静岡で毎年行われる今大会のシニアの部に早大からは4選手が出場した。そのうち53キロ級・金子和(社3=群馬・大泉)、55キロ級・田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)、60キロ級・香山芳美(スポ1=東京・安部学院)の3人が優勝。特に金子は全日本2位の選手を破る大金星をあげた。
初戦として迎えた2回戦を順調に勝ち上がった金子。続く準決勝では厳しい戦いとなる。2ピリオド(P)消極的な姿勢と判断され、金子のアクティビティタイムとなった。30秒間に得点できないと自動的に相手に1点を与えられる時間に、金子はバックポイントを奪い勝ち抜いた。決勝の相手は明治杯全日本選抜選手権2位の入江ななみ(九共大)。8月の全日本学生選手権(インカレ)でも敗れている強豪だ。試合は両者共に譲らない攻防になる。金子は2度、入江は3度のアクティビティタイムとなり、最終的にしのいだ金子に軍配が上がった。「本当は自分からポイントを取りにいく試合にしたかった」と振り返る通り、ポイントが動いたのはこの警告による失点だけ。内容よりも競り勝ったことに価値のある1勝だった。
得点には結びつかなかったが攻めていった金子
60キロ級の香山は危なげなく勝ち進み、決勝も前半から優位な試合運びをする。2Pに背中に回ると、そのままの流れで相手を封じ込める。最後はブリッジ状態になったところを押さえフォール勝ちで優勝した。一方、正式な部員として出場するのは最後の大会となった田中。チーム事情を考慮し階級を上げて出場した。本来ならば階級が下ということもあり、スピードを生かした攻撃で他を圧倒。決勝では立て続けにローリングを決め、1P54秒でテクニカルフォール勝ち。昨年の51キロ級に続く連覇を達成した。
田中は圧倒的な試合運びで快勝した
3つの優勝を飾った女子チーム。男子とは異なり団体戦というものはないが、「自分の結果以上にチームの結果はうれしかった」(田中)と部員として最後の大会を笑顔で締めくくった。女子が次に控える大会は12月の天皇杯全日本選手権。今回対戦した入江に加え、トップ級が結集する大きな大会でどれほど実力を発揮できるのか。最高峰の舞台に向けて、視界が開けてきた。
(記事、写真 高畑幸)
結果
▽48キロ 須崎麻衣(スポ1=千葉・鎌ケ谷) 1回戦敗退
▽53キロ 金子 優勝
▽55キロ 田中 優勝
▽60キロ 香山 優勝
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――優勝された3選手について振り返ってみてどうでしょうか
金子(和、社3=群馬・大泉)はインカレ(全日本学生選手権)後、打倒・入江ななみ選手という強い思いでやってきていました。試合でもやろうとしていることが見えていたので、内容も良かったと思います。全体的に金子のほうが組み手でも勝っていました。田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)については階級が違うこともあり、プレッシャーを受ける部分もありましたが実力を発揮してくれたと思います。香山(芳美、スポ1=東京・安部学院)は優勝しましたが、まだまだ雑な部分があるのでレベルアップが必要かなと感じました。
――全体的にインカレから課題を改善している印象を受けましたか
監督、コーチ陣よりも負けた本人たちが一番悔しい思いをしていると思います。いままで真剣に練習をやってきていないとは言いませんが、より真剣味が増したと感じています。勝とう、勝ちたいという思いがこの結果につながってきたと感じます。練習はウソをつかないことを優勝した3人共に感じてくれた試合だったと思います。
太田拓弥コーチ
――金子和選手の試合内容について振り返ってみてどうでしょうか
準決勝もしぶとく勝ち上がって、決勝もいままで勝ったことのない選手に勝てたので良かったと思います。最後も粘って勝ってくれたと思います。
――具体的に良かった点はどこでしょうか
脚を取られてもテークダウンを取らせないディフェンス面や、男子のグレコローマンスタイルの練習を女子にも取り入れて9月頃からやっていましたがその練習が多少生きたと感じました。相手の攻撃パターンを防ぐことやそこからタックルに入っていくところに上半身を制していくかたちがちょっと出ていたので、その点はグレコの練習の成果が出たと思います。
――田中選手、香山選手の試合についてはいかがですか
田中に関しては圧倒的に勝ってほしかったですね。大事な場面でミスするところも見られたのでもっともっと手堅いレスリングをやっていくという課題が見えました。香山は決勝に関してはもっと組み手で追い込んでテークダウンに持っていってほしかったです。それでもこのところ勝利できていなかったのでこの優勝が励みになってくれたらいいと思います。
田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)
――本来の53キロから55キロに階級を上げて出場された理由は何ですか
