は意地のぶつかり合いみたいな喧嘩のような試合になりました。そこはあまりうまく言えないですけど、自分としては良かったです。
藤川聖士(スポ2=埼玉栄)
――フリースタイルで3位という結果についてはいかがですか
優勝を目指してやっていたので、満足いかない結果でした。
――準決勝で4ー10と敗れる結果になってしまいましたが、準決勝を振り返っていかがですか
準決勝は先に結構点数を取られてそこで焦ってしまって、その後タックルに入ったりしたのですがなかなか取り切ることができなくて、ああいう結果になったと思います。
――グレコローマンスタイル(グレコローマン)では3回戦敗退となりましたが、結果を振り返っていかがですか
同門の吉川とやって、グレコローマンはあまりやっていなかったのもあるのですが、やっぱり同門で同期なので負けたくないと思って、勝ちにいくつもりでやっていたのですが結果として力の差が出たなと思います。
――57キロ級はワセダの選手がたくさんいますが、ワセダ内でのレギュラー争いについてはいかがですか
57キロ級は4人いるのですが、みんな強い選手なので自分を負けないようにやっていきたいと思います。
――内閣総理大臣杯全日本大学選手権から新体制となってチームの雰囲気はいかがですか
前チームと比べると少なからずレベルが落ちたと思われると思うのですが、その中でも新しくなってみんなで頑張ろうという気持ちがあるのでこれから頑張っていきたいです。
――チーム内では上から2番目の学年となりましたが、その中でご自身の役割はどのようなものだと考えますか
自分はチームを元気づけられるような存在になりたいと思っていて、そのためには成績を残して、声を出したりして雰囲気づくりをできる選手になりたいです。
――今後に向けての意気込みをお願いします
今後は4月のJOC杯(ジュニアオリンピックカップ)まで試合がないので、そこに向けて体作りとレスリングのタックルの処理などを練習して、JOCでは勝利できるように頑張りたいと思います。