日本最強の証明 前川、世界選手権へ!

レクリング

 世界選手権への選考会を兼ねた明治杯全日本選抜選手権(明治杯)は15日に初日が行われ、早大からは5選手が出場した。グレコローマンスタイル(グレコローマン)120キロ級では優勝候補筆頭だった前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)が盤石な試合内容で優勝。昨年12月の天皇杯全日本選手権(天皇杯)の同階級を制しているために、自動的に世界選手権への出場が決まった。また、フリースタイル(フリー)74キロ級の北村公平(教4=京都八幡)、女子51キロ級の田中亜里沙(スポ3=埼玉栄)の2人が3位となって、表彰台に登った。

 栄冠へ、手堅い試合運びでライバルを完封した。前川の決勝の相手は園田新(拓大)。5月の関東学生リーグ戦(リーグ戦)では、強引に技をかけにいって敗れている相手だ。しかし、同じ相手に2度負けないのが王者。場外への押し出しで1点を先制すると、以降は「どんどん押してというのが自分のレスリング」という言葉どおり、前に圧力をかけながら無理はせずに相手の技を封じていく。そして、優勝決定の瞬間には雄たけびをあげて喜んだ。これで前川は昨年12月の天皇杯に続けての全日本大会での優勝。名実ともに日本のグレコローマン120キロ級のチャンピオンとなって、文句なしの世界選手権への出場が決定した。日本の重量級は世界で苦戦する場面も多いだけに、世界選手権ではまず1勝が期待される。

見事、世界選手権代表となった前川

 一方で、その他の選手は優勝には手が届かなかった。4月のアジア選手権で3位となり、今大会でも優勝が期待されたフリー74キロ級の北村は、準決勝で苦手としている嶋田大育(国士舘大)に敗戦。先制された後にタックルで反撃をはかったがポイントを取りきれず、逆にバックを取られて失点したのが痛かった。また、女子では田中が2回戦で昨年の天皇杯王者の菅原ひかり(至学館大)を終了間際の逆転劇で破ったが、準決勝ではテクニカルフォール負け。接戦を制する強さが見られた一方で、タックルに入られた後の防御を課題に挙げた。

北村は3位に終わった

 前川がリーグ戦での反省を生かして優勝を達成。その一方で課題の見えた選手もいた。しかし、太田コーチが強調したのは「今回出たメンバーは良い試合をしている」ということ。全日本という高いレベルの試合でありながらも、その中で早大選手の強さを感じさせる試合が目立った。この内容を受けて、2日目に登場する選手にはさらなる好成績を期待したい。

(記事 三尾和寛、写真 荒巻美奈)

結果

▽フリーAグループ

74キロ級  北村              3位

▽グレコローマン

60キロ級  池田圭介(スポ4=群馬・館林) 2回戦敗退

120キロ級 前川              優勝

▽女子

51キロ級  田中              3位

       金子和(社2=群馬・大泉)   1回戦敗退

※前川は世界選手権出場決定

コメント

太田拓弥コーチ

――優勝した前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)選手ですが、試合内容はいかがでしたか

まず内容はともかく優勝することが次につながるので、初めての世界選手権につながるので、結果に関しては良かったかなと思います。内容に関してはまだまだ点を取れるチャンスもあったので、決勝戦はたぶん慎重になりすぎたかなと思いますね。

――決勝の相手がリーグ戦で負けている相手だという意識は感じられましたか

多少はあったと思います。リーグ戦では強引にいったところをかわされたりしていたので、「手堅くいこう」と試合前に言っていました。それに関しては手堅くいきすぎたかなと。もっと点を取るパターンもありました。ただずっとスタンドでプレッシャーをかける状態で、点を取られるような様子は無くて、そこは良かったです。

――世界選手権ではどういったことを期待されますか

グレコローマンの最重量級はここ数年、日本選手が1回も世界大会で勝っていない現状なので、とにかく海外の選手に1勝でも2勝でも、少しでも勝ってもらって、五輪につなげるための戦いをしてもらいたいと思います。

――一方で負けてしまった北村選手はいかがですか

準決勝の試合はちょっと足がついていっていなかったですね。脚の動きがなくて、多少苦手意識があるのかなと思います。しかし、たらればですが、2回目のタックルでポイントを取っていれば(勝ちもあった)という展開になったので、点数ほど差を感じることはなかったですね。

――足の運びというのは膝の怪我の影響でしょうか

怪我も多少ありますし、教育実習で練習不足だというのが、まあこれは言い訳になってしまうのですが。そこを含めても負けるにしてももうちょっと良い試合をしてほしかったと思います。

――田中亜里沙(スポ3=埼玉栄)選手は2回戦で強豪を破る試合がありました

いつもはあそこで良い試合をして(も負けて)終わるという展開だったのですが、2P3分経過とほぼ同時に(決勝の)ポイントが取れたというのは成長した証かなと思います。ただ準決勝は力の差はもっと無いと思うので、競る試合をしてくれるのではないかと期待していましたが、前の試合で力を使い果たしたかなという気がしましたね。ただ、足が動いていなかったのと、全体的に構えが浮いていました。

――池田圭介(スポ4=群馬・館林)選手はいかがでしょうか

池田は1回戦は良かったと思いますし、2回戦もテクニカルフォールで負けましたが途中までいい勝負だったので、彼も教育実習明けというのがあったのですがそこは良くやったのかなと思いますね。