今大会は部員として出場する最後の試合でした。いつもは53キロ級で金子と重なってしまうのですが、今回はチームとして重ならないように4階級それぞれで出ようということで私の方が重いので階級を上げて出ました。
――階級の違いもありスピードのあるプレーが見られましたが、試合を振り返ってみてどうでしょうか
(本来の階級から)1階級上ということもあって力は相手の方が強かったです。それでも普段やっている53キロの選手に比べると動きはそんなに速くなかったので、私としては普段よりも楽にタックルなどに入れてポイントにつなげられたと思います。
――違う階級で戦って得られた収穫はありますか
55キロ級は吉田沙保里(ALSOK)選手がオリンピックで3連覇された階級ですが、いつも出ている53キロに比べると1階級ほんの少し体重が違うだけですごくプレッシャーの差を感じました。課題としてもっともっと筋力アップが必要だと感じました。
――部員としては最後の大会となりました。きょうの総括をお願いします
学生として最後の大会で優勝できたことはうれしく思いました。それでも実力のある選手だったら勝てていないとも感じたので課題も見つかりました。自分のことよりも後輩の金子、香山が優勝したことが本当にうれしいです。ことしはチームとして男女共にあまり良い結果を残せていませんが、女子だけでもこのように優勝できて後輩たちが頑張ってくれたなと思います。特に金子は全日本(明治杯全日本選抜選手権)2位の入江ななみ選手と戦って優勝したので普段練習を一緒にやっている分、うれしく感じました。もちろん自分も入江選手には戦って負けているので金子に悔しさもあるんですけど。女子のキャプテンとして自分の結果以上にチームの結果はうれしかったですね。
――次の天皇杯全日本選手権に向けて意気込みをお願いします
今回は入江選手に金子が勝ったので私も負けないように部内でまた切磋琢磨(せっさたくま)していきたいです。また、吉田選手に勝ちたいと思っているので、部からは離れますがそこまで勝ち残るためにも気を抜かないで練習していきたいです。
金子和(社3=群馬・大泉)
――決勝戦を振り返っていただいてどうでしょうか
コーションの取り合いで最後に勝ったかんじですが、本当は自分からポイントを取りにいく試合にしたかったです。反省も多い試合内容ですが、大学に入ってから勝ったことのない全日本でも入賞している選手だったので、結果だけを見たら内容うんぬんというより勝てて良かったかなと思います。
――準決勝も厳しい戦いとなりました。振り返ってみていかがですか
準決勝も最後に点を取られてしまったんですけど、それまでも相手に脚を触られて危ない場面もありました。そこをどうにかかわしてポイントをやらずに試合を運べたので最後にあのようなかたちになってちょっと点を取られましたが、結果的には4—2で勝てました。点をやらない粘りが試合中に出ていたことは良かったと思います。
――今後に向けて修正すべき点はどのようなことですか
タックルに入った後の処理が遅くて、そこからポイントにつなげられそうな部分を逃してしまったので、取れずに終わってしまったところを直していけたら今回あった危ない試合もちょっとは楽になると思います。
――次戦に向けて一言お願いします
次は12月の天皇杯(天皇杯全日本選手権)になるんですけど、たぶんきょう対戦した選手も出てきますし、他にも強いところから選手が上がってくると思います。課題を直して自分からポイントを取りにいって、きょうと同じように点数を徹底して与えないようにプレーをしていくことができたら勝つ流れが見えてくると思うので頑張っていきたいです。
香山芳美(スポ1=東京・安部学院)
――試合を振り返ってみてどうでしょうか
初戦はいつも硬くなりがちなんですが焦ってあまり動けませんでした。大丈夫かなとちょっと不安でした。決勝の相手は高校の時に対戦したことがあって、一度も勝てなかった選手だったので今回大学入って初めての機会でした。チャンスだったので絶対に勝ちたいと思っていました。勝ててホッとしています。あとは3人の中で一番始めに決勝が行われたので、勝って勢いをつけたいと思っていました。
――全日本学生選手権(インカレ)後初めての大会となりましたが、修正してきたことはありますか
インカレの前からやっていることですが組み手を崩すこととどうしてもタックルに入る時に飛び込むクセがあり、自分から自滅点を与えてしまうことが多いのでそこを直すようにしてきました。今回の相手も受けが強い相手だったのでまだまだ直していかなければいけない部分はあるんですけど、少しはできるようになったかなとちょっと自信になりました。
――改めて見つかった課題は何ですか
攻めて点数を取っていきたいんですけど、今回はタックルでポイントを重ねることはできなかったので。今回ちょっとできるようになってきた組み手などを使って攻めにいくところと、いつも初戦が動けないのですが全日本レベルの大会だと初戦から強い選手と対戦することも当たり前なので、そこでもしっかり動けるようにしていきたいです。