まさかの敗北――。早大から5選手が出場した明治杯全日本選抜選手権(明治杯)最終日。大学生ながら日本一の座に就いてきたグレコローマンスタイル(グレコローマン)130キロ級・前川勝利(スポ4=茨城・霞ヶ浦)が決勝戦、プレーオフともにライバルに敗れ3度目の優勝を飾ることはできなかった。女子では53キロ級・田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)が準決勝で吉田沙保里(ALSOK)と対戦。世界女王のカベは高く敗れたものの、積極的な攻撃で自ら得点し健闘した試合を見せた。
決勝のカードは園田新(拓大)。試合開始から前川は力で押し込まれ、組み手もなかなか決まらない。この姿勢が消極的と判断され不利なポジションから試合が再開すると、そのまま先制のローリングを許してしまう。2Pでは相手の警告によりグラウンドから攻撃権を得たが、チャンスを生かせず無得点に終わる。逆に投げ技を決められ差が広がっていく。終了間際、バックで2点を返したが逆転には及ばなかった。前川が敗れ実施されたプレーオフでも悪い流れを断ち切れなかった。不利な体勢から連続失点すると、力尽き0—4の完封負け。ライバル対決は2試合とも相手に敗れた。
前川は押される試合展開となった
一方、女子53キロ級で今までは階級の違いでありえなかったレスリング界を代表する吉田沙保里(ALSOK)と早大2選手が激突。2回戦で金子和(社3=群馬・大泉)が、準決勝で田中がそれぞれ対戦した。田中は果敢に攻撃を仕掛けタックルで足元を狙い、バックポイントや切り返しで4点を奪う。1P後半に連続失点し2P52秒でテクニカルフォール負けとなったが、「手ごたえは感じられた」と太田拓弥コーチから評価される試合内容だった。だが3位決定戦では受け身になってしまいフォール負けで4位となった。
左足のタックルから攻める田中
春の大一番・明治杯はそれぞれに反省も収穫もある大会となった。ライバル対決に敗北した前川。健闘した内容もあったが悪いところも見られた田中。まずは今シーズン山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)、太田コーチから指摘されて続けている自分のプレースタイル、自分のレスリングの見直しをはかり次戦へと臨みたい。
(記事 高畑幸、写真 三尾和寛、末永響子)
結果
▽男子フリースタイル
57キロ級 黒澤翔(スポ3=茨城・鹿島学園)1回戦敗退
▽男子グレコローマンスタイル
66キロ級 中井堅太(社4=南京都) 1回戦敗退
130キロ級 前川 2位
▽女子
53キロ級 金子 2回戦敗退
田中 4位
コメント
山方隆之監督(平4人卒=福岡・築上西)
――今大会の2日間を振り返っていかがですか
自分のレスリングというものがどういうものなのかをもう1回各自が考えて、練習していかないと勝ちきれないということを感じた2日間でした。その中でも収穫は各自にあったと思います。特に田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)は、今回は教育実習期間中ということで十分な調整ができない中での試合で、吉田沙保里(ALSOK)選手とやって自分からポイントが取れたことでまた可能性を感じた部分が自分の中であると思いますし、感じたということを言っていました。今度は年末の天皇杯全日本選手権に向かって、勝つつもりで取り組んでもらえればなと思います。他の選手も悪いところもいっぱいありましたが、良いところもあったと思うのでそういったところをもっと伸ばしていけるように頑張っていきたいと思います。
――個人に目を向けて、前川勝利(スポ4=茨城・霞ヶ浦)選手の試合はどう見ていらっしゃいましたか
勝利自身も食事の改善等に取り組んで、意識で劣っているわけではなく、優れていると思いますが、相手の方がよく研究をしていたのかなと。勝利は気持ちがあって、体もつくっていたのですが、研究というか、変化というかがちょっと足りなかったのかなという気がします。今回は連敗という結果になりましたが、勝てない相手ではないのでどう盛り返していくかですね。前川にも言ったのですが、練習相手というのは部の中にもなかなかいないので、どれだけ自分を追い込めるかというのは彼自身の行動が大事だと思うので、どう自分をいじめられるか、彼に期待していきたいと思います。
――保坂健主将(スポ4=埼玉栄)についてはどうでしょうか
負けた小島(豪臣、中原養護学校教員)選手に実力的に今の状態では勝てないので、本人もそれは分かったと思います。スパッと、きれいな負け方をしたので後にひきずらずに、また上を目指せる負けになる試合だったと私は思うので、あとは保坂自身どう戦っていくかが大事だと思います。
太田拓弥コーチ
――田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)選手の準決勝を振り返ってみてどう思われますか