――新人戦に引き続き、明治杯でも新ルールが導入されています。新ルールにはどういった印象を持っていますか

新人戦でもあったのですが、グラウンドで(ローリングで)返されてしまうと(すぐにテクニカルフォール負けになって)試合にならないということは常々言っています。攻撃力、いろんな意味での力が無いと勝てないルールですね。そういった意味で明らかに力の差が出るルールで、練習したものが勝つルールです。その点、前まではどちらに転ぶかわからないような面があったので、そこは運に左右されることなく実力が出るという世界になってすごく良かったなと思います。そこで、練習量や、いろいろな力をつけないといけないと戦っている選手は改めて感じたのではないかなと思います。これまで、3ピリオド終わって0-0でボールピックアップで攻撃権を取られて負けて惜しかった、という試合で、6分間の試合内容では差がついていても(結果だけを見て)惜しいと思ってしまう所があったのですが、このルールでは言い訳できないですから。明らかにここが弱い、ここが強いというのがはっきり出るので、そこを徹底して練習していけばもっともっとレベルアップしていけるのではないかなと思います。ただ、今回出たメンバーは良い試合をしているので、このメンバーと普段1、2年生は練習している、特に重量級は96、120の全日本チャンピオン(大坂主将と前川)とやっているわけです。この選手たちと五分に戦えとは言いませんが、まあちょっと追いつくくらいの練習をしておけば学生レベルの試合でも優勝できる力がつくと思うので、間違いなく自信につながってくるのではないかなと思います。

――あすも大会が続きますが、あすへ向けていかがでしょうか

(大会に)出てないメンバーが自信を持てるような、きょうみたいなかたちでやってもらいたいなと思います。

前川勝利(スポ3=茨城・霞ヶ浦)

――今日の試合を振り返ってみて

1回戦目は1点失点をしてしまったので、あれはもったいないなと思いました。決勝戦は、リーグ戦で1回負けてしまった相手で、ちょっと気負いもあったんですけど自分のレスリングをしてスタンドで取れたので良かったと思っています。

――では、決勝戦はリベンジという気持ちで臨んだのですか?

そうですね。でも、リーグ戦の時はフリースタイルというのもあり、また、相手が1年生ということで格下だと思っていたので、自分の中でも少し相手を下に見ていてしまった部分がありました。大技、投げ技にいこうと思って失敗して負けてしまっていたので、しっかり今回のように下からどんどん押してというのが自分のレスリングなので、それをしていけば勝てるだろうなというのがあり、挑戦者のリベンジの気持ち半分、やっぱり前回の天皇杯で優勝しているというのが自分にはあるので、世界選手権もかかっているのでチャンピオンの気持ちと半々ですね。

――今日の調子自体はいかがでしたか?

今回、減量が10キロぐらいあったんですけど、ばてることもなく終始攻めることができたので良かったなと思います。

――世界選手権にむけて

今回の試合見ていても最終的には1対0でしたので、最終的に守りに入ってしまったので、技術面、体力面、試合が3分に変わったので、そういう面も考えて全然まだまだだなというのが正直あるので、すべて一から鍛え直していきたいです。また全日本でも飛びぬけて勝たなければ、世界では1回戦も突破できないと思っているので、そういうところもしっかり見据えて一からまた強化していきたいなと思います。

田中亜里沙(スポ3=埼玉栄)

――きょうの試合を振り返って

練習の成果が出せたかというと全然出せていなくて、納得いかないことも多かったです。なのでもっとできたんじゃないのかというのと、いつもできていることができていないというのと新しい課題も見つかりました。ただいつも競って負けて「良い試合だった。もう少しだったね」と言われることが多かったのですが、今回は内容はあまりよくありませんでしたが、競り勝てたということで1つ成長と言ってもいいのかなと思います。負けた試合については自分が何もできませんでした。自分の良いところを出す前に取られて負けてしまったので、先に点を取ることの大切さを改めて感じました。でも3位ではありますが、全日本の表彰台に久しぶりに上がれたのでここからもう1度上を目指していきたいです。

――競った試合を勝ちきれた要因は

新ルールになったこともあり、先取ポイントをとりにいくと決めていました。いつもはどっちかというと見てしまうのですが、今回は攻めることを考えたことが最終的な勝利に繋がったのかなと思います。

――「新しい課題」とは具体的に

タックル入られたあとの対処ですね。タックル入られたときの防御で考えてしまったり、しっかり切ることができていないのでやり直していきたいです。あとはいらないポイントが多かったです。自分から相手にポイントをあげてしまっている印象があったので守っていけるようにしないといけないなと感じました。

――新ルールで行われた大会でしたが

私には前のルールよりもあっている気がします。ただ3分2ラウンドになったので体力の課題も出てきました。バテてしまったところもあったので、体力をしっかりつけないとなと思いました。

――チームの中で新ルールに戸惑いを感じている方もいらっしゃいますか

ルール変更がいきなりだったので、細かいところまでが分からずそういう部分もありましたが、それは他の選手も同じ状況なので。でもとにかく攻めればいいんだねという感じでした(笑)。

――今後に向けて

インカレについては今回表彰台に上がっている選手たちも出てくるので、きょねんは優勝しましたがことしはそんなにうまくはいかないと思います。もう一度気を引き締めて優勝を狙いにいきます。