オリンピックで活躍されている吉田(沙保里、ALSOK)選手と戦う機会は金子(和、社3=群馬・大泉)にせよなかなかありません。そのような選手からポイントを奪いましたし、無駄な点数は6点ぐらいでした。そこさえしっかりしていればもっと良い試合ができたかなと思います。僕も長年この世界にいますが、あの差であれば12月の天皇杯全日本選手権に十分間に合うと思いますね。
――手ごたえをつかみましたか
10−0とかで負けるよりはずっと良いです。ポイントも取りました。ちょっと油断したところを抜けられてコロコロ返されたかんじです。手ごたえは感じられる内容でした。
――一方で3位決定戦では受け身になってしまった印象があります
悪い時にやられるクセですね。
――課題はどこでしょうか
さんざん前から言っていますが、基本的な部分です。タックルに入られたら切る、状態を崩してから決めることなどです。
――前川勝利(スポ4=茨城・霞ヶ浦)選手の試合はどうですか
決勝でも、プレーオフでも最初のコンタクトから当たり負けしていました。見るからに一歩、二歩押し込まれているイメージがあり最初のチャンスを相手に与えてポイントを取られてしまいました。1年前、2年前と戦っている内容が違っていて単純に相手のほうが練習量の多かったことから出た差ですね。本人もしっかりその点を反省しているのでまた準備して対戦したいと思います。
――前川選手のプレースタイルが出ませんでしたか
左を差すことができませんでした。相手は攻め方を研究して対処法とポイントの取り方を指導されてきたんでしょう。前川はこじ開ける力や当たりの弱さがあったと思います。相手の方が確実に練習して、対策を考えて一枚上手でした。そこの差が明らかに出た試合内容でした。
――大会全体を振り返ってどうですか
東日本学生リーグ戦の反省を踏まえて黒澤(翔、スポ3=茨城・鹿島学園)は負けましたけど自分のスタイルで試合ができましたし、田中(亜里沙)も同じように自分のプレーが出ていました。選手自身が変わろうとしている部分はこちらとしても分かってきました。変わると言っても劇的には変わることはできないので夏の全日本学生選手権に向けてまずは一段上がったかなと思います。
前川勝利(スポ4=茨城・霞ヶ浦)
――130キロ級に階級が変更されて重点を置いた部分はありますか
自分は特にそんなに変えてないです。
――プレーオフでの組み手はどうでしたか
プレーオフはバテていて全然動けませんでした。
――ピリオドの間にコーチから指示された部分は
指導はしてもらいましたが、自分が動けなかったのでダメでしたね。
――課題はどこですか
また練習して一からやり直すしかないです。一からのやり直しです。
田中亜里沙(スポ4=埼玉栄)
――吉田沙保里選手との準決勝を振り返ってどうですか
すごく悔しいです。今回やるのは初めてだったのですが、正直もう少し勝負できるかなというのがあったので、テクニカルフォールで10点差をつけられて6分間戦うことはできずに終わってしまったことがすごく悔しかったです。
――何か意識して準決勝に臨まれましたか
練習等ではありましたが、試合で戦うのは初めてだったので、チャレンジャーの気持ち、挑戦者の気持ちで思いっ切りやって全部出せるものは出して戦おうと思っていたので、特にそこで勝負するなど得意技があるわけではないのでそういうのはなかったです。ただ思いっ切りやってレスリングを楽しめたらいいかな、それが多分一番良い動きになるのではないかなと思っていました。
――先に金子和(社3=群馬・大泉)選手が吉田選手と戦いましたが、何か金子選手とお話はされていましたか
組み合わせが出た時からお互い2回戦目思いっ切りいこうねという話をしていて、何かやってやろうということをずっと2人で話していました。
――先制点を挙げられ、世界女王を相手に4点を挙げられましたが
スタートでは思いっ切りいけていたというのもあると思うのですが、最初は取れてでもその後ですよね。途中からグラウンドの場面で相手に点を一気に取られてしまって、追いつかれてからはあと1点でもうテクニカルフォールで試合が終わってしまうというところだったので、そこでは全然攻めることができないで合わせてしまったので、もっと最初のように後半もどんどん取りにいっとけば良かったなというのはあります。少し受け身になってしまったので。
――その後の3位決定戦では接戦となりました
私のダメなところが出てしまいましたね。逆転で一発の技にかかってしまったのですが。相手も強い選手でタックルで全部取られていて、私が取ったポイントは全部返し技や相手の技を受けてからの技だったので自分から攻めて取れてはいなかったので、少し実力の差もあったのかなと、練習不足などを感じました。
――きょうの試合を踏まえ、今後に向けて意気込みをお願いします
吉田沙保里さんとできたことで、もう1回頑張ってみようかな、もっと勝負できたというのを試合の後感じたので、また今後の練習を頑張っていけるなというのをすごく感じました